日本共産党 京都市会議員団

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議会質問・討論

北陸新幹線京都地下延伸計画の中止を,意見書について討論,加藤議員

2023.12.12

 日本共産党市会議員団は北陸新幹線京都地下延伸計画の中止を求める意見書を提案していますので、賛成討論を行います。

 本市は国家予算要望で「北陸新幹線の敦賀以西ルートの整備は・・重要な国家プロジェクト」であるとし、「円滑な整備の推進が必要」としています。市と府での共同での要望とされていますから、すなわち、京都市は府市協調で、北陸新幹線京都延伸の現行計画を推進しています。

 私たち京都市会に問われているのは、市長のそのような姿勢に対しての判断であります。

 先の統一地方選挙では、この問題について、新聞社による京都市会議員候補者アンケートが行われました。その結果、議員67人のうち現行計画が適切とされた方はわずか14人であり、2割に過ぎません。京都市長・首長と同一の立場ではないとの意思表示がされており、それを示すことが住民への責任ではありませんか。

 現行計画は到底容認できるものではありません。

 問題点の第一は莫大な費用負担と採算性の問題です。

 総事業費はコロナ禍前に2兆1000億円とされていました。しかし現在は4兆円とも言われています。京都府・京都市の負担は全延長の約45%ですから、2兆円の時点で2200億円。京都市負担は約1000億円にも及ぶと思われます。総事業費が倍になれば、それもさらに大きく膨らむことになります。費用対便益は2016年11月に国土交通省が示したもので1.1でした。不採算ラインの1をぎりぎりクリアしましたが、すでに7年以上前の試算であって、費用に対して便益が上回るのか、極めて不透明です。これこそ将来世代にツケを押し付けることになるではありませんか。

 第二の問題は、そもそも、事業目的が達成できるのか不確かであるということです。

 本事業の目的は、経済の発展と合わせて「東海・東南海・南海地震により影響を受けることが想定されている東海道新幹線への代替機能を担う」こととされています。しかし、南海トラフ地震が発生すれば、接続先の新大阪駅付近が津波の被害に襲われるということが、大阪府の地震被害想定において明らかにされています。津波が遡ってくるような状況で、代替路線の役割を果たせるのでしょうか。また、新幹線は線路が必ず必要ですから脱線の危険と常に隣りあわせです。地上においても中越地震の際には上越新幹線で脱線事故が発生しました。本事業の大深度工事で40mより奥深く地下にある線路において脱線が起きた場合、どうやって乗客を避難させるのでしょうか。花折断層が震源の地震では地盤断面が2.4mずれると想定されているなかでどうして安全を確保することができるのでしょうか。大地震の際の代替路線どころか、地震の際の避難対策すら見通せないではありませんか。

 問題点の第三は、環境破壊です。

 現行計画の8割はトンネル区間であり、少なく見積もっても880万立米の残土が発生しますがその処分方法は未定です。地下へ巨大なトンネルを掘り進めることは京都の文化と暮らし、産業の土台である地下水に大きな影響を及ぼすことになります。気候危機に立ち向かうことが真に求められている今、自然に手を加え、大きな環境負荷をかけることがまっとうな政策判断であるとは思えません。

 国は今年度、環境アセスが進まないからと12億3500万円もの国費を投じて先行的事業執行を進めており、驚くべきことに、環境影響評価法に基づく環境アセスの本調査も終えないまま、そして「準備書」を示すこともないまま、また、全国新幹線鉄道整備法にもとづく工事実施計画の都道府県知事意見聴取も国土交通大臣による認可もないまま、市内各地で認可後のボーリング調査など詳細調査をはじめました。市当局は、認可前の調査はかつて例がなく、法律に定めのない調査だと認めたにもかかわらず、脱法的行為をそのまま認めています。東京資本の仕事のためのアリバイ作りのような予算執行を認める姿勢は重大であり、これこそ、国言いなりの大型公共事業の矛盾の典型ではありませんか。

 先般、北陸新幹線建設促進大会が関西広域連合、関西経済連合会、京都府、大阪府の主催の元、沿線の知事や国会議員などの参加で開かれました。報道によると「万博のレガシーを日本全国につなげていくためにも・・早期全線開業が必要不可欠」と早期開業を求める声が相次いだとのことでありました。万博・カジノ・北陸新幹線延伸と大型公共事業を推進し、市民サービスは削減で暮らしを押しつぶす、これこそ、国民の身を削る古い政治であります。転換こそ必要であることを述べて討論とします。