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【声明】
2021年6月8日
公的責任を投げ捨てる「聚楽保育所廃止条例」の可決にあたって
日本共産党京都市会議員団
団長 井坂 博文
6月1日、5月議会終了本会議において、自民、公明、民主・市民フォーラム、無所属の賛成多数で、市長提案の京都市聚楽保育所廃止条例案が可決されました。党議員団は、議論が尽くされていないとして同条例案の継続審査の動議を提出、賛成少数でこれが否決された後、条例案自体に反対しました。
元々、同保育所は、市の「民間移管」方針の対象とされてきましたが移管先が見つからず、ようやく昨年9月議会において、移管先福祉法人を特定して移管議案が提案されました。ところが同議会中に同法人が辞退、市長が議案を撤回したものの、そのわずか半年後の今5月議会で、突如、保育所自体の廃止提案に至ったものです。
今回の問題点の第一は、廃止条例議案は自治体が負っている公的責任を投げ捨てるものです。児童福祉法は「地方自治体は児童が心身ともに健やかに育成されるよう児童の福祉に関する支援に係る業務を適正に行う」と明記しており、その一番の具体化が、自治体が直接、保育所を運営することです。しかし本市の市営保育所は、他都市に比べ元々少なく、市内保育所のわずか5%を占めるにすぎません。にもかかわらず、今回の「廃止」は、この大原則に真っ向から反し、市営保育所の数も割合も減らす点で、まず大問題です。
第二は、民間であっても保育所としては存続という従来方針から、今回、その保育所自体の廃止との方針変更について、正当な理由は示されないままです。近隣の児童数と園定員の需給調査は、定員外入所分を供給枠として数える、途中入所を考慮しないなど、あり得ない調査であり、廃止に結論を導くための意図的なものでした。
第三に、今回の廃止は、昨年末からの「行財政改革」方針が大きな要因であることが委員会質疑からも明らかになっています。大型事業の浪費や国の行財政制度政策への批判的観点を欠落させたまま、「財政危機」を錦の御旗として具体化されていることも大問題です。従来からの市営保育所の民間化・縮小路線に、この計画が加味されました。今回の経過は、市の公的責任の放棄、市民の暮らしと福祉へのしわ寄せと縮小、切り捨て策が、未来を担う子どもたちの権利を脅かすことさえ例外でないことを示しています。
第四に、当事者である保護者への説明不足も、今回の一連の経過の大きな問題点のひとつです。「市長が決めたから」、「議会が決めたから」だけでは、自治体運営は通用しません。住民主権が貫かれるべきであり、施設の廃止方針ともなれば、少なくとも合意と納得が条件とされなければなりません。今後の保育内容について、集団保育が保障されない方向が強まっていくことは、児童の発達成長を保障していく環境が損なわれていくという意味で重大問題です。廃止決定にかかわらず、少なくともこの点は、今後、何らかの打開策が講じられなければなりません。
第五に、今回の党議員団の継続審査の提案は、「慎重審議を」との多くの関係者の期待に沿ったもので、否決されたことは議会のチェック機能を果たし、団体意思の決定を行う京都市会のあり方が大きく問われる事態となりました。
今回保育所の廃止が可決されたとはいえ、議会の4割強の反対があったことは大きく、保護者や関係者の皆さんの大きな運動の成果であり、市長は重く受け止めるべきです。施行は6年後の2026年度末とされています。議会と世論の力関係を転換すれば存続は可能です。党議員団は、この6年間、保護者や関係者の皆さんと力を合わせ、同保育所の、地域での子育て支援の拠点としての役割等、市営保育所としての存在意義の発揮を求め続けるとともに、今後とも、子どもたちの発達と子育て世代の働く権利の拡充、本市の保育行政の前進をめざし、引き続き奮闘する決意です。
以上