2024年度一般会計予算等に反対討論,くらた議員
2024.03.27
日本共産党市会議員団は、議第1号令和6年度一般会計予算、議第3号国民健康保険事業・議第4号介護保険事業・議第12号水道事業・議第13号下水道事業・議第14号自動車運送事業特別会計、議第16号職員定数条例・議第21号証明等手数料条例・議第22号京都市元離宮二条城条例・議第23号印鑑条例・議第43号乗合自動車旅客運賃条例・議第164号都市公園条例の一部改正に反対し、議第15号高速鉄道事業特別会計予算に賛成の立場を表明しておりますので、議員団を代表し、その理由を述べて討論します。
令和6年度京都市予算案は2月に行われた京都市長選挙後はじめての市長の予算提案となります。松井市長には、市長選挙に示された市民の声を受け止め、とりわけ批判が集中した「行財政改革計画」を見直すことが求められています。物価高騰やインボイスが、中小企業・小規模事業者の営業に深刻な影響を及ぼし、フリーランス含む非正規労働者、市民生活は疲弊しています。1月1日に発災した能登半島地震による被害は、本市における防災・減災対策の重点化を警鐘するものとして受け止める必要があります。自治体として市民の命と生活を守ることを第一とした施策が必要です。
日本共産党議員団が予算案に反対する第1の理由は、「行財政改革計画」の撤回を行わず門川市政を継承しているからです。市長は、「門川市政の良いところは引き継ぎ、追い付かない課題について補正していきたい」と述べましたが、大型開発を推進しながら福祉予算をカットした行財政改革を続けるなど門川前市長のやりかたそのままではありませんか。削減された福祉予算の復元を求める切実な市民の声に対して「時計の針を戻すことになる」との筋違いな説明はあまりにも不誠実です。民間保育園では補助金削減により、すでに3割で保育士給与が減給されている事実を認めながら副市長は「処遇は維持向上している。控除割合を拡充したのでその範囲で解決してほしい」と述べましたが、これはベテラン保育士を解雇すればよいということなのでしょうか、とんでもありません。保育士の平均経験年数11年を加算率の上限とする考え方は「ベテラン保育士がいてこそ安心」という現場の実態を顧みないものです。国が保育士賃金の引上げのために公定価格を5.2%引き上げたにもかかわらず、その分の市補助金を削ってしまったのでは賃上げできないではありませんか。すみやかに予算を復元拡充し保育現場の不安を取り除くことを求めます。
また、高齢者の外出・移動、社会参加を支えてきた敬老乗車証の一部負担金が3倍から最高4.5倍となり、敬老乗車証交付申請が激減しました。制度が形骸化していることは極めて重大な問題です。ところが、「申請率13%減少は想定内」と答弁するなど、費用負担の重さから高齢者に敬老乗車証の申請を諦めさせていることへの痛みも感じないのですか。これで、どうして高齢者の出番や、市民参加型の市政がつくれるのかと言わなければなりません。敬老乗車証制度の改悪は本市が掲げる健康長寿の実現に逆行し、地域経済にもマイナスの影響しか与えません。元に戻すことを強く求めるものです。
全員制の中学校給食については、京都市が南区の元塔南高校跡地への給食工場設置と、そこで1日26000食の給食をつくり各学校に運搬するセンター方式を示してきましたが、市民は納得していません。審議を通じて、給食を論じる上で最も大切な「安全性」が担保できない決定的な問題が明らかとなっています。こども達の生育にかかわる重要な課題ですから、十分に市民に情報を公開し多角的な検討を行う必要があります。市民から求められている学校調理方式の可能性について真摯に検討し、合わせて給食費の無償化を実現することが必要です。また、巨大給食工場の設置ありきで、その予定地となる東吉祥院公園が廃止され、それを理由として都市計画変更が行われようとしていますが、これに対しても多くの市民から意見が提出されています。東吉祥院公園はスポーツができる運動公園、近隣公園としての機能を維持し高めるべきです。公園廃止について遠隔地に分散した緑地を確保したとしても、代替にはならない矛盾があることなど、巨大給食工場設置ありきの方針は破綻しています。
京北地域の住民の命の砦である京都市立京北病院のあり方検討については、「病院が縮小するのではないか」と不安の声があがっています、行政が京北地域の住民とともに考え、公的病院として存続させ機能を拡充することが不可欠であります。
子どもの医療費無償化は市内のどこででも子どもを産み育てることを応援する施策であります。わが党議員の質問に「こどもの医療費については、まずは中学卒業まで1医療機関1ヶ月200円を実現するために京都府と精力的に協議していく」、2人目以降の保育料の負担軽減については「財政当局とも検討をすすめている」と答弁がありました。一日も早く二人目以降の保育料無償化と医療費は入院も通院も18歳まで無償化することが必要です。
第2の理由は、市民のいのちと暮らしに対する予算が不十分だからです。国民健康保険は令和6年度において、物価高騰による被保険者の厳しい生活状況を踏まえ、基金を取り崩し保険料値上げを回避しました。しかし、基金の残高が減ったため「令和7年度の保険料は値上げざるを得ない」としていることは問題です。現状でも高すぎる国保料の要因のおおもとには国の医療費抑制方針があります。京都市に求められるのは、令和7年度も引き上げを回避し、なんとしても引き下げるためにあらゆる方策を打つことです。そのために一般会計からの繰り入れを増やして高すぎる国保料を引き下げ、制度の根本となる国庫負担率の引き上げを国に強く迫ることを求めます。
介護保険事業については、保険料を納めていても地域に介護サービスが無ければ選べない、要介護認定を受けながら1割の利用料負担が重く介護サービスの利用を諦める深刻な実態があります。これに拍車をかけているのが、国の介護報酬改定です。訪問介護報酬2~3%の引き下げは介護崩壊につながる重大な問題であることを指摘しました。審議の中で「訪問介護事業所の廃止が徐々に増えている」との認識は示されましたが、この制度改悪を「全国一律のシステム」と容認していては、介護を必要とする市民の命を守り、介護家族の負担を軽減することはできません。市民の介護需要が高まる一方、民間の介護事業が成り立たなくなっていることに対して保険者として介護サービスを確保し全ての市民に提供する責任を果たす必要があります。
第3の理由は、北陸新幹線京都地下延伸中止の立場にたたず、大阪・関西万博を推進、大型開発事業を進めながら、中小、小規模事業者に対する支援が不十分だからです。市長は北陸新幹線京都地下延伸について「特に水源への影響についてはしっかり判断していかなければならない」と述べましたが、ルートや施工方法が決まってからでは取り返しがつかなくなります。いま、判断することが必要です。京都の地下水は京都ならではの生業の源であり文化の土台です。これを守り未来に繋げる責任を果たすため、きっぱりと反対の決断を下すべきです。
大阪・関西万博については、その目的が万博終了後のカジノ誘致であり、その施設につながるインフラを整備するための事業であることが明らかです。建設業界では資材高騰、物資もひとも不足しています。いま、税金を投入すべきは大阪・関西万博ではなく発災から3ヶ月経過したいまも断水復旧もできていない能登への支援ではないでしょうか。大阪・関西万博は中止するよう、関西広域連合の一員として意見すべきです。
京都駅新橋上駅舎・自由通路整備事業は、総事業費195億円のうち京都市負担28億円と国負担83億円、合わせて111億円もの税金を投入する大型事業です。京都市は京都駅構内の混雑対策のためと説明していますが、新しくつくる通路は京都駅の南北を跨ぐことなく、日本郵便と駅ビル開発公社が計画する共同開発ビルにつながるものです。わが党議員はこの場所が都市再生緊急整備地域で、用途・容積率・高さ・日影規制の適用除外、税制上の優遇措置を企業に講じる区域であること、そのエリアを広げるための整備協議会が昨年11月と今年1月に開かれているが、いずれも非公開であること、京都市内であるにもかかわらず、都市計画の網がかからず市民に見えない形で進められている重大性を指摘しました。このような企業の利益を確保するための事業に市民、国民の多額の税金を投入することは止めるべきです。また1号線、9号線、堀川地下バイパス建設を計画していますが、巨大開発による借金、財政悪化などを反省することなくすすめようとしていることは問題です。
いま、求められているのは原材料費、物価高騰、消費低迷で苦しんでいる中小、小規模事業者への支援です。京都市としても市内事業者の経営状況について「楽観できない」と述べていますが、それならば「京都市地域企業の持続的発展の推進に関する条例」に照らし、京都市が直接、事業者の相談に応じる窓口を設置し実態を掴むべきです。市内事業者への抜本的な支援を行うための予算を確保し、固定費の補助など直接支援することが必要です。地域企業の振興を図るために行政が地域の企業団体との協議会をつくり事業者と共に具体的な振興策を具体化するよう求めます。
第4の理由は、規制緩和をすすめ、市民財産を切り売りし市民の願いに背を向けているからです。京都市はこれまで、元小学校や跡地をホテル事業者に差し出し、市営住宅や公共施設跡地を売却するなど市民の公共の福祉を向上させる立場を後退させてきました。さらに、都市公園条例の改正について、今年度、伏見区北鍵屋公園で公園の民間企業の利用を広げるモデル事業を行っていることは極めて問題です。全ての住区基幹公園を対象にサポート団体となる企業の利益を確保できることを条件に、公園内の便益施設などの建蔽率を規制緩和し公園面積の35%まで占めることを可能としていますが、付属施設を含めればさらに公園面積が失われることになり、断じて認められません。公園機能を損なうこの制度は撤回するべきであることを申し述べておきます。
第5の理由は、公営企業における公的責任を後退させているからです。水道事業について、「根幹は公営を堅持する」と説明しますが、市民の安全を守る業務を限りなく民間に委託する方針で、根幹を掘り崩しているのではありませんか、公的責任の更なる後退につながる広域連携に進むことは認められません。さらに、厳しい市民生活に対する福祉減免制度や物価高騰に対応する減免を拒否していることも問題です。下水道事業に対する一般会計からの繰入金を5年間休止し、独立採算制を容認させることをあらため、市民負担を軽減する努力が必要です。市バス事業については、経営改革と国からの財政支援で運賃値上げ回避に全力をあげるとされていますが、経営ビジョンから運賃値上げを削除していません。質疑でも市バス運賃の値上げはしないと明言されていません。市民負担を増やすことのないよう一般会計からの繰り入れを行い運賃値上げを必ず回避することを強く求めます。また、交通不便地域の対応は極めて不十分で、市民の生活の足を守るための努力が見られません。それぞれの地域の課題解決に対する責任を果たすことを求めます。
議第43号乗合自動車旅客運賃条例の一部改正については、観光特急運賃を500円に定めるものです。市民と観光客の調和を図るために、運賃の差別化を図るとしていますが、混雑対策にどれほどの効果が見込めるかは不明であります。そもそも、呼び込み観光への反省なく、総量規制に踏み切らないもとでは、市民が願う混雑対策にはならないことを指摘しておきます。地下鉄事業における特別減収対策企業債の延期や緩和債、特別債による資金調達で運賃値上げを回避し、地下鉄構内で生理用品を無料提供することは求めてきたことであり必要なものです。
第6に、自治体の本旨である住民福祉の向上を図るために必要な職員体制を確保する必要性について述べます。能登半島被災地に、本市から多くの職員が派遣されました。その活動に敬意を表すると同時に、日常的な職員体制が万全でなければ、同時多発的な災害に備えることはできないと考えます。ところが京都市は、消防職員をはじめとした職員削減計画を見直さず、京都府南部の消防指令センターの共同化を推進していることは問題です。上下水道局、環境局、建設局、都市計画局など各局の職員の知識・技術を蓄積し継承していく計画的な政策が必要です。そのためには抜本的な職員の増員が不可欠です。コロナ禍の対応で疲弊を極め、離職に至った保健所関係職員のみならず、入職後の若い職員が離職している実態は京都市・自治体の危機と言わねばなりません。職員リストラ政策を撤回し市民に向き合うことができ、自治体の責任を果たせる体制とすることを真剣に検討すべきであります。
元離宮二条城条例の一部改正については、本丸御殿の供用開始に伴い新たな観覧料を設定するものです。一般1000円、小学生200円、中高生300円としていますが、これは二条城入場料800円に上乗せ料金となるものです。文化財は人類共有の財産として公開されるべきもので、社会的教育資源としても還元される必要があることから新たな観覧料設定は認められません。とりわけ子どもからも二重の料金をとるやり方は文化行政として問題があります。
証明等手数料条例及び印鑑条例の一部改正はいずれも問題が山積しているマイナカードの推進を図るものであります。マイナンバーを利用した行政手続きの簡素化が喧伝されますが、これは国家による国民管理を強めるねらいがあり認められません。
以上、申し述べて、わたくしの討論といたします。ご清聴ありがとうございました。