2021年度公営企業特別会計決算についての反対討論,赤阪仁議員
2022.11.02
日本共産党京都市会議員団は、報第13号令和3年度水道事業特別会計決算、報第14号公共下水道事業特別会計決算、報第15号自動車運送事業特別会計決算、報第16号高速鉄道事業特別会計決算について認定しないと態度表明しておりますので、その理由を述べて討論します。
令和3年度は、コロナ禍の下で、政府による蔓延防止策等の政策が断続的に実施される中、富と貧困の経済格差が拡大する脆弱な経済構造によって、市民の生活が困難に陥れられ公営企業決算にも大きなマイナスの影響が出た年度となりました。このような中で、公共料金の引き上げは断じて認められないことを肝に銘じて取り組むべき時です。
門川市長は、市民の福祉向上めざす自治体としての役割を放棄し、社会保障切り捨てを市民に受任させる「行財政改革」を強行する、まるで、我慢を余儀なくさせるようなマスコミを利用した市民への脅しで、自治体としての社会保障機能を自らおとしめ、市民住民生活悪化の原因を作り出しています。そして、その一翼を公営企業が担うような立場をとっていることは問題です。まずは、門川市長の市民生活破壊の「行財政改革」の撤回と「福祉向上の行政と公営企業の実現」を求めるものであります。
水道事業・公共下水道事業について述べます。市民生活にとって不可欠な安全で、低廉な命の水を供給し、衛生管理された下水道の確保が両事業の使命です。
京都市は上下水道事業決算は黒字で、設備更新などは着実に実施しているにもかかわらず、京都府の府営水道ビジョン計画・水洗化総合計画において、府南部上下水道広域化計画に与し、広域化を是認していることは重大です。上下水の民営化とコンセッション方式に切り替える国の誘導策にのる民間委託事業の拡大も問題です。また「雨水は公費で」という原則に反して京都市は財政難を理由に、5年間の一般会計からの雨水出資金の休止を強行しました。今年度の出資金休止で、下水道基金では足りず、建設改良積立金で手当てするという不正常な会計となっています。さらに利用料値上げにつながりかねない今後5年間の次期中期経営プランを、今年から作成しようとしているのは問題です。
自動車運送事業、高速鉄道事業について述べます。京都市民の足を守る、経済生活の基盤である低廉で安全な公共交通を確保する公営企業の役割はますます重要になっているにもかかわらず、「市民の福祉向上」という大目的を忘れる市民負担を織り込んだ事業計画が始まっています。
交通局は市バス、地下鉄経営ビジョン改訂版で、運賃値上げを前提とした事業計画を推進されているのは問題です。経営の効率化を理由に、路線の系統とダイヤの改善といいながら、例えば、北3系統路線バスダイヤの一部・20便も民間移管したために、市バスで利用できる敬老乗車証の利用ができなくなるなど、住民にとって不便になり改善が求められています。運賃値上げは最後の手段と、値上げありきではなく、値上げ回避で腹をくくって市民の利便性向上に徹するべきです。
2年連続した175億円の赤字決算の原因は交通局の責任でも、市民生活の責任でもありません。収支悪化の原因はコロナ禍の下での政府の人流抑制策によるものです。国によって、特別減収企業債の発行が認められ、当座の危機は回避したとはいえ、この返済やコロナ禍による減収については、国や一般会計からの徹底した支援が必要で、運賃値上げは回避すべきです。そのために公営企業の経営を、民間事業者と同じ経営基盤で考え、「独立採算制を堅持する」ことにしがみついていては、赤字経営の解決の道を見出すことはできません。
市バス・地下鉄や上下水道などの基盤整備が大型公共事業であるがゆえに、過去の事業経営参入の理由に、民間企業では連続した資金調達が困難であるから、京都市が国の公的資金を調達し、長いスパンで借入資金の返済ができるシステムを利用することによって、市民の福祉向上の施策を実施する、と市民に説明してきました。「今だけよければよい」という考えではなく、未来の市民生活に不可欠なインフラ整備をするのが公営企業の目的です。それを、独立採算制をとるなどとして、今だけの範囲で会計決算を考えると、結局は利用者負担増に頼るしかない、公営企業の本質を見失うことになります。公共交通に責任を持つ国の責任ある損失補てんを徹底して求めるべきです。そして、むしろ気候危機打開のためにも、公共交通の充実が求められているという人類史の大局に立って、市バス・地下鉄の充実に活路を見出すべきです。
民間企業と同じように、「生産性の向上、経営の効率化」を理由に公営企業の業務の委託化という名の上下分離・管理方式が導入され、市バスでも4割が民間事業者に自動車運行・管理が任され、地下鉄・高速鉄道は、業務の委託化が進み、経営の合理化という名の人件費抑制とリストラが進められているのは問題です。労働者の労働条件の改善と生活安定は、公共交通の安全第一という目標に通じる大切な条件整備です。市バス運転手の5年間の試用期間制度が廃止されましたが、新規採用でも、賃金表5表で変わらず低い賃金水準とされているのは問題です。管理の受委託を受けていた民間バス事業者は、現行の委託料では、運転手確保が困難になり、管理の受委託を拒否する事態になっており、直営のバス路線に戻すべきです。
市民の足を守る、命の水を供給する仕事に誇りを持てる、公営企業労働者を育成し、交通局、上下水道局の事業が福祉の増進に寄与できるよう、京都市が自治体本来の責務を果たすことを求め、私の反対討論とします。
ご清聴ありがとうございました。