武器輸出の禁止を,意見書について討論,山田議員
2024.03.27
日本共産党京都市会議員団はわが党及び無所属の井﨑議員と共同提案している「武器輸出の禁止を求める意見書(案)」に賛成しておりますので、その理由を述べ討論します。
岸田政権は3月26日、日本・イギリス・イタリアが共同開発・生産する次期戦闘機の日本から第三国への輸出を可能にする閣議決定を強行しました。これは昨年12月の殺傷武器輸出解禁につづく暴挙であります。殺傷武器の輸出拡大は、「戦争国家」づくりをめざす「安保3文書」にもとづくもので、「平和国家」としての戦後の歩みを大本から覆し、「国際紛争助長国家」「死の商人国家」への道を突き進むことに他なりません。
1976年政府見解は、「『武器』の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない」――これが、武器輸出についての政府の統一見解であります。当時の宮澤喜一外相は「我が国は兵器の輸出をし、金を稼ぐほど落ちぶれていない」と答弁しました。1981年には衆参本会議で「武器輸出三原則」の厳格な運用を求める決議を全会一致で可決しています。
この「武器輸出三原則」は第二次安倍政権時代の2014年に撤廃され「防衛装備移転三原則」なるものに置き換えられ「平和国家」としての戦後の歩みを大本から覆し「国際紛争助長国家」「死の商人国家」へと大転換がはかられました。
次期戦闘機は、「いずれの国においても実現されていない新たな戦い方」をする最新鋭機であり、殺傷武器の最たるものです。イギリス・イタリアにとってはイギリス・イタリア・ドイツ・スペインが共同開発したユーロファイターの後継機であります。ユーロファイターはサウジアラビアに輸出され、イエメン内戦で空爆を行い、多数の民間人が犠牲になりました。次期戦闘機が第三国に輸出された場合、さらに破滅的な攻撃に使用される危険性があることは明白であります。
政府・与党は「三つの限定」と言いますが限定するものではありません。一つ目の限定「輸出する国は次期戦闘機に限る」としていますが、強力な殺傷能力を持つ最新鋭機を可能にして、その他は輸出できないという理屈は成り立ちません。二つ目の限定「輸出先は日本と『防衛装備品・技術移転協定』を締約している国に限る」としていますが、現在15カ国と結んでいるこの協定は、国会の関与もなく政府の一存でいくらでも増やすことができます。三つ目の限定「現に戦闘が行われている国は除外する」も、日本が輸出した後に戦闘を開始する事態は十分あり得ます。
「個別の案件ごとに閣議決定する」として、輸出を決定する前に「二重の閣議決定でより厳格なプロセスを経る」と述べましたが、閣議決定のみで進めるという事は、国民と国会に諮らず、政府・与党の密室協議で進めることに他ならず、なんら歯止めにはなりません。日本が開発・生産に加わる次期戦闘機が無辜の市民の命を奪うとともに、戦闘機をはじめとする殺傷兵器の輸出競争を激化させて逆に地域の安定を脅かす可能性はまったく排除されていません。
2023年の閣議決定の改定で、外国企業に特許料を払って日本で生産する「ライセンス生産品」について、ライセンス元の国への完成品輸出を可能にしました。わずか3カ月後の昨日26日に、さらに第3国への輸出まで可能にする閣議決定を強行しました。まさになし崩しとはこのことではありませんか。
政府は、第三国への輸出について「市場が大きくなり効率化する」などと、販路拡大でコストを安くし、多売により儲けを増やす――まさに「死の商人」の論理を露骨に表明しました。三菱重工等の軍需産業の儲けのためなら命を犠牲をしてもいたしかたない、国際紛争を煽り立てて「経済の糧」にすると言っているに等しく、「死の商人国家」への堕落であります。
日本国憲法前文には、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とあります。
戦争の備えでは平和は守れません。日本世論調査会が昨年7月末にまとめた平和に関する全国世論調査では、「平和外交に力を入れる」「戦争放棄を掲げた憲法9条を守る」は合わせて60%であり、「防衛力を増強し、他国から攻められないようにする」は21%、「日米安保条約を堅持する」は6%と少数です。
岸田政権は、次期戦闘機の第三国への輸出という歴史的暴挙を、国会を無視し、自民党、公明党の「協議」と一遍の閣議決定で強行しました。議会制民主主義を踏みにじるものであり断じて認められません。閣議決定を撤回し、「武器輸出三原則」の立場に戻ることを強く求め、武器輸出の禁止を求める意見書への賛意を求めて討論といたします。