【声明】2月市会を終えて
2022年3月28日
日本共産党京都市会議員団
団長 井坂博文
一、はじめに
京都市会は3月25日、37日間の2月市会審議期間が終了し、338日間にわたる2021年度市会が閉会しました。
今市会は、新型コロナ感染第6波の爆発的な拡大の中で開かれました。また、2月8日には保育補助金カットをすすめる子ども若者はぐくみ局局長が収賄容疑で逮捕。さらに2月28日には自民党京都府連会長の西田昌司参議院議員ら国会議員、同経験者7人をはじめ同党の京都府議・市議ら52人計59人が公職選挙法違反の疑いで刑事告発されるなど、政治とカネをめぐる大きな問題が起こりました。会期中の2月24日には、ロシアがウクライナに対する武力攻撃を行い抗議と撤退を求める声が広がっています。
一、市長提出議案に対する態度
市長からは、124件(うち人事案件27件)の議案が提案されました。党議員団は、21年度の一般財源200億円の収入増額分を使えば22年度の市民負担増をやめることは可能であると指摘し、予算の組み替え動議を提出しました。動議は他会派の反対で否決されたため、党議員団は一般会計予算、国民健康保険特別会計予算、自動車運送事業特別会計予算、高速鉄道事業特別会計予算、高速鉄道事業経営健全化計画、147人の定数削減を行う職員定数条例、42件の施設使用料・手数料値上げ等70議案に反対し、その他の議案には賛成しました。また追加提案された人事案件27件には賛成し、議員報酬15%カットを共同提案し可決しました。
一、予算関連議案について
2022年度京都市予算は「行財政改革計画」策定後初めての予算であり、大規模な市民負担増と独自福祉施策の後退、補助金削減、職員削減を進めるものです。公共施設使用料・利用料値上げ、手数料見直し、敬老乗車証制度の改悪、高齢者インフルエンザ予防接種自己負担金増額、学童保育料値上げの実施、障害児通所施設利用料値上げ、国民健康保険料の引き上げ、市営住宅の減免見直し等合計26億円の負担増、保育士等の給与を保障する民間保育園補助金をはじめ27億円の補助金削減、市バス・地下鉄の値上げを示しました。党議員団は、21年度は「500億円の財源不足」と大宣伝しながら実際に不足したのは36億円であり「行財政改革計画」の前提は崩れていると指摘。「2025年度に1000億円の公債償還基金を確保しなければ財政が危機に陥る」としていたが1330億円の確保の見通しとなったもとで、市民負担は撤回すべきこと、福祉の増進をはかりながら財政も健全化するのが自治体の役割だと指摘しました。また、北陸新幹線延伸など国言いなりに府市一体で大型公共事業を推進することこそ将来世代に負担を押しつけるものと姿勢転換を迫りました。
〈民間保育園補助金カット〉
「民間保育園等職員の給与等運用事業補助金の再構築」として、一般財源で総額13億円(最大20億円)の補助金削減が提案されました。民間保育園の81%が補助金削減となること、保育士の平均経験年数が長い園や障害児保育に力を入れている保育園など25ヶ園で人件費が賄えなくなる事が明らかになり「給与カットしかないという保育園もある」と副市長が答弁しました。「全体として給与水準を維持・充実する」との当局の説明のごまかしが明らかになりました。保育関係者は実態を告発し、連日市役所前で宣伝、議員への要請など、怒りの声が大きく広がりました。党議員団は、国を挙げて処遇改善をすすめている中、京都市が保育士給与を引き下げるなど認めることはできないと補助金削減に反対。コロナ対応、卒園、新年度準備と多忙を極める時期に大幅な減額を示すなど手続きとしても乱暴で、現職の局長逮捕で信頼が根底から崩れている中、財政調整基金を活用して例年通りの給付を実施すること、少なくとも4月実施は見送るべきと厳しく追及しました。「実施後に十分な検証を行い、状況によっては影響の緩和等必要な措置を講じ(ること)」との付帯決議が可決されました。
さらに、伝統産業設備改善補助金の半減や、京都型耐震・防火リフォーム補助金休止、省エネリフォーム補助金休止、住宅用太陽光発電・太陽熱利用設備補助金休止、小中学生の遠距離通学費助成削減、障害者施設補助金などの補助金削減が打ち出され、党議員団は市民生活と京都経済を支えるべきと休止・削減の中止を求めました。
〈公共施設使用料・利用料値上げ〉
動物園、文化会館、スポーツ施設など公の施設毎に「受益者負担の適正化」を掲げて、138施設の使用料等5億4600万円の値上げに加え、指定管理施設について23年度以降の値上げが提案されました。すでに運営経費のすべてを市民・利用者の負担でまかなっている施設も含めて値上げを提案するなど、公共施設の設置目的に反して公の役割を後退させる提案であり断じて認めることはできません。「ひと・まち交流館」の無料の会議室を有料にすることは市民が行っている公益的な活動の保障をやめることであり、公的責任の放棄そのものであるとして撤回を求めました。
〈国民健康保険料〉
国の政令改正により未就学児の均等割額半減が実施されることは、党が求めてきたことであり一歩前進です。一方で、保険料率の引き上げによる本格的な値上げが11年ぶりに提案されました。府への納付金が20億円増額され32億円の収支不足が見込まれたため、一般会計からの繰入れ18億円の増額とともに14億円の保険料値上げを提案したものです。一方で20年度の実質黒字27億円を「23年度からの保険料値上げに備える」として基金に積み立てました。少なくともこの基金を活用すればコロナ禍での値上げは避けられること、コロナ特例の傷病手当については事業主が対象外となっていることから,独自に支援すべきと指摘し、実現を求めました。
〈市バス・地下鉄経営ビジョン【改訂版】・高速鉄道経営健全化計画、上下水道事業〉
「市バス・地下鉄経営ビジョン【改訂版】」で、市バス8%地下鉄7%程度の運賃値上げが示され、これを踏まえて高速鉄道経営健全化計画が提案されました。党議員団は、「運賃値上げは絶対に避けるべき」こと、「独立採算制」に固執して市民負担を押しつける方針の撤回を迫りました。「公共の福祉の増進」が公営企業の本来の目的であることから、値上げを避ける大目標を立てた上で、国に対し、経費負担原則の緩和、出資・貸付・負担金・補助金等の拡大、利子補給や自治体の繰入への交付税措置拡大等を求めるべきと主張しました。
上下水道事業についても、一般会計からの出資金の休止撤回と値上げ方針の撤回を求めました。また、京都府が22年度末に策定する広域化計画に付き従う姿勢が明らかになりました。党議員団は広域化のメリットは全くないと批判しました。
〈成長戦略〉
行財政改革計画で示された「都市の成長戦略」は、「都市再生緊急整備地域」を活用した高さ規制緩和や「地域未来投資促進法」により市街化調整区域の農地を産業用地に転用するなど、規制緩和によって外からの大企業呼び込みを行うものです。これでは若者・子育て層がまちなかに住めなくなり、定住促進にはなりません。党議員団は、子育て支援の充実と、市内企業の99.7%を占める中小企業の応援と働く人を守ることこそ必要と強調しました。
一、コロナ対策
第6波では、保健所は6号体制による職員応援で562人となりましたが、一日の感染確認数が2000人を超えた日もあるなど対応が追いつかない状況になりました。現場滞在時間が最長4時間半を超えるなど深刻な事態となった救急搬送困難事案は1月366件、2月658件にも及びました。しかもそのなかにはすでにコロナ陽性が確定し、自宅療養中に救急搬送された事例(1月185件、2月454件)は含まれていないことも明らかになりました。亡くなる方が人口あたりで全国でもワーストレベルになり、「命を救う」決意をただすとともに、保健所機能を区役所に戻すことや対策の要となるPCR検査体制の抜本的強化の必要性を強調しました。
コロナ禍が続き、中小企業の直接支援が切実に求められますが、独自の支援策は全く示されていません。党議員団は、市内の伝統産業や商店街関係者からの聞き取りやアンケートを行いその声をもとに、市内中小・零細事業者の実態を職員が直接つかみ支援を行うよう求めました。さらに原油高騰による支援の必要性を訴えました。
学生支援については、コロナ禍で困窮する学生支援の取り組みが民間レベルで広がっており、市として連携して支援を行うなど踏み込んだ対策を求めました。
一、職員削減、行政執行体制
147人削減の職員定数条例が提案されました。党議員団は、「行財政改革」で職員550人の削減を行えばコロナ対応の応援体制の基盤さえも奪うことになる、と厳しく指摘し撤回を求めました。
新たに府南部9自治体消防の消防指令センター共同運用に向けた基本調査の予算が提案され、党議員団は、今後の財政の見通しや人員体制等の問題を指摘しました。当局は「各本部でやっていた業務がそのまま引き継がれるのか不安の声を聞いている」「(経費について)額だけで見ると大きな減額にならない可能性もある」などと答弁しました。
一、ジェンダー平等
コロナ禍で大きな打撃を受けているのが女性であり、特に非正規で働く女性が雇用の調整弁として使われていることを告発し、市長の認識をただすとともに必要な支援につなげられるよう相談・支援の充実を求めました。就活セクハラの根絶、痴漢被害の防止に向けた取り組みの強化などを求めました。副市長は就活セクハラについて「優越的な関係を背景とした性的な言動によって、個人としての尊厳や人格を不当に傷つける人権に関わる許されない行為」との認識を示しました。
また、日本におけるジェンダー平等の圧倒的遅れについての認識と男女の賃金格差について開示の検討をするとした国の動きについての評価を質しました。副市長は賃金格差について「格差が大きい」と答弁。賃金格差の開示について、市当局は局別質疑で「大事な動きなので注視していきたい」と答弁しました。
痴漢加害の未然防止についても、交通局や民間鉄道事業者に申し入れた内容を示し対策を求めました。副市長が「痴漢・盗撮については被害者の心に深い傷を与える許されない行為であって犯罪である」と述べました。
一、請願・陳情
今議会には、保育・学童保育料値上げ反対、敬老乗車証の改悪実施中止、国保料値上げ反対、市民活動総合センターの使用料有料化反対、北山エリア開発計画の都市計画からの削除、難聴者への補聴器購入補助制度創設、全員制の中学校給食の実施、教育条件の改善、証明書発行コーナーの存続、大岩山の建設残土の全量撤去、ヘイトクライム根絶、西陣織産地への機械メンテナンス対策強化など請願6件、陳情351件が提出されました。
一、意見書・決議
「姉妹都市キエフ市をはじめとする各都市へのロシアによる軍事侵攻に抗議する決議」を、3月1日の本会議において全議員の共同提案で可決しました。党議員団は、市長が世界歴史都市連盟の会長として「戦闘の即時停止と軍隊の即時撤退を強く求める」メッセージを発したことを評価し、原発への攻撃やプーチン大統領の核兵器による威嚇発言の中で、日本政府に対し核兵器禁止条約批准を求める立場からのメッセージを発信するよう求めました。市長から「平和首長会議の一員として禁止条約への参加を求めている」「非核三原則は堅持すること」「全国の首長と連携して取り組みたい」との答弁を引き出しました。
「加齢性難聴者に対する補聴器購入に係る公的補助制度の創設を求める意見書」「ウクライナからの避難民受け入れに対する地方自治体への支援を求める意見書」を全議員の共同提案で可決しました。「介護職員の処遇改善に関する手続の簡素化と対象職種の拡大を求める意見書」を全会一致で可決し、党議員団は討論で必要な改善を求めました。「地方創生と感染症対策に資するデジタル化の推進を求める意見書」については反対し討論で問題点を指摘しました。
「豊田恵美議員に対する問責決議」を開始本会議の冒頭、全会一致で可決しました。また、生計同一者に対する人件費に政務活動費を充てることを禁止するよう「運用に関する基本指針」を改正し、雇用契約書等の提出を義務づけました。引き続き、政務活動費の厳正な執行を求めます。
一、終わりに
3月24日、京都府知事選挙が告示されました。北陸新幹線延伸や北山エリアの開発など、国・府・市一体で進める大規模な公共事業をストップさせ、市民のいのちと生業を守る府政・市政の実現ために、党議員団はみなさんと力を合わせ、全力を挙げて奮闘します。