赤阪仁議員(伏見区)代表質問,人口流出,公共交通,市営住宅
〈代表質問の大要を紹介します〉
伏見区選出の赤阪仁です。日本共産党京都市会議員団を代表して、玉本なるみ議員に続いて、市長に質問をします。
1.「都市の成長戦略」と称して、大企業優遇、京都壊しはやめよ
門川市長は、「財政危機」を理由に「行財政改革計画」で、市民の暮らしを切り捨てています。大企業には優遇、中小企業・地場産業は切り捨ての弱い者いじめの門川市政16年間でした。
まず、市長が進めている「都市の成長戦略」についてです。門川市長は国の方針いいなりに京都への大企業誘致促進と、大手不動産業者の都市再開発を推進しています。景観を守る立場を投げ捨て、「らくなん進都」では建物規制の緩和で高さ無制限、建物の容積率は最大1250%まで拡大。山科区でも高くて大きなビルを駅や外環状線沿線に認めるなど、許せません。「都市の成長戦略」として、大手企業、不動産会社の儲けのため、都市開発の用地確保に、市民の財産である市有地を安く提供し、京都市は400億円の税収増を目標にするとしています。2007年、京都の景観破壊を止めるために、市民とともに、全会派一致で作った「新景観政策」を骨抜きにし、無謀な「景観破壊」を進めているのは重大です。人口流出3年連続1位という事態を作り出したのは、ホテルやマンション誘致による土地価格の高騰と子育て支援策の遅れが原因です。京都のまち壊しをすすめる高さや容積率の規制緩和はやめるべきです。京都市の市有地は市民の貴重な財産であり、大資本の金儲けに提供するのはやめるべきです。市民の声を聞いて、緑地不足を解消する公園用地や身近に住民が利用できる集会所など公共施設としての利用を求めます。いかがですか。
【答弁→市長】 「都市の成長戦略」は、地域企業、中小企業の下支えをはじめとする基幹的政策を推進しながら新たな価値を創造することで、ひいては担税力を強化し持続可能な財政基盤の確立につなげようとするもの。都市計画の見直しは、景観の守るべき骨格を堅持しながら、住む場所、働く場所の確保に向け、エリアの特色を活かして戦略的に進め、市有地においても、地域の皆様の声を聞きながら、人口の増加、雇用創出、地域の活性化等、市全体に効果を波及するよう活用をすすめている。
2.インボイス廃止、中小事業者への具体的支援策を
次に中小事業者への支援について質問します。
京都の事業所の99%を占める中小業者が物価・原材料の高騰に加え、過剰債務によって廃業・倒産の危機に見舞われています。京都信用保証協会の上半期事業概要によると、「コロナ禍が収まったものの、原材料費やエネルギー価格の高騰で経営難に陥る企業が増加。承諾先の債務を肩代わりして金融機関に支払う代位弁済の業種別では、製造業が約25億円で最も多く、小売業が20億円、卸売業が14億円、建設業が13億円と続き、前年同期比で代位弁済件数も2.3倍の539件と大幅増加している」とされています。今年に入り、新型コロナ対策で行った実質無利子、無担保の「ゼロゼロ融資」の元本返済が本格化しているためで、「年末に向けてさらに倒産が増えるだろう」と深刻です。
京都府と京都市の「伴走支援型経営改善応援資金」の利用だけでは不十分です。返済負担の軽減を図る必要があります。中小企業、伝統産業従事者の暮らしと経営を守るため信用保証協会と連携し、ゼロゼロ融資を「別枠債務」として、事業継続に必要な新規融資や、給付措置が受けられるようにするべきです。
さらに、10月から強行された免税事業者から新たな消費税を徴収する、インボイス制度は現場に深刻な混乱をもたらしています。「インボイス制度登録をしたが、年間40万円近くの増税になる」「インボイスを登録していない業者は、代金2%カットで合意したケースもある」「取引先、仕事仲間同士で、負担を押し付けあう制度であり、仕事のやりがいももてなくなる」などの声は深刻です。直ちにインボイス制度の廃止と消費税の5%への減税を、国に求めるべきです、いかがですか。
【答弁→岡田副市長】 ゼロゼロ融資の返済が本格化する以前から経営相談体制を強化し、返済や借換だけでなく、新規融資や事業再構築等の支援に関する相談、物価高騰対策支援金等、経営改善や物価高騰への支援も実施してきた。
金融機関等には、府と市が協調して、事業性評価に基づく資金供給など、事業者の実情に応じた柔軟な対応を繰り返し要請している。
消費税は、国・地方を通じた社会保障に要する財源を安定的に確保するためもの。インボイス制度も、消費税の軽減税率の実施に当たり、適正な課税を確保するためのものであり、減税や廃止を国に要望することは考えていない。
3.農地の産業用地への転用をやめ、農業の保護、育成を
次に京都市農業方針について質問します。
京都市において、食料自給率を高める農業政策の具体化と、学校や公的施設での地元農産物の消費・活用を促進すること、物価高騰対策で農家経営への支援が必要です。外国産の苗や種、肥料等の高い原材料の購入、農業機械の更新費用への支援など、農家の所得補償と農産物の価格保障を京都市でも実施するべきです。ところが、京都市は、成長戦略として、企業立地促進を掲げ、産業用地の確保目標を45haに設定し、そのうち43haを、向島の優良農地を「重点地区」に指定し、大企業の「物流センター用地として利用する」としています。都市計画審議会でも、農協役員の方が「伝統野菜の淀大根の産地でもあり、コメ作りの農地を『物流センター』に誘導することに懸念」を表明されています。農地の産業用地への転用をやめることを求めます。
また、南区、伏見区にまたがる「らくなん進都」は産業集積工業団地として計画され、用途地域の変更と建築規制の大幅な緩和をすすめ、住環境を一変させようとしています。実施されれば、これまで暮らしていた住民にとっては、近辺に長大な工場・建物等の壁が現れると懸念されます。加えて建築基準法の日影規制をなくすし、住環境はもとより農地に対しても重大な影響を及ぼすなど、事業者の利益優先の規制緩和となっています。「うちの田畑は夕方3時には高層の建物の日陰になる。農家の経営が大変な時に、更なる高層階の建物が建つと、景観はもちろん日照時間不足やビル風などが発生、損失補填をしてほしいぐらい」との農家の悲鳴の声があります。そもそも都市計画法は健康で文化的な人間らしい生活を営むことを保障する法律です。法令遵守すべき京都市長が特例で市民の生活環境の悪化と環境破壊を招く規制緩和をすすめるのは中止すべきです。農地を守る農家を育成し、農業振興をはかるのが京都市の本来の仕事ではありませんか。農業切り捨ての都市計画の撤回を求めます。特に水田稲作事業が伏見区南部・向島地域の中心的な農業経営を担っています。米や野菜を作っても、厳しい経営状況にある農家への直接経営支援を求めます。いかがですか。
【答弁→岡田副市長】 不足する産業用地を創出するため、向島地域の農業振興地域以外の農地を地域未来投資促進法における重点促進区域に指定し、周辺農地の営農環境の保全を前提に農地転用を可能とする一方で、希望される方には農業を続けていただけるなど、土地利用の幅を広げている。らくなん進都では、産業の集積に加え、農地や緑地、オフィス・ラボ、工場、住宅など、多様な土地利用の調和も図っている。
農家への支援については、経営環境整備への補助や栽培技術の情報提供等に加え、本年9月補正予算においても機器・設備導入の補助を行っている。営農環境の保全を前提に産業用地の創出に取り組むなど、「都市の成長戦略」を推進していく。
4.ムダな大型開発事業、北陸新幹線京都地下延伸計画は中止を
ムダな大型開発推進について質問します。
市長は「行財政改革計画」によって、市民に昨年度は53億円、今年度は60億円も負担を押し付けました。京都市財政の危機の原因は京都市の審議会でも、「平成初期の大規模投資に伴う公債費負担と、地下鉄東西線建設の借金返済」と指摘されました。ところが、市長は再び、「北陸新幹線京都地下延伸計画」を推進、京都盆地の地下40メートルの大深度トンネルを推進しています。土地の陥没があった東京でも、法律で事業者の責任が問われないというのですから大問題です。さらに、地下水は地元酒造産業にとって不可欠で、影響が出ないかと心配されています。また、トンネルの掘削から出る土砂の処理、有害物質のヒ素対策、環境破壊対策はどうするのか。完成後の並行在来線の統廃合で、日常生活の電車利用が不便になるのではないかなど、市民の不安は何一つ解決されていません。
建設費は、当初の2兆1千億円から、物価・資材高騰、人件費の高まりのため、その倍の4兆円ともいわれており、京都市の負担は数千億円にも上ると言われています。ところが市長は「市の負担を極小化してもらうよう要請する」との無責任な態度に終始しています。現在、建設事業者の鉄道運輸機構は、建設計画の遅れを取り戻すために、脱法的手段で事前のボーリング調査を進めていますが、住民説明会さえも拒否するなど住民無視でごり押ししようとしています。「未来につけを回さない」というなら京都市の地下を南北に走る北陸新幹線京都延伸計画の撤回を国に求めるべきです。いかがですか。
【答弁→総合企画局長】 北陸新幹線は、近畿圏と北陸圏を結ぶ、基幹的な高速輸送を実現するものであり、地域振興と経済活性化に加え、災害時等には東海道新幹線の代替路線としての役割も果たす大変重要な国家プロジェクトである。現在、鉄道・運輸機構が環境影響評価手続きを進めているところだが、当該手続きや国家予算要望などで、国等の機関に対し、自然環境、生活環境への影響の可能な限りの回避・低減することや、建設費の地方負担の極小化を訴えてきた。
5.敬老乗車証制度を元に戻せ
次に京都市のまちづくりにとって必要な公共交通について質問します。
まず、敬老乗車証制度は、高齢者の社会参加を保障するだけでなく、市民団体の独自調査でも507億円の経済効果があるといわれています。名古屋市ではその効果を調査し、高齢者福祉だけでなく、経済効果が大きいと明らかにしています。そして毎年最大145億円の財源を確保し、敬老パスが市営交通の経営安定にも寄与しています。
ところが市長は、「持続可能な敬老乗車証制度を作る」と言いつつ、これまで交付されてきた高齢者に2倍3倍と高い値段に引き上げ、交付対象の年収制限と年齢を引き上げることで敬老乗車証の利用を諦めさせています。昨年は25000人が敬老乗車証の申請をあきらめ、今年は3倍で最高4万5千円になるので、さらに高齢者の社会参加の機会を奪っているではありませんか。
新しい「敬老バス回数券」では敬老乗車証の代役は賄えません。2021年度までの敬老乗車証制度に戻すことを求めます。いかがですか。
また、敬老乗車証の交付を受けても、向島駅~竹田駅間の近鉄運賃分が上がり、同じ京都市民でありながら、敬老乗車証が使えない地域があるのは、問題です。地下鉄車両に乗るのに、伏見区民だけが個人負担が増えるのは、公平公正の市民サービスに反しており、納得できません。名古屋市では、「敬老パス」で3つの私鉄、2つの民間バスも市内運賃対象区間は乗車可能とし、後日、運賃相当額が支給されます。利用の公平性を保つために、このくらいしてもらいたいものです。市営地下鉄烏丸線始発駅を近鉄向島駅に変更し、敬老乗車証、福祉乗車証で伏見区住民が安心して乗れるように改善を求めます。いかがですか。
【答弁→保健福祉局長】 敬老乗車証制度の市税負担は、昭和43年、開始当初の3億円から52億円まで増加した。他の政令市7市が制度の廃止又は持たない中で、制度を維持していくため見直したもの。見直し後も全利用者の6割以上の方が、中高生の市バス・地下鉄定期券の1割未満、年額9千円の負担で、フリーパスを利用できる。また、この10月から敬老パス回数券の新設や、民営バス敬老乗車証の適用地域を拡大している。近鉄向島駅まで敬老乗車証や福祉乗車証の適用を拡大することは、他の民営鉄道の沿線住民との公平性の観点や、多額の市税負担の増大を招くことから困難である。
6.公共交通の充実を。市バス運賃の値上げはやめよ
次に市バス運賃値上げについて質問します。
コロナ禍の国の移動制限の中で、赤字になっても、市民の足を守るのが公共交通の役割、と市バス、地下鉄は走り続けました。交通局はこの赤字を理由に市バス運賃の値上げ方針を示していますが、市バス運賃値上げは市民の移動の自由を妨げ、ただでさえ物価高で苦しむ市民生活を直撃します。
また、今年10月、バス1日券を廃止したのは納得いきません。コロナ禍で観光客が消えた20・21年度でも毎年110万枚以上、6億円以上の収入があったくらい、市民にとって便利な、交通局の貴重な収入源でした。そもそもまちづくりにとって、公共交通の充実で市民生活の足を守ることが重要です。京都市も、市民の足を守るために一般会計からの繰入を行い、市バス運賃値上げを回避すべきです。いかがですか。市民はもちろん、観光客も含めて移動の自由を保障する、市バス一日乗車券の復活と市バス市内均一区間の拡大で周辺部での利便性の向上を求めます。さらに、京都市地域公共交通会議のように常設で地域の課題を解決する協議会を全行政区に設置し、住民の声を反映し、交通不便地域をなくし、市バスの利便性を高め、市バスの利用者を増やすことを求めますがいかがですか。
【答弁→坂越副市長】 市バス事業について、燃料費や人件費の高騰、深刻な担い手不足への対応など、大変厳しい経営状況が続いている。独立採算制の原則を遵守しつつ運賃改定は最後の手段との認識の下、あらゆる経営改善に取り組んでいく。バス1日券については、特に観光客の利用が多く、一部バス路線の混雑の要因となっていたため廃止し、地下鉄・バス1日券によって地下鉄へ誘導することで、市民・観光客双方が快適に御利用いただける市バスを目指すものである。
市バスの均一運賃区間の拡大は、先行バス事業者の経営に与える影響が大きく、値上げになる区間もあり困難な課題もある。市バス路線については、お客様の声や地域の実情をふまえ、沿線の皆様が主体となり、積極的に乗っていただく、モビリティ・マネジメントの取組などにより利用促進を図りつつ利便性の確保に努めていく。
7.市営住宅の減免制度を元に戻し、指定管理者制度導入は中止せよ
次に市営住宅について質問します。
住まいは人権です。市営住宅は市民の財産であり、低所得者にとって最低限の人間らしい生活の保障となるものであり、京都市が自治体としての人権保障の「衣食住」の大切な責任を果たす重要課題であります。
ところがパネルをご覧ください。「行財政改革計画」の中に、「市営住宅の家賃減免制度の見直し、5年間で約5億円を減らす」とあります。つまり低収入の世帯の支援をやめて住民負担を増やすものです。R3年4650世帯の対象世帯から1215世帯が家賃の減免対象から外されました。残った対象世帯も毎年20%も家賃値上げとなり、5年で、最高額まで引き上げられます。これは低所得者いじめの何物でもありません。家賃減免制度を元に戻すべきです。いかがですか。
今年、京都市は市営住宅の空き部屋を民間の不動産業者に年間47650円で貸し付け、民間業者が月58000円で貸すという事業を全国で初めて実施しました。民間不動産業者の新たな儲けと資本拡大に、市民の財産を提供するものです。
現在、市営住宅の空き部屋が増えて、住民の共益費の支払額が増え、さらに、自治会が住宅周辺の緑地の清掃などを行うとされており、1世帯の負担額が増えて困っています。市営住宅の家主は京都市であり、空き家分の共益費の負担を、現在の居住者の負担にすることは責任転嫁ではありませんか。周辺の緑地、公園管理は本来、市営住宅の管理者である京都市の責任範囲です。
低い浴槽へのお風呂の改善、シャワーの設置などで空き部屋整備を進め、居住者を増やすべきです。合わせて若者世代や学生さんなどの住みやすい入居条件に改善すべきではありませんか。
来年度、京都市は民間会社に市営住宅の運営・管理を任せる「指定管理者制度の導入」を予定しています。市営住宅の管理者が民間業者、と京都市住宅供給公社の二つになり、住民の生活、コミュニティの分断につながるものと懸念されています。京都市住宅供給公社の日常の住宅管理を、東京の業者に「委託」するといいます。これは、京都市の、住宅管理の公的責任を放棄するものです。すでに指定管理制度を導入している府営住宅の住民にお聞きすると、住民要望に対して誠実に対応せず、無責任な対応に終始するので不満が出ています。京都市の住宅管理の公的責任を放棄する、「指定管理者制度の導入」は中止を求めます。
【答弁→都市計画局長】 市営住宅家賃減免制度は、特に所得の低い世帯のための大切な制度で、世帯の困窮実態をより的確に反映する制度に改めたもので、見直しは考えていない。住戸改善は、バリアフリー改修やシャワーをはじめ、子育て仕様にリノベーションした住宅の供給を進めるとともに、空き住戸を活用し、学生の入居や民間事業者との連携による所得制限のない若者・子育て応援住宅(こと✕こと)の供給などを進めている。令和6年度からは、向島及び際目団地で指定管理者制度を導入する予定。選定委員会でも高い評価を得た事業者のノウハウを活かし、高齢者の見守りや防災・防犯などサービスの更なる向上を図っていく。