玉本なるみ議員(北区)代表質問,中学校給食,民間保育園補助金
<代表質問の大要を紹介します>
北区選出の玉本なるみです。日本共産党京都市会議員団を代表し、市長に対して質問します。
まず、国の経済対策について、一言申し上げます。11月29日補正予算が成立しましたが、一回限りの非課税世帯への7万円の給付金や来年度に所得税の減税の検討等、あまりにも不十分であります。労働者の実質賃金(年収)がピーク時の1996年から64万円も減っているもとで「焼け石に水」でしかありません。すべての国民や事業者への減税となる消費税の減税を今こそ決断すべきです。課題山積の大阪・関西万博は中止し、その財源を暮らしや社会保障にまわすべきです。
1.公共の福祉にコスト論を持ち込み、職員削減・民間委託を進める行財政改革の中止を
それでは質問に入ります。今議会をもって、門川市長への代表質問は最後になります。9月の議会や本日の一般質問でも市長の16年間を振り返り、多くの議員から評価や指摘が出されましたが、私はあらためて、市長が就任直後から、「乾いたタオルを絞るような行政改革が必要」「民間ができることは民間へ」と事業の廃止や民間移管、民間委託を次々と行い、4100人もの職員削減を行ってきたことに対して、その問題点を明らかにし、質疑します。
2021年度からの「行財政改革計画」については、「未来に責任を持つ改革」として進めて来ましたが、その結果、自治体職員が市民と直接対面し、声を聞くことや、市民の暮らしの実態を掴むことの機会を奪い、最近では、コンサルタント会社に、調査や「企画立案」さえも委託してしまうことが多くなっています。
市長は職員4100人を削減してきたことを、自らの成果と評価されていますが、それはまったくお門違いです。市立病院の独立法人化、環境政策局のゴミ収集やクリーンセンターの運転監視等業務の民間委託、公立保育園等の民営化、消防出張所の廃止、保健センターの感染部門の集約化、学校の統廃合などにより、市民サービスを後退させている影響をみなくてはなりません。
賃金や公務労働、社会保障のコストカットを進めてきた歴代自公政権の下、無批判に京都市としても追随してきました。民間委託や民営化をさらに進め、公的な役割を後退させてきたことは、公務の専門性も職員の働きがいも低下させ、ひいては市民へのサービスを弱体化させてきました。
とりわけ、市民にとって一番身近な行政の窓口である区役所からは1000人の職員が集約化や委託化でなくなり、税金の相談や介護の認定の相談等が、行政区の区役所に行ってもじっくりと相談に乗ってもらえないようになっていることは重大な問題です。
新型コロナウイルスのワクチン接種業務等においては、NTM(日本トータルテレマーケティング)株式会社による7億9000万円にのぼる不正請求が発覚しました。過大請求や隠蔽のための虚偽の資料を提出するなど、極めて悪質なものであり、NTMに対して厳重に抗議するものです。同時に、内部告発があっての発覚であり、京都市による委託事業への管理のあり方が問われる事案が発生していることは重く受け止めなくてはなりません。
「社会的課題の解決、これを税金で、公務員が、行政がやるという時代は終わっている」という市長の言葉通りに、公的な責任を放棄する市政でいいのかが大いに問われています。公共の福祉にコスト論を持ち込み、市民の大切な財産を壊してきたことは重大な問題です。公務職場での役割を重視し、減らしてきた正規の職員を増やし、公共の福祉を再生すべきです。いかがですか。
【答弁→市長】 今般の改革は全国トップレベルの本市の独自施策を持続可能なものへと再構築し、将来への負担の先送りを解消する、未来に責任を持つ改革。民間の知恵やノウハウを生かし、職員をより政策性、行政専門性の高い分野への重点シフト等を基本方針とし、積極的に民間活力を導入し、職員を削減してきた。こうした改革の中でも保健師を指定都市トップ、平均の1.5倍配置する等、市民の命と暮らしを守るための執行体制を確保。改革で捻出した財源で子ども医療費の拡充や全員制中学校給食実施に備え25億円積み立てる等、様々な施策の充実を図っている。改革をたゆまず実施し、都市の成長戦略を推進し、魅力あふれる京都の今と未来を切り拓いていく。
2.中学校給食における巨大給食センター方式の重大な問題
次に中学校給食のあり方について質問します。全員制の給食実施について、やっと決断し、そのあり方を検討してきましたが、26,000食の給食をたった1カ所の巨大給食センターを建設し実行するという驚くべき提案がされました。このセンター方式にはいくつもの重大なリスクがあります。
まず、1つ目には、一番重要な給食の衛生面などの安全についてのリスクです。学校給食は、調理後2時間までの喫食が努力義務化されています。しかも生徒が食べる30分前に校長先生が検食をすることも守らなくてはなりません。
南区から、一番遠い左京区洛北中学校に安全に時間内に運ぶには困難を伴います。そうなると、食中毒のリスクが高まるということです。集団感染への危険性に加えて、建設予定地となっているグランドは水害ハザードマップにおいて、想定浸水深3.5メートルの地域です。また、地震や停電等の災害が起こった時の被害は甚大である上に、すべての給食が数日間ストップされます。大きなリスクと言えます。
2つ目には、コンサル会社の調査があまりにもずさんであるということです。コンサル会社提案の親子方式の配送ルート案は、近隣小学校があるにも関わらず、わざわざ、遠くの小学校から運ぶ試算がされていれていました。しかも、実地調査も全中学校に足を運び調査はされておらず、11校のみで、後は図面で判断しているなど、課題を残す報告と言わざるを得ません。また、教育委員会がこれまで、自校調理・親子調理方式の場合の試算をし、敷地に余裕のないところは用地取得も検討していたのに、今回はそのような検討もしていません。
3つ目には、有識者、PTA等による検討会でも重視されていた食育への取組みが、センター方式では不十分になる問題です。中心となる栄養教諭の配置基準はセンター方式では、たった3名です。メニュー作成やセンターの調理管理の仕事以外に給食の時に中学校に来て、食育指導や喫食時の状況把握などは到底できないと思われます。検討会では「食育は作り手が 見えることが大事。給食と子どもたちをつなぐ意味でも、栄養教諭は大事。他都市では、独自に1 校1名配置しているところがあると聞いているので、そのようなことが実現できればよい」との意見も出されているのになぜ、結論がセンター方式なのでしょうか。
他にもWTO案件となるため、せっかくの公共事業であるにも関わらず、地元の関係業者などには、何もメリットがなく、結局開始時期はセンター方式が一番遅くになります。学校調理方式で、できるところが順次開始するべきです。
以上、このような重大なリスクが多数ある1ケ所巨大給食センター方式ではなく、学校調理方式にすべきです。お答えください。
ここで、一旦答弁を求めます。
【答弁→教育長】 全員制中学校給食の実施に向け、検討会議の開催や実施方式の可能性調査、生徒・保護者アンケート等、多角的検討を行い、基本方針を11月に決定した。実績豊かな調査会社の調査をもとに、自校調理方式は9割以上、親子調理方式は7割以上の中学校で実施困難と判断した。また高度な衛生管理や、施設内に食育用の見学通路等の工夫、京都の食文化を生かした献立やアレルギー対応が可能であり、他方式よりも事業コストが抑えられる等を勘案し、給食センター方式で実施することとした。なお、2時間以内の喫食が可能であることも確認している。万一食中毒が発生した際のリスク低減や地元企業が関われる契約手法も工夫し、スピード感もって取り組む。
【玉本議員】 センター給食方式による重大なリスクがたくさんあることに、まったく答えていません。身近な給食室で作る「温かく、美味しい」小学校の学校調理方式の給食を中学生にも提供する努力を惜しまず、再検討をすることを強く求めます。
3.国民健康保険料の引き下げと18歳までの均等割保険料の全額免除を
次に国民健康保険について質問します。
コロナ感染拡大と引き続く物価高騰で、市民の暮らしは大変厳しい状況にある中、22年度は11年ぶり保険料の値上げをしました。しかし、2022年度決算では28億円の黒字でありました。保険料は引き下げるべきです。
日本共産党は、国保にしかない均等割、平等割はなくすべきだと提案してきました。党議員団として、子どもの均等割免除を求めています。均等割は世帯人数が増えれば、一人当たり負担が34,900円ずつ積みあがっていくしくみです。多くの国民や自治体関係者の声や運動で現在は未就学児の均等割額を国・府・市の財源で半額補助となりました。その結果、子どもが3人とも未就学児なら均等割額は52,485円になります。しかし、子どもが就学すると、補助はなくなり、子ども3人の場合は、104,970円にもなります。国保には事業主負担がなく、公の支援が欠かせません。担当課に試算してもらったところ、18歳未満までの均等割保険料を全額(10割)軽減した場合は3億2千万円の追加負担で実現可能とのことです。国民健康保険料を引き下げるとともに、子どもの均等割負担をなくすべきと考えますが、全額補助あるいは、段階的な対策として、半額補助の対象者年齢を拡充するなど、具体的な対策に踏み出すべきです。いかがですか。
【答弁→保健福祉局長】 保険料はR4年度一般会計から64億円もの繰入に加え国保基金から18億円を活用し、値上げ幅を医療費の上昇率並に抑制。R5年度も基金22億円の活用で保険料率を据え置き、被保険者の負担軽減を図った。累積黒字28億円は今後の負担の急激な増加に備え計画的に活用したい。
子どもの均等割軽減は相互扶助の考えのもと、世帯の人数に応じた負担が原則であり、全額ではなく半額軽減とされた。自治体が独自に定めることは適当でなく、国において適切に判断されるべき。
4.介護現場での担い手確保と保険料の引き下げを
次に介護保険について質問します。
介護保険制度は発足から23年半ですが、保険料や利用料負担が上げられ、高齢者をはじめ、市民の暮らしを不安にさせています。利用料負担が重すぎて利用の手控えや介護施設に入所できないという事態も起こっています。さらに、介護ヘルパーをはじめ、介護労働者の賃金が低くすぎ担い手不足で、このままではサービスが提供できなくなります。
地域包括支援センターの職員の方にお話を伺いました。「今一番の問題は、ケアーマネージャーとヘルパーの確保が困難」とのことです。最近でも左京区や右京区で居宅介護支援事業所の廃業が続いているとのことです。ケアマネ探しに何件も事務所に電話をしなくてはならず、行政区の圏域を越えて探す場合も多々あるとのことです。また、ヘルパーさんも同様に、何件も電話をしないと見つからず、身体介護も家事援助のヘルパー確保も困難とのことです。2017年から京都市の事業として開始された総合事業も、報酬が少なく、人の確保が困難で、結局は市民も事業所も利用しにくいという状況です。
訪問介護の移動時間は、賃金が保障されていないところが多く、件数をこなさないと、ヘルパーの生活が成り立たないという長年の問題は解決されていません。さらに、夏の炎天下の訪問の厳しさから退職もあり、ヘルパー不足は深刻化しています。制度の根幹さえ揺るがす事態になっているということです。ケアマネやヘルパーの生活が成り立つ賃金を保障する介護報酬の引き上げなしには、制度の崩壊は免れないということです。政府は報酬改定と改定まで、介護職の賃金を6000円アップすると検討しているようですが、一桁違います。
9月議会では、「診療報酬・介護報酬・障害者福祉サービス等の報酬の物価高騰・賃金上昇への対応を求める意見書」があがりました。重く受け止め、公的な責任での担い手確保が求められます。次期9期の「京都市民長寿すこやかプラン」にも反映させるべきです。
負担の限界を超えている介護保険料と利用が必要となった時の利用料の負担が重すぎ、利用の手控えが起こっていること、制度に欠かせないヘルパーなどの担い手が不足して、必要なサービスが受けられないという状況となっていることについて、いかに認識されていますか。
そして、京都市の独自対策として、介護事業者の状況を把握して、ケア労働者の確保を早急に行うことです。そのためには必要な予算を思い切ってつけることが求められます。
市民の生活は物価高騰と年金の引き下げが続く中で、介護保険料の引き上げは絶対にすべきではありません。引き下げを求めます。いかがですか。
【答弁→保健福祉局長】 保険料は被保険者の所得に応じて設定。第1から第3段階の低所得者には別枠で公費を投入して更なる軽減を図り、本市の被保険者の約4割17万人以上が軽減されている。利用料についても利用が多い方の負担が過重とならないよう高額介護サービス費等の軽減措置を講じている。引き続き過重負担とならないよう国に要望していく。
担い手確保では、ICT機器の導入助成や外国人介護職員や業務未経験者向け研修に取り組んでいる。
介護保険料は介護事業計画で見込んだサービス量に応じて算定する仕組みであり、現在国において検討されている所得段階区分の多段階化の動向等も踏まえ、次期計画策定に合わせて検討していく。
5.カットされた民間保育園の補助金の復活を
次に民間保育園の補助金カットについて質問します。
民間保育園補助金13億円カットをした影響が、4割の保育園で人件費不足により赤字となり、3割の保育園で給与やボーナスカットが行われていたことが、明らかになりました。人件費にあたる部分の弾力運用枠について6.5%から10%に見直し、4億円の補正予算が組まれましたが、まったく不十分です。根本的な解決になりません。補助金13億円を復活させるべきです。そもそも、保育士の加算対象となる平均勤続年数11年及び加算率7%についても、国の基準と同様としたことに問題があります。京都市は全保育園の保育水準を担保するために、公民格差の是正やベテランの保育士の賃金を保障する保育プール制を実施してきた歴史があります。今こそ、立ち戻るべきです。
保育分野での人材不足も大変厳しい状況にあります。「やりがいはあるけど、責任も重く、それに見合う給料ではない」とやめていく保育士が多くおられます。
人件費における弾力運用枠10%で、賃金が上がるわけではなく、その4億円の補正予算で、今問題になっている4割の赤字保育園と3割の保育園での給与カットは解決できるのですか。補助金13億円を復活させるべきです。
【答弁→市長】 本市では職員の処遇の維持向上のため、国の給付費に加えて独自に補助している。制度再構築後も保育士等は全国平均を100万円以上上回る単価を設定する等全国トップレベルの処遇水準を確保。新制度開始後も市会付帯決議や現場の声を踏まえ、障害児加配補助金充実や認定こども園事務員、アレルギー対応調理員の配置拡大等行った。新制度初年度の運用状況を分析したところ、旧制度の課題解消と全体として保育士処遇の維持向上を図ることができている。一方、本給自体や賞与の引き下げ等約3割の園で見直しが行われ、園運営の不安の声もあり、人件費収入からの控除割合を1.5倍に拡充する補正予算案を提案している。この拡充は保育士等の処遇の維持向上を図る拡充であり、あるべき制度は整ったと考える。
6.本市独自の奨学金制度の創設と奨学金返済支援を
次に学生支援と奨学金返済支援について質問します。
国の自殺統計の分類に「奨学金の返済苦」が2022年から新たに加わり、奨学金の返済を苦にして自殺したと考えられる人が10人いたことが警察庁などのまとめで明らかになり、大変ショックを受けました。おそらく氷山の一角です。奨学金の給付型は全体の20%しか対象枠はなく、利用者の多くは、返す必要がある貸与型を利用して、一般的に卒業後の返還期間は12~20年に及びます。
子育て真っ最中のある女性は、奨学金を借りていた学生の時には、あまり感じなかった高い学費の重荷を子どもを育てながら実感していると語られました。「有利子の奨学金だったので、借りた額は入学時に30万円と月10万円4年間で510万円だったが、利子分約50万円が加わり総額560万円の奨学金返済をしている。今36歳になったが、毎月26000円ずつを後8年返し続けなくてはならない。ほんとに厳しい」とのことでした。また、ある年金生活者の方は孫の学費援助を頼まれ、10万円の年金から毎月5万円援助した4年間だった。地獄のようだった」と語られました。まさに、これが現実です。
京都市はこれまでから、わが党が独自の対応策を求めても、「国が対応すべき」という答弁の繰り返しでしたが、国に要望することにとどめていていいのでしょうか。「学生のまち京都」というのに、あまりにも無策です。京都市の独自の奨学金制度をもつべきです。さらに、返済に苦しむ世代の対策が求められます。京都府の制度に、就労・奨学金返済一体型支援事業があります。就労から6年間にトータルで、企業と京都府が45万円ずつ負担し、総額90万円の支援をするしくみの事業です。ただし、現在では府内で234社の登録企業にとどまっています。そこで、企業の負担分をさらに京都市が半額でも、支援すれば、参画する企業は増えると思われます。2年前に委員会で提案した際に京都市は、京都府の制度を周知する役割を果たすと答弁しました。今こそ、もう一歩踏み出すべきではないでしょうか。さらに、登録企業でない会社等に就職した場合の支援として、個人への補助制度も創設することが必要です。いかがですか。
【答弁→総合企画局長】 ふるさと納税を活用し、本市独自の取り組みを進めつつ、公平性の観点から国において統一的に対応すべき奨学金等の経済的支援については、国に要望しており、その結果給付型奨学金等を行う高等教育の修学支援新制度が創設され、5311億円の国予算が確保された。本市の学生数換算では270億円であり、本市独自では実現できない規模の支援となっている。さらにR6年度から高等教育に係る更なる負担軽減が予定されている。京都企業への就労を要件とした奨学金返済一体型支援事業への上乗せは考えていないが、要件緩和や学生への周知に取組む。国・府等と連携し、学生が安心して学べる環境を整備に努めたい。