日本共産党京都市会議員団 団長 山中渡
「民泊」をめぐる京都市の現状
京都市内では、住宅地の空き家やマンションの一室に「民泊」が広がっています。
問題は、多くの「民泊」が無許可営業であること、所有者や管理責任者の所在が不明であること、管理者が常駐しないことです。誰が宿泊していたかを把握できないもとでの営業は、感染症が発生した場合などに、その発生源を追求することができません。また、火災の際に管理責任者に連絡がとれない、深夜にキャリーバックを引く音や大声で話すなどの迷惑行為も多発するなど、住環境が破壊されると同時に、旅行者にとっても大きなリスクが生まれます。対策の抜本的強化が早急に求められています。
京都市は市民からの「民泊」に対する苦情が急増する中で、「宿泊紹介サイト」に掲載されている施設を対象に昨年12月から今年3月にかけて「民泊施設実態調査」を実施しました。その結果は調査施設2,702件のうち、所在が特定されたのは1,260件と46.6%でしかありません。しかも、旅館業法上の許可施設はわずか189件の7.0%でしかなく、大半が違法営業と見られます。更に、「宿泊紹介サイト」のひとつであるエアビーアンドビーの登録だけでも、現在では、京都市内で4,000件を超えているとされ、調査施設以外にもまだ「民泊」は所在している可能性が高く、増え続けていると考えられます。
その後、京都市は7月13日に「民泊通報・相談窓口」を設置しました。しかし、この窓口は、そもそも「市民のみなさまからの苦情や『民泊を始めるための』相談等を」受け付けるためのものです。8月末までに349件の通報があったにもかかわらず、対応の遅れが顕著になっています。これは、管轄する保健センターの職員が増員されていないこととともに、より根本的には、「民泊を始める」相談にも同時に対応しているという市の姿勢に起因しています。
深刻な事態に対応し、以下の項目の実施を求めます
一、違法(無許可)「民泊」への指導を徹底し、違法「民泊」をなくすこと
職員が現地に出かけ実態をより正確に掴み、市民の声を聞くこと、旅館業法や市条例などに基づく指導を強化し、違法「民泊」をなくすことが必要です。そのためには、職員体制の強化が欠かせません。ところが京都市は、その指導業務を全市で一カ所に集約化する方針案を示しており、市民の願いに逆行しています。全市一カ所ではなく各行政区に十分な体制をつくるべきです。
一、国の民泊新法による規制緩和に反対し、市独自のルールをつくること
国は民泊新法を検討していますが、許可制から届出制への変更や、最低宿泊制限の緩和、住居専用地域での原則容認等、極めて問題のある方向が示されています。国の規制緩和の方向に対しては、はっきりと反対の声をあげ、市民や旅行者の安全・安心を守る立場に立つべきです。本市においては許可制の堅持や住居専用地域での「民泊」は禁止する等のルールをつくるべきです。
一、玄関帳場の設置と人の常駐を義務付けること
旅館業法その他の関連法に基づく許可を得た簡易宿所の周辺でも多くのトラブルが発生しています。そのトラブルの大きな原因のひとつは、帳場の設置が義務化されていても、その中での従業員の存在が義務付けられていないことに起因しています。しかも京町家については、2012年に玄関帳場(フロント)の設置義務を免除するなどの規制緩和が行われています。玄関帳場設置や営業時間内は玄関帳場に人の常駐を義務付ける等の見直しが必要であり、市民と旅行者の安全・安心が保障されるルールづくりこそ必要です。