日本共産党京都市会議員団
団長 山中 渡
一、予算及び関連議案の特徴について
3月20日、30日間の2月予算市会が終了し、昨年4月から開会されていた2018年度の通年議会が閉会しました。
今市会では、門川市長の3期目最後の予算案をはじめ165議案が提案されました。2019年度予算案は、①安倍政権が10月に予定している消費税10% 引上げを市施設の使用料・利用料や公共料金に転嫁する市民負担増、②国の地方創生路線の下で「民間でできるものは民間で」「文化で稼ぐ」都市経営を柱に据え、③京プラン後期実施計画の総仕上げとして、区役所窓口業務の民間委託など公務の産業化で、民間企業に儲けの場を提供し、更なる職員削減による市民サービス切り捨て、④「財政が厳しい」と言いながら、本市の財政負担が明確にならないまま大型公共事業を拡大・推進する一方で、暮らしの願いに背を向けるもの、が特徴でした。
党議員団は、一般会計予算案ほか市長提案の予算に対して、市民の暮らしを応援し京都経済を支える内容とするために8項目にわたる組み替え提案を行い、その財源のために大型事業の見直しと不要不急の事業の中止・見直しを提案しました。
その上で、党議員団は、2019年度予算特別委員会に付託された117議案のうち、一般会計予算、国民健康保険事業特別会計予算、介護保険事業特別会計予算、後期高齢者医療特別会計予算、中央卸売市場第一市場特別会計予算、自動車運送事業特別会計予算、高速鉄道事業特別会計予算、水道事業特別会計予算、公共下水道事業特別会計予算など101議案に反対し、残りの16議案に賛成しました。常任委員会に付託された議案11件にすべて賛成しました。
最終本会議に追加上程された人事議案など30件のうち、副市長の任命については反対し、残りの29議案に賛成しました。
本予算に先立ち7件の補正予算案及び美術館再整備工事請負契約の変更が提案され、一般会計補正予算をはじめ4件の補正予算については賛成し、国民健康保険事業特別会計補正予算、中央卸売市場第一市場特別会計補正予算、美術館再整備工事請負契約の変更3件に反対しました。
自民、公明、国民・みらい、京都、無所属議員5人は提出議案すべてに賛成しました。日本維新の会は一般会計予算及び消費税転嫁関連議案、市公債特別会計予算に反対した以外、他の市長提出議案に賛成しました。
以下、予算と市政運営に対する評価と問題点を具体的に述べます。
一、住民運動と党議員団の論戦が予算と市政運営に反映
敬老乗車証制度について、乗るたびに負担する改悪を6年間にわたって許していません。引き続き応益負担方針の撤回を求めて全力をあげます。長年の市民運動と議員団の論戦が実り、子どもの医療費助成制度の上限額が月額3,000円から1,500円に引き下げられました。一歩前進ですが、一刻も早い中学校卒業までの完全無料化実現をめざします。
地下鉄の安全柵設置については「来年度中の全駅設置計画策定に向け取り組む」と前向き答弁がありました。また、20年ぶりに中学生の昼食・給食アンケートが取り組まれることになりました。
昨年の災害を受けて党議員団が要望し拡充した「被災者住宅等再建支援制度」について予算化されました。また、山間部での倒木対策として除去における地元負担の軽減が図られ、今後の公道や民家周辺の危険木伐採をはじめ山林保全の具体化を求めました。
西賀茂地域の市バス特37号系統は、昨年の増便に続き、「来春に向けて延伸に取り組む」との答弁があり、長年の住民の運動と議員団の論戦が実りました。
「京都市地域企業の持続的発展の推進に関する条例」について、党議員団は中小・零細企業への支援を強化するよう求め、質疑の中で「市内中小企業を支援する条例であり、中小企業憲章の理念を実現する条例でもある」との答弁があり、条例案に賛成しました。その上で、この条例をベースに中小・零細企業の振興へと発展させるよう求めました。
京都市交響楽団の財団化にあたって、党議員団は楽団員の雇用継続・身分保障に市が責任をもつよう求め、理事者は「財政上必要な措置を講じる。市として設置責任を果たす」と答弁しました。
一、 国いいなり、安倍政治を持ち込む市政運営
自衛隊への宛名シール提供問題。安倍首相による自治体の自衛官募集協力を理由にした憲法9条に自衛隊を明記するとの国会答弁と発言は、地方自治の根幹にかかわる重大問題であり市長の認識と政治姿勢を質しました。市長は、地方自治破壊については答えず、首相の改憲発言を「総理が国を守っていくために発言したもの」と擁護しました。
該当する若者と保護者の奮闘で、京都市が「利用停止請求があれば、自衛隊に提供する宛名シールから除外する」とし、ホームページに掲載しました。党議員団は、対象2万8千人全員に周知を徹底するよう求めましたが、副市長は「ホームページで知らせているのが非常に丁寧な扱い」と開き直りました。
安保法制のもと自衛隊が戦闘地域に派遣される可能性について、副市長は「可能性はゼロであると思わない」と認めましたが、「災害救助に比べるとわずかな可能性」と述べました。京都市が積極的に情報提供し、若者を戦闘地域に派遣する可能性があると認める一方で、若者の命に責任をもたない宛名シール提供を直ちにやめるよう求めました。
消費税増税について、厚労省の統計不正も明らかになり、内閣府も「景気は後退局面」とする等、増税の根拠は崩れました。にもかかわらず、市長は「京都では景気は回復基調」「持続可能な社会保障のために必要」と市民生活の実態とかけ離れた認識と答弁を繰り返し、国に増税中止を求めず、新たな市民負担増8億3千万円(半年分)にも及ぶ施設利用料や公共料金への消費税転嫁について、自治体の権限があるにもかかわらず「国の通達に従い適正に転嫁する」と国言いなりの姿勢を示しました。党議員団は、消費税増税中止を国に求め、市の公共料金等に転嫁しないよう強く求めました。
核兵器禁止条約への締結を国に要請するよう求めましたが、「核兵器保有国と非保有国の溝が深いので橋渡しを行う」という国の立場を代弁する答弁に終始しました。
安倍政権の原発輸出政策がすべて破綻する中で、国内においても原発の新設や再稼働に反対し、原発ゼロの立場に立つよう求めました。「再稼働がなければそれに越したことはない」と言いながら、「将来的に原発に依存しない社会を目指す」と原発ゼロの立場を表明しませんでした。
一、「京プラン」後期実施計画による市民負担増と職員削減
国民健康保険制度と保険料に関して。新年度は、18年度決算の黒字をもとに積み上げられた国保基金と財政調整基金の合計37億2千万円全額を投入して保険料率を据え置きました。しかし都道府県化により、国は一般会計からの繰り入れをやめるように指導し、京都市は今後の値上げを示唆しています。党議員団は1兆円の公費投入で「均等割」「平等割」をなくし、高すぎる保険料を大幅に値下げるよう提案。特に、子どもの均等割をなくすなど独自の軽減免除を強く求めました。
区役所をはじめ職員削減は、他会派からも「限界にきている」との指摘が出され、税金、民泊、衛生分野での市民サービス低下を引き起こし、身近な区役所がなくなろうとしています。党議員団は、区役所窓口業務の民営化について、市民の個人情報の保護や官製ワーキングプアになることを指摘して「企業のもうけの場の確保というところに力点が置かれている」と批判。理事者は、「民間のノウハウ生かす」「必要なところに必要な増員を図っている」と開き直りました。
介護保険業務に携わる嘱託職員130人の雇止めについて、介護サービスの質と保険者としての市の責任の後退であることを強く主張し、撤回を求めました。
一、 市民の切実な願いに応えない市政運営
北陸新幹線の早期整備推進について、「延伸ルートが確定していない、総事業費も地元負担も試算のしようがない。環境影響評価もこれから」と答弁。今後膨大な市負担と環境破壊が想定されるにもかかわらず建設ありきの無責任な姿勢。堀川地下バイパストンネル計画も継続し、「財政危機」と言いながらムダ使いにメスを入れない市政運営厳しく指摘し、計画を断念するよう強く求めました。
「オーバーツーリズム」による「観光公害」の実態を示して、宿泊施設の総量規制による観光客の量的規制を求めましたが、分散化を強調するのみで、今後も外国人宿泊客誘致でホテルと簡易宿所を増やし続ける方針の見直しを拒否しました。簡易宿所の急増で市民生活とまちが壊されていることに対して、「表彰制度でモデルケースをつくり、住民との調和を図る」と管理者不在の宿泊施設を野放しにし、市民の声に応えない姿勢に終始しました。
京都市美術館再整備工事に係る追加施工と工事費膨張について、「安全確認と文化財の現状把握の後回し」など指摘し、検証をと求めましたが、理事者は「手続きは適切かつ最も合理的な進め方。外部の専門家の確認を得ており、第三者委員会は必要ない」などと答弁。建築専門家や党議員の指摘を全く聞き入れない態度を示しました。
幼児教育・保育の無償化に際し、京都市の高い質の保育がすべての子どもに保障されるように、認可保育園の定員増で待機児童対策を求めましたが、「幼稚園の預かり保育も含めて提供していく」など保育の格差を容認する答弁に終始しました。
一、 国のアベノミクス路線を持ち込み、自治体の役割を放棄
新景観政策について、まちづくりネットワークの「規制緩和反対」の要望を受けたことで苦しい言い訳に終始。「新景観条例を維持する」としながらも、「進化」という名の下で、「地域の特性に合った形で規制緩和推進」を表明しました。党議員団は、高さ規制の緩和や特例許可制度の変更をして新景観政策を穴だらけの規制緩和しようとしている、と厳しく批判しました。
市民生活に直結する交通事業・上下水道事業の公共料金への消費税引き上げの転嫁は「住民の福祉の増進」を掲げる公営企業の役割に背くものであり、撤回するよう強く求めました。
市バスの管理の受委託について「現在も財政的メリットはある」と答弁。この間の民間事業者の撤退や低賃金化による労働条件の悪化の悪循環の問題点を質しましたが「応募しなかったのは経営判断。整備・乗務員の担い手不足。その一つの要素が労働条件と認識している」と述べつつ、抜本的な対策は示せていません。
水道事業民営化について「今すぐ導入する予定はない」と答弁しつつ、広域化については必要性を強調。党議員の「民間は儲けがすべて」との指摘に、「民間だから儲けを出したらダメ、公だからよいというものではない」と居直り答弁をしました。
大岩山の産業廃棄物の環境指導の徹底について。党議員団は、これまで繰り返し大岩山の産廃の山の環境指導徹底を求めてきたこと、昨年の台風で土砂崩れを起こし廃棄物が出て来た市の責任を改めて追及しました。理事者は、「容認・放置はしていない」と無責任な答弁を繰り返しましたが、副市長は「大きな反省をしている」と言わざるをえず、「土砂崩れは7月27日を期限に恒久措置としての工事を行う」との表明がありました。
大宮交通公園の再整備計画について、京都市で初めてパークPFI方式を取り入れ、民間企業に設計かた運営まで任せてしまうことについて、厳しく批判しました。
一、 請願・意見書への態度
今議会には、「京都市立高校の施設・設備の改善」「教育条件の改善」「介護保険料の引き下げ」「子どもの医療費無料化の拡充」、「全員制の温かい中学校給食の実施」、「大学生の給付制奨学金の創設」など、切実な請願が出されました。党議員団は採択するよう求めましたが、わが党を除く全会派が請願者の趣旨説明すら反対したうえで審議未了にしました。「中学校給食について再検討する委員会の設置」を求める請願は、わが党と京都党、日本維新の会以外の党が反対し、審議未了になりました。また「核兵器禁止条約の国への要請」の請願は、わが党及び国民・みらい、無所属議員2人以外が反対し、不採択となりました。党議員団は最終本会議で不採択に反対する討論を行いました。西京区の「バス一日券の範囲の拡大」を求める請願は、粘り強い働きかけで他会派も否決することができませんでした。
意見書については、「幼児教育・保育の無償化の円滑な実施を求める」意見書、「食品ロス削減に向けての更なる取り組みを求める」意見書が、わが党も含む全会派一致で採択されました。わが党が提案した「介護保険料の引き下げを求める」意見書、「国民健康保険料の均等割・世帯平等割の廃止に向け、国費の大幅投入を求める」意見書は、他会派の反対で否決されました。党議員団は意見書に対する討論と提案説明を行い、党の政策と立場を明らかにしました。また「京都市特別職報酬等審議会の審議対象に期末手当を加えることを求める」決議は、議会で議論して決めるべきもの、として反対しました。
一、最後に
いよいよ、あと10日で統一地方選挙・市会議員選挙が始まります。党議員団は21名の公認候補の全員当選、東山区での白坂ゆうこさんの当選で自民党を追い抜いて市会第一党を必ず実現し、7月の参議院選挙での倉林明子参議院議員の再選と比例代表での躍進をかちとります。それを力に、来春の京都市長選挙で市政転換を図り、市民要求の実現、市民と日本共産党のさらなる共同の発展に全力をあげます。