日本共産党 京都市会議員団

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議会質問・討論

伏見工業高校跡地活用は市民の声を聞いて再検討を,請願について討論,やまね議員

2024.03.27

 日本共産党京都市会議員団は、伏見工業高校跡地の活用に関わる請願の「不採択」に反対を表明していますので、以下、その理由を述べ、討論します。

 当該地では現在、阪急阪神不動産、京阪電鉄不動産、積水ハウスなどの大手企業によって549世帯、人口1600人という大規模な住宅街区の開発が計画されています。その計画に対し、本請願は、①周辺住民の声・要望が反映されていないこと、②老朽化した稲荷橋や渋滞への懸念、③京都市として地域住民への意見聴取が不十分であること、京都市が説明会に出席していないなど、行政の不誠実さがあることから、市有地売却ありきでなく、地域住民の要望に応えられる計画として再検討を求めるものです。私からは大きく三点について述べます。

 第一は、住環境悪化への懸念です。この間、周辺住民のみなさんからは、「交通混雑による住環境悪化」を心配する声が多数寄せられています。

 事業者作成の資料によれば、戸建て住宅や分譲マンションなどに新たに設置される駐車場台数は約300台、駐輪場台数は約800台にのぼります。ところが、当該地への車両出入口は、南側道路からの1ヵ所しかありません。市長総括質疑をはじめ、これまでも指摘してきたように、道路の南側にはスーパーの駐車場があり、今でも車両の交通量が大変多いところです。また、伏見稲荷大社周辺ということもあり、師団街道でも渋滞が起こりますが、その師団街道へ抜ける部分は道幅が大変狭く車の離合も難しくなっています。今回の計画では、道路の拡幅も行われません。このような中で、地域に大量の車両が増えることになれば、「脱炭素」どころか大量の排気ガス、渋滞や交通安全上の問題によって、住環境が悪化することは火を見るより明らかではありませんか。

 市長総括質疑では副市長から、「市長もこの間、市内各所を回っており、現地は当然見ている」との答弁がありました。市長も実際に現場を確認しながら、こうした問題を放置するのでしょうか。このまま計画を押し進めるなら、この地域に生活安全上の重大な問題を引き起こすことになりかねません。

 第二に、今回の跡地活用計画は、街の構造としても完全に失敗している点です。

 敷地全体約4万㎡に対し、現在示されている開発公園の面積はわずか1545㎡。これは法令上ギリギリの広さでしかありません。「子育て世代を呼び込む」としながら、十分な公園もつくらず、新たに学童保育や児童館もつくらず、地元から聞こえてくるのは「子どもたちを一体どこで遊ばせるんだ」という声です。また、「地域貢献施設」として示されている5階建ての建物は、2階~5階、その大部分が「学生や社会人の寮」とされており、地域住民が使えるスペースはごく一部で、「これのどこが地域貢献なのか」との声が寄せられています。本気で子育て世代のニーズに応えるなら、今回のような大規模開発でなく、京都市の責任でこの地域に十分な広さをもった公園や公共施設をつくることこそ必要であることを指摘しておきます。

 第三は、跡地活用の進め方の問題です。

 そもそもなぜ、これだけ住民のみなさんから心配の声が寄せられる計画となっているのでしょうか。その根本には、地元住民や市民の声をきちんと聞かないまま、この計画が進められてきた問題があります。私は2017年3月の予算特別委員会での質疑をはじめ、この京都市会の場において、くり返し伏見工業高校の跡地活用問題を取り上げ、地元住民や市民のみなさんの声を反映させるべきと求めてきました。近隣住民のみなさんからも、2021年8月、2023年12月に、京都市会へ陳情が提出されています。その中身は「子どもから高齢者まで気軽に集える公園や公共施設を」「跡地活用について市民・住民の意見を聴く場を設けること」などを求めるものです。これまでも地元のみなさんからこうした要望が出されてきました。

 ところが京都市は、これまで一度も市民意見募集(パブリックコメント)や、周辺住民への幅広い意見聴取をおこなってきませんでした。また、京都市が、国の脱炭素先行地域の取組に応募した際、市会で質疑すると、「企業の皆様の事業内容にも関連するので、公開すると混乱を招く恐れがある」などという理由で、情報公開や資料提出も拒み続けました。市民・住民の声を聞かない一方、事業者とはやり取りをしながら計画を進めてきたのです。

 2月20日に開かれた地元説明会には、京都市は出席せず、事業者の出席だけで、計画概要が説明されました。当日参加された住民からは「市有地の売却が前提なのに京都市が説明会に出席していないのはひどい」「案の定、事業者がその場で答えられず、『京都市に確認する』と回答する場面があった」「そもそも議会で売却を決める前になぜ事業者だけで説明会を開くのか」など、怒りの声が寄せられています。

 京都市においては、過去に「山ノ内浄水場跡地活用方針(案)」について、市民意見募集が行われました(2010年)。また、京都刑務所、京都拘置所、京都運輸支局などの国有地については、現に使われている施設であるにもかかわらず、その活用やまちづくりに関わって市民意見募集が行われました(2018年、2019年)。今回問題となっている伏見工業高校跡地、そして、隣接する上下水道局の土地は、合わせて約4万㎡という広大な敷地です。本来なら、伏見工業高校の跡地活用こそ、民間企業に丸投げせず、市民意見募集を行い、近隣住民はもとより、幅広い市民のみなさんの声を聞くべきではないでしょうか。

 そして、松井市長が「参加型」「対話型」の市政を強調されるなら、今こそ周辺住民のみなさんと、直接対話し、その声に基づいて計画を再検討すべきです。市有地は市民の財産であり、その活用のあり方は市民の声に委ねられるべきです。

 最後に、地元砂川学区のみなさんからうかがってきた声の一部を紹介します。

 「広い敷地は広いまま残して運動公園に。子どもたちの安全な遊び場や大人たちのウォーキングができるように」「無料で誰でも気軽に利用できる緑地公園にすべきだ」「災害時にも活用できるような広い運動公園を」「ラグビーの聖地としてグラウンド整備を」「囲碁将棋、卓球台などのある施設を」「砂川学区の北部には児童館や集会のできる公共施設が皆無。図書館もない。住民のためになる施設や役所の出張所機能がほしい」「区民体育大会、自転車安全教室、子ども祭り、カルチャーセンター、各種ボランティア活動、区民文化祭等ができる場にしてほしい」「住民が使えるテニスコート、ドッグラン、アスレチックがある公園、筋トレ、ボルダリングができる施設に」「地域住民が会議、催し物、展示会、サークル活動、健康教室、講演会など、低料金で気軽に利用できる公民館のような施設に」などなどです。

 地域にはこれだけの声や思いがあるのです。京都市がこの声に応えるならば、どれだけ地域が活性化し、子育てもしやすくなり、誰もが安心して住み続けられる街になるでしょうか。本請願を不採択とすることは、まさにこれら地域のみなさんの願いに背を向けるということにほかなりません。以上の理由から、同僚議員のみなさんに、本請願の「採択」を心から呼びかけ、私の討論とします。