京都市「宿泊施設拡充・誘致方針」に対する見解 - 見解・声明|日本共産党 京都市会議員団

TOPICS ICON京都市「宿泊施設拡充・誘致方針」に対する見解

日本共産党京都市会議員団 団長 山中 渡

1、はじめに

 京都市は本日「宿泊施設拡充・誘致方針」を発表しました。この「方針」は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを節に、その後も観光客数が増大するという見込みをもとにしています。これは、国が示した2020年4000万人の外国人観光客誘致目標をもとに京都市で440万人以上の観光客誘致を見込み、新たに6,000室の宿泊施設を誘致するとしています。しかし、これらの誘致目標の根拠は必ずしも明らかでなく、見込みについて十分な検証もされていません。「宿泊施設拡充・誘致」一辺倒でいいのかが問われます。

2、国の成長戦略が、古都京都を壊す

 本質的な問題として、国の成長戦略による観光立国方針と地方創生総合戦略があります。これが、自治体間競争を強め、自治体に「稼ぐ力」を求める結果となっています。京都市はこの方針に沿ってMICE戦略で富裕層観光を打ち出し、外資系ホテルの大規模進出をはじめとした宿泊施設の誘致、京都駅周辺、下京西部などの大規模な規制緩和による開発、学校跡地などの公共施設の企業への提供など、大企業が活躍しやすい京都づくりに突き進んでいます。
 今回の「宿泊施設拡充・誘致方針」は、この流れに拍車をかけ、京都の景観と良さを壊すものです。このことは、歴史文化都市京都の将来に禍根を残すことになります。

3、無秩序な開発へ、新たにふみだす方針

1)「宿泊施設拡充・誘致方針」は、「旅館・ホテル等拡充・誘致総合窓口」まで設置して推進しようとしています。また、宿泊施設の立地が制限されている地域(住居専用地域、工業地域、市街化調整区域)への「上質宿泊施設(ラグジュアリータイプ、MICEタイプ、オーベルジュタイプ)」の設置拡充を特例で認めるとしていますが、これは無秩序な開発促進につながるものです。すでにホテル誘致を目的とした計画が進められており、北区で進行している「紙屋川庭園ホテルプロジェクト」は、第1種住居専用地域及び、第1種低層住居専用地域に床面積3133㎡、地上2階、地下1階、客室数25室の施設建設です。京都市はこうした特例許可を今後、拡大する方針です。京都市の責任は、都市計画の制限と京都市独自の景観政策で、都市景観と住環境を守ることにあります。住居専用地域等にまで「上質宿泊施設」を誘致・許可することはやめるべきです。

2)京都市は、「民泊」相談窓口を設置しましたが、この窓口は苦情相談とともに開業の相談にも対応・支援するものです。そのために、市民から苦情が寄せられる違法な「民泊」相談等に応じるための十分な体制を備えていません。住民と宿泊者の安全を確保するために、体制を強化し違法「民泊」の根絶と、適法であっても発生しているトラブルに対応することが求められます。仲介業者に対して、違法な民泊施設の登録削除を求めるとしていますが、世界規模で存在する紹介サイトに対応することは不可能です。

3)「宿泊施設拡充・誘致方針」は、京都経済の活性化に結びつくものではありません。この間、外資系をはじめ大手企業が経営するホテルや大手旅行会社が京都に進出しても、京都市内の経済循環には結びついていません。京都市は、「観光宿泊施設拡充・誘致により伝統産業、文化の発展、雇用の創出に寄与する」と説明していますが、ホテルへの伝統工芸品の納品といった一時的、部分的な影響に留まるものです。雇用も外資系を含むホテル等における雇用の75%が非正規であることから、正規雇用の拡大につながっていないのが現状です。一方、京都の旅館は、平成27年度には296軒となっており、そのうち104軒が休業状態にあります。必要なことは、京都の様々な地場産業と結びついた旅館に対する支援を行うこととホテル等の正規雇用率の増加と食料品等の地元調達などを促進させることで、地域経済の活性化につなげることが求められています。

4、日本共産党市会議員団の提案...良質な観光と安全安心のまちづくりに向けて

①観光政策は、市民が安心して暮らせ、観光者の満足を充足させるともに、地元中小企業、伝統産業の振興など地域循環型経済として発展させること。

②6000室確保を前提としたホテル誘致は止めて、既存の旅館を支援すること。

③ホテル誘致のための規制緩和は行わないこと。宿泊施設の立地が制限されている地域への宿泊施設の建設を特例で認めないこと。

④「民泊」への指導体制を強化し違法「民泊」をなくすこと。住居専用地域への「民泊」は認めないこと。玄関帳場に従業員が常駐していない簡易宿所は条例違反であり、厳しく指導すること。「京町家」の一棟貸しについても同様の義務を課すこと。
  
⑤市街地へのマイカーの流入規制を徹底し、公共交通最優先の対策を強化すること。

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