[声明] 2月市会を終えて - 見解・声明|日本共産党 京都市会議員団

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日本共産党京都市会議員団
団長 山中 渡

一、予算案の特徴と議案への態度
 3月20日、2月予算市会が終了し、昨年4月から開会されていた2017年度の通年議会が閉会しました。今市会では、門川市長の3期目3年目の予算案をはじめ91議案が提案されました。2018年度予算案は、国の地方創生路線の下で「文化で稼ぐ」都市経営を柱に据え、①生活保護費の削減など社会保障の切り捨て、保育料引き上げ・深草墓園納骨堂使用料の値上げなど「ゆりかごから墓場まで」の市民負担増、②区役所窓口業務の民間委託など公務の産業化で、民間企業に儲けの場を提供し、更なる職員削減による市民サービス切り捨て、過労死を生むような長時間時間外勤務を強いる、③「財政が厳しい」と言いながら、投資的経費が過去10年間で最高額となるなど大型公共事業を拡大し、将来に莫大な負担を押しつけるもの、が特徴でした。
 党議員団は、一般会計予算案ほか市長提案の予算に対して、京都市予算を市民の暮らしを応援する内容とするために7点にわたる組み換え動議を提出し、その財源のために大型事業の見直しと不要不急の事業の中止・見直しを提案しましたが、他の会派及び無所属議員の反対で否決されました。
 その上で、党議員団は、2018年度予算特別委員会に付託された58議案のうち、一般会計予算、国民健康保険事業特別会計予算、中央卸売市場第一市場特別会計予算、自動車運送事業特別会計予算、美術館条例の一部を改正する条例、深草墓園条例の一部を改正する条例制定など33議案に反対し、水道事業特別会計予算、高速鉄道事業特別会計予算など残りの25議案に賛成しました。常任委員会に付託された18議案のうち、市営住宅条例の一部改正、梅小路公園条例の一部改正など4件に反対し、他の議案には賛成しました。
 最終本会議に追加上程された12議案のうち、教育長の任命については反対し、市長等の給与減額と市会議員の議員報酬額の減額を継続する条例等に賛成しました。これまでから、党議員団は民意を削る議員定数削減ではなく、厳しい社会経済情勢を踏まえ、議員報酬の3割削減を求めてきました。引き続き全会派の合意がえられるよう取り組みます。
 自民、公明、民進と無所属議員は、市長提出議案すべてに賛成しました。京都党と日本維新の会は一般会計予算に反対し、日本維新の会は市公債特別会計に反対した以外、他の市長提出議案に賛成しました。

一、補正予算と民泊関連議案の審議
 本予算に先立ち15件の補正予算と民泊関連議案等が提案され、一般会計補正予算をはじめ11件の補正予算については賛成しました。中央卸売市場第一市場特別会計補正予算及び水道事業特別会計補正予算、「京都市宿泊事業の適正な運営を確保するための措置に関する条例の制定」(以下、民泊条例)「京都市旅館業法に基づく衛生に必要な措置及び構造設備の基準等に関する条例の一部改正」(以下、旅館業条例の一部改正)の4件に反対しました。
 民泊条例、旅館業条例の一部改正については、党議員団は「審議はつくされていない」として継続審査を求め、修正案を提出。①規制区域と日数などの抜本的拡大―住居専用地域は家主がいない場合は0日、細街路袋路に接している区域の規制、旅館業法で規制している学校などの110m範囲の規制、②近隣住民への説明と承諾の書類提出、③宿泊者が滞在中の常駐体制義務付け、④マンション等集合住宅の規制強化を盛り込むよう提起しましたが、共産党を除く会派と無所属議員の反対で否決され、地域住民との協定の努力規定を追記「一部修正案」が成立しました。党議員は、討論で①住宅専用地域にも民泊営業を認めている、②家主・管理者の常駐を規定せず「駆け付け要件」にとどめている、③市民の責務を規定し、宿泊者と住民の安全を守るために、事業者が果たすべき責務を免責している、④「違法民泊」根絶の体制が不十分であることを指摘。この条例では市民と旅行者の安全を守れず、他都市の条例や政府のガイドラインと比べても弱く、京都市の姿勢は「法の限界に挑戦する」どころか、完全な「自粛路線」であり、自治体の役割を果たしていないとして反対しました。党議員団は可決にあたって団長談話を発表。提案説明や討論に立った日本維新の会、自民党、公明党、民進党などが「もう少し議論が必要」「細街路など色々課題がある」「今でも悲鳴がよせられている」などと発言をしながら、ごく一部の修正で賛成したことは無責任のそしりを免れないと厳しく抗議しました。
 その後の予算特別委員会、常任委員会においても民泊に関する問題点を取り上げて追及しました。

一、住民運動と党議員団の論戦で前進させた成果
 敬老乗車証制度について、乗るたびに運賃を支払う応益性の導入の改悪を許しませんでした。引き続き応益負担方針の撤回を求めて全力をあげます。子どもの貧困が広がる中で、就学援助・新入学児童生徒学用品費等の早期支給を求め続けていましたが、3月から事前給付が実現し、高校進学・修学支援金の入学支度金の入学前支給も実現しました。
党議員が繰り返し求めてきた宅地内の鉛製給水管取り換え工事助成制度が1件10万円から15万円に引き上げられました。長年の地元住民の運動が実り、京阪鳥羽街道駅をはじめ駅のバリアフリー化が予算計上されました。ブラックバイト対策の面では、 大学新入生のオリエンテーションにおいて、働くルールなどについてのカードを資料に入れることになり、さらに、働くルールや京都市の対策についてアピールを強化すると表明がありました。また、市民から美術館使用料値上げや歴史的景観の保全、眺望景観創生条例の一部改正に対する議会請願や陳情が出され、わが党議員が紹介議員となり、議会の審議を通じて、美術関係団体や地域住民運動の方々との信頼関係が築かれ、新たな共同が進みました。
 党議員団が繰り返し学習調査を行ってきたLGBT等の方々への支援充実を求める質問に対し、「51団体から全体像の調査をはじめた。様式(申請書等)、トイレの表示などについて大阪市、大津市の視察を行った」「264事例(LGBT法連合会「社会で直面する困難リスト」)、庁内関係課で集まってもう少し掘り下げた検討を行いたい」「LGBTの研究会を発足させたので連携を図っていきたい」と答弁がありました。

一、「京プラン」後期実施計画による市民負担増と職員削減の予算編成と市政運営
 予算案では、保育料の値上げ、深草墓園納骨堂使用料値上げ、スズメバチ駆除の有料化など、「ゆりかごから墓場まで」の総額2億9千万円にもおよぶ公共料金の値上げが盛り込まれています。暮らしに直結する公共料金値上げ提案に強く抗議し、撤回を求めました。
 国の生活保護基準見直し方針を受けての生活保護費25億円削減提案予算の撤回を求めましたが、「保護の対象が減っている。必要な時期に適切な見直しは必要」と国の方針に追随する姿勢であり、捕捉率を調査して保護を高めるよう求めましたが拒否しました。
 国民健康保険事業について、保険料を値下げし、減免基準を緩和したことは加入者の願いと運動の反映であり評価されるものの、依然として保険料は高止まりであり、歳入超過分の全額を保険料値下げに回すよう求めました。都道府県化の狙いは医療費の削減にあります。国費1700億円の投入でいったんは保険料の値下げになるものの、激変緩和の期間が終われば値上げになることも危惧されることを指摘し、国庫負担率の増加と京都府の支援を求めました。介護保険事業に関しては、一般会計からの繰り入れを求めたのに対し「全国統一の制度であり、繰り入れれば負担と給付の原則が崩れる」と拒否しました。国の財源負担率を引き上げて公費負担を増やすよう求めました。
 職員の「働き方改革」について、交通局職員の過労自殺、人事委員会の時間外勤務のアンケート調査に基づき、超勤の実態を示して職員の増員を求めました。「深刻に受け止めている」と言いつつも「仕事によってシェアは困難。職員を増やしても解決しない」と拒否し、「職員削減、効率的な運営を進める」と職員削減の「京プラン」に固執しています。
 区政創生プランに基づき、市税事務や医療・衛生事務の集約化が相次いで強行され、区役所所属の職員は700人が削減され、市民サービスの後退が懸念されています。さらに区役所窓口業務の民間委託を検討しています。市政総合アンケートでの「外部委託すべきでない」との声を紹介して、窓口業務の民間委託化の方針の撤回を求めましたが、「民間に任せたほうがうまくできる業務もある。市民は親切、丁寧、素早い対応を求めている」と公務員の役割を否定し、公的責任を放棄する姿勢に終始しました。

一、市民の切実な願いにも反する予算案と市政運営
 子ども医療費の拡充を求める声に対して「中学校卒業までの無料化は、現行の事業費の倍の18億円必要とし、府と協調する」と答弁。全員制の中学校給食を求める声には「180億円もかかり現実的でない」と拒否しつつも、「保護者や子どもの思いを全く無視するつもりはない」「あらゆる可能性を排除せず」と言わざるを得ませんでした。給付制の奨学金等京都市独自の奨学金の設立を求める声には「奨学金は国において検討されるもの」と逃げの答弁に終始しました。
 「景気は緩やかに回復している」とする根拠を質したところ「有効求人倍率や税収アップに表れている」との認識であり、中小企業の実態をつかんだ上で、住宅リフォーム助成や固定費補助を求めましたが、「全体として実態はつかんでいる」と個々の対策には踏み込まない姿勢が顕著でした。京都市の発注する公共工事に従事する現場労働者の賃金が上がっていないことを指摘し、賃上げにつながるよう、公契約基本条例に賃金条項を設けるように求めましたが、賃金実態を調査することもせず、冷たく拒否しました。行政として中小企業の振興をおこなう基本戦略、理念を明らかにする中小企業振興基本条例の早期制定を求めたのに対し、条例による「手法」としか位置づけてなく、制定への決意と姿勢がないことが浮き彫りになりました。
 野党4党提案の原発ゼロ基本法案を紹介し、原発ゼロ・再稼働の中止を国に求めるよう求めましたが、従来の答弁通り「できるだけ早期の全廃に向けてエネルギー政策の抜本的転換を求める」との姿勢は「究極の先送り論」だと批判、その姿勢を改めるよう厳しく指摘し、本市の地域特性を生かした再生可能エネルギーの飛躍的拡大を求めました。
 市バス事業は、バス待ち環境の改善など一定の前進はあるものの、一日乗車券の値上げを盛り込んでいます。また、市バスの若年嘱託職員制度、「管理の受委託」のもと運転手の不祥事など深刻な矛盾があらわれています。「管理の受委託」の撤回を求めましたが、拒否しており、「市民の足」のあり方が問われています。

一、国のアベノミクス路線を持ち込み、自治体の変質を狙う予算案と市政運営
 予算編成において「財源不足」を強調しながら、国民経済の底上げにつながらない国のアベノミクス路線に迎合し、「成長戦略」にしがみついています。財源確保のためには、大企業優遇の不公平税収構造にメスを入れ、儲かっている大企業に応分の負担をさせ、地方交付税増額を国に求めるべきと指摘しましたが、市長は「国の税制度は公平公正。国の財政も大変」と答弁。国の悪政に無批判な姿勢が浮き彫りになりました。
 一方、「財源不足」を口にしながら、中央卸売市場第一市場整備(600億円)、美術館再整備(100億円)、市庁舎再整備(350億円)、南部クリーンセンター整備(115億円)など大型公共事業が目白押しです。その結果、新年度予算における投資的経費は870億円(前年度比200億円増)で、この10年間で最高額、市債充当率も39・4%となりました。その一方で予算編成において事務事業見直しをおこない、身近な公共事業や市民サービスを36億円も削減しています。現在の暮らしの予算を圧迫するだけでなく、市債償還のための公債費が膨れ上がり将来の暮らしの予算を圧迫することは明らかです。必要な事業であっても、規模・施設内容・完成時期を見直し、「的確にコントロール」するよう強く求めました。
 さらにリニア中央新幹線・北陸新幹線の誘致運動をすすめ、堀川通地下バイパストンネルや、新たに亀岡・山科~大津バイパス計画が浮上しています。しかも事業の妥当性や本市の財政負担は明らかにされておらず、計画の撤回を求めましたが、「未来の京都の発展の先行投資」と計画推進に固執しており重大です。
 景観問題に関して、「眺望景観創生条例の一部改正」が提案されました。参道や門前等の眺望景観を新たに視点場として追加する、など景観保全のために評価できるものの、「景観レビュー制度」は、地域住民の利益より開発業者の側に立つものであり、問題点を討論で指摘し、反対しました。また、自民党の議員は、「この10年間の社会経済情勢の変化に合わせ、現在の土地利用規制を見つめ直す時期ではないか」と新景観政策の見直しに言及、市長も「内容を進化させる必要がある」と答弁しました。
 今議会で鮮明になったのは、国の文化基本戦略と軌を一にした「文化を基軸にした市政運営(都市経営)」を打ち出し、文化資源を「保全」から「稼ぐ道具」に変質させる市政運営を正面に掲げていることです。その具体化として二条城条例の設置目的を改定し、二の丸御殿観覧の有料化と休城日の大幅縮小を図り、美術館条例の改正で設置目的から「調査、研究」を削除し、使用料の値上げを提案しています。
 美術館使用料の値上げは、2013年~15年に続く連続値上げであり、美術関係団体や個人から値上げ中止を求める9件の陳情が出されました。公的美術館の責務を放棄し、文化活動や鑑賞の権利を奪う値上げの撤回を求めました。市長は、「本市の市政運営や美術館の設置目的にも反しない」と強弁しました。
 予算案では「市外から稼ぐ力」を掲げ、インバウンド頼みの観光政策に傾斜しています。外資系・東京資本中心の宿泊施設や商業施設の京都引き込みラッシュとなり、市民の暮しと結びついた「住んでよし、訪れてよし」という観光文化の質が低下しています。収益も市外に流出し、地場産業も衰退し、域内経済循環が断ち切られています。審議の中でこの点を厳しく批判しました。

一、意見書・請願について
 「洪水回避等を目的とした流量確保のための中小河川の河道掘削の予算の確保を求める意見書」「新たな森林管理システムの早期実施を求める意見書」「バリアフリー法の改正及びその円滑な施行を求める意見書」「土地改良法を改正し、必要な施策の推進を求める意見書」を全会派一致で採択し、「所有者不明の土地利用を求める意見書」について党議員団は反対しました。
 党議員団は、「森友学園問題と文書改ざん問題の真相解明を求める意見書」と「働き方改革法案の見直しを求める意見書」を民進党と共同提案し、「働き方改革法案の見直しを求める意見書」は京都党が賛成しました。国民健康保険の国庫負担割合の引き上げを強く求める意見書」を提案し、京都党が賛成しましたが、これら3件とも否決されました。さらに、党議員団は「介護保険制度の国庫負担率の引き上げを求める意見書」「大飯原発再稼働に反対する意見書」「生活保護基準の引き下げ中止を求める意見書」を提案しましたが否決されました。
 党議員団にも、切実な要望が寄せられていた「骨髄移植等により抗体を喪失した小児へのワクチン再接種の費用助成制度の創設」の請願が採択されました。請願審議では、「京都市独自対策を検討する」と答弁がありました。「教育条件の改善」の請願については他会派が反対し、不採択となりました。

一、森友公文書改ざん問題をめぐり、国民の怒りは沸騰し、安倍内閣の支持率は急落し、不支持率が上回っています。佐川氏と安倍首相夫人昭恵氏の証人喚問をおこない、すべての真相の究明を求めます。その上で安倍内閣は総辞職して責任を取るよう求めます。
  22日から京都府知事選挙が始まりました。「4つのつなぐで、京都を変える」「いのちに寄り添い、憲法いかす京都府政へ」「府民丸ごと全力応援」を掲げる福山和人さんの勝利をめざして全力をあげます。

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