[見解]2011年度版京都市政報告書に関して - 見解・声明|日本共産党 京都市会議員団

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日本共産党京都市会議員団

1.京都市は7月、「京都力を育み、『共汗』と『融合』で進めるまちづくり」を副題にした「京都市政報告書」(以下、報告書)を発行しました。作成経費は約800万円、作成冊数は3万5千部、市のホームページにもアップしています。
 市政報告書としては今回で5回目、概ね四年のスパンで発行しています。しかし報告書の副題や、テーマ別分類の「いのち、環境、知恵、ひと、刷新」は、門川市長のマニフェストをプラン化した「京都未来まちづくりプラン」にあるテーマそのものであり、市長選挙を半年前に、公金を使った選挙に向けた宣伝物であり、門川市政の本質を覆い隠すものです。
1.福島原発事故を受けて自治体のあり方が大きく問われています。ところが報告書では、原発に依存してきたエネルギー政策についての見直しや言及がまったくなく、自然エネルギーへの転換についても一言も語られていません。しかも市長は「原発による放射能の問題について、京都市域にはあまり影響ない」(4月の記者会見)との認識を述べ、さらに「当面の間は原発に依存しなければならない」「ただちに全面停止すれば、産業や国民生活が維持できない」(7月の記者会見)と原発に依存し、全面停止に反対の立場を明らかにしています。
1.報告書にある成果のなかには、京都市長選挙で争点になり、その後の市民の要求運動と議会での論戦が実ったものが多くあります。しかし、自治体の本来の役割や責務から見ると、多くの問題点が浮かび上がってきます。

市民サービスや福祉・教育の切り捨てをすすめながら、公的責任を放棄
①貧困と格差が拡大するなかで、雇用情勢が全国的にも悪化し、京都市はそのなかでもトップクラス、非正規率は45%を超えています。報告書では「地域で安心して暮らす」と言いつつ、最後のセーフティーネットである生活保護において「自立支援、不正受給対策」を口実に、保護世帯の増加率を全国平均と比べて低く抑え、この三年間で「低いほうから1位」となったと評価しています。さらにケースワーカーを削減を図ろうとするなど現場の矛盾はいっそう深まり、自治体の「住民の健康と福祉を増進する」という公的責務から大きく逸脱しています。これは、有期制の導入の検討など国の生活保護行政の改悪を先取りするものです。
②報告書では「子どもを安心して産み育てる喜びを実感できる、子育て支援が行き届いたまちづくり」を言いますが、京都市の民間保育園の経営と保育士の処遇を保障してきたプール制を改悪し補助金の削減を断行したことに、まったく触れていません。これは、保育分野の規制緩和や保育サービスの民営化など、国がすすめる保育の公的責任を投げ捨てる動きと軌を一にするものです。また、子どもの医療費助成制度はいまだに3歳未満にとどまり、京都府内で最悪のままですが、一言もふれていません。一方で、子どもなどの急病の際に活用されてきた市内3ヵ所の休日急病診療所を廃止し、JR二条駅前に統合したことを成果として記載していることは重大です。
③「誰もが笑顔で健康に暮らす」と言いますが、政令市で4番目に高い国保料について全く触れていません。単年度収支が3年連続計40億円の黒字なのに保険料を3年連続値上げ、さらに正規の保険証の取り上げ2万件、差し押さえは1434件(3年間で3倍に)という実態を市民に隠すことは問題です。行政区ごとの保健所を医師が所長でなくてもよい保健センターへ格下げさせたことは公衆衛生の責任放棄です。
④「一人ひとりの子どもを徹底的に大切にする」と報告書で強調していますが、少人数教育について国が予算措置をおこなったにも関わらず従来の水準(小学校1・2年、中学3年)にとどまっていながら、成果として評価。一方で、担任が正規教員でないクラスが学年で過半数という学校や、新設校に比べて給食が未だにアルマイト食器という小学校が大半という学校間格差が放置されています。
⑤こうした切捨てをすすめる一方で、大企業には企業立地促進助成制度による年間助成額の八割を助成するなど優遇しています。また、オリックスの水族館建設や財界の意を受けた岡崎再開発を推進しようとしています。

ムダづかい温存の一方で、国の構造改革路線を先取りした市政運営を推進
①国の構造改革路線をうけて設置した、財政改革有識者会議による財政構造改革の議論と提言をそのまま市政運営に持ち込み、職員数削減目標1300人を上回り、4年間で1444人の職員削減を「実績」として評価しています。また、防災対策の強化を言いながら、国基準に照らして低い充足率にも関わらず、更なる消防職員削減計画を否定していません。 
②地方交付税と本市の臨時財政対策債の合計額が1000億円台を回復したと言いますが、正味の地方交付税は三位一体改革以降も毎年減額されていることは重大です。同時に、報告書には、三位一体改革を国とともに進めてきた市の総括がありません。また財源確保のための臨時財政対策債を含めると市の借金は毎年増え続けています。市の借金が減少しているように説明することはごまかしです。落ち込んでいる市税収入の回復には、京都経済の主役である中小企業のものづくりを支援し、循環型の地域経済へ転換し、担税力を高めることが必要であるにも関わらず、対策は不十分です。
③市民世論に押されて4年間全く着工できず、議会で計画の「凍結」を言及したにも関わらず、市内高速道路未着工三路線を「別冊まちづくりマップ」に挿入しています。逆に、燃やしたごみをさらに高温で溶かすというムダで、環境破壊の焼却灰溶融施設(建設費約180億円)を建設したことを一切触れていません。

マニフェストやまちづくりプランで掲げた公約に反しながら無反省
①市立看護短大に関して、公約やまちづくりプランでは「充実」とか「大学将来構想の策定」としていましたが、反対を押し切って一方的に廃止を決め、京都の看護師養成に果たしてきた市の責任を放棄していることに、まったく反省がありません。
②市長選挙で争点となった「市政の刷新」について、不祥事根絶、市役所改革を掲げ、「一年間で不祥事を根絶する」と言いながら、3年半で逮捕者14人、懲戒免職15人の実態には頬かむりしています。また「人権文化の息づくまちづくり」を標榜していますが、特定の市民を違法抽選で排除したとして訴えられた「タウンミーティング訴訟」では、最高裁で当時教育長であった市長の責任が断罪されたにも関わらず、反省や謝罪がありません。
③新景観政策によって自ら決めた高さ規制に関して、岡崎地域活性化ビジョンや山ノ内浄水場跡地活用において、規制緩和を計画しようとしていることは重大です。
④「共汗と融合」を標榜し、おむすびミーティングを42回開催したと言いますが、市立看護短大の廃止や空き缶持ち去り禁止条例、水族館建設、大文字送り火騒動など「独断専行」的な市政運営にも無反省です。
 
 以上述べた点から見ても、門川市政の継続は認められません。日本共産党市会議員団は、引き続き市民要求の実現と、市政の転換と刷新をめざして全力をあげるものです。

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