幻の愛宕山鉄道(えもと)
2025.01.30
えもとかよこ議員(右京区)
京都では3歳までに愛宕山にある愛宕神社にお参りすると、火の災いに遭わないという言い伝えがあり、例年多くの人がお詣りのために登ります。戦前、ここに鉄道とケーブルカーが走っていたのをご存知でしょうか。
愛宕山鉄道は主に京阪や嵐電が出資し、1929年4月、今の嵐電嵐山駅の一番北側のホームが「嵐山駅」、そこから「嵯峨西駅」「釈迦堂」「鳥居本」、終点が「清滝駅」という平坦線が開業しました。続いて愛宕山の山頂まで登るケーブルカーが1929年7月に開業しました。山上の駅「愛宕」にはレストランや飛行塔、ホテルや野外劇場、冬季にはなんとスキー場もあったそうです。ケーブルカーを利用するとあの急な坂道を登らなくてもよいので、大人気でした。
しかし戦時体制が進むと不要な路線ということで1944年2月にはまずケーブルカーが、12月には平坦線が休止。清滝トンネルは、三菱重工の軍需工場として利用され、レールはめくられ供出されました。こうしてわずか16年で愛宕山鉄道は廃止、戦争は庶民の娯楽をいとも簡単に奪いました。
今、鳥居本の「京都市嵯峨鳥居本町並み保存館」に昭和初期の奥嵯峨のジオラマが展示されています。その中に桜並木の中を走る愛宕山鉄道も。ぜひ一度足を運んでみてください。鳥居本から清滝、愛宕山には、愛宕山鉄道の遺構が所々に残っています。