【声明】9月市会を終えて
2022.11.09
日本共産党京都市会議員団
団長 井坂博文
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一、はじめに
9月市会は9月21日に開始、43日間の審議期間を終え11月2日終了しました。異常円安、物価高騰の中、くらしと生業が危機に陥り、行政としていっそうの支援が求められている中での議会となり、9月30日「新型コロナウイルス感染症対策及び物価高騰対策についての緊急申し入れ」を行いました。審議期間中の9月27日、安倍晋三元首相の「国葬」が多くの国民の反対の声の中強行され、市長が公費でこれに参列して市民の批判が起こりました。また、安倍氏銃撃事件を発端にして統一協会が政治家や行政と結びつき、政治をゆがめていることが改めて明らかになっています。
一、市長提出議案に対する態度
今議会には市長から48件の議案と16件の決算が提案されました。党議員団は、一般会計補正予算、プラスチック製品に収集範囲を拡大する廃棄物条例改正、老人デイサービスセンターの指定管理者の指定等35議案に賛成、市庁舎整備の契約変更、百々デイサービスセンターの廃止条例、向島ニュータウンの店舗・飲食店・オフィスを3000㎡まで緩和する条例、山端北及び七瀬川市営住宅廃止条例等13議案に反対し、決算では、21年度一般会計・国保特別会計・介護保険特別会計・水道事業特別会計・下水道事業特別会計・自動車運送事業特別会計・高速鉄道事業特別会計決算等9件は認定せず、7件は認定しました。
一、論戦の特徴
党議員団は、代表質問及び予決算特別委員会等を通して、市民生活を守る論戦を行いました。
<一般会計補正予算>
一般会計補正予算は、住民税非課税世帯等に対する価格高騰緊急支援給付金、新型コロナウイルスワクチン接種等、必要な補正であり賛成しました。その上で、コロナ第7波の中で、高齢者のいのちが選別される重大な事態を生じさせたこと、インフルエンザとの同時流行に備えた対策としてインフルエンザワクチンの無料化の必要性、アーツエイドKYOTO~京都市連携・協働型文化芸術支援制度について寄附を集められる事業者だけが対象となる上に、寄附金の3割は京都市文化基金に積み上げるなど問題を指摘しました。
市庁舎整備契約変更については、アスベスト対策や設計労務単価の変更は必要なものだが、現場労働者の賃金に反映されるよう市が役割を果たすべきと指摘。本庁への機能集約をすすめた結果、外ビル解消は実現できないことが明らかになり、集約化でなく区役所・支所、出先機関の充実を主張しました。
<21年度決算関連議案>
21年度決算について市長は実質85億円の赤字としていますが4億円の黒字、2月補正予算で187億円の予定外の公債償還基金積立を行ったことをふまえれば実質102億円の黒字であったこと、さらに25年度1000億円の公債償還基金必達目標から見て1400億円以上を確保したと言っており、2年間で447億円の収支改善をふくめおおむね400億円の収支改善であることを認めさせました。民間保育園補助金13億円削減、敬老乗車証負担金2倍化、施設使用料値上げなど53億円の市民負担増を元に戻すことは可能だと指摘しました。事実に基づかない財政危機キャンペーンは止め、「行財政改革計画」は中止して、市民生活と中小企業への支援で好循環をつくることが重要だと述べ、市の財政再建と市民生活再建の両立の道を示しました。
法人市民税法人税割税率を8.4%まで引き上げ年5億円の増収を実現すること、さらに高額所得階層の市民税税率を2007年以前の3段階の水準に戻せば100億円もの増収となると示し、税財政制度の改善、金融所得課税の強化、大企業への行き過ぎた減税の是正を求めるべきと主張しました。
北陸新幹線延伸計画や堀川・油小路通り地下バイパストンネルの中止撤回、高速道路三路線の廃止手続きを速やかに進めること、北山エリア整備計画を「まちづくり構想」に位置づけている問題について指摘し、ムダな大型事業からの脱却こそ必要と主張しました。
国保会計決算については、高い保険料の引き下げを行わず、コロナ減免も実態に合わせた改善がされていないこと。介護保険会計決算についても保険料の高さ、業務の大部分を民間に投げ出し行政の責任を果たさないことを指摘しました。後期高齢者医療保険会計決算については、保険料とともに一部負担金の引き上げが高齢者を医療から遠ざけていると負担減を求めました。
中央卸売市場第一市場決算については、再整備の総事業費600億円が過大であり、事業者の負担も過大になること、21の仲卸業者が廃業していることを指摘しました。
上下水道事業について「根幹は直営を堅持」というものの、委託の割合が増えており、このままでは民営化の一里塚となりかねないと指摘。下水道事業への出資金休止で、下水道基金では足りず、建設改良積立金で手当てするなど不正常な会計となっており、出資金の再開を求めました。広域化について局長が「実現可能な連携からすすめ,長期的な視点で検討を深める」と答弁したことに対して、広域化のメリットはないと批判しました。交通事業について、経営ビジョン【改訂版】で値上げを前提としており、路線・ダイヤの見直しで不便になっていると批判。コロナを原因とする経営悪化であり、利便性の確保、値上げを絶対しないことを前提に、国の支援と市の責任を果たすよう求めました。
<市民の命・くらし優先の市政へ>
民間保育園補助金削減で、現場は賞与や昇給のカット、積立金の取り崩し等を余儀なくされており、8割の職員が働き続けられないと回答するなど影響は大きく、補助金を元に戻すよう強く求めました。関係者の運動・実態告発と結んだ議会論戦により、「今年度に続いて来年度も保育料を据え置く」との表明がありました。
都市計画の見直しという新景観政策の実質的改悪について、「100年の計として打ち出された新景観政策をわずか15年で壊し、先人たちの努力を台無しにするもの」であり、開発資本のための規制緩和であると批判。若年世帯の流出については、周辺部の交通確保、住宅政策、買い物難民解消、医療確保、教育支援の不十分さと、保育・教育・子育て支援を後退させていることに原因があると指摘しました。
市内事業者の99%を占める中小企業に対する具体的な直接支援、伝統産業の実態を示し支援を求めました。あらゆる物価を引き下げる何より有力な施策は消費税の引き下げだと指摘し、国に引き下げを求めるべきこと、中小企業支援と一体の賃金引きあげでくらしの底上げこそ必要と強調しました。
豊かな森林を守り、災害を防止する上でも、皆伐方式でなく小規模林業家が分散管理する「自伐型林業」の取組み、環境保全型森づくりの検討、盛土については少なくとも500㎡以上に規制強化を行うよう提案しました。
リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の視点に立ち、生理用品の公共施設への配置をはじめ避妊薬と緊急避妊薬を安価に入手できる対策、中絶に関わる法改正を要請すべきと主張。この問題の中核施設であるウイングス京都を廃止してはならないと強調しました。
2030年までに50~60%のCO2削減の野心的目標を持って取り組みを進めること、公共建築物のカーボンゼロ、公共交通優先への転換など、公共投資のあり方を変えるべきと要求しました。国の原発新増設方針は脱炭素化に逆行すると批判し、副市長は「原発のできる限りの早期の全廃」を求めており今後も積極的に働きかけると決意がありました。
一、住民運動・請願・陳情
今議会には「小学校のような全員制の中学校給食の実現」「山端北市営住宅跡地売却の中止」「宅地造成及び盛土規制法に基づく規制」「北陸新幹線延伸計画の中止」「北陸新幹線による地下水等への影響調査」「北陸新幹線延伸に関するボーリング調査の公表」「高齢者インフルエンザ予防接種の自己負担引き上げ中止」等請願62件が出されました。議決後も運動を続けている「ヘルスピア21の存続」「現行(9月まで)の敬老乗車証の継続」「民間保育園職員給与等補助金再構築後の見直し」の陳情をはじめ、「北陸新幹線延伸による水循環の影響調査」「北山文化・交流拠点地区の地域まちづくり構想の撤回」等陳情450件が提出され、市民の切実な要求を審議しました。中学校給食、山端北市営住宅、新幹線関連、盛土の規制など7件の請願が不採択となり、党議員団は、採択を主張して本会議で討論しました。
一、意見書について
自公提案の「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による被害者救済に向けた関係法令改正に取り組むよう求める」意見書が可決されましたが、被害を過小に見せるもので政治との癒着についても触れられておらず、党議員団は反対、立憲も反対しました。「旧統一教会等による被害の救済・防止を求める」意見書を党議員団と民フ、立憲、無所属小山田議員の共同提案で京都・維新も賛成し、可決しました(自公は反対)。党議員団は、「旧統一教会の解散命令と被害者救済・被害防止を求める」意見書を提案しましたが、他会派は全て反対しました。
また、「女性デジタル人材育成を強力に推進するための支援を求める」意見書が可決、党議員団は反対しました。「マイナンバーカード取得義務化につながる『健康保険料の廃止』と『マイナンバーカードの保険証利用等に係るシステム導入の義務化』の撤回を求める」「『2024年度介護保険制度改正』において、よりよい制度を求める」「市民のいのちと暮らし守る物価高騰対策を求める」意見書を提案しましたが、他の会派が全て反対。党議員団は採択を求めて討論しました。
一、おわりに
今議会で党議員団は、統一協会及び関連団体について「行政がお墨付きを与えてはならない」と、徹底した調査をおこない関係を断つべきと主張し二度にわたる記者会見を行いました。京都マラソンの大会ボランティアに関連団体が、街路樹サポーターに世界平和統一家庭連合(統一協会そのもの)が登録していることが党議員団の調査で判明。京大原理研が市内の公立小学校で活動していたことも判明しました。他都市の市長が調査を徹底している中、京都市長の態度は不十分であるとして、追及し、市長総括質疑で市長が「行政として一切関わりを持たない」「縁を切る」と答弁するに至りました。しかし、関連団体との関わりについての全庁的調査は現在も否定しており、市民の疑念を深めることになっています。京都市との関わりがなかったのか、行政がゆがめられることがなかったのか、今後さらに調査を進め、公正な行政の確立、反社会的カルト集団と政治や政治家との関わりを断つために奮闘していきます。 「異次元の金融緩和」政策による異常円安により、一層深刻な物価高で、市民の暮らしと営業に深刻な影響が出ています。新型コロナウイルス感染症やインフルエンザへの備えと公衆衛生体制の再構築を含め、市民のいのちを守りくらしを再建するために、皆さんと力を合わせていっそう奮闘する決意です。