地方自治を破壊する地方自治法改定は撤回を,意見書について討論,やまね議員
2024.06.20
日本共産党京都市会議員団は、わが党議員団が提案する「地方自治法改定の撤回を求める意見書」に賛成を表明していますので、以下、その理由について述べます。
今回の法改定の重大かつ根本的な問題は、政府が「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」や「その発生の恐れ」があると判断しさえすれば、国が自治体に対して「指示」できる仕組みを新設することです。国の関与を最大限抑制すべき「自治事務」と「法定受託事務」の区別もありません。日本弁護士連合会は会長声明で「憲法の地方自治の本旨に照らし極めて問題」と指摘しました。
政府は「個別法で想定されていない事態の対応のために」としていますが、衆議院の参考人質疑では、白藤博行・専修大名誉教授が「個別法でも想定できない事態が、地方自治法という一般法で想定できるはずがない。まるでUFOの出現や宇宙人の襲来に備えるような話だ」「地方自治法の趣旨・目的に逆行する」と厳しく批判されました。
政府は地方自治法改定の根拠に「コロナ感染拡大」への対応もあげていますが、コロナ対応で迷走していたのは国の方針であり、京都市をはじめ地方自治体は限られた予算と十分とはいえない職員体制の中で懸命に仕事をしてきたのではないでしょうか。
コロナ禍で、医療機関や高齢者施設・介護施設と連携し、PCR検査体制の充実に取り組んだ世田谷区の保坂区長は、「『対等・協力』のはずの国と地方自治体の関係を大きく変えてしまうことは、地方自治の危機であるだけでなく、人々の命を危険にさらすことになり得る」「法案が通れば、自治体は住民の命を守るために必死に工夫を重ねるより、国からの指示を待つほうが利口だということになってしまう」と指摘しています。
そもそもコロナ禍で、自治体が病床確保に苦労した原因は、国の病床削減方針にあります。また、各地の保健所業務がひっ迫した原因も国の保健所削減方針にあります。国の不作為が起こした事態を直視せず、自治体に責任転嫁し、いったい何を指示するというのでしょうか。
政府は法改定の根拠に「大規模災害対応」もあげています。しかし、能登半島での事態が十分に改善されないのは国の指示権の問題ではなく、政府の姿勢の問題です。岩手県の達増知事も「東日本大震災の対応を含め、非常時でも指示権拡大の必要性は感じなかった」「国の権限強化ではなく、個別法で対処すべきだ」と今回の法改定を批判しています。
能登半島地震で直面しているのは、被災自治体も、支援する側の自治体も、人員削減でマンパワーが不足していることです。「平成の大合併」で自治体数は大きく減少しました。また、総務省の度重なる「行革」により自治体の正規職員は48万人減、市町村の非正規職員は4割超に達しています。被災地支援に必要なのは、国の指示ではなく、自治体に対する手厚い財政支援です。災害時などの緊急事態においてこそ徹底した分権化を図り、むしろ自治体が司令塔になって第一義的に対処することが求められています。
以上のことからも、感染症対応や大規模災害対応をめぐっても、法律の根拠となる「立法事実」はないと言わなければなりません。それでは、今回の地方自治法改定の真のねらいはどこにあるでしょうか。
いま、政府は沖縄県民の民意も地方自治も無視し、知事の権限を奪う「代執行」にまで踏み切り、米軍辺野古新基地建設を強行しています。今回の法改定、国の指示権拡大によって、こうした強権的なやり方が全国で進めることが懸念されます。
また、国会審議で政府は、有事立法で想定を超える事態についても「指示権行使の対象として除外されない」と答弁しました。岸田政権が、軍拡路線に走り、「敵基地攻撃能力保有」という、これまでの自民党政権とも違う道に踏み出すもとで、アメリカの起こす戦争に自衛隊だけでなく、自治体も動員される危険があることは重大です。
日本国憲法は、戦前の中央集権的な体制のもとで自治体が侵略戦争遂行の一翼を担わされたことへの反省から独立の章を設けて地方自治を明記し、自立した地方自治体と住民の政治参加の権利を保障しました。災害やコロナに乗じて、地方自治を破壊し、戦争する国づくりを進めるなど、断じて許されないことであり、今回の地方自治法改定は「撤回すべき」との声を地方自治体からあげることを呼びかけ、私の討論とします。