日本共産党京都市会議員団
国会事故調査委員会は東京電力福島第一原発事故を「人災」と断定しました。その責任は、「安全神話」のもと原発を推進してきた歴代自民党・公明党政権と、無批判にそれを継承した民主党政権にあります。ところが、無反省にも、民主党政権は大飯原発の再稼働を強行し新規原発の工事を再開し、復活した自民党・公明党政権も原発推進の立場を強めています。こうした中、京都市は今年3月18日の京都市防災会議で、「京都市地域防災計画原子力災害対策編」を策定するとし、2月13日締め切りで市民意見を募集しています。
日本共産党京都市会議員団は、これまでも数次にわたり、原発ゼロを求めるとともに京都市の原子力防災体制の確立を求めてきましたが、今回発表された『京都市地域防災計画原子力災害対策編』骨子(以下、「骨子」とする)についての考えを明らかにし、市民の皆さんのご意見も率直に伺い、実効性のある計画となるように全力をつくします。
1.大飯原発の稼働停止、原発ゼロの政治決断が不可欠
原発は本質的に未完成な技術であり、いかに多重的な防護措置を講じたとしても、過酷事故は起こりえます。ひとたび事故がおこれば、いかなる計画をたてようとも、放射能汚染による被害を完全に防ぐことはできません。市民の命と健康を守るというのであれば、計画策定の大前提として、大飯原発を直ちに停止し、運転中の事故を未然に防ぐべきです。市長は、大飯原発の稼働停止と、原発を直ちにゼロにする政治決断をしっかりと表明するべきです。
2.「安全神話」を一掃し、「フクシマの教訓」を生かし、市民の命と健康を守ることを最優先に
市の「骨子」では、京都市が新たに計画を策定することになった背景が記述されていますが、「安全神話」のもとで原発事故が引き起こされたことやこれまでの不十分な原子力防災体制への総括がありません。国が定めた「原子力災害対策指針」(以下「指針」と記す)においては「福島第一原発事故が起こり、従来の原子力防災について多くの問題点が明らかとなった」と背景を規定しており、本市計画においても東京電力福島第一原発事故からの反省をしっかりと明記し、いかなる「安全神話」も許さず、一四七万市民の命と健康を守る決意を刻むべきです。その基本が座っていないので、「骨子」全体が、「フクシマの教訓」を踏まえたものになっていません。
一方で国の「指針」は、放射能による汚染の状況に応じてどのレベルの防護措置を講じるのかをあらかじめ定めておく基準、緊急被ばく医療のあり方、被ばく者の汚染検査などは今後の検討課題とされ、重要な部分が曖昧です。こうした指針の引き写しでは全く原発事故に対応しきれない計画になります。事故直後に放出される放射性ヨウ素を多く含む雲(放射性プルーム)に対しても、安定ヨウ素剤の事前配布・投与や屋内退避が有効としつつ、判断基準については検討を続けるとされており、具体的になっていません。
京都市の場合には、直下および間近に活断層をかかえる大飯原発が稼働しており、国の具体化をまってからの計画の具体化では現瞬間の危機には対処しきれません。京都市は、「フクシマの教訓」を生かし、市民の命と健康を守ることを最優先にした計画を策定するべきです。その立場から国に対しても必要な意見を表明するべきです。
(1)32.5キロメートルの線引きはやめ、京都市全域を原子力防災対策の対象に
「骨子」は、精度に問題があり目安に過ぎないとされる政府の放射能拡散予想結果を根拠に、原発から32.5キロメートルの範囲を「緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)」に指定し、同様の措置が必要な「プルーム(放射性雲)からの被ばくを避けるための防護措置が必要な地域(PPA)」の指定については先送りしました。そのうえで「骨子」は、事前対策・緊急事態対策として行うべき住民の安全を守るための多くの対策を、「主にUPZ地域での対応」とごく狭い範囲に限定するとしています。今回の原発事故では、原発から40~50キロメートルの飯舘村が計画的避難区域に指定され、年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定される特定避難勧奨地点は原発から60キロメートル離れた福島県伊達市にも及びました。高浜原発事故を想定したスピーディのデータからも「骨子」の定めるUPZをこえて放射能汚染が広がることは明らかです。党議員団は、「原子力災害対策を重点的に実施すべき地域」について、京都市全域を対象にすることをもとめます。
さらに、原子炉内の1~2%の放射能が漏れた今回の原発事故でも甚大な被害をもたらされていますが、それを上回る規模の放射能汚染が起こりうることなども踏まえた計画とするべきです。
(2)放射能汚染の危険性を直視した災害想定に
「骨子」における「計画の基礎とするべき災害の想定」では、指針で明記されているセシウム、ウラン、プルトニウムなどの核種について、「微粒子」という分かりにくい表現で記載されています。福島第一原発事故被害地域においてはセシウムが復興を妨げる代表格になっていることからも、住民の命と健康に大きな影響を与えうる核種については明記し、原発事故の危険性への正確な理解の土台とするべきです。
(3)実害と風評被害について機械的な線引きをせず取り組むべき
「骨子」では、中長期対策として、「風評被害などの影響の軽減」のため販売促進や観光誘致などに取り組むとされていますが、放射線被ばくに閾値(しきいち)はないため風評被害と実害の区別は困難であり、「実害」も視野に入れた対策を盛り込むべきです。たとえば、農産物などについては全品検査体制を確保し、測定結果が国基準を下回った場合でも、全農産物に測定結果を明示し、消費者に正確な情報を伝えて実害を予防する徹底的な姿勢を示すことが風評被害対策となります。
(4)ヨウ素剤の服用
国の「指針」では、PPAの基準の決定を先送りにしているものの、UPZ外においても甲状腺被ばくを避けるためにはヨウ素剤の服用が有効であることを認めています。福島第一原発事故では、60kmはなれた福島県伊達市では住民の手元にヨウ素剤が届いたのは事故から2週間も経過してからであり、備蓄と迅速な服用体制の欠如が住民に甲状腺被ばくのリスクを高める結果をもたらしました。
この教訓に照らせば、京都市全域のいかなる地域においても、組織的な対応が困難な状況下でも行き渡らせることができるきめ細かな備蓄と服用の体制をつくるべきです。そのためにも、各行政区にある保健センターの権限を強化し、地域の医療機関、行政の出先機関等と連携した緊急の体制を確保することが必要です。
(5)モニタリング体制の強化
京都市全域の詳細な線量マップを平時からそなえ、測定する体制をつくっておくことが現在の安心といざというときの備えとなります。スピーディの予測についてはすべての原発について結果を公表し、計画に反映するべきです。
3.原子力防災対策、原発ゼロを推進するための体制の確立を
京都市は、原子力防災対策に関する専門職員を採用し、防災危機管理室、区役所等の原子力防災の体制を強化するべきです。