➜ 声明「9月市会を終えて」 - 見解・声明|日本共産党 京都市会議員団

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日本共産党京都市会議員団
                                 団長 山中渡

一、はじめに
 11月2日、43日間の会期を終えて9月市会が終了しました。9月市会は9月21日に開始されましたが、安倍首相が28日開会の臨時国会の冒頭に大義なき解散を強行し、市会会期中に総選挙となったことにより、急きょ会期日程を変更して総選挙期間中(10/10~22日)を休会し、選挙後に再開して2日に終了となりました。
 2016年度は、2月の市長選挙で再選した市長の下で「まち・ひと・しごと・こころ京都創生総合戦略」が策定され、それと連動した「京プラン後期実施計画」の初年度でした。
 今議会は、2016年度決算の総括、審査とともに、市長の政治姿勢と「京プラン後期実施計画」に基づく市政運営が市民の暮らしや生業にどう影響しているのかが鋭く問われており、党議員団は、市民生活の実態と切実な声をもとに市民要求の実現をめざして大いに論戦しました。

一、市民の運動と議員団の論戦が実り、市民要求が前進
 長年の市民の運動と党議員団の論戦を通じて、就学援助制度の改善が実現、新入学児童生徒学用品費の入学前支給が盛り込まれました。今後は、入学後の返還が生じないように更なる改善が必要です。
 また、市バス乗り継ぎ無料化を求める声に対して、「全体を見ながら対応、可能性を含めて選択肢の一つにする」との新たな答弁を引き出しました。
 性的マイノリティー(LGBT等)の権利保障に関して「国保証への通称名表記について関係機関との調整が整えば対応する。トイレの案内表記について研究する」「関係団体の意見を聞く」との表明がありました。
 府の就労・奨学金について「京都市の上乗せは府の推移を見て検討する」と初めて表明しました。
 ヒバクシャ国際署名に関して、市長は「署名の文面を読んで素直に署名した」と述べ、「ICANのノーベル平和賞受賞は喜びたい」と答弁しました。

一、予算・決算に対する党議員団の態度について
 予算・決算特別委員会に付託された28議案のうち、一般会計補正予算をはじめ20議案は賛成および認定し、一般会計決算、国民健康保険事業特別会計決算、介護保険事業特別会計決算、後期高齢者医療特別会計決算、自動車運送事業特別会計決算など8議案に反対・認定せず、本会議討論でその理由を述べました。京都党以外の会派及び無所属3人はすべてに賛成・認定し、京都党は美術館整備請負契約の変更に反対、一般会計決算を認定しませんでした。
 17年度一般会計補正予算について、就学援助費入学前支給は市民要求に応えるものであり、党議員団は介護基盤整備の助成や児童館の移転整備は必要なものとして賛成しましたが、「明治150年・京都の奇跡プロジェクト」事業や宿泊税導入に係るシステム改修は問題があり、マイナンバー等への旧姓併記に係るシステム改修は制度促進のためであり、認められないと指摘しました。
 16年度一般会計決算に関わり、以下の点を討論で述べました。
京都市が率先して自治体の役割を投げ捨てる方向を推し進めていることです。第一に、「市外からの稼ぐ力を引き込む」として観光客数を追い求める観光客誘致方針によるホテルや民泊のラッシュ、企業誘致のための規制緩和が進められています。第二に、歳入確保策と一体で公務の民営化、市有地や市の施設の企業への提供の推進です。公権力行使を含む窓口業務の民間移管について、その他の行政業務の民営化への突破口にする検討を進め、コンサル会社に仕様書の作成まで指示していることを指摘し、市民アンケートにおいて市民が民営化を望んでいないことを示して検討そのものをやめるよう求めました。
 学校跡地の民間への提供によって当初の「地域コミュニティーの拠点を守る」という約束は反故にされています。中央卸売市場第一市場用地についても、ホテルや商業施設を誘致するために規制緩和と優遇措置まで行っています。また、市美術館再整備にあたってネーミングライツで京セラの宣伝に活用させようとしています。党議員団は、過大な観光客誘致方針の見直し、企業誘致のための規制緩和は行わないこと。市民の財産を企業の儲けに提供することをやめるよう求めました。
 京都市の財政と経済について、「厳しい財政状況」と言いながら、史上空前の儲けを上げている大企業や大金持ちに特別の減税や優遇をしている国に対して、「国も財政が厳しい」と何ら批判せず容認し、「トップランナー方式」で市民の暮らしの予算を減らすばかりです。また、市長は「景気は緩やかに回復基調」と言いますが市民には実感がありません。消費税10%増税をキッパリ中止するよう求めました。
 歳出抑制策として、職員削減や施設のリストラを進め、公的サービスの後退を進めています。大宮消防出張所を廃止したことにより、消防車の現場への到着時間が遅れ、住民の安全が低下することが明らかになりました。区役所の保健センターの生活衛生部門が医療衛生センターに集約化され、2名増員されたものの、旅館業法による定期検査対応すら追いついていない中で、増大する違法「民泊」、食中毒や感染症対策などに対応できる体制になっていません。党議員は、抜本的な増員による人員確保を強く求めました。
 社会保障等についても「持続可能な制度」構築を口実に、制度の改悪を進め、給付の抑制を進めていることを指摘して、国に制度の改善を求めつつ、市独自の対策で市民サービスの後退とならないよう求めました。
 介護保険制度に関して、要支援1・2の総合事業への移行により、報酬額の減額、支え合い型ヘルプサービスを専門職でなくてもよいとし、事業所の現場で混乱が続出しています。京都市は「順調に進んでいる」と強弁しますが、実態の把握と報酬額の改善を急ぐべきです。来年度からの計画策定の審議中に「介護保険料の値上げ発言」を行ったことを批判し撤回を求めました。国民健康保険制度は、保険料は高止まりであり、国に国庫負担率の引き上げを求めるとともに、国や京都府の支援制度の活用、市独自に繰り入れを増やして保険料の引き下げを求めました。
 敬老乗車証制度について、これまで市長は、「市民新聞」と市民アンケートにより世論誘導を行い、子育て世代と高齢者に分断を持ち込んできました。こうした市長の姿勢を厳しく批判するとともに、今議会で「持続可能な制度への見直しを行う」と改めて「制度改悪」方針を強調したことについて強く批判し、現行制度の存続を求めました。運動の一層の発展が必要です。
 子育て支援・保育制度について、市長公約である子どもの医療費助成制度の拡充を求めましたが「府と協議して検討する」と先送りしており、早急な実現を求めました。また、安心して入所できる保育所の整備を進めるとともに、保育士のさらなる処遇改善と保育の質の向上、公立保育所の民間移管方針の撤回を求めました。
 公営企業会計決算について、黒字を利用者や市民に還元させず日本一高い運賃を継続し、若年嘱託制度や管理の受委託が継続されている、として自動車運送事業決算を認定せず、市民の足としての役割の発揮を求めました。その他の決算は認定しましたが、運賃や料金・使用料に消費税を転嫁上乗せしないよう強く求め、理事者も「消費税法には転嫁しなければならないとは書いていない」と転嫁の法的根拠はないことを認めざるをえませんでした。

一、宿泊税条例について
 違法「民泊」を把握できない状況の下で課税対象の捕捉すらできず、税の公平性が担保できないこと、中小零細宿泊業者の負担が大きいこと、目的税といいながら使い道が限定されていないこと、累進制という税本来の在り方と逆行することなど、問題点が山積しており市民的な議論が不十分であり、議決は拙速であることを指摘して、継続審議を求めました。これに対し、共産党以外のすべての会派、無所属議員は継続審議を否決しました。その上で、終了本会議において「宿泊施設拡充・誘致方針などの観光対策を見直し、市民が住みたい、住んでよかったと実感できる街をつくり、訪れる人にも魅力を感じられる京都へ、市政を転換することこそ必要である」と指摘して、反対しました。日本共産党以外の各会派・無所属の議員が賛成し採択されましたが、問題点の指摘が相次ぎ、終了本会議では6項目の付帯決議が出され、拙速な議決・条例化をすべきでなかったことが示されました。
   
一、常任委員会に付託された議案への態度について
 付託された29議案のうち、16議案に反対し、その他の議案には賛成しました。
 都市緑地法等の一部を改正する法律に伴う関係条例の整備に関する条例の制定について、法改正に伴う規定整備であるものの、民間事業者に都市公園の管理を任せ、公園内での収益施設の設置を認め、建ぺい率を大幅に緩めるもので、再生・活性化の名目で大企業などによる都市公園開発を拡大するものであり、反対しました。
 公立大学法人京都市立芸大第2期中期目標の策定に関して、独法化により市長が中期目標を策定することになり、大学の教育内容にも踏み込み、大学の自治を制限することになるとして反対しました。
 設計労務単価の引き上げに伴う工事請負契約の変更について。工事費の増額や労働者の賃金単価に反映させることは当然であり、賃金引き上げに確実に反映されるよう、市として追跡調査し、履行確保に責任を持つように求めました。
 京町家の保全及び継承に関する条例について。京町家の保全・継承は必要なものであり賛成しましたが、支援策の具体化が示されておらず、税制面や改修支援など実効性のある財政支援策を求めました。京都党以外の会派及び無所属3人はすべての議案に賛成しました。
  
一、市会論戦と運動を通じて明らかになったこと
 違法「民泊」対策について、市がつかんでいる宿泊施設のうち約7割が旅館業法上、違法「民泊」であり、市の許可施設(簡易宿所)でも住環境を脅かしている事例があることから、京都市独自の条例による厳しい規制や、区役所・支所の窓口対応を含む業者への指導体制の抜本的強化を図るよう求めました。これに対して副市長は、「衛生の点を最重視して、これまで以上の監視・指導」「十分な監視体制が必要と認識している」としながら、「単純に人を増やすというのではなく」と、人員増については明言しませんでした。
 原発ゼロをめざして、原発が集中立地する若狭湾での同時事故の可能性について、原子力規制委員会が再稼働の安全基準に含まず、政府も避難計画に想定していないことを示して、再稼働の中止を国と関電に求めるよう指摘しましたが、相変わらず「中長期的には脱原発」論に固執しました。また、パリ協定以降の世界の流れを紹介して、原発ゼロの立場に立ち再生可能エネルギーの飛躍的拡大を求めました。
 核兵器禁止条約に関して、市長、副市長は「平和は唱えるだけで訪れるものではない」「市独自に平和事業に取り組む」と、政府に条約参加を働きかけることを否定しました。市長に平和都市宣言を行った都市にふさわしく政府に声を上げるよう強く求めました。
山之内浄水場跡地活用について、京都学園大学の第二期工事予定地が、高さ31㍍に規制緩和されることは、景観・眺望を壊し、街壊しにつながると指摘しました。
 部落解放同盟の全国集会への職員派遣について、各局から公費による職員の派遣を止めるよう求め、「来年度から適切に判断する」と答弁がありました。
 議会運営に関わって、環境政策局の質疑の際に、他都市の事例を示して当局の「有料指定ゴミ袋代の値下げをしたらごみ量がリバウンドする」論の根拠が破たんしていることへの党議員の指摘に、「同じような質問を繰り返して理解できない」との局長答弁があり、「議員の質問封じである」として厳しく批判しました。
 
一、意見書、決議について
 「食品衛生管理の国際標準化を求める」意見書(全会派共同提案)、「大規模災害時の法制度に関する抜本的な見直しを求める」意見書が全会派一致で採択されました。「小中学校におけるプログラミング必修化に関する」意見書は、民間企業の営利活動に教育現場が利用されるものとして反対しました。「ライドシェアの慎重な検討と安心・安全で快適・便利なタクシー利用に関する」意見書について、ライドシェアが白タクの合法化に道を開き、乗客の安心・安全を守られないことを指摘し、制度そのものには反対であることを述べた上で賛成し、維新・京都の対案には「規制緩和に道を開くもの」として反対しました。
 「受動喫煙防止対策を進めるために健康増進法の改正を求める」意見書について、公衆の集まる場所の屋内全面禁煙を求めるとともに、零細な小規模飲食店に対して喫煙専用室の設置など整備に関する経済的支援を求めて、賛成討論をしました。
 党議員団は、「コメの生産調整及び直接支払い交付金制度の継続、戸別所得補償制度の復活を求める」意見書を提案し、討論で意義と必要性を述べましたが、否決されました。民進党提案の「制度の法制化を求める」意見書には賛成しました。
 さらに、「すべての原発の再稼働中止を求める」意見書を提案し、討論で再稼働させる理由は何一つないことを指摘しましたが、否決されました。
 「違法「民泊」の対策強化を図るための人員の確保等を求める」決議を共産・維新・京都とで共同提案しましたが否決されました。わが党以外の会派による共同提案の「違法民泊対策の体制強化をもとめる決議」は「民間活力の導入による体制の構築」を求めるものであり、反対しました。
 「2025年国際博覧会の誘致に関する」決議は、万博と「カジノ=IR」をセットにした誘致であり反対しました。この決議には民進、京都も反対しました。

一、最後に
 総選挙の結果、小選挙区制マジックによって自民・公明および改憲勢力が三分の二を占めることになりました。共産党の議席が後退する結果については、党の力をつけて捲土重来を期す決意です。同時に、改憲勢力に反対する立憲野党の議席は改選前と比べて倍近い議席に前進し、国民の多数が9条改憲に反対していることも世論調査で示されています。立憲主義、平和主義を掲げ、安倍政権の下での憲法9条改悪反対など7項目の合意に基づく真の野党共闘を発展強化し、市民と野党の共同をさらに大きくして、改憲の国会発議を阻止するために党市会議員団は全力を上げます。また来春4月には京都府知事選挙がおこなわれます。府市共犯で市民要求の実現を阻んでいる現府政を転換し、府民本位の民主府政の実現、そして再来年の統一地方選挙勝利に向けて奮闘する決意です。

年月別目次

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