2024年度一般会計補正予算等に反対討論,河合議員
2024.06.20
日本共産党市会議員団は、「議第64号 京都市一般会計補正予算」「議第665号 国民健康保険特別会計補正予算」「議第67号 後期高齢者医療特別会計補正予算」に反対しています。私は議員団を代表し、その理由を述べ討論いたします。
第一次編成予算と第二次編成予算とを合わせて市長の政治姿勢の全体像が示されました。収支均衡の上で前年比で300億円を超す予算規模となり、党議員団が指摘してきた通り「財政破綻しかねない」との前市政の財政見通しの誤りが明らかとなりました。
第二次編成予算の、「がん患者アピアランスケア支援事業」「子宮頸がん検診の無料クーポン配布対象年齢の拡充」や「地域支えあい活動創出コーディネーターの体制拡充」「学校トイレ洋式化加速」「病児・病後児保育の受入環境の充実」 「障害のある幼児の教育振興補助の充実」「公園遊具の整備」、「既存住宅の取得支援による若年・子育て世帯の移住・定住促進のための住宅改修への助成」「バス路線の維持に向けた新たな支援」などは市民要望に応えた必要なものであります。
わが党議員団は、第二次予算編成に先駆けて、必要な施策22項目の予算化を市長に要望いたしました。
コロナ禍以来の暮らしや生業への打撃に加え、相次ぐ物価高騰が暮らしや営業を直撃し、さらに燃料費高騰などに対する国の支援策が打ち切られ、市民生活がより厳しさを増している中での予算編成ですから、市民生活を守ることが最優先の予算とされるべきです。しかし、全体として「物価高騰から生活を守る」という点では、市民生活の向上に必要な予算はあまりにも貧弱です。
以下、反対する理由を述べます。
予算案に反対する第一の理由は、市民生活を守り、事業者を支援する施策が極めて不十分だからです。
市民サービスを後退させ、負担増を押し付けた「行財政改革計画」を見直さず、継続する予算となっています。前市長のもとで進められた行財政改革計画、中でも敬老乗車証制度は2021年度に比べ負担金が3倍、4.5倍となり、交付対象が狭められた下で、利用者が48000人も減ってしまい、本来の目的である高齢者の外出・社会参加を阻害する状況が起こっています。当局は「申請をあきらめた方が一定おられることは否定できない」と言いながら、制度を見直さない姿勢は問題です。少なくとも2021年度並に負担金を引き下げ、交付対象を元に戻すべきです。
また、民間保育園給与等補助金のカットは、保育現場に先の見えない不安を広げ、職員の離職を招きました。コロナ禍を通じてその仕事の重要性が浮き彫りになり、全国では賃金・処遇向上が図られる中、本市ではボーナスカットや昇給停止などがおこっています。カットした補助金を元に戻すことなく「制度のあるべき形が整った」などと居直っていることは問題です。保育者の経験年数に応じた安定的な昇給を保障するしくみをつくり、財源を確保する責任は京都市にあります。国の公定価格の引き上げ分を現場に還元し、削減した補助金は元に戻すべきです。
本市は、京都経済は「緩やかな回復基調である」との認識のもとで、「スタートアップ事業」への予算は拡充されました。一方、市内の99%を占める既存の中小事業者や伝統産業事業者は厳しい現状にありますが、そこへの支援は従来の枠にとどまり、これでは物価高騰の中で、とても間に合いません。本市としても中小事業者の賃上げ直接支援を行うよう求めます。
そして、6月からの西京区、南区と伏見区の一部、調整運賃区間でのバス運賃値上げも重大であります。「行政の支援で食い止めることができなかったのか」「公約違反だ」とあちこちから怒りの声が上がっています。今議会で市長は、公約である「市バス運賃の値上げ回避」は「均一運賃区間」のみであると発言され、先行事業者である民間バスが値上げをしたら同調し値上げするのは当たり前だという答弁をされました。値上げ対象地域の西京区などの市民に衝撃が走りました。市バスと言えば交通局が運行しているバスすべてであり、運賃と言えば地域の選別などないと思うのは当たり前です。しかも、昨年夏ごろから京阪京都交通の状況をつかんでいながら、京都市が値上げ回避のための何の努力もされてこなかった。このことは、全市民に責任を負う市長として全く無責任と言わざるを得ません。西京区民が「またも京都市に切り捨てられた」と怒っておられるのは当然です。民間バスの運賃値上げの理由とされた運転士不足、運転士の処遇改善などは、全国的な公共交通の課題であり、事業者任せでなく国が思い切った財政支援で公共交通を守るようにもっともっと強力に国に要請すべきです。また、バス運賃値上げによる増収見込みは約1億円と言われていますから、今回創設した「支援制度」に一般会計からの上乗せをして、市長公約である「バス運賃値上げ回避」を文字通り実現すべきだったのではありませんか。今からでも、補正予算を組むなどして値上げした運賃を元に戻すよう求めます。
反対する第二の理由は、公務の民間委託化、職員削減を進める予算だからです。今回計上されている国民健康保険給付業務の集約化・民間委託化は、区役所・本庁の職員を50人削減する計画です。データ入力や発送作業のバックヤード業務を集約し民間委託しようとしていますが、職員は窓口で様々な業務を給付業務担当者が協力して行っておられます。バックヤード業務を民間に委託し、相談業務などに振り替えて「手厚くする」と言いますが、その根拠は示されませんでした。災害時などの対応も考えれば、区役所・支所から正規職員を減らすことは問題です。
能登半島地震の教訓は、命を守る迅速な災害対応には、日常的に地域を把握している行政のマンパワーが必要であるということを示しています。市長は「乾いたタオルを絞るような行財政改革、職員削減はやらない」とされ、「公共人材の疲弊」を課題とされるのであれば、民間委託化、職員削減はやめるべきです。
また、救護施設の整備が不調となる中での「住居を喪失した方等への支援の充実」については、他自治体の救護施設に100人もの市民が入所している実態からも、ソフト対策だけでは不充分です。救護施設は京都市の責任で整備することを求めておきます。
反対する第三の理由は、大型公共事業、開発優先の姿勢だからです。
鴨川東岸線第3工区の再開、北陸新幹線京都地下延伸計画や京都駅新橋上駅舎・自由通路整備事業など、不要不急の大型事業を推進しています。
小規模で防災減災に資する、地元事業者の仕事おこしのための公共事業が必要です。
市長は「コンクリートは人の命を守る」と言いながら、堀川通地下バイパス、国道1号線バイパス、9号線バイパスなど不要不急の大型事業を推進する姿勢も示されたのは重大です。しかし、過去にゼネコン言いなりの契約更新で工事費を膨張させた地下鉄東西線工事や旧五大プロジェクトなどの大型公共事業が本市財政ひっ迫の要因となった反省こそ必要です。市長が無駄使いを正当化する姿勢を改めるよう求めます。そして今からでも不要不急の大型公共工事はやめるべきです。
党議員団は、北陸新幹線地下延伸計画は地下水・残土・環境等多くの問題を指摘してきました。京都市内の水資源調査の結果について、「地下水が京都駅や伏見区の酒造エリアまで到達している可能性がある」と国交省が示したと報道されていました。当初2兆1千億円と言われた費用負担もどれだけ莫大になるかも計り知れません。地下延伸計画は中止すべきです。
「三条駅周辺」「山科から醍醐」などで、高さ規制等の緩和や都市再生緊急整備地域拡大による大規模な開発が今後進められようとしています。住環境の悪化や地価高騰を招き住民・若い世代の定住を妨げるのではないかという懸念があります。本市は、市営住宅はじめ空き住戸の改修で入居者を増やし、家賃減免制度の継続、一般住戸への家賃支援こそ進めるべきです。
今年度提案された「meetus山科―醍醐」、昨年実施の「洛西”SAIKO”プロジェクト」も都市計画の規制緩和による大規模な開発で果たしてうまくいくのでしょうか。むしろ、若い世代が住み続けられ、現在住んでいる人たちも住みやすいまちであることが、重要です。とりわけ「住んで学ぶ」「住んで働く」ためには、公共交通の拡充こそ必要であり、先ほど述べた運賃値上げ見直しとあわせ、抜本的改善を求めます。
また、問題山積の「大阪・関西万博」を推進する立場での予算も示されています。市長は「文化都市京都」を強調しておられますが、市民の文化芸術関係予算では京都で活動する文化芸術関係者のニーズの高い「Arts Aid KYOTO通常支援型」の予算は増額されていません。一方、「大阪・関西万博期間中に350万人のインバウンド来訪が見込まれる」として、万博に関連させた外から呼び込む事業には予算が計上されていますが、観光についてはオーバーツーリズムが課題となっている今、必要なのは、さらに誘客を進めることでなく、総量規制ではありませんか。産業観光局関連予算でも、物価高騰、消費税、インボイス制度の影響や後継者不足で苦労されている中小・零細事業者、伝統産業事業者の新たな支援の拡充がない中、第1次で計上された「大阪・関西万博への機運醸成」の予算などの見直しはありません。大阪・関西万博は工事費の膨張、工事の遅れ、メタンガス発生によるガス爆発事故、交通アクセス、避難計画すらないことなど問題が噴出しており、地震からまもなく半年が経過する下でもインフラ整備すら進んでいない能登半島地震被災地への支援こそ優先すべきとの世論が大きくなっています。「京都で万博を推進する」という姿勢を改め、中止するよう本市から求めるべきです。
反対する第四の理由は、市民の財産を市民優先に活用するのでなく、民間事業者の活用を最優先にすすめるものだからです。
東部クリーンセンター跡地活用は、地域住民の活用要望よりも先にサウンディング調査で民間事業者の意見を聞こうとしています。 また、「らくなん進都産業用地創出奨励金制度」について、副市長は「営農困難な農地に限ってのもの」と言われましたが、事実上、補助金を出して農地を産業用地に転用し、民間事業者に活用させようとするものです。本来、農業を続けるための支援や担い手育成の支援こそ拡充すべきではありませんか。
またこの間、市有地の活用をめぐって地域住民から「公園整備を」「住民が集える場所に」「児童館整備を」など様々な要望を寄せられているところでも、市有地売却・長期貸付などで市の収益を上げることが優先されています。市有地は、市民の財産であり、市民の声を生かした活用とすべきです。
反対する第五の理由は、「若い人に『京都に住みたい』『住み続けたい』『働きたい』と思っていただけるまちに」と強調されながら、子育て支援の予算化が不十分だからです。市長は公約でも「子どもの医療費助成中学校卒業まで拡充」「第2子以降の保育料無償化」「学校給食費無償化」を掲げられながら、 予算にはどれも盛り込みませんでした。 真っ先に予算化すべきです。引き上げられた学童保育利用料の値上げは元に戻すこと、お金の心配なく学べる「給付制奨学金制度」を創設することも求めます。また、子どもが育つ環境としての公園の整備、増設が求められています。リニューアルにとどめず、新たな整備を進めるべきことを求めておきます。
中学校給食は、子育て家庭や市民の積年の願いである「全員制の中学校給食がようやく実施される」と市民の期待が広がる中、本市はあくまでセンター方式 、リスク回避は民間調理場活用でということにこだわっていますが、早期実施、安全でおいしい中学校給食にするには1箇所の巨大給食センター建設を見直し、学校調理方式を検討することが必要です。積年の市民の願いに応えた検討と実施を求めます。
以上で、私の討論と致します。