2022年度一般会計決算等に反対討論,平井議員
2023.10.30
日本共産党京都市会議員団は、報2号2022年度一般会計歳入歳出決算、報4号2022年度国民健康保険事業特別会計決算、報第5号介護保険事業特別会計決算、報第14号2022年度水道事業特別会計決算、報15号公共下水道事業特別会計決算、報16号2022年度京都市自動車運送事業特別会計決算については認定しない、報17号2022年度京都市高速鉄道事業特別会計決算について認定するとの態度を表明していますので、私はその理由を述べ、会派を代表して討論します。
まず、報2号について認定しない第一の理由は、「行財政改革計画」を断行し、2021年度決算で実質102億円の黒字に続き、22年度も77億円と2年連続の黒字の財政状況のもとでも敬老乗車証や民間保育園人件費補助金など、京都市が生み出してきたかけがえのない福祉制度を丸ごと壊す改悪をしてきたことです。
決算の収入見通しについて、市長は「国の見込みでリーマンショック並みの減収を危惧したが、増収となった」「コロナによる大幅な減収がなくても、行財政改革はやらなければならなかった」と答弁されました。これまで市長は「500億円の財源不足がある」「財政破綻しかねない」と述べられましたが、明らかに事実と違うのですから、「行財政改革計画」そのものを撤回するのが当たり前の措置です。
「行財政改革計画」で削った53億円を元に戻し、「公共の福祉の増進」という自治体本来の役割を果たし、市民生活を守る立場に立ちきるべきです。
その一つである敬老乗車証は、昨年の負担金値上げにより申請する方が2万5000人減り、負担額は当初の3倍から4.5倍となり、敬老乗車証をあきらめざるを得ない状況をつくっています。高齢者の福祉制度を単なる「フリーパス」に置きかえ、日常の足をないがしろにする改悪は許せません。
また、民間保育園人件費補助金についても、4割の保育園が赤字に陥り、給与カットで保育現場がまわらず、希望を持てず保育士が退職する事態を生み出しています。元々、公立保育所が少ないもと「ポストの数ほど保育所を」と声をあげ、保育園を整備してきました。そして、いわゆる「プール制」で公私間格差の是正と専門性を引き継げる京都ならではの保育環境をつくり出してきました。その制度の根幹を壊すものであり、4億円の補正予算で穴埋めできるものではありません。行財政改革で削った13億円の補助金は元に戻すべきです。
第二に、投資的経費の精査と応能負担の原則に立った税収増加策が不十分な点です。三施設合築による建設で59億円、学校統合による洛西・西陵の新校舎建設で68億円、伏見・小栗栖では67億円の総事業費が使われていますが、既存施設の耐震化や大規模修繕で対応すれば、1/3程度の費用でできることもわが党は指摘してきました。加えて、北陸新幹線の延伸や1号バイパス、9号バイパス、堀川地下バイパスなど大型公共事業についても必要性の精査すらされていません。「将来世代への負担の先送り」と言って、教育や福祉予算を削るけれども、不要不急の大型公共事業は聖域にするという姿勢こそ、将来世代への負担となっています。徹底的に事業費を精査し、教育や福祉を支える費用に転換し、市民の願いにこたえるべきです。
京都経済の底上げには再生産を支える地域産業への地道な支援が必要で、むしろケアワーカーへの手厚い支援こそ経済効果を発揮します。また、法人市民税の大企業への法定上限までの引き上げを行えば、決算年度で換算すると、6億2000万円の税収を得られました。府内では、本市以外は税率8.2ではなく、すでに8.4%に引き上げています。内部留保金を10年間で2倍にしている大企業に応能負担の原則にたった負担を求めるべきです。
第三の理由は、成長戦略の名のもとに都市計画の緩和を広域で行い、まち壊しと大規模開発を急速に進める方向に舵を切っていることです。京都市は、各地の都市計画の見直しが住民の方々にどのような影響を及ぼすのか、説明なしに住民意見も反映させず、開発業者の儲けを最優先にしていることは問題です。住民の住環境を壊すことはやめるべきです。
人口流出の原因の一つは明らかに開発による地価の高騰です。住民にとって住みにくいことが問題で、人口流出を食い止めるためには、家賃補助制度の創設・検討、手厚い子育て支援策の検討こそ求められます。
都市計画の見直しにおけるパブリックコメントについて、国の説明も含めて賛否を問うものとはなっていないのに、副市長は7割以上が賛成とし、見直しの正当化を図っていること自体が、少数意見を淘汰していること、市民意見を聞いていないことと符合するものです。実際、パブリックコメントに寄せられた意見は、ほとんど反映されていないことも厳しく指摘しておきます。
第四の理由は、公有地の有効活用、民間委託化・事業への民間参入の極大化、PFI手法など行政の役割、自治体としての仕事を放棄していることです。「行財政改革計画」で定めた100億円を達成したにも関わらず、学校統廃合後の跡地、芸大跡地、市営住宅の余剰地や跡地など空いた土地は、長期貸出と売却で民間に差し出そうとしています。京都市は市民の声を聞いて、公的役割を高めるべきです。
第五の理由は、これまでの市長による大幅な職員削減が広範囲な委託化とそのもとで、ワーキングプアを生み出し続けているからです。市が委託を行った京都市証明郵送サービスセンターでは、職員全体で38名中、その内の約95%にあたる36人の職員がパートとなっており、非正規職員がほとんどです。このことが労働条件の悪化や賃金水準の低さ、官製ワーキングプアをつくり出しています。消防局では29人の職員削減を打ち出し、3交代制を2交代制にし、労働強化につながっています。すでに市長のもとで4100人の職員削減がされ、事業の安定性が失われています。
続いて報4号について理由を述べます。物価高騰の折、国民健康保険料の高止まりとなっており、皆保険制度のもとでも、医療控えが起こっています。2022年度あらゆる階層で国民健康保険料の値上げがされました。ところが、決算では28億円の黒字であります。担当者は答弁で「決して楽観できるような状況ではない」としていますが、楽観できない市民の生活に目をむけるべきです。国民健康保険料値下げは急務です。ただちに引き下げるよう求めておきます。
また、子どもの均等割について、市独自に全額免除するためには3億2000万円の財源でできます。他都市でも様々努力されていますが、京都市はこれを拒否しました。子育て世代の負担軽減を改めて求めておきます。
報5号についても、京都市では現行、介護保険基準額が2000年当時、2958円だったものが月6800円となり、重い負担となっています。
政府は来年度の制度見直しで利用料の値上げも狙っています。国に対して、利用料負担の2割化をやめるよう、求めることとともに京都市としても保険料軽減を行うべきです。
次に、報14号、報15号について、認定しない理由を述べます。上下水道局中期経営プランの中で、民間委託化を続け、経営の根幹を掘り崩していることや料金・使用料値上げの検討を示唆していることです。上下水道局は、コロナ禍から続く水需要の減少とそれに伴う料金収入・使用料収入の減少や老朽管路の改善や雨水幹線整備などで増大する費用で厳しい経営状況を強いられているとしていますが、依然として経常黒字は確保しています。国の補助を今以上に求めることや施設の長寿命化、平準化を行う計画を立て、道筋を示すべきです。現在の上下水道局の運営を見ると、次々と国の意向を受け入れ、民間委託化と府の広域化に前のめりになっており、答弁では「事業の根幹は守る」とされていますが、事業の根幹だけでは、技術の継承・管理という点からも経営基盤を弱体化させます。改めて事業の民間委託化はストップすること、府の広域化からは脱退すること、市民への料金・使用料値上げの検討はやめることを求めます。
現金収支に影響を及ぼしている出資金の休止は、ただちに元に戻すことも加えて求めておきます。
次に報16号について、認定しない最大の理由は、市バスにおける運賃値上げ方針を、最後の手段と言いながら掲げ続けていることです。経営ビジョン改訂版が出されて以降、これまで曲がりなりにも住民の足を守る攻めの経営をしていた交通局から変質し、バス一日券の廃止など各種企画乗車券の縮小廃止、なりふり構わぬ経営スタイルのもとで、極限まで絞っている経費の節減をし、観光客が増えても急行系統の廃止などは元に戻さず、時勢からも立ち遅れた経営となっています。なりふり構わぬ経営で市民を振り落とすような経営は経営とは言えません。求められている地域でのバスの増便やバス停におけるベンチ・上屋の設置、使われていた各種企画券の復活など市民の利便性向上に徹することで増収を続け、経営を安定化させるべきです。
コロナ禍の経営状況については、国が乗客を抑制し、運賃収入が減収したことはいまだに大きな影響を及ぼしています。国に対して、地下鉄にとどまらず、バスでも運営補助を勝ち取れるよう、粘り強く働きかけを行うべきです。また、京都市自身が政策的判断を行い、生活支援補助など、過去に行った市バス・地下鉄への独自支援を行うべきです。
あらためて、市バス運賃の値上げをストップし、市民の足を守るべきと求めておきます。
報17号については、運賃改定を回避したことを重くみて認定するものです。コロナ禍で落ち込んだ地下鉄経営を打開するために、2020年10月27日に「新型コロナウイルス感染症の影響下における公営企業の損失補填を求める意見書」を全会派一致して求め、その後も機会あるたびに国に対する要望を行ってきました。京都市自身も市長を先頭にこの窮状を打開するための努力をおこなってきた結果、特別減収対策企業債の延長や特例債の対象範囲の拡大、緩和債の発行可能額の拡大など直接的な損失補填ではないものの、値上げを回避する道筋がつくられました。今後の経営についても、不透明であるため、引き続き国に対して、コロナ禍の影響、物価高に対応した要望を国に求めていただきたい。
決算年度は、烏丸線北大路駅に可動式ホーム柵が設置されました。残る全駅設置も他都市の状況をつぶさに研究し、計画的にホーム策設置を行うことを求めます。また、経費節減の名のもとに駅職員の削減がされました。改めて、元に戻すよう求めておきます。