日本共産党 京都市会議員団

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議会質問・討論

個人情報を「保護」から「活用」へ,個人情報保護条例全部改正に反対討論,樋口議員

2022.12.12

 日本共産党京都市会議員団は、議第190号、「京都市個人情報保護条例の全部を改正する条例」案について、反対の態度を表明していますので、私は議員団を代表して討論します。

 条例案は、国のデジタル関連法の一環として、個人情報保護法が改定され、個人情報の保護制度が全国的に共通ルールとして適用されることとなったため、本市の条例を全部、改定しようとするものです。

 これまでの条例が「個人の権利利益の保護」を目的としていたのに対して、今回の改定は、条例案に「データの円滑な流通」という目的が付け加わっていることからもわかるように、行政の持つ個人情報を民間営利企業に開放しようというものです。個人情報を「保護」から「活用」へと、考え方を180度変えようとするものに他なりません。

 自治体の持つ個人情報は、公権力を行使して取得されたり、申請、届出に伴い義務として提出されたりするものがほとんどです。ですから、自治体は、民間よりも厳格に個人情報の保護に努めてきました。その個人情報を、今度は全く逆に、営利企業の儲けのために提供するなどということを、どうして許せるでしょうか。

 条例案に反対する第一の理由は、個人情報保護を軽視して、プライバシーを侵害するおそれがあるからです。

 今回、新たに導入される「匿名加工情報」の仕組みは、個人を識別できないように加工したから、個人情報ではない、と定義されています。しかし、どんなに加工されていたとしても、そのもととなる情報が個人のものであることに、違いはありません。プライバシーにかかわる情報を、本人が知らないところで、行政から民間にデータを提供することになります。しかも、「私の情報を提供対象から外してほしい」と要求しても、本人からの利用の停止や削除、提供の停止を請求する権利を定めた規定が条例から削除されており、法律にも規定されていないため、提供を停止させることもできなくなっています。

 個人情報は、個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきものであり、今、行政に求められていることは、プライバシーを守る権利は憲法が保障する基本的人権です。自分のどんな情報が集められているかを知り、不当に扱われないように関与する権利、自分の情報のコントロール権、情報の自己決定権を保障することにほかなりません。

 反対する第二の理由は、地方自治が侵害されているという問題です。これまで京都市が定めていた個人情報保護に関する様々な仕組みが、国の制度改定の中で、一方的になくされてしまう、または、これまでになかった仕組みを強制されるという内容になっています。このことは、その当時の担当大臣が、自治体の既存の個人情報保護条例は「一旦リセット」していただく、と発言したことに象徴されています。

 これまで、個人情報保護制度は、自治体が「認知の先導性」を発揮し、国よりも自治体が先行して積極的役割を果たしてきました。つまり、国よりも自治体の方が、より大量の住民の個人情報を保有しており、とりわけ要配慮個人情報を国よりもはるかに多く保有して個々の事務を行ってきたため、国が認識しにくい個人情報保護にかかる様々な問題を国よりも早く認識し、その対策としてそれぞれの自治体で個人情報保護条例をつくってきたという経過があります。自治体が条例で積み上げてきた仕組みを、国が「リセット」するよう迫ることは、地方自治を踏みにじるものと言わざるを得ません。

 さらに、先に述べたように個人に関する情報の利活用を目的としているために、その保護に関する規制は緩和されており、条例によって規制を上乗せすることは、目的に沿わないためほぼ認められないということになっています。これもまた、条例制定権という団体自治を、過剰に制約するものと言えます。

 最後に、これらの国の方針に、市長が無批判的に追随していること、さらに、今回の個人情報保護制度の改定と合わせて、マイナンバーなどを活用した自治体デジタル化の推進によって、財界がかねてから要望してきた、国民への徴収強化と社会保障費の削減を進めようとしていることも、重大な問題であることを指摘して、討論とします。