【声明】9月市会を終えて
2023.11.02
日本共産党京都市会議員団
団長 西野さち子
一、はじめに
9月市会は9月21日に開始、43日間の審議期間を終え10月30日終了しました。イスラエルのガザへの侵攻で現地支援が呼びかけられ、物価高騰のなか行政としていっそうの支援が求められている中での議会となりました。党議員団は「物価高騰対策を強化し、中小業者への緊急支援を求める申し入れ」(9月7日)、「物価高騰、インボイス制度に対する支援等にかかる申し入れ」(10月26日)を行い、くらし・なりわい・子育て応援の願いをとどけて徹底論戦を行いました。
一、市長提出議案に対する態度
今議会には市長から39件の議案と16件の決算が提案されました。党議員団は、西京区総合庁舎整備にかかる議案、橘大学地区計画の改正、市立学校生徒の事故・教員公務災害の損害賠償等21議案に賛成。プライバシー権侵害や個人情報流出のおそれがある「デジタル手続き条例」、三施設(地域リハビリテーション推進センター・こころの健康増進センター・児童福祉センター)一体化を進める条例改正、市立芸術大学整備関連議案、日影規制撤廃や用途地域見直しを行う「らくなん進都地区計画」の改正、川西市営住宅の廃止、養正・三条市営住宅の工事請負契約の締結等18議案に反対しました。
決算では、22年度一般会計・国民健康保険特別会計・介護保険特別会計・後期高齢者医療特別会計・中央卸売市場第一市場特別会計・水道事業特別会計・下水道事業特別会計・自動車運送事業特別会計決算8件は認定せず、高速鉄道事業特別会計決算等8件は認定しました。
一、 論戦の特徴
<一般会計補正予算等>
一般会計補正予算は、福祉子育て施設・学校給食等食材費高騰への対応等の補正は必要であるものの、コロナ・物価高・「行財政改革計画」の三重苦を市民に押し付けながら35億円の公債償還基金への積み立てを行うものであることから反対しました。また、コロナが収束せず、インフルエンザとの混合感染などが問題となる中で妊産婦PCR検査を終了すべきではないこと等も討論で述べました。
市立学校生徒の事故の損害賠償について、学校事故発生時に詳細調査を行うべきこと、教員公務災害の損害賠償について、過労死ラインを超える教員が100名を超える異常事態を認識し教育委員会の責任において是正と労働環境改善に取り組むことを付帯決議として、自民党・公明党以外の議員で可決しました。
<2022年度決算関連議案等>
2022年度一般会計歳入歳出決算について、コロナによる影響から歳入について「大幅な落ち込みを見込んだ」としながら、見込み違いを認めず「行財政改革計画」撤回に背を向けていることを批判。
民間保育園人件費補助金の13億円削減について、11月市会に4億円の補正予算を提案する方向が示されましたが、補助金削減の失敗を認めて全額元通りとすべきことを述べました。敬老乗車証制度についても負担金値上げで申請者が2万5000人減少し、「持続不可能」な制度となっていることを批判するとともに今年度の値上げで更なる減少が見込まれることを指摘し、元に戻すよう求めました。
個人・中小事業者支援について、商工振興・伝統産業支援などが不足していること、小売商店における予約相対取引で個人商店が価格形成で不利な事態となっていることを示し、実態調査を要求。商業調整を求めました。
投資的経費について精査し、北陸新幹線京都地下延伸計画などムダな大型公共事業の中止を迫りました。
法人市民税法人税割の税率を8.4%まで引き上げれば6億2000万円の増収を得られたことを明らかにし、応能負担原則にたった税制を求めました。
気候危機打開へ温室効果ガス削減について、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書が求める2030年までに2019年比48%(2013年比55)以上の削減へと目標を引き上げることを求め、その目標達成に必要な追加対策を盛り込むことを求めました。学校体育館へのエアコン設置と学校施設の断熱化を求めました。
百年の計である新景観政策をわずか15年で壊す都市計画の見直しは、開発業者のもうけを最優先にする姿勢であり、人口流出対策には家賃補助制度や手あつい子育て支援策こそ必要と迫りました。
新型コロナウイルス感染症対応について検証・総括し、各行政区に保健センターを戻すよう求めました。職員削減や民間委託、公有地売却など公共性を後退させるべきではないと質しました。
市立京北病院について「持続可能なあり方を検討する」として医療機器更新等がなされていない問題を追及し、地域になくてはならない病院であると改善を迫りました。
全員制の中学校給食について、給食検討委員会がセンター方式との方向を示し、市長総括質疑において市長が「給食センターが整備されるなら、塔南高校の跡地が有力地」と述べました。党議員団は「声明/学校調理の全員制中学校給食の実現を」(10月26日)を発表。検討委員会に示された報告書はあくまで概要版で裏付けや根拠が明らかではないこと、「コスト重視」ではなく子どもたちの健康と豊かな食育のために学校に給食施設を設置することを求めました。
香害・化学物質過敏症対策について、関係者の運動がみのり、ホームページに掲載されました。また、新たな調査方法の検討が教育委員会から示され、保健福祉局から関係部署の情報交換の場の設置が表明されました。
〈特別会計〉
国民健康保険特別会計決算について、28億円の黒字であるにもかかわらず、コロナ禍のもと保険料を値上げしたことは重大であり、引き下げこそ求められることを述べました。子どもの均等割の免除については3億2000万円の追加負担でできると示して実現を求めました。
介護保険特別会計決算について、制度創設以来、保険料が大幅に引き上がっていることを指摘。国の審議会で利用料の2割負担化が検討されるなど重大事態に際し、利用料を引き上げないよう国に求めるべきこと、また、保険料負担の軽減を行うことを求めました。
上下水道事業について「事業の根幹は守る」というものの、民間委託化と広域化に前のめりになっており、技術の継承・管理という点からも経営基盤を弱体化させると指摘。下水道事業への出資金休止は、直ちに元に戻すことを求めました。
交通事業について、市バスについては、「最後の手段」と言いながら運賃値上げ方針を掲げ続けるのではなく、値上げを回避し、国へ粘り強く支援を働きかけることと、市独自支援を復活させることを求めました。地下鉄については、運賃改定を回避したことを重く見て認定しました。あわせて、可動式ホーム柵を全駅に設置できるよう他都市状況を研究することや、駅の無人化・職員削減をやめるよう求めました。
<市民参加のまちづくり>
市立芸術大学について、大学定款の所在地変更・京都市の大学への出資・移転元の京都市への納付・大学の第三期中期目標策定が提案されました。党議員団はこれまでから芸大移転整備の工事契約議案については、コロナ禍での市民のくらしや経済状況、市長が「財政危機」を強調するもとで、いったん凍結すべきとの立場から反対してきました。今回改めて、新キャンパスの敷地が大幅に狭くなることから学生の活動スペース確保に懸念があると繰り返し指摘してきたこと、部活動関係者からも運動施設の建設を求める署名が提出されていたこと、新キャンパスA棟6階・7階や隣接する将来活用地(4000㎡)に学外団体や民間事業者を呼びこんでいること、西京区の芸大跡地を民間へ売却・貸付する対象として公的責任を果たしていないこと、第三期中期目標にガバナンスの強化・理事長と学長のリーダーシップなどの文言を加え大学の自治をさらに制限することは問題であることを討論で述べ、関連議案に反対しました。
養正・三条市営住宅の建替えについて、計画変更と継続審査を求める請願が出されていることを受け、党議員団は継続審査を求める動議を提出。無所属議員が賛成しましたが、全ての会派が反対し否決されたため反対討論に立ちました。主役である住民を脇においてまちづくりを進める姿勢を認めるわけにはいかないこと、多様な世帯が住み続けられるまちをつくる検討が極めて不十分であること、市民の財産である公有地を大切にする立場が欠落していることを指摘しました。
一、 住民運動・請願
今市会において請願「健康保険証廃止の撤回の要請」、請願「敬老乗車証制度交付基準の見直し」が採決され、いずれも、党議員団以外の会派が反対し、不採択とされました。無所属議員は請願採択を主張しました。党議員団は採択を主張し討論に立ちました。
一、 意見書について
「学校施設における体育館を含めた空調設備の整備についての財政支援を求める」、「香料成分に起因する健康被害について対策の促進を求める」「ブラッドパッチ療法に対する適正な診療上の評価等を求める」意見書を全議員で共同提案し可決。「診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の物価高騰・賃金上昇への対応を求める」「コロナ禍からの回復期における公共交通の課題改善に向けた支援を求める」「次元の異なる少子化対策としての就学支援金の所得制限の撤廃など保護者負担軽減を求める」「下水サーベイランス事業の実施を求める」意見書を全会一致で可決しました。
「公立学校教員の処遇改善に向けた給特法の抜本的改正を求める」「公立学校教員の処遇改善や教職員定数の改善など、学校運営体制の整備の充実に向けた諸制度の改革を求める」意見書をそれぞれ可決。
ライドシェアの検討を求める「タクシーを含む公共交通の不便解消に向けた規制の緩和を求める」意見書は提案会派である維京国以外のすべての議員の反対で否決しました。
「核兵器禁止条約の実効性を高めるための主導的役割を果たすことを求める」意見書、「インボイス制度の実施中止を求める」意見書を無所属議員とともに共同提案しました。「核兵器禁止条約の実効性を高めるための主導的役割を果たすことを求める」意見書には立憲が賛成しました。
党議員団が提案した「大阪・関西万博の中止を求める」意見書は他のすべての議員が反対しました。
一、 最後に
京都市長選挙が3か月後に迫りました。福山和人さんが「くらし。ここから京都再生」を掲げ市政転換を訴えています。党議員団は長く続いた暮らしに追い打ちをかけ、巨大開発を温存する市政をおおもとから転換するために、全力を尽くします。