【声明】9月市会を終えて
2025.11.07
日本共産党京都市会議員団
団長 西野さち子
一、はじめに
9月市会は9月19日に開始、42日間の審議期間を終了しました。決算議会にあたり、党議員団は「最低賃金を早急に全国一律1,500円以上に引き上げ中小企業への直接支援制度の創設を求める」、「酷暑と物価高騰から市民の生命を守る」、「新型コロナワクチン・インフルエンザワクチンの予防接種料金の値下げを求める」各申し入れを行いました。
また、「『世界文化遺産保護条例』案および条例骨子案に対する市民意見募集の結果」、「市営住宅政策『魅力ある市営住宅 安心して住み続けられる地域づくりに向けて―住まいは人権の立場で―』」、「京都市の都市農業と農地を守り活かす政策」をそれぞれ記者発表しました。
一、市長提出議案について
今市会には市長から65件の議案が提案されました。党議員団は中学校給食センターをPFI方式で整備運営する契約、京都駅南側における建物の高さを緩和する条例改正等15議案に反対しました。避難所環境改善のための段ボールベッド等を購入する動産の取得、百々児童館の移転を行う条例等50議案に賛成しました。市税条例の一部改正については、大企業への超過課税の継続であることから賛成しましたが、さらなる引き上げが必要であることを結了委員会で申し述べました。
決算は、2024年度一般会計・国民健康保険事業特別会計・介護保険事業特別会計・後期高齢者医療特別会計・中央卸売市場第一市場特別会計・水道事業特別会計・公共下水道事業特別会計・自動車運送事業特別会計決算8件は認定せず、高速鉄道事業特別会計決算等7件は認定しました。党議員団と無所属議員1名を除く自民、維新・京都・国民、公明、民主※、改新の全会派・無所属議員3名は市長提案の全議案に賛成しました。
(※民主・市民フォーラムは10月31日に会派を解消)
<中学校給食整備運営事業について>
中学校給食については約30年前からあたたかい全員制給食を求める住民の運動が取り組まれてきました。今回も、多くの市民が委員会を直接傍聴するなか審査が行われました。
自校方式として実施することが可能であったにもかかわらず、巨大給食工場の計画を進めている教育委員会の責任は重大です。当局追認に終始した他会派にも責任が問われます。
党議員団は、継続審査を求める市民請願を受けて、動議を提出し条例案の継続審査を求めました(少数否決)。また、①副市長が「2時間喫食の遵守は極めて重要なファクターである」と認識をしめしたものの実現の担保がないこと、②偽装請負という違法状態と隣り合わせとなること、③栄養教諭の配置が少なく食育が不十分となること、④PFI手法のBTO方式の具体的な姿や財政効果が不透明であること、⑤係争中である整備予定地の広域避難場所としての機能喪失と豪雨災害による水害リスクの5つの問題点を追及しました。引き続き、よりよい中学校給食をめざして市民のみなさんと声をあげます。
<一般会計補正予算>
省エネ家電への買換え促進事業、学校給食費への対応、銭湯への経営改善支援、商店街エネルギー環境整備事業、市立病院の運転資金確保、水道管路耐震化に係る一般会計操出金の増額など必要な措置であることから賛成しました。討論で、35億円の過去負債の返済について、金額を減らし平準化を行った上で、市民サービスの拡充や物価高騰対策、子育て支援施策の拡充の政策化で市民福祉の向上を図るべきことを述べました。
<2024年度決算関連議案等>
松井市長のもとでの初めての通年決算は58億円の黒字で、4年連続の黒字となりました。敬老乗車証の本人負担3倍化や保育園補助金削減、使用料等の値上げ、いきいき市民活動センターの廃止など市民生活に多大な負担を押し付ける路線が継続されました。党議員団は、くらし最優先の市政と党議員団が昨年の11月市会に提案した小中学校給食費の無償化・子ども医療費18歳までゼロなど子育て支援策強化を求めました。
生活保護扶助費の引き下げは違法と訴えた「いのちのとりで裁判」で最高裁判所は国を違法と断罪しました。党議員団は謝罪と早期の遡及支給を求め議論しました。
児童相談所の一時保護所のひっ迫について、体制の抜本的強化と第二児童相談所に一時保護施設を付設することを求めました。学童保育所の大規模化・過密化は早急な改善に向け、20年前の一元化児童館130館目標を見直し学童保育や児童館の新たな整備方針を策定するべきと述べました。民間保育園保育士の処遇改善について、国の公定価格の引き上げ分を現場に還元し、削減した補助金は元に戻すべきこと、宿舎借り上げの対象拡大を求めました。不登校児童・生徒の対策については「アンケート等を通じて不登校当事者の声を聞き」「多様な子どもを包摂する魅力ある学校」づくりの表明がありました。京都府就労・奨学金返済一体型支援事業について、「協議が整えば来年度から制度拡充」と答弁がありました。事業者支援にとどまらず返済している本人も軽減されるような制度が必要です。
・大型開発行政推進について
三条京阪や京都駅周辺の都市再生緊急整備地域の指定について、京都駅南側では京都市にあるオフィスの5倍の面積を供給する規制緩和がすでに行われており、50年後、100年後においても歴史都市京都が持つ優れた資源を守るために策定された新景観政策の理念に立ち返ることを求めました。駅前の高層ビル計画と一体の京都駅新橋上駅舎・自由通路整備はJR西日本に社会的責任を求めるべきであることを述べました。鴨川東岸線第3工区、国道1号線バイパスなど車を呼び込み交通量を増やすのではなく、持続可能性を重視した都市づくり・生活道路の改善を求めました。
北陸新幹線京都地下延伸計画について、どのルートも、どの案も混迷しており、与党の枠組みが変わった今こそ、市長が積極的に現行案に市民合意がないことを発言するよう求めました。
農業政策において、「農地を産業用地とする方針はない」との答弁がありました。向島農地を第二期地域未来投資促進基本計画における重点促進区域の指定からはずすべきです。深刻化する気候危機対策については、CO2削減目標について市長の積極的な姿勢が示されませんでした。京都議定書発祥の地である本市こそ危機感を持ち、踏みこんだ削減目標を掲げ取り組む必要があります。
観光政策・オーバーツーリズム対策については、宿泊施設増加のもと、生活が脅かされてきました。行政による指導や条例改正を求める住民のねばり強い要請が行われ、党議員団が一貫して求めてきた「宿泊施設拡充・誘致方針の廃止」、「民泊」「簡易宿所」について「条例による規制強化を検討」との答弁がありました。総量規制と党議員団修正提案にしめした立地規制や管理者常駐など実効性ある規制を求めるものです。
多文化共生推進について、差別・排外主義に対し、市長がガバメントスピーチを発し、ヘイトスピーチ規制条例を制定することを求めました。
・公共の民間市場化、職員の非正規化・削減について
民間委託化や職員削減の路線の転換を求めました。会計年度任用職員の雇止について再度任用の上限撤廃を求めました。男女賃金格差是正について、特定事業主として積極的役割を果たすことを求めました。市長から「女性の登用についてはしっかり前にすすめていかなければならない」との答弁がありました。男女共同参画計画案は指標の現状把握にとどめず目標を持っての積極推進をと述べました。
市立病院の今後のあり方検討について、国の病床削減、機能分化の誘導に従うのではなく、公立病院として潜在的な医療需要を掘り起こしていく立場に立つことを迫りました。
市営住宅について、単身者用住居の空き家公募について、これまで39㎡としてきたものを53㎡まで対象拡大していると説明がありました。「住まいは人権」の立場で、居住面積拡大、家賃減免制度を元に戻すこと、指定管理者制度導入をやめることを求めました。公園の民間活用をすすめるPark-PFIやPark-UPについて公園面積の拡大こそ公共として進めるべきことから中止を求めました。
学校給食センター整備運営事業、市立病院、小中学校冷房化事業、区役所等で行われているPFI方式について「京都市基本指針」に基づく運営が十分に行われておらず、事後評価等においても、導入根拠とされているVFM(財政負担軽減効果等)が検証できないことを論戦を通じて明らかにしました。
「まちの匠・ぷらす」については「グレーゾーンで十分な耐震性能が確保されていないものもありうる」「支援対象を検討中」と答弁がありました。災害に強い街をつくるために積極的な施策化を求めました。
・公営企業決算について
上下水道事業について、上下水道の老朽管対策について、国の補助制度の改善に対して市長の努力と決意を求めました。下水道出資金を復活し、次年度予算に計上することを強く求めました。広域化について京都府に追随していること、「事業の根幹は守る」としながら民間委託を推進している姿勢の転換を求めました。
市バス事業について、運賃の値上げはしないと表明しながら、調整区間について値上げや減便を行っていることを批判。国に独立採算制を変えるよう求め、任意の繰り入れを確保することを求めました。西京区の方から「減便を元に戻してほしい。運賃値上げは撤回せよ」と多くの請願や陳情が寄せられました。厳しく抗議し元に戻すよう求めました。運転士不足の問題について、給料表の5表から1表への変更はされず抜本的な改善を求めました。市長が管理者に対して、「独立採算が原則と言うものの、宿泊税を中心に一般会計からもしっかり支援するので、上を向いた、前を向いた経営をしてほしい」と言われたことが管理者の答弁で明らかになりました。独立採算制を止めさせることを国に求め、運賃値上げをすることなく公共交通である市バス・地下鉄の運営を行うことを求めました。
地下鉄事業について、転落防止柵の全駅設置計画の具体化、駅トイレの改善や生理用品の提供などの努力を評価し、認定しました。駅務員の民間委託や無人改札口など乗客サービスを後退させていることについては改善を求めました。
一、議員提出議案について
「医療・介護従事者に対する処遇改善の早期実施を求める意見書」、「国家公務員の地域手当に準拠した地域区分の見直しに関する意見書」、「旅館業法の改正を求める意見書」、「違法オンラインカジノをはじめとするギャンブル関連問題の対策強化を求める意見書」の4件を全会一致で採択しました。
党議員団が提出した「消費税5%以下への減税とインボイス制度の廃止を求める意見書」、および、党議員団と井﨑議員が提出した「北陸新幹線延伸を白紙撤回するよう求める意見書」はその他の議員の反対で否決されました。
一、 住民運動・請願
請願については、「核兵器禁止条約への批准の要請」「インボイス制度の廃止の要請」、「消費税率5パーセント以下への減税の要請」、「北陸新幹線延伸の反対決議及び白紙撤回の要請」「西京区桂学区への街区公園の設置」は党議員団と無所属議員以外の反対で不採択となりました。党議員団は「西京区桂学区への街区公園の設置」「核兵器禁止条約への批准の要請」については不採択に反対する討論に立ち、「インボイス制度の廃止の要請」、「消費税率5パーセント以下への減税の要請」、「北陸新幹線延伸の反対決議及び白紙撤回の要請」については意見書を提出し賛成討論を行いました。「簡易宿所開業への指導(上京区主税町)」は全会一致で採択されました。「議第104号京都市学校給食センター(仮称)整備運営事業実施契約の締結についての慎重審議及び議決の先送り」は審議未了となりました。
高校生が提出した北陸新幹線延伸の白紙撤回を求める請願で44年ぶりに請願者による趣旨説明が委員会委員全員一致で認められました。これまでから、党議員団は憲法に保障された請願権行使にあたり、十分な審査を行う立場から請願者本人の趣旨説明を認めるべきことを一貫して主張してきましたが、他会派の反対で否決されてきました。2014年に全会一致で採択された京都市基本条例は「市会は市政を担う一翼として、主権者である市民が主体となり、市民自らの意思と責任において行われる住民自治の発展に向けて、より一層市民と情報を共有するとともに、市民の市政への参画の機会を充実させるものとする」(第四章9条)としており、紹介議員の説明責任を果たすことにとどまらず、請願者の趣旨説明を実現していくことは市会基本条例の趣旨にそうものです。党議員団は引き続き請願者の趣旨説明を実現するために力をつくします。
陳情については「すべてのケア労働者の処遇改善の要請」「敬老乗車証制度の改善」「住宅が隣接し密接する袋地における住宅宿泊事業の見直し」「住居専用地域における民泊規制の強化」「西京区におけるコミュニティセンターの設置」「学校調理方式による全員制中学校給食の実施等」「市立中学校の通学費の無償化等」「西京区桂学区への街区公園の設置」「『まちの匠・ぷらす』の延長及び拡充等」「桂駅西口地域への安価で利用しやすい集会施設の設置」「洛西地域の市バス路線・ダイヤの見直し」「西9号系統のバス停の新設」「市バスM1号系統のダイヤの改善等」「減額した生活保護費の遡及支給の要請等」「新景観条例を反故にする京都プロジェクト(仮称)の高さ60mのビル建設の反対」「前世代の軽度・中等度難聴者に対する補聴器購入助成の実施等」が提出され、党議員団が積極的に審議を行いました。
一、最後に
自民・維新連立政権が発足しましたが、憲法改悪、議員定数削減、医療予算削減など、参議院選挙で示された国民の意思に逆行する民主主義破壊・新自由主義路線の政治を進めています。一方で、アメリカのニューヨーク市で、家賃の引き上げ凍結や保育の無償化、富裕層課税など暮らしの要求実現を訴えた社会民主主義者の市長が誕生しました。来年の春には京都府知事選挙が行われます。新自由主義に対峙し、国言いなりの府政を京都から変えていく時です。党市会議員団も力をつくします。
