【声明】 9月市会を終えて - 見解・声明|日本共産党 京都市会議員団

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【声明】9月市会を終えて
2020年10月30日
日本共産党京都市会議員団
団長 井坂 博文
一、はじめに
 9月市会は9月23日から35日間の審議期間で開催し、10月27日に終了しました。本市会は、新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、くらしと生業に深刻な影響と不安が広がるなかで開かれました。
 9月25日、党議員団は、「政府が野党の臨時国会開催要求にも背を向け、今夏、必要な財政措置を講じなかったことが事態の悪化を招いている」として、市長に対し「コロナ禍の下、中小・小規模事業者のくらしと生業を守るための緊急申し入れ」を行いました。
 要望項目である「消費税の減税や持続化給付金・家賃支援給付金の追加支給を国に求めること」「京都市としても独自に制度を創設すること」「中小・小規模事業者の全件調査実施等から実態に即した政策を行うこと」等は、年末にかけて雇用や経済が深刻な事態となるなか、喫緊の課題となっています。

一、市長提出議案に対する党議員団の態度について
 市長からは、合計73件の議案が提出されました。党議員団は住民訴訟への抑制となる「京都市長等の損害賠償責任の一部免責に関する条例の制定」、市営住宅戸数を減らす「市営住宅条例一部改正」、GIGAスクール構想を進めIT機器を東京・大阪の大企業から調達する「動産の取得について」、管理者の常駐や連棟の営業規制の願いに応えていない「京都市旅館業法の施行及び旅館業の適正な運営を確保するための措置に関する条例の一部改正」等19件に反対し、「一般会計補正予算」「指定管理者の指定」等34件の議案に賛成しました(継続審査1件、撤回2件)。決算特別委員会に付託された17件のうち2019年度一般会計決算、国民健康保険会計決算、水道事業会計決算、下水道事業会計決算、自動車運送事業会計決算、高速鉄道事業会計決算など9件を認定せず、残余の8件の議案を認定しました。他会派は、日本維新の会が一般会計決算を認定しませんでしたがそのほかは全て賛成・認定しました。
 合計三件の付帯決議・付す意見について、党議員団は、GIGAスクール構想を進める「動産の取得についてに対する付帯決議」、福祉経費を含む徹底した行財政改革を求める「一般会計決算に付す意見2」については反対しました。また、大型汎用コンピュータオープン化事業について事業の総括を行い損失額も含めて早急に報告することを求める「一般会計決算に付す意見1」については賛成し、全会一致で採択されました。

〈コロナウイルス感染症対策等2020年度一般会計補正予算について〉
 党議員団は、一般会計補正予算については、コロナ対策として必要なものであることから、賛成したうえで問題点を討論で述べました。
 第一に、543億円のうち500億円が中小企業融資預託金であり、秋冬の感染拡大への対応や経済対策として極めて不十分であることを指摘。国に財源措置を求めるとともに、続く経済の低迷に対する下支え支援策を打ち出すことを求めました。
 第二に、コロナ対策を行う保健師等の人員を人材派遣会社から確保する予算措置について、これまでの職員削減方針の矛盾や保健所集約化が大きな障害となっていることを指摘。保健師等をはじめとする市職員増員や保健所を行政区に戻し体制を立て直すことを求めました。
 第三に、文化芸術活動の両立支援補助金について、文化芸術活動を実施し継続できるよう施設利用料等について補助するもので必要と述べ、先着順での締め切りを見直し申請者すべてに対応できるよう予算を増額することを求めました。
 第四に、「出前館」言いなりで実施したデリバリー支援は、飲食店の要望ではなかったため利用が少なく、大幅な減額補正となる一方、伝統産業つくり手支援事業・商店街緊急支援補助事業は応募多数のために大幅増額補正となったことを指摘。悉皆調査等で実態を把握できる産業観光局職員体制強化を行い、有効な下支え施策を行うよう求めました。


〈2019年度決算関連議案について〉
 2019年度決算関連議案について、討論で認定しない理由を述べました。
 一般会計決算については、第一に、消費税増税で景気が落ち込むなか、新型コロナウイルス感染症が市民の暮らしと営業を追い込んでいるときに増税の公共料金への転嫁8億3千万円など市民負担を押しつける方針を示したこと、第二に、市職員の削減や民間委託など行政の公的責任を後退させていること、第三に、財政危機を強調する一方で不要不急の大型公共事業を聖域化していること、第四に、新景観政策の高さ規制などの緩和や宿泊施設拡充誘致方針が地価高騰等を招き若い世代の人口流出を招いていること、第五に、気候危機にふさわしい行動がされていないことを述べました。また、国民健康保険会計決算についても、保険料引き下げと全ての被保険者への保険証交付を求めました。

 水道事業特別会計決算、下水道事業特別会計決算、自動車運送事業特別会計決算、高速鉄道事業特別会計決算については、第一に、運賃や上下水道料金・使用料への消費税増税分の転嫁を行い、市民負担を増やした年度であり、公共の福祉の増進に反するものであること、第二に、民間委託化をすすめることは行政の公的責任を後退させ官製ワーキングプアを増大させる結果を招いていること、第三は、交通事業について、交通不便地域の解消等市民の利便性向上に対して困難であるという態度に終始していることを理由として述べました。

〈市税条例の一部改正、聚楽保育所・じゅらく児童館廃止条例案について〉
 京都市市税条例の一部改正については、今市会で議決せず、全会派一致で継続審査となりました。市独自減免の廃止について、委員会の審議では、提示している影響について「推計値であり、実際にはどうなるか定かではない」「今後保健福祉局などと調整する」など無責任な答弁が繰り返されました。
 党議員は、「新たな市税1.6億円を得るために、減免に伴う福祉施策の負担軽減に対する国の補助10.7億円を捨てるもの」「福祉増進を図る自治体の役割の投げ捨ては許されない」「行財政審議会の先取りである」と厳しく批判しました。他会派の議員からも、「福祉部局とどのような議論をしたのか」「影響を受けるのは、生きるか死ぬかの人だ」など、批判が続出しました。党議員団は、継続審査とすべきと主張、他の会派も継続審査を主張し、9月市会での議決は行われませんでした。
 引き続き、11月9日の総務消防委員会で議案審査が行われます。また、11日の教育福祉委員会でも報告されることとなりました。11月市会の冒頭にも議決が狙われています。さらに市民の声を集め、皆さんとともに市独自減免の廃止撤回を求めて奮闘する決意です。

 また、聚楽保育所・じゅらく児童館廃止条例案について、移管先候補者である社会福祉法人から辞退したい旨の申し出があったことから、市長から議案の撤回が提案され、了承されました。この間すすめてきた民間移管方針の矛盾と混迷、破綻を示すものであり、民間移管はやめるべきです。

一、議員提出議案に対する党議員団の態度について
 議員提出議案である意見書について10件が提出されました。うち、5件が全会一致で採択されました。
〈義務教育における30人学級の推進を求める意見書・医療機関への財政支援及び公衆衛生の充実・強化を求める意見書等について〉
 「義務教育における30人学級の推進を求める意見書」は、「全ての子どもたちに最適な学びを保障する指導体制の整備を行うことが喫緊の課題である」として、国において、30人学級の実現は義務教育という日本の教育政策の根幹に関わる部分であることも十分に踏まえ、標準法を改正し、適切な定数措置と財政措置が行われることを要望するものです。今市会には、市民から意見書提出を求める「少人数学級実現を要請する」請願・陳情が提出されており、運動が議会を動かしました。党議員団は引き続き少人数学級の実現のために力をつくします。
 また、「医療機関への財政支援及び公衆衛生の充実・強化を求める意見書」は5月市会の「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けた医療機関等に対する支援の拡充を求める意見書」に続くものであり、深刻な実態と関係者の切実な願いを反映したものです。他、「新型コロナウイルス感染症の影響下における公営企業の損失補填を求める意見書」「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う地方財政の急激な悪化に対し地方税財源の確保を求める意見書」もコロナウイルス感染症の影響に対するものであり、重要です。
〈介護報酬の特例措置中止等の意見書について〉
 介護事業所が利用者に対し2区分上位の請求が出来るとする厚生労働省の通知が現場に混乱をもたらしています。自民・公明・維新等提案の「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適切な介護報酬への改定を求める意見書」について、党議員団は反対し、「介護サービス事業所の減収対策について、介護報酬の特例措置を中止し直接支援を求める意見書」を提案。討論に立ち、自民・公明・維新等提案の意見書では今般の事態を解決することが出来ず、介護報酬改定まで待てるものではない、利用者負担に跳ね返る措置をやめることと事業者への直接支援を求める党議員団の提案こそ求められていることを述べました。
 その他、「地方自治体のデジタル化の着実な推進を求める意見書」「コンビニ交付サービスを活用したり災証明書の交付を求める意見書」「GIGAスクール構想への継続的な財政支援を求める意見書」には反対しました。

一、論戦の特徴
国と一体に「自助」を押し付け、公務・公共サービス後退・産業化をすすめる市政の抜本的転換を
 党議員団はコロナ禍の下での深刻な市民生活の実態を示し、これまでからの公務・公共サービス後退・産業化をすすめる「自助」押しつけ政治の転換を求めました。
〈国にしっかりものをいう市政への転換〉
 菅政権の「自助・共助・公助」論を批判し、公的役割果たすよう求めました。市長は「民間と行政の役割分担にも取り組んでいくのが新しい地方自治体のありかたである」と答弁しました。三位一体改革以来の地方財源削減についても「三位一体改革は・・理念そのものは正しかった」と述べ、国追随のまま、市民負担を押し付ける姿勢を示しました。自治体の88%が「コロナで財政が悪化」を見込んでおり、地方財源を削ってきた国と一体に住民に自助・自己責任を押しつけるやり方では活路を開けません。市当局に応能負担の原則・累進課税の原則をふまえた税制とすることを求めるとともに、自治体予算の抜本的増額を国に求めるよう追及しました。
 また、党議員の代表質問で「コロナ感染拡大を自然災害と位置づけて災害基本法等を適用し、思い切った財政出動をするよう国に強く求めること」を求めました。先般、大都市がある都道府県議会の議長でつくる13都道府県議会議長会が新型コロナ対策を「災害」とするよう要望をまとめました。コロナウイルス感染症というかつて経験したことのない未曾有の事態だからこそ、国にしっかりとものを言う立場が必要です。
〈職員削減方針の破綻〉
 コロナ対策の担当保健師が、残業が月200時間を超える等自らの命を削って働くことを余儀なくされ、人材派遣会社から保健師・看護師を受け入れなければならない事態となったことを告発し、公共サービスが維持できていないことを指摘しました。また、美術館職員の労基法違反の働かせ方について、市長に対し人事委員会は初の是正勧告を出しました。また、区役所の集約化で災害時の避難所への職員配置が出来ない重大事態が発生したこと、ゴミ収集業務にあたる技能労務職の民間委託をすすめ、「業務継承について支障をきたしかねない」との答弁がなされるなど、事態は深刻であることが浮き彫りとなりました。党議員団は、職員削減が破綻しており、増員による打開を行うよう求めました。
〈公営企業の公共性発揮を〉
 水道事業で行われている検針業務の委託や市バス清掃業務の委託が最低賃金に張り付いていることを明らかにし、官製ワーキングプアを増大させる「経済性発揮追求」の問題点を明らかにし、職員削減とあわせて、技術の継承・想定外の災害時の対応に課題を生むことを指摘。コロナ禍での損失補填について、独立採算制を見直し、市民の足としての役割を思い切って重視することで、突破することを求めました。

不要不急の大型公共事業「聖域」市政こそ転換し、個人・中小事業者支援・くらし福祉応援へ
 毎年この時期に示される来年度予算の見通しにおいて、従前の300億円規模から、500億円の財源不足額としたことをめぐり、財政運営についても今議会において大きな論点となりました。
〈不要不急の大型公共事業の見直しを〉
 これまでのやり方を改めるどころか、行財政審議会を軸とし、コロナに便乗してくらしや福祉の予算カットをすすめようとしていることを批判。大型汎用コンピュータのオープン化で巨額の事業費を投じたにもかかわらず事業をいったん中止する一方で、不要不急の公共事業を温存していることを明らかにし、北陸新幹線延伸・堀川地下バイパストンネル・三施設一体化事業・鴨川東岸線第三工区の中止、市立芸大再整備の練り直しを求めました。市長は、堀川地下バイパストンネルと北陸新幹線延伸等について「国の事業として行われているもの・・・地方負担を最大限少なくするよう求めている」と答弁。「投資的経費は抑制してきた」「社会福祉関係経費は2倍以上」と福祉削減方針を重ねて表明しました。
〈個人・中小事業者支援〉
 消費税増税と、続くコロナ禍で大変な状況となっている中小零細事業者の経営実態を示し、実態調査と直接支援を求めました。当局は直接支援について「国、府との連携が必要」「現金給付について一単独自治体で可能か」と述べ、悉皆調査に背を向ける答弁にとどまりました。国との太いパイプ・府市協調路線の限界が明らかになりました。国の政治をそのまま具体化する市政から、主権者住民の実態から出発し、国にも掛け合い具体化する自治体本来の責任を果たすことが求められます。
 また、宿泊施設拡充・誘致方針や新景観政策の高さ規制の緩和等が民泊バブルと言われる投機行為を生み出し京都経済の形をゆがめてきたことを批判。外需頼み・インバウンドを、あてこむ観光政策の転換を求めました。
〈くらし・福祉応援〉
 党議員団は、敬老乗車証、学童う歯対策事業、民間保育園補助など市独自施策の見直しは論外であり、ゆたかな福祉と子育て支援策と徹底した中小事業者応援で地域経済をあたため、結果として税収を増やす「住み続けられるまちづくり」をすすめることが自治体の役割であることを主張しました。
 コロナ感染症防疫目的のPCR検査と同時に、季節性インフルエンザとの混在が予想されることから、予防接種の無料実施を求めましたが、全員接種すれば11億円必要と背を向ける答弁を行いました。国民健康保険の減免支援の必要性を指摘。国保料引き下げを求めました。
 保育士・学童児童館職員の処遇改善、少人数学級の拡充を求めました。中学校給食について、実態調査で「学校で昼食を食べない日がある」と回答する割合が21年前よりも増加していることを示し、全員制の中学校給食の実施を求めました。代表質問で、認知症や重い障害がある方を介護しているご家族がコロナに感染した場合の対応を要望したことについて、「ショートステイの利用などの対応をする」と副市長が答弁しました。教育福祉委員会で具体的な運用が可能となるよう追及しました。
 また、学生支援について、代表質問とその後の局別質疑の中で、コロナ禍による学生の「就職活動やアルバイトへの影響」「学生生活の不安」などについて、アンケート調査を行ったことを初めて答弁しました。当局は「多くの学生が、困難や不安を抱えており、今に至っても好転していない」との認識を示しました。引き続き、市独自の給付制奨学金創設など対策を講じることを求めます。
 その他、ジェンダー平等へ、女性のおかれている実態と課題を明確にし解決に向けての事業主行動計画を策定すること、同性婚の法制化を国に求めること、温暖化対策について2050年度目標へのバックキャスティングに基づくアプローチを求めました。
 今年度も自衛官募集業務の協力として宛名シールの提供をしていることが明らかになり、「個人情報の提供」であり、戦争する国づくりに京都の青年を動員するもの」と厳しく批判し、情報提供をやめるよう求めました。
 また、「災害対応のスペシャリスト」として来年度初めて退職自衛官を職員として採用する方針に対して「自衛隊の主任務は戦闘訓練であり、防災のスペシャリストとの認識は事実誤認」と指摘しました。

一、請願・陳情について
 今市会には、請願170件、陳情40件が提出されました。
 消費税5%以下への引き下げの要請を求める請願165件は、わが党以外の全ての会派・議員が反対し、否決されました。党議員団は否決に反対し、採択を求める立場から委員会及び本会議で討論に立ちました。日本経済の危機的状況は消費税の増税とコロナ感染拡大によるものであり、消費税減税はもっとも簡素で公平、効果的な景気対策であるとして、世界20数カ国が付加価値税減税を行っていること、国会において野党のみならず自民党・日本維新の会等も減税を主張していることからも、国に対し、消費税率の引き下げを求めるべきだと述べました。
 また、京都市市税条例の個人市民税減免基準の継続を求める請願、医療機関等への緊急支援を求める請願、医療機関等への緊急財政支援を求める請願、介護サービス事業所の人員基準等の取り扱いの是正を求める請願、少人数学級の実現の要請を求める請願の4件は留保となりました。

一、最後に
 行財政審議会の先取りである 「市民税独自減免の廃止」が継続審議となりました。市長が提案した議案が本会議で議決されなかったのは、1987年以来、33年ぶりとなります。「コロナ禍に福祉・住民サービス削減か」との市民の声が政治を動かしています。党議員団は、菅政権の「自助」論と軌を一にする「市政リストラ」をストップし、命と暮らしを守るために、引き続き力を尽くします。また、来るべき解散総選挙において、野党共闘・市民と野党の共同の勝利で、国政・市政の大転換を図るため、邁進する決意です。

年月別目次

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