【声明】9月市会を終えて - 見解・声明|日本共産党 京都市会議員団

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日本共産党京都市会議員団
団長 井坂 博文
一、はじめに
 9月市会は、9月22日に開始し、衆議院の解散をうけ、10月18、19日の市長総括質疑を終了した後、審議を中断し、再開の後、11月5日に終了しました。
 総選挙は、9年間の安倍・菅自公政権によるコロナ失政と国政私物化などの政治からの転換を求め、市民連合と4野党が20項目の共通政策で合意し、政権交代をめざしてたたかった初めての選挙となりました。お寄せいただいたご支援に心から感謝を申し上げます。

一、市長提出議案に対する態度
 市長からは、敬老乗車証制度の改悪案、学童保育利用料値上げ案をはじめ、議案49件が提出されました。党議員団は、一般会計補正予算、高速鉄道事業決算、呉竹総合支援学校新築工事関連議案をはじめ29議案に賛成し、一般会計、国民健康保険事業特別会計、介護保険事業特別会計、後期高齢者医療特別会計、中央卸売市場第一市場特別会計、公営企業のうち自動車運送事業、水道事業、下水道事業の各決算、「行財政改革計画」の具体化である敬老乗車証条例改正と児童館学童保育所条例改正、デジタル関連法に伴う条例改正議案、児童福祉センター・こころの健康増進センター・地域リハビリテーション推進センターの一体化施設新築工事関連議案、高度技術研究所ビルを売却する不動産の処分等20件に反対しました。
 他の会派・無所属議員は決算特別委員会に付託された決算関連議案の全てを認定する態度をとりました。

〈一般会計補正予算〉
 一般会計補正予算については、臨時交付金活用可能額全額を充て、中小企業に対する給付金の性格を持つ中小企業再起支援補助金「応援金」、個々の従事者を支援する伝統産業従事者支援、商店街支援や、就労支援B型事業所工賃助成、感染拡大防止対策を行う等必要なものとして賛成しました。党議員団は事業者の実態をふまえ給付金の支給を求めてきましたが、「応援金」という形で一定反映したものとなりました。その上で、マイナンバーカード普及促進、GIGAスクール構想のさらなる推進等、問題点を討論で指摘しました。

〈敬老乗車証条例改正〉
 敬老乗車証については、制度の効果の検証も行わないまま「持続可能性」を口実に、対象年齢を75歳以上に引き上げ、負担金を3~4.5倍化、合計所得700万円以上の方を対象外とし、市の負担を今後4年間で71億円、経過措置終了後の令和14年度単年度で33億円削減する改悪案が示されました。8月に内容が明らかにされて以後「敬老乗車証を守ろう!連絡会」を中心に市への申し入れ、各会派への要請、宣伝、座り込み、委員会・本会議前でのスタンディングアピール等が取り組まれ、請願・陳情が7月特別市会で474件、今9月市会だけで1,004件提出されました。党議員団は運動と連携し、本会議、委員会で徹底審議を行ってきました。結了委員会と終了本会議で「財政危機の前提が崩れており市民へのしわ寄せを避けながら打開克服する方向について市会として議論を深めるべき」として「継続審査」を求める動議を提出し、現行制度を維持した上で敬老乗車券を導入する「修正案」を提出しました。また、討論で改悪案は「敬老乗車証を事実上解体するものであり高齢者や家族の暮らしをさらに圧迫するもの」「制度の効果についての検証を全く行わないままの一方的な提案」だとして、市民福祉向上にこそ財政は使うべきと市長の姿勢を批判しました。
 改悪案は、自民、公明、民フの賛成で可決されました。
 京都党、維新は「生活保護世帯の負担0円は公平でない」などとして、負担金一律2万9440円に値上げする「修正」提案を行いました。党議員団は「負担金が高額のため交付を受けられなくなる方がでる」「市民の願いとはかけ離れている」として反対しました。

〈児童館学童保育所条例改正〉
 学童保育利用料について、市長は学童保育に「応益負担」の考えを持ち込み、長時間、土曜日、夏休みなどの利用料を値上げし、保護者負担を1億6千万円増加させ、低所得者ほど増額幅が大きくなる提案を行いました。
 党議員団は、保護者の実態、学童保育現場の実態を示して論戦、世帯によっては、2.6倍もの値上げとなることを告発。「値上げは4割の世帯にとどまる(月額)」との市当局の説明について、年額で6割の世帯が値上げになる事実を隠ぺいしていたことを批判しました。また、「受益者負担」の考え方を持ち込み、利用控えとなれば、子どもたちの放課後の安全や成長・発達の権利を保障できなくなる重大事態を招くとして「全国で1、2を争う高い学童保育利用料への値上げは都市としての持続可能性を細らせるものであり断じて認められない」と厳しく批判しました。
結了委員会と終了本会議で「継続審査」を求める動議を提出、動議は京都、維新、無所属議員も賛成しましたが、他会派の反対で、否決され、市長提案の改悪案は、自民、公明、民フの賛成で可決されました。
 何れの議案も、コロナ禍で市民生活が厳しくなっているときに、過大な財政危機キャンペーンを行い、「受益者負担」の名のもとに市民の間に対立と分断を持ち込み、「行財政改革」の名で市民負担増を行うものです。市長提案に賛成したのは、過半数の33人をわずかに上回る36人にとどまりました(民フの議員1名が採決時に退席)。住民のみなさんの運動が議会を追い詰めています。党議員団は実施の中止を求め、引き続きみなさんと一緒に奮闘する決意です。

〈2020年度決算関連議案について〉
 2020年度決算関連議案については、認定しない理由を討論で述べました。
 一般会計については、市民のくらしが厳しさを増す中、コロナ対策を何より優先し市民生活を応援することが求められていたにも拘わらず、市民しんぶんやメディアも使って財政危機キャンペーンを行い、市民を脅して福祉切り捨てにまい進する一方で、芸大移転や市庁舎整備などの見直しは全く行わず、財政を破綻させかねない北陸新幹線延伸計画などの大型工事は推進する姿勢を批判しました。
 新型コロナへの対策については、病床の削減と保健所の統廃合が医療崩壊を招いたとし、検査体制充実や公衆衛生行政の見直しが必要だと指摘しました。さらに、高額所得者や大企業の市民税の引上げなど収入増加策についても不十分だと述べました。若者支援や中小企業支援を強く求めました。
 国民健康保険特別会計については、コロナ禍において保険料の値下げ、保険料減免や傷病手当の市独自施策が具体化されなかったと述べ、コロナ特例減免の改善を求めました。介護保険特別会計については、認定・給付業務の集約化・民間移管が行われ、調査内容についての丁寧な聞き取りができなくなり、的確に判定される努力が後退したことを指摘、改善を求めました。
 公営企業会計については、福祉の向上を図り市民の命と暮らしを守るべきと指摘しました。
 上下水道事業については、水道料金の福祉減免制度創設を拒否し、財政効率を目的に浄水場・下水処理場の運転管理業務等の民間委託がすすめられ、職員削減と官製ワーキングプアを増大させたと指摘しました。水道の広域化は行わずこれまで通り自治体間の連携に留めることを府に意見すべきと指摘し、下水道への出資金を休止しないよう求めました。
 市バス事業では、「交通事業者として福祉施策的な観点で考える必要は無い」との立場を批判、管理の受委託について「財政効率だけを追求すると、事業そのものを破綻させる」と指摘、直営に戻すことを求めました。コロナ禍での公営事業の減収補填は国の責任であり、全国の公営企業と連携し減収補填を勝ち取ることが必要だと指摘しました。
 高速鉄道事業については、緊急事態宣言期間の利用8割削減を目標に掲げ減便や運休を実施。運賃収入の大幅減少により累積資金不足が370億円となり、決算で財政健全化法に基づく資金不足比率が62.6%と経営健全化基準の20%を超え、健全化団体になり経営健全化計画を定めることとなりました。このため個別外部監査契約を結ぶ議案が提案され可決しました。党議員団は安全対策を進める決算を認定したうえで、「日本一高い地下鉄運賃を更に上げるのか」との市民の不安の声を紹介し、これ以上の運賃値上げは回避する方策を講じるよう求めました。

一、論戦の特徴
〈新型コロナウイルス感染症に対し、命最優先に対策強化・市民生活応援を〉
 党議員団は、感染の第5波を教訓に命を守ることを最優先にした対応が求められているとして、大規模な検査、行政区に保健所機能の再構築、医療提供体制の充実、また少人数学級早期実施と休校等に伴う学びの保障を求めました。生活保護については扶養照会の廃止、生活保護は権利であり正しい情報提供を広く行うこと、ケースワーカーの増員を求めました。大規模検査について市長があくまで「実効性が薄い」として実施しない姿勢を示したことについて、MICE参加者への検査補助を補正予算で打ち出していることは無症状者への防疫的検査の必要性を認めているものだと指摘し、実施を求めました。
 学生の困窮が深刻になっており、実態調査と学費負担軽減や生活支援の必要性を訴えるとともに、大学でのPCR検査実施を求めました。認知症施策では地域包括支援センターの体制強化、認知症にやさしいまちづくり推進の具体化を求めました。介護保険補足給付の見直しによる影響について実態調査とともに対策を求めました。

〈中小企業・労働者支援〉
 コロナ禍での中小業者の厳しい実態を示して、コロナの影響を受けた事業者に対して直接給付、無利子・無保証融資の復活、返済猶予を求めました。企業立地促進制度補助金について内部留保を増大させているなど資金力のある大企業は対象から外すべきと求めました。また、公共工事設計労務単価が引き上げられている中で、京都市の公共事業に従事する労働者の賃金が下がっている実態を示し公契約基本条例に賃金条項を盛り込むべきと強調しました。

〈行財政改革計画の撤回を〉
 市長の「行財政改革計画」案に対する市民意見は9000件を超えて寄せられました。市長はこれら切実な市民意見を「行財政改革計画」に全く盛り込まず、あくまで補助金削減や使用料手数料の値上げ、施設の統廃合、事業の縮小廃止を進める立場です。党議員団は、子育て支援では、コロナ禍の子育て世帯への影響を受け止め、保育士の処遇改善や小学生のう歯対策事業などを見直すのでなく総合的に対策を推進すべきと主張しました。また区社協の家賃等の減免廃止や補助金の削減についても行うべきでないと指摘しました。福祉・住民サービスを削減することを結論にした「財政危機キャンペーン」を中止するべきこと、福祉後退は市長公約違反であると主張しました。
 また、市長は、過去の大規模投資事業や高速道路などのムダな事業への反省もしないまま、北陸新幹線や堀川地下バイパストンネルなどの大型事業を推進すると表明し、党議員団はこれらの財源を確保するために市民負担を押し付けようとしていることを厳しく追及しました。府市民総行動など広範な市民運動と連帯し、「行財政改革計画」の撤回を求めました。
4箇所の証明書発行コーナーを来年度から廃止する計画、市バス・地下鉄運賃を値上げする方向、補助金使用料・手数料見直しの方向性が今議会中に示され、党議員団は市民負担押しつけはやめるよう主張しました。
 職員を市長就任以来3600人削減したことを批判し、コロナ対応にあたる保健師等が過労死ラインを超える超過勤務を余儀なくされてきたことを告発。「行財政改革計画」でさらに削減する計画は市民サービスの低下につながるとして人員削減計画は撤回するとともに公務の委託化等アウトソーシングからの転換を求めました。

〈気候危機・ジェンダー平等〉
 地球温暖化による甚大な被害を回避するためには2030年までに二酸化炭素の排出を半減させ、2050年までに実質ゼロを達成する必要があり、国や京都市の目標を引き上げるよう求めました。北陸新幹線延伸計画は温暖化対策の観点からも中止すべきと迫りました。
 ジェンダー平等の課題では、コロナ禍で女性の困難が浮き彫りになり、男女賃金格差の是正、女性の貧困解決に向けた取り組みが必要と述べ、ジェンダー平等推進局の設置、条例の制定を求めました。

一、請願・陳情について
 本市会には、請願権に基づき、請願7件、陳情1145件が提出されました。
 請願については、学童保育利用料における応益負担の撤回、小学校のような全員制の中学校給食の実施、新型コロナウイルス感染症拡大防止協力金の非課税措置、新型コロナウイルス感染症の影響による国保等の減免の充実・営業補償を求める請願が提出されました。新型コロナウイルス感染症の影響に対する営業補償を求める請願については、党議員団以外の反対で否決されました。党議員団は「繰り返し陳情や請願が出されているのは、厳しい経営を強いられていることが原因であり、実態に見合った支援が必要」と討論で述べました。
 また、陳情については、敬老乗車証制度の見直し案の撤回、北山エリア整備計画の具体化を進める地域まちづくり構想見直し、北部山間地域における建設残土に関する指導強化、伏見工業高校跡地活用に係る住民からの意見聴取を求める陳情等が提出されました。

一、意見書について
 「出産一時金の増額を求める意見書」は全会一致で可決されました。
 「地方財源の充実を求める意見書」について、党議員団は反対し「コロナ禍での対応において地方税制の充実確保が強く望まれることはその通りであるものの、コロナ禍で厳しさを増す事業者に固定資産税の減免措置等を廃止するよう求めることは認められない」と討論しました。「離婚後の子どもの養育について家族法の整備を求める意見書」については、党議員団は反対し、否決されました。

一、最後に
 2月予算市会に向けて、「行財政改革計画」の運動や議論が正念場を迎えています。コロナ禍に住民の福祉の増進を図る自治体の役割を今ほど発揮すべき時はないと、市民のみなさんと取り組んできた運動をさらに広げて、市政転換を勝ち取るために引き続き力を尽くします。
また、選挙後、改憲への動きが加速化されています。現在、改憲勢力が3分の2未満である参議院の来年夏のたたかいこそが決定的です。京都府知事選挙、統一地方選挙も含めて、勝利、躍進を勝ち取るために全力をあげます。

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