日本共産党京都市会議員団
一、10月26日、9月市会終了本会議が開かれ、36日間の審議期間を終えました。
今市会は、野党共闘が大きく前進する一方で改憲勢力が3分の2を超えるという7月の参議院選挙の結果や、昨年9月の安保法制採決強行から一年を迎える緊迫した情勢のなかで始まり、党議員団は国政の課題も含めて厳しく追及しました。
代表質問では、改憲、安保法制に対する認識について初めて市長が答弁にたちましたが、「平和安全法制については、国権の最高機関である国会において議論し、結論をだされたもの」「(自民党の憲法草案は)社会情勢が大きく変化してきた中で・・緊急事態への対処を含め、国家、国民の基本にかかわる事項として、国民全体で議論が深められるべきもの」と他人事の答弁に終始し、自らの見解は述べませんでした。
原子力規制委員会の新規制基準を口実にした、国の原発再稼働容認と老朽原発再稼働に反対するよう求めましたが、副市長は「やむを得ず再稼働する場合には・・・」と従来の再稼働容認の立場を繰り返すと同時に、老朽原発への質問には答えませんでした。
局別質疑では今夏の原発稼働と電力供給の状況の評価について「原発が動かない状況は京都市のスタンスにあっている」、「(福島原発廃炉費用の拡大から)原発のコストは高い」と認めざるをえませんでした。
安倍首相のアベノミクスの評価について「経済全体の基調としては回復を続けている」(市長)とし、依然として「回復基調」の認識のまま。消費税率の10%への引き上げによる影響認識についても「(消費税増税は)社会保障の財源を確保するもの」(市長)との認識を変えようとしませんでした。今国会でTPP批准が強行されようとする中、反対を表明するよう求めましたが、副市長は「国が措置するからコメへの影響はない」と強弁しました。
一、今市会は、市長提案の84議案を可決しました。党議員団は、予算・決算特別委員会に付託された24議案のうち、一般会計補正予算など18議案に賛成・認定し、一般会計決算、国民健康保険特別会計決算、介護保険事業特別会計決算、後期高齢者医療特別会計決算、自動車運送事業特別会計決算、など6議案は認定せず、または反対し、本会議討論でその理由を述べました。
また、各常任委員会には市長提案の59議案が付託され、党議員団は、民間企業の利益優先、公的責任後退のPFIを前提とした付属機関の設置等に関する条例の一部改正、公立保育園の定員を減らす京都市保育園条例の一部改正の2議案に反対し、他の議案及び人事案件には賛成しました。
一、今市会では、京都市が直面する問題について分析し、党市会議員団の提案をまとめた「見解」を発表しました。
大きな問題になっている「民泊」問題について、京都市における現状と対策について明らかにし、深刻な事態に対応し、違法「民泊」をなくすこと、市独自のルールを作るなどの対策を求める「見解」を発表しました。
京都市美術館ネーミングライツ問題について、京都市長は、市民の批判も議会の指摘も聞かず、トップダウンで募集し、「京セラ」に決定しました。市民の寄贈によって成り立っている美術館であるにも関わらず、寄贈者にまともな説明もせず「決まってから丁寧に説明する」(副市長)という傍若無人な姿勢です。ネーミングライツ決定の撤回と市民・美術館関係者との真摯な協議を求める「見解」を発表しました。
一、今市会では、あらためて自治体財政のあり方が問われました。一般会計決算は、6年連続で「黒字」を維持したと言いますが、職員数の削減による総人件費の削減、強引な取り立てと差押えによる市税徴収率の向上、市民サービス低下をもたらす消費的経費の削減など「京プラン」実施計画で掲げる「徹底した行財政改革の推進」による黒字であり、決して自慢できるものではなく財政健全化至上主義であると厳しく指摘しました。
また、軍備拡大や多国籍企業支援、大企業への大幅減税など政府の税財政対策への批判的視点抜きに、「財政危機」を口実にして市民にリストラを押し付けるべきでないと追及しました。
地方交付税削減のために、地方自治体に行革と稼ぐ力を競わせる国の「トップランナー方式」に反対するよう求めましたが、市長は容認する姿勢に終始しました。また本市の行財政改革についても「国に言われたからではない。本市の決断でやっている」と自ら率先して進めていることを明らかにしました。
市長が「市民しんぶん」を使って「市財政が大変なのは福祉関連経費が増えているから」として福祉関連予算の切り下げを示唆していることについて、交付税措置や国・府の負担金の実情を示して「市民に正しく情報提供する」よう求めました。
一、市バスの運転手の身分不安定や低賃金を押し付けている「若年嘱託制度」を廃止することを求め、労働強化と低賃金労働の「管理の受委託」をやめることを求めました。地下鉄の烏丸線全駅に可動式ホーム柵の設置を求めるとともに、地下鉄への国の補助制度の拡充、上下水道事業については福祉減免制度の実現、緊急課題となっている老朽管の取り換えに対する国庫補助制度の拡充、また地域水道などの上下水道事業への統合にあたっての負担金の公費化を求めました。
一、市民生活と中小企業の営業はますます深刻さを増しています。介護保険制度について、党市会議員団の行った事業所と市民へのアンケート調査結果をもとに、リアルな声を紹介し、改善と対策を求めました。副市長は「持続可能なものとなるよう国が検討している」と他人事の答弁であり「保険あって介護なしの国家的詐欺」との怒りの声にまったく応えようとしませんでした。来年4月からの総合事業における「緩和型介護」は導入しないよう強く求めました。
国民健康保険について、市民の声に押されて決算年度保険料が引き下げられたものの、保険料は高止まりのままであり「払いたくても払えない」実態を示して改善を求めました。「滞納保険料の納付や納付計画の提出を求めることは、負担の公平性の観点からも必要」(保健福祉局長)と冷たい姿勢を続けています。
子育て支援について、保育士の不足、処遇改善に課題があることは認めつつも、「全国平均から見ればまし」との認識であり、保育園の増設、保育士の処遇改善を強く求めました。
子どもの医療費助成制度について「通院の負担は無料」を中学校卒業まで広げること、全員制の温かい中学校給食の一日も早い実現を求めました。また、府費負担教職員の税源移譲によって、教育条件を後退させてはならないこと、学校運営費の拡充を求めました。
中小企業に対する支援について中小企業振興基本条例の制定を求めました。公契約基本条例に賃金条項を入れるよう求めましたが、理事者は「労使の話し合いで決めるもの。行政が押しつけるのは健全な事業者の発展を阻害する」と重大な答弁をおこないました。引き続き他都市の効果例を示しながら賃金条項創設を求めます。
さらに固定費の補助、中小零細業者が利用しやすい制度融資の改善、各区役所への相談窓口設置と専門職員の配置を求めました。
一、国も検討を始めている給付制奨学金を本市独自に実施するよう求めましたが「京都市民の税金で他府県から来た学生を支援するのは筋違い」との答弁があり、京都市出身者など対象を特定してまず実施するよう求めました。
ブラックバイト根絶に向けて「根絶宣言」「対策協議会の設置」「アンケート調査の実施(2000人回答)」「府・市・労働局三者で企業への要請」などがおこなわれたことが明らかとなりました。この間の党市会議員団とLDA京都(「生きやすい京都をつくる全世代行動」)の運動の成果です。また、「ブラックバイト相談窓口」も新たに設置されましたが、窓口職員は大半が非正規雇用であり、京都市自身が正規雇用を拡大するよう強く求めました。
一、破たんした大型公共事業への固執、税金のムダづかい、まち壊しについて厳しく指摘し中止を求めました。高速道路3路線事業計画は正式に断念したものの、堀川油小路の地下バイパストンネル計画、名神高速道路とのジャンクション計画など新たな大型公共事業が浮上してきており問題です。
税金のムダづかいと環境破壊、京都駅ルート誘致が破たんしたリニア中央新幹線、地元自治体の費用負担も不明、並行在来線が大きな影響を受ける北陸新幹線について誘致運動をやめ、国に延伸計画の中止を求めるよう迫りました。
七条のJR新駅への15億円の市負担、「賑わい施設」への誘導のための横断歩道橋建設(5,2億円)など新たな市民負担、都市再生緊急整備地域の指定による規制緩和などの問題点を指摘するとともに、600億円規模の中央卸売第一市場再整備計画の検証を求めました。
京都市は、国の成長戦略による財界主導の新たなまち壊しを進めようとしています。京都駅周辺の都市再生緊急整備地域の指定、元清水小学校跡地の企業への貸し出し、北区の住居専用地域に床面積3千㎡を超えるホテル建設、など問題点を指摘しました。
「宿泊施設拡充・誘致方針」は、根拠のない観光客の過大な見通しを前提にし、住居専用地域などへの「特例許可」を拡大し、都市計画の緩和でホテル建設を促進しようとするものです。無秩序な開発促進につながるものとして、「誘致方針」の問題点を指摘しました。
一、今市会では、京都市長や副市長の「聞く耳持たない」姿勢が顕著でした。職員削減や行革での市民サービス低下の指摘には「認識は全く異なる」(市長)。「プール制については見解が違う」(副市長)。「効率化・コスト削減、民営化の名のもとで、公共サービスの質の低下、官製ワーキングプアが起こっている」という指摘に「一方的な宣伝をされると、これから担い手を育てるためにいかがなものか」(市長)。北陸新幹線延伸の問題点の指摘には「地方負担が決まらないと誘致できないというのはこの問題に対してふさわしくない態度」(副市長)。市民や議会の意見を聞かず「京セラ」に決定した京都市美術館のネーミングライツ問題。9月議会での京都市のこうした姿勢は、提案に対して賛成・反対など様々な意見を出して議論するという民主主義のルールを踏みにじるものであり、執行機関への監視という議会・議員の役割を軽視するものです。
一、意見書・決議では、「建設労働者のアスベスト被害者の早期救済とアスベスト問題の早期解決を求める」意見書、「東日本大震災による避難者用無償住宅支援の継続を求める」意見書、「パリ協定の早期批准を求める」意見書他2件の意見書、及びネーミングライツ決定と工事契約入札やり直しについて市長の反省と市民の信頼回復を求める「京都市美術館の再整備に関する」決議が全会派一致で採択されました。また、「返還不要の給付制奨学金の創設及び無利子奨学金の拡充を求める」意見書に賛成し、採択されました。
党議員団は、「今国会でTPP協定の批准をしないことを求める」意見書、「南スーダンからの自衛隊の撤退を求める」意見書、「労働法制の改悪に反対する」意見書、「中学校給食のあり方の再検討を求める」決議などを提案しました。他会派の賛同がなく否決されましたが、討論及び提案説明で日本共産党の政策と立場を述べました。
一、国会審議をはじめ、安倍内閣の暴走が強まっています。一方で、参議院選挙における野党共闘の前進、新潟県知事選挙での勝利など、野党連合への期待が高まっています。年内解散・総選挙の可能性も取りざたされています。国政でも京都でも国民・市民の声をしっかり聞き、しっかり働く党議員団の本領を発揮して全力をあげます。