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くらた共子議員(上京区)代表質問,「新しい公共」,大型開発,西陣産地

〈代表質問の大要を紹介します〉

 上京区選出のくらた共子です。わたくしは日本共産党市会議員団を代表し、森田ゆみ子議員、山本陽子議員とともに市政一般について市長に質問いたします。
 まず、1月1日の能登半島地震及びそれに続く大豪雨で犠牲となられた方々に哀悼をささげ、関係者の皆様にお見舞い申し上げます。
 さて、石破茂首相は、首相指名を受ける前に解散総選挙を行うと表明しました。こうしたやり方を石破氏自身が党利党略と述べていたのに、まさに手のひら返しではありませんか。また、自民党の裏金問題で、石破派の政治資金パーティの収入の不記載も判明しており、きわめて重大です。旧統一協会との癒着の真相究明と解決にも背を向け、9条改憲、アジア全域における核戦力強化を呼びかけるなど、重大な事態です。国と自治体が総力を挙げて取り組むべきは、能登被災地への支援と復興です。国民の命と暮らしを最優先とし、アジアにおける平和を創り出す政治の実現こそ必要であることを申し述べ、質問に移ります。

1.行財政改革・「新しい公共」の方針転換を

(1)中小企業・零細事業者や市民生活への徹底した経済支援を

 はじめに、2023年度京都市決算と「新しい公共」について伺います。
 昨年度の一般会計決算は88億円の黒字が計上されました。2022年度に続く黒字決算ですが、市民生活の疲弊感は強まっています。コロナ禍以降、厳しさが増す市民生活の底上げを強化すべきであったにもかかわらず、その予算が削られてきました。京都市は「毎年500億円財源不足となる。このままでは財政破綻しかねない」として行財政改革を進めてきました。しかし、改革として行ってきたことは、財源不足と市民を脅して、敬老乗車証の市民負担増や、民間保育園の補助金カットなど、福祉を削減したのであり、自治体の使命に反しています。市長は、削減した市民サービスを元に戻し、コロナ禍・物価高に喘いできた市内中小企業と零細事業者、市民生活への徹底した経済支援を行う市政へと転換すべきです。いかがですか、お答えください。

【答弁→市長】 「行財政改革計画」に基づく取組は、本市独自の施策を持続可能なものとなるよう再構築し、未来に責任を持つ改革。見直しを行った施策を単純に「時計の針を戻す」ことは考えていない。この間、物価高騰に対する支援、観光・公共交通等の担い手確保などの対策を実施。今後も、国や府と連携し効果的な対策を講じていく。

(2)公共サービスの民間化推進の撤回、削減された職員数の復活を

 市長は「新しい公共」の理念による市民参加型行政と公約を実現するとして、企画監のポストを新設し、「『新しい公共』推進プロジェクトチーム」を発足しました。問題は、その目的です。市長は「新しい公共は、行政だけでなく、市民や企業など多様な主体が社会課題の解決を担うという考え方を指す」とし、第1回プロジェクトチームで「人々が自分たちのまちという当事者意識をどう持ってもらうかが大事」と述べ、民間の知恵や力で市政を進めたいと挨拶されました。この市長の提案は第33次地方制度調査会の「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」に示された地方自治体論をそのまま述べているだけであり、京都市を住民の福祉の向上を図る主体から変質させるものにほかなりません。このことは、門川前市長が「社会的課題の解決を行政が担う時代は終わった」と述べたことと同じではありませんか。
 自治体のあり方を歪めてきたしくみとして、我が国では1999年にPFI、2003年に指定管理者制度を導入し、公が担うべき公共サービスを企業の儲けの場に解放してきました。本市では2020年に介護保険認定給付業務を集約化し民間に委託しました。これにより、市民が要介護認定を申請した後、ケアマネジャーに調査票が届くのに3週間を要しています。住宅改修を行う際に、これまでは工務店の担当者らが、区役所窓口で直接相談し、要介護者の必要に応じた具体的な改修工事の内容を速やかに決められていたのが、事務センターを通すことで時間がかかっています。このことは、必要な介護サービスを速やかに提供するという公共の役割が後退していることを示しています。公共サービスの民間化は安全性の低下、雇用の流動化と低賃金を招き、コスト縮減にも逆行することから、世界各国では、公共サービスの民間化をやめて再公営化へと向かっています。市長が決断すべきは、公共サービスの民間化方針を撤回し、住民の福祉の増進を図る自治体の使命を果たすことです。いかがですか、お答えください。
 また、市長はこれまで「職員削減一辺倒の考えにはない」と述べてこられました。これまでの職員削減を行財政改革の成果とする考えはきっぱり転換されるべきです。党議員団はこれまでに2度、能登被災地の実態調査と支援に取り組んできました。その中で痛感したのは、復興が進まない原因は自治体職員のリストラなどによる地方自治体の脆弱化にあるということです。地域の実情を普段から熟知している職員が災害時等の被害を想定し、住民の命を守る行動の最前線に立つことが求められます。そのためには、マンパワーを確保し平時より技術の継承などを図る必要があります。ぜひ、前市政で削減された職員の数を復活させるべきです。少なくとも、これ以上の職員削減は止めるべきです。いかがですか、はっきりお答えください。

【答弁→市長】 「民間で実施した方が効果的・効率的な業務は民間に」を基本方針に、委託化や指定管理者制度等の民間活力の導入を進めてきた。経済性・効率性の発揮だけでなく、ノウハウや市民サービスの水準確保、適正な労働環境の確保等を十分確認・検討している。今後、行政だけで的確な対応が困難な状況が続く見込みで、市役所など「狭義の公共」が、民間事業者や地域とともに「広義の公共」を担うという発想で市民利益の増進に取り組む。市が公共課題の解決を放棄することは全く考えていない。
 厳しい財政状況の下、持続可能な行財政運営を確立するため、業務効率化等により業務量の減少が見込まれる部分は減員を図る一方、都市の成長戦略や児童虐待・災害対応など必要な部署には大幅な増員を行うなど、市民のいのちと暮らしを守る体制を十分確保してきた。

2.「開発幻想」から脱却し、「新景観政策」に立脚したまちづくりを

 つぎに、京都の良さを守り活かすまちづくりについてです。
 京都の景観を守るための長年の市民運動が2007年の「新景観政策」に実を結びました。このことは、憲法の理念に基づく、国土の均衡ある発展と公共の福祉に寄与するという都市計画法の目的と合致するものです。当時の桝本市長は記者会見で、「京都の景観は公共の財産、すなわち京都市民ひいては国民の共通の財産であります。しかし、この財産はしのびよる破壊によって『待ったなし』の状況に置かれております」と述べていました。ところが京都市はその後、2012年の島津製作所三条工場における地区計画、岡崎公園周辺地域における地区計画の変更をはじめ、次々と高さ規制を緩和しつづけてきました。

 2023年4月の都市計画の見直しでは、京都駅南部、らくなん進都鴨川以北、東部方面の外環状線沿道、市街地西部の工業地域、向日町駅周辺など、市内各地で建築物の高さ、用途地域、容積率、建蔽率を緩和しました。今年には、京都駅南部や三条京阪駅周辺で都市再生緊急整備地域を拡大しようとしています。こちらのパネルをご覧ください。竹田駅北側にある、らくなん進都鴨川以北の地域では、ご覧のような都市計画の規制緩和を行うとしています。市長が進める「都市再生」は、用途地区の規制緩和など都市計画そのものの見直し、都市再生緊急整備地域の拡大や立地適正化計画制度を用いた特定地域の極端な規制緩和など、都市計画の規制緩和手段を総動員するものとなっています。しかし、これらによって、本市が掲げる「みんなが暮らしやすい魅力と活力のあるまち」になるのでしょうか、全く違います。
 高層や大型の建物が一部建つかもしれませんが、そのことによって、住環境の悪化と、まち破壊を引き起こしかねません。規制緩和による巨大開発が進んでいる東京都は、国土交通省が2022年に示した「都道府県別の経済的豊かさ」ランキングで最下位の47位であり、再開発が必ずしも豊かさにつながるものではありません。このまま開発中心の市政が続けば、京都市民は住み慣れた地域に住み続けることができなくなり、京都らしいまちなみも、そこに根差してきた市民の生活文化や風情、情緒も損なわれてしまうと危惧しています。
 一方、京都市はこれまで、眺望景観創生条例を設ける際に、「市民による送り火アセスメント」など、京都の景観と文化を守ろうとする市民の積極的な提案を受け止め、視点場の設置といった施策に反映させてきました。こうした姿勢こそが重要です。識者からは「建築物の高さを抑えることで、自然環境と調和した快適で暮らしやすいまちが形成でき、経済活動の活性化との好循環を生む」と提言されています。このような視点が京都のまちづくりに欠かせないのではないでしょうか。以上のことから、市長は、都市計画の規制緩和による大型開発を進めることが都市の発展につながるという開発幻想から脱却すべきです。市民と共に創り上げた新景観政策の理念に立脚したまちづくりとすることを求めます。いかがですか、お答えください。

【答弁→竹内副市長】 「新景観政策」の理念は、高さ規制を一律に引き下げると同時に、各地域の実情に応じたきめ細やかな高さ規制の仕組みを設けつつ、社会経済情勢の変化を勘案して必要な措置を講じるもので、「硬直化することなく刷新を続ける」もの。昨年の都市計画の見直しは、「新景観政策」の理念に立脚し、京都の計画の守るべき骨格の堅持を前提に、「景観」「住環境」「都市機能」のバランスを考慮し、精緻なデータをもとに検証して実施。都市に必要な機能を誘導するもので、大型開発を進めることが目的ではなく、「開発幻想」という指摘は全く当たらない。今後も、京都の美しい景観を保全しながら、様々な課題に対して効果的な施策を融合し、京都の未来を展望して「新景観政策」の理念に立脚しながら積極果敢に取り組んでいく。

3.相国寺北ホテル建設は許可しないよう求める

 また、この間のホテル誘致をめぐり、仁和寺門前ホテル建設計画は住民が京都地裁に提訴しています。相国寺北ホテル建設計画については、「ホテルは建設できない」と用途が規制された第二種中高層住居専用地域内にホテルを建設する計画であり、明らかなルール違反です。私が議会で「用途規制の規定が変わったのか」と質問したのに対して、担当者は「中高層建築物の適正な集積を図るもの」と答弁されましたが、答えになっていません。 
 相国寺北門付近は道路幅員4メートルの生活道路が通る住宅地であり、これに連なって相国寺の境内敷地が広がり静寂な景観を形成しています。この地域に、建築基準法第48条の但し書きを用いて「建築しなければならない」ホテルとは何なのか、市長は市民に説明ができますか。市民は、ホテルや商業施設等の建設が許されない地域であるからこそ、この地に住み続けようとしているのであり、そのことに不利益をもたらすホテル建設許可は、明らかに「公共の福祉」に反します。市長は相国寺北ホテル建設を許可するべきではありません。いかがですか。まずは、ここまでの答弁を求めます。

【答弁→都市計画局長】 宿泊施設の立地が制限されている区域でも一律に禁止されているわけではなく、一定の条件の下で建築は可能。本件は、これまで周辺住民に対し丁寧に説明するプロセスを重ねたうえで用途許可の申請があり、法令に従い適正に手続を進めたうえで許可を行ったため、取り消す理由はない。

【くらた議員】 市長は、これまでの行財政改革で削ってきたくらしの予算を復活すると答弁されませんでした。このことは市長の政治姿勢として極めて重大であることを指摘します。また、相国寺北ホテル建設ですが、建築許可はまだ下りていないということを確認しておりますので、先ほどの答弁については精査を願いたいと思います。

【都市計画局長】 「建築許可はまだ下りていないことを確認しているため精査願う」旨の発言については、相国寺前ホテル建設の許可取り消しについての質問通告であったことから、すでに令和5年3月31日に許可を行っている用途許可について答弁したもの。

4.現行の保険証廃止撤回を国に求め、市民の医療保障を

 つぎにいのちと暮らしにかかわる問題について質問します。
 市民から「保険証はどうなるのか」「かかりつけ医や調剤薬局で『来月にはマイナンバーカードを持ってきてください』と言われ不安になる」「これまでどおりに医療は受けられるのか」などの質問が寄せられます。これは、国が国民の医療保障よりマイナンバーカードの普及を優先し、2024年12月2日から現行の保険証を廃止するとしたことによるものです。
 そもそも、マイナンバー法には国民のマイナンバーカード取得は「任意」であると明記しているのですから、マイナンバーカードの取得を過度に誘導することは違法に値します。ところが、国は今年1月からマイナ保険証の利用率に応じた支援金や一時金で、医療機関に利用促進させ、さらには今年の診療報酬の改定で、マイナ保険証の一定の利用実績などを要件に初診料に80円を加算し、患者の負担まで増やしています。
 一方、これまで国がマイナンバーカードの取得やマイナンバーカードを健康保険証と紐付けた人などへのポイント付与に充てた財源は、約1兆3800億円になっています。巨額の税金を投入してもマイナ保険証の利用が伸びないのは、医療機関の窓口で有効期限切れや被保険者である資格確認が無効と出るなど、保険証の役割を果たせていないからです。国は9月にマイナ保険証を持っていない方に対して当面、職権による資格確認書を交付する通知を出しましたが、このことはすなわち、マイナ保険証が破綻したことを証明するものです。
 市長におかれては、現行の保険証の廃止の撤回と、混乱の元であるマイナンバーカードと保険証の紐づけをやめるよう国に求めるべきです。マイナンバーカードやマイナ保険証がなくても保険証に代わる資格確認書が送付され、今まで通りに医療が受けられることを市民に周知徹底するべきです。さらに、京都市国保においては、マイナ保険証の有無にかかわらず全ての被保険者に資格確認書を送付すべきです。いかがですか、お答えください。

【答弁→保健福祉局長】 マイナ保険証の利用には様々なメリットがあり、健康保険証廃止後も、誰もが必要な時に受診できる状況が確保されている。市国保では、様々な機会を通じてマイナ保険証のメリットをお知らせし、今年度の保険証更新時に個別への周知に努めることなどから、保険証廃止の撤回等を国に求めることは考えていない。
 また、資格確認書の交付は、国の示す取扱いに沿って適切に対応する。

5.国に介護報酬の引き上げを求め、市独自で訪問介護労働者の賃上げを

 つぎに介護保険についてです。
 認知症の家族を介護している方から「夜も眠れず参ってしまう」「施設にいつ入れるかわからない」「ヘルパー不足でサービスを利用できない」などの声が寄せられます。介護保険制度は24年目となりますが、保険料は高くなる一方、サービスはどんどん利用しにくくなっています。制度創設者である元老人保健福祉局長自身が「国家的詐欺」と指摘しているにもかかわらず、国が改善に背を向けたまま、さらに利用抑制を図ろうとしていることは重大です。
 この間、とりわけ問題となってきたのが介護職員の離職です。国が介護従事者の処遇改善措置をとりましたが、それを帳消しする介護報酬の切り下げを強行したことで、低賃金を助長し、介護職員のさらなる離職や介護事業所の廃業を拡大させています。京都市における令和5年度の訪問介護の新規開業は65カ所、廃止は22カ所となっています。市内一つ一つの事業所の規模は、ヘルパーの常勤換算2.6人から5人の小規模事業所が全体の約50%であり、その体制維持と運営の厳しさがあります。日本医労連が実施した訪問介護アンケート調査では4月の介護報酬の引き下げによって経営悪化した事業所が7割に上り、一時金の減額や新規の職員採用が困難な実態が明らかです。  「低賃金では人は来ない」というのが訪問介護現場の切実な声です。市長は介護保険制度の実施主体者として、国に対して引き下げた介護報酬を元に戻し、抜本的に引き上げることを求めるべきです。本市での訪問介護事業所の安定維持を図るため、喫緊の課題として、自治体独自の訪問介護労働者の賃上げとなる取組を行うことを求めますが、いかがですか。

【答弁→保健福祉局長】 介護保険制度は全国一律の社会保険制度であり、国において適切に設定されると認識しており、本市独自に訪問介護の処遇改善を行うことは困難。市として引き続き処遇改善加算の取得支援の取組を進めていく。国に対し、事業者が安心してサービス提供を行える水準の介護報酬の設定を行うことや、介護報酬の引き上げによって保険料や利用者負担の増加につながらないよう必要な措置を講じるよう要望していく。

6.新型コロナ対策の総括を見直し、保健・医療体制の抜本強化を

 また、今夏に新型コロナ感染症第11波が報告されています。新型コロナ感染症対策の教訓として、医師が入院する必要があると診断しているにもかかわらず、自宅や高齢者施設などに患者が留め置かれ、多くの高齢者が亡くなった事実を忘れてはなりません。ところが、国や京都府、本市の総括において、この問題が抜け落ちており、極めて重大であります。
 この背景には、1998年時点で9060床あった感染者用のベッドが、コロナ発生時の2020年は1904床と7150床も削減されていたことがあります。国は改定感染症法で医療機関と都道府県が「医療措置協定」を結ぶことを定め、感染症発生・まん延時の対策をとるとしていますが、肝心の医療人材を増やす施策には触れずじまいです。
 この間、京都の高齢者施設や障害者福祉、医療関係者らが『コロナ留め置き死』、京都府保険医協会が『コロナ禍の医師たち』を発行し、医療制度を改悪してきた30年来の政治の責任を告発し、政策の転換が必要だと指摘をしています。入院ベッド数を減らし続けてコロナパンデミック下でベッド不足を生じさせる中、「医療崩壊を防ぐ」ことを理由に、いのちの選別という人権侵害が行われたことは断じて許されず、繰り返してはなりません。そのために、市長は本市における新型コロナ感染症対策について、こうした実態をもとに総括をし直し、保健所体制を強化すべきです。国に対して、削られてきたベッド数を戻し、医療体制を抜本的に強化することを求めるべきです。いかがですか、お答えください。

【答弁→保健福祉局長】 市も参画する京都府感染症対策連携協議会において対策を検証・総括し、府市一体で感染症予防計画を策定。計画に基づき、新興感染症の感染拡大時には速やかに必要な体制を構築することにしており、本年度から研修の実施による人材養成・資質向上など、平時から保健所体制の強化を進めている。現存病床数が府計画で必要な入院病床数を上回っているため、必要な入院病床数は確保されていると認識している。

7.西陣産地における事業者への支援の強化を

 最後に、わたくしの地元、西陣産地の問題について質問します。西陣織とは、多品種少量生産が特徴の京都西陣で生産される先染の紋織物の総称です。京都での織物作りは、平安京が築かれる前の5世紀頃とされ、平安時代の後期には、宋から伝えられた綾織の技術を職人が独自に研究、そして唐織を開発し、神社や寺院の装飾にふさわしい重厚な織物を制作してきました。その後、幾多の戦禍や1972年の工業再配置法による工場の移転問題、1980年代以降の「海外生産逆輸入」による産地の空洞化に加え、1989年の消費税導入が追い打ちをかけました。2008年、産地内の浅田機料店が閉店した際、日本共産党議員団は産地の危機に対する緊急の対策をと、市長に申し入れてきました。しかし、その後、産地内で最後の砦であった駒野機料店が閉店し、現在、産地組合内に機料部が設置され、技術者の育成がはじまりましたが、あらゆる相談に対応できる機能を回復するには一定の時間を要します。
 2023年度の西陣織の出荷額は204億9100万円、設備織機台数の総数は2371台、それぞれピーク時の8%以下となっておりますが、京都市が守るべき産業です。昨年10月からのインボイス制度により、免税点年商1000万円未満の零細な事業者によって成り立っている西陣産地は、織元メーカーが零細事業者に消費税申告を求めるか、メーカーがその下請け事業者の支払い分にかかる消費税を負担するかが迫られています。このままでは、インボイスを発行する小規模事業者に対する負担軽減措置の2割特例が終了する2026年以降、取引が成り立たない壊滅的事態となることも予想されます。市長は、この危機に対応するため、国にインボイス制度の廃止を求め、西陣産地事業者の実態に応じた直接支援を行うことを求めます。いかがですか。
 京都市は2005年に「伝統産業活性化条例」を施行しましたが、推進計画の見直しで生産獲得目標数を後退させる姿勢が問われてきました。現在、生糸をはじめとした原材料・水光熱費・物価の高騰に加え、道具類・メンテナンス職人の不足などで、関連工程を含む後継者の育成も極めて厳しい状況が進行しています。出機で機織りをする方は「働けど物価の値上がりに太刀打ちできない」と述べ、京縫いの伝統工芸士で約100人の生徒に指導している方は「生徒さんは訪問着に京刺繍を施して一点ものの着物をつくる意欲を持って習いに来る。これが、仕事として成り立つ京都にしなければ、いずれ和装文化も廃れてしまう」と訴えています。近年、産地の現場から「織機が故障したら、廃業せざるを得ない」「部品が手に入らない」などの声があがり続けてきました。
 産地の喫緊の課題はシャットル織機のメンテナンスと後継者育成です。京都市産業技術研究所では、シャットル織機の摩耗部品の代替品と、レピア織機の和装対応について研究・検証が行われていますが、メーカーがシャットル織機の製造を停止したもとで、稼働している約2000台のシャットル織機のメンテナンス機能を確立することが関係者の切実な願いです。丹後からのメンテナンス技師の派遣については、交通費負担が大きく、1件ごとの修理対応ができない深刻な実態です。後継者を確保育成するには、賃金の引き上げが不可欠であります。そこで、市長に要望します。第一に、研究開発されたシャットル織機の代替部品の3Dデータ等を西陣織に携わる人々の共有の財産として活用できるようにし、出機・賃織り職人のもとでも必要な部品の取り換えが安価にできる方策を確立することを求めます。第二に、京都府と連携し、丹後からのメンテナンス技師派遣に対する交通費等の補助を行うことを求めます。第三に、適正な賃金が支払われるよう織元への直接支援を行うことを求めます。第四に、伝統産業設備改修等補助制度は零細な事業者の要望に応え、補助対象30万円の下限を大幅に緩和し、年間を通して利用できる制度へ改善すべきです。いかがですか、お答えください。いま、市長に求められるのは、西陣産地特有の課題を克服していくために立場の違いを超えて関係者の知恵を広く集める場をつくることです。このことを強く、強く求めまして、私の第一質問といたします。ご清聴ありがとうございました。

【答弁→岡田副市長】 インボイス制度は、消費税の軽減税率の実施に当たって適正な課税を確保するために必要であり、国に対して要望を行うことは考えていない。
 織機を継続的に使用できるよう、組合が行っている技術者育成や部品等の対策の取組などを支援するとともに、産業技術研究所において組合や事業者からの個別の技術相談に応じている。代替部品の3Dデータは、産業技術研究所に制作を依頼した事業者が所有している等により、共有することは困難。
 メンテナンス事業者に係る経費は、伝統産業設備改修等補助制度において、交通費も含めて対象。
 適正な賃金の支払いは、商慣行の改善が非常に重要。「きもの安全・安心推進会議」における国策定の指針に基づき、発注事業者が一方的に代金を減額する「歩引きの廃止等に向けた取組」を進めている。
 設備改修支援における下限の緩和は現在考えていないが、より多くの事業者に利用してもらうことは大変重要であるため、今年度に予算を増額。年間を通じて設備改修を行えるよう工夫している。

【くらた議員】 マイナ保険証について一言述べます。市民の医療を受ける権利を保障すべき国が、マイナンバーカードを普及させるために、法律の規定を逸脱して保険証との紐づけを強行したことが、今日のあらゆる混乱の原因であります。市長は、現行保険証の廃止を撤回するよう国に迫るべきです。市民の命に対する責任を果たしていただきたい。
 そして、京都の西陣織物の存続に対する真剣な取り組みを求めます。「いろいろやっている」とおっしゃいますけれども、間尺に合っていません。現場がどれだけの思いで奮闘しているか、その現場の願いに応えるだけの、京都市総体としての努力が必要だということを思います。全力で西陣産地を守ることを求めまして、私の第二質問といたします。ご清聴ありがとうございました。