日本共産党 京都市会議員団

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議会質問・討論

団地再生計画に基づく、市営住宅新築工事請負契約の締結3議案に反対討論,加藤議員

2023.10.30

 日本共産党市会議員団は議第87号養正市営住宅新2号棟新築工事請負契約の締結、議第88号養正市営住宅新3号棟新築工事請負契約の締結、議第89号三条市営住宅S1棟新築工事請負契約の締結について、さきほど「継続して審議すべし」と提案いたしましたが、否決されました。党議員団は本議案に反対を表明していますので、以下理由を述べます。

 反対する第一の理由は、主役である住民を脇においてまちづくりを進める姿勢を認めるわけにはいかないからです。

 老朽化した市営住宅の耐震化や建て替えが必要であることは言うまでもありません。そして、本事業は建て替え事業ですから、どのような住まい方を次に準備するかは、これも言うまでもなく、住んでいる方の意向やニーズを踏まえたものにしなければなりません。

 しかし、京都市は、繰り返し説明会を求められたにもかかわらず、聞くことなくコンサルが出した間取りと広さ等を既定方針としました。住民要望はあくまで聞き置く対応を取りました。京都市が住民要求を組み立てて「住み方の文化」にしていくことを否定する立場に立っていることに驚きを禁じえません。

 また、当局は家賃とのバランスを論じられております。そして、家賃の設定は法律に基づいてと言われますが、そもそも、自治体裁量があることを十分ご存じのはずです。その裁量をいかして低廉な家賃を検討するという行政施策を講じない無策こそ問題です。

 住みよい養正地域を考える会のみなさんは、市営住宅を1軒1軒訪問しながら、住民の団地再生計画に関する意見集約をしてきました。「今でも狭いのにこれ以上狭い部屋には入りたくない」「狭い部屋では人生の財産である荷物が入りきらない」「21棟のような多人数世帯中心の住戸配置にするべきだ」「これから加齢とともに介護サービスを受けようとした時、部屋が狭いと訪問入浴介護がスムーズにできるのか不安」「小さく区切った部屋でなくワンフロアで使い勝手の良い部屋にしてほしい」「生活者の目線でもっと丁寧な聞き取りをして欲しい」など、京都市に対しての不信感に溢れる声が寄せられています。10月9日現在で219筆の計画変更を求める署名も提出されました。276世帯の団地住民の大半が異を唱えている計画が適当と言えるでしょうか。計画の変更を重ねて求めるものです。

 反対する第二の理由は、多様な世帯が住み続けられる街をつくるという、これから先々を見通した検討が極めて不十分だからです。

 改良住宅について、党議員団は、空き部屋を改修し、公募するように求めてきました。しかし、市当局は一般公募について大変消極的な姿勢を取り続けてきました。その結果、養正市営住宅においては約600世帯が半分以下の276世帯へと半減いたしました。その教訓をどのように導き出されたのでしょうか。

 本計画で1人暮らし用住戸の狭小住宅2K・35㎡は、養正で全体数の2割、三条では6割をこれにあてるとしています。そもそも、本市市営住宅の入居基準で単身者用に入居できるのは60歳以上の高齢者などであります。楽只、養正、崇仁市営住宅の管理戸数等の資料によると、平成に入ってから、国交省の示している誘導居住面積水準40㎡を下回ったものはほとんど建てられませんでした。ごくわずか建てられたものは、今、その管理戸数の半分しか入居されていません。小さな住宅をたくさんストックとして再生産すれば、物理的に団地の高齢化を促進することになるのではありませんか。

 都市計画局長は、私の代表質問において「誘導居住面積水準はあくまでも民間住宅に関する水準」であると答弁されました。また、35㎡は最低面積水準である25㎡を上回っており、「民間賃貸住宅と比べても遜色ない」との驚くべき答弁を行いました。

 私は、国土交通省にその真偽を確かめました。そうしますと、「『誘導居住面積水準は文字通り誘導水準、望ましい水準』であって、公営住宅をその対象から除くということはしていない」との説明でありました。こうしたことを確認されないで答弁されたのでしょうか。

 最低居住面積は経済的状況とあわせて「公的支援の対象になる世帯を推計するための水準」としても示されています。すなわち、公的支援が必要とされる世帯か否かのぎりぎりの基準が最低基準であるということです。

 公営住宅は住まい方のモデルであるべきです。狭くても遜色ないなどと狭小住宅で胸を張って人口減少を誘引するのではなく、建物はメンテナンスを繰り返せば100年は持続させることができるのですから、まずは第一に、「住まいは人権」の立場からよりふさわしい居住水準を確保すること、そして第二に、多人数世帯中心の住戸配置にすること、また、第三に、入居収入基準の引き上げや家賃の引き下げ、魅力あるストックづくりのための工夫や努力を行うことで住み続けられるまちづくりを発想すべきです。

 反対する第三の理由は、市民の財産である公有地を大切にする立場が欠落しているからです。

 反対理由第一で述べた住民の意見を聞かないこと、第二の理由で述べた住み続けられる街をどのようにつくっていくのかをまともに考えないこと、この2つの京都市の姿勢はどこからきているのでしょうか。それは、結局、狭小な住宅で建て替えて「活用地」を広くうみ出そうとしていることから来ているのではありませんか。

 先般、京都市は「活用地」について民間等事業者からの提案募集をホームページ掲載されました。市民からの苦情を受けて「誤解を招く」として、民間等事業者からの「提案募集」の表現は削除されましたが「誤解を招く」ような掲載をする、ここに、京都市の前のめりの姿勢が現れています。「活用地の地図と広さの資料」は引き続き掲載されたままになっていますが、もともと、団地再生計画自体をコンサルに行わせ、それぞれ市場調査を行っているにもかかわらず、楽只・養正・錦林・三条・岡崎・壬生東・壬生・崇仁と8つもの市営住宅建て替えに係る活用地約3万7400㎡を一覧にしておられます。それぞれの地元で「住民の声を聴く」と説明されていたのは偽りだったのでしょうか。これではまるで京都市不動産ではありませんか。

 公共の再生を掲げる東京・杉並区の岸本区長は「自治体の職員や施設はコストではなく財産」と述べました。公の施設についてのコメントですが、公営住宅や公有地もそうでしょう。公有地は市長の所有物ではなく、住民共通の財産です。だからこそ、公営住宅の用途廃止は厳格に基準が定められ、国交大臣の許可まで必要とされているわけです。それでも生み出された公共空間はあくまで市民の財産と位置付けるべきであります。人と人とがつながりあう空間・コミュニティをつなぐ共用の場所・共用の空間を作ることを発想する。そして、これからの市民本位のまちづくりの政策上の基盤として、市民によって後世へと引き継がれるべきです。市民の財産をあまりにぞんざいに扱う京都市の姿勢はとうてい容認できません。

 以上、反対理由を申し述べて、私の討論といたします。