【見解】観光客と宿泊施設の総量規制を
~京都市の「『市民生活との調和を最重要視した持続可能な観光都市』の実現に向けた基本指針と具体的方策」発表にあたって~
日本共産党京都市会議員団団長 井坂博文
京都市は11月20日の市長記者会見で「『市民生活との調和を最重要視した持続可能な観光都市』の実現に向けた基本指針と具体的方策(中間とりまとめ)」を発表しました。
これは、観光客と宿泊施設の誘致を一貫して追求してきた京都市自身が、「オーバーツーリズム」「観光公害」とも言われる実態が広がるもとで、市民の強い批判の前に、「宿泊施設は満たされている」「市民の安心・安全、地域文化の継承を重要視しない宿泊施設はお断り」「持続可能な観光都市に」と言わざるをえなくなったものです。
ところが、「基本指針と具体的方策」の内容は、宿泊施設の立地規制や観光バスの流入規制等、具体的規制には一切踏み込まず、増え続ける観光客をさらに受け入れるための施策となっています。
最大の問題は、今に至っても京都市が市内各地の現状について、観光客と宿泊施設の量が住民とまちの受け入れられる限界を超えているとの認識を持っておらず、国の「観光立国戦略」(目標:2030年に外国人観光客6000万人・現在の倍規模)を前提にしていることです。
加えて、宿泊施設が規制されている地域に新たなホテル等を呼び込む「上質宿泊施設誘致制度」を引き続き推進していること、世界遺産や京都の重要景観を破壊するホテル計画にストップをかけていないことも重大です。「混雑への対応」として示されている「時期・時間・場所の分散化」は、これまで比較的静かだった季節・時間・場所にも混雑を広げる可能性があり、根本的解決とはなりません。
京都市では、門川市長就任(2008年)以後、ホテルが約3倍、簡易宿所が約14倍に激増し、他都市と比べても異常な「住環境悪化」「地域コミュニティの破壊」「地価高騰による子育て世代の流出」という事態がつくりだされてきました。今必要なのは、その背景にある「宿泊施設拡充・誘致方針」「上質宿泊施設誘致制度」を撤回すること、市民の財産である学校跡地を民間事業者へ差し出さないこと、京都の景観を守る「新景観政策」を堅持すること、住環境を守るためのルールを条例改正によって明確化し、観光客と宿泊施設の総量をコントロールすることです。
すでに、国内外の観光都市で実施されている「宿泊施設の立地規制(住宅密集地・路地奥等)」「周辺住民との協議・合意の義務付け」「施設内への管理者常駐義務付け」を条例で位置付けること、また、周辺住民と事業者の紛争に京都市がしっかりと関与し、住民の平穏な暮らしを守る立場で事業者を厳しく指導するなど、実効性ある取り組みこそが求められています。