健康増進センター(ヘルスピア)廃止条例案に対する反対討論 井上けんじ議員 - 市会報告|日本共産党 京都市会議員団

健康増進センター(ヘルスピア)廃止条例案に対する反対討論 井上けんじ議員

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終了本会議 討論
井上けんじ議員
 継続審査の動議が否決されましたので、この場での採決となれば、日本共産党市会議員団はキッパリ反対であります。議第107号京都市健康増進センター廃止条例案について、議員団を代表し、私井上けんじから、以下、反対の理由を述べ討論します。

 既に、存続を求める請願署名が3,233筆、市長宛ての署名も約1700筆、合計約4,900筆余りもの署名が短期間に寄せられています。ある利用者の方は、ご自身なりにこの間の経緯を整理されています。市の廃止理由や利用者数の推移、周辺の同種の施設の利用金額や概要をまとめ、更に健康増進法も分析された上で、ヘルスピアの特徴や存続の意義について書いておられます。特に高齢者にとって安価な健康作りの施設だと。親子でまたは子どもさんだけでも一日単位で利用可能、ボランティアの指導者の皆さんが利用者へのアドバイスだけでなく後継者の養成育成に系統的に努力されている、これらの特徴が他の施設では必ずしも充足されているとは言えない、特に利用者一人一人に適した指導や自己の年齢や体力に応じた効果的なプログラムを組んで実践され、市民の健康を保持増進する施設である、医療費や介護費用の削減、健康寿命の拡充にも大きな効果等々とまとめておられます。登録無料・一日利用・費用低額等々の特徴を、各地域や市民、近隣のホテル利用客等へもっとアピールしていこうとの提案もされています。

 また別の方々からの声も紹介します。「医療と健康・福祉を目的とした施設、医師の勧めでケガのリハビリ、寝たきり予防介護予防の為の施設であり、高齢者向けの教室も充実、杖や歩行器を使って利用されておられる方、妊婦や障害のある方等々、利用の幅も広い、低廉で会員制でないことが大きい、近隣施設では会費はカードでの引落し、予約はWebで等、高齢者にはハードルが高い」。更に「身体的ハンディや知的障害のある人たちも職員さんやスタッフさん、利用者間の見守りや思いやりの中で、リハビリや生活機能維持向上の為に自ら努力されておられます。仕事帰りに汗を流す青年もおられます。年金で踏ん張る高齢者やハンディを持つ人たち、シングルマザーのご家庭など、高額な他の施設などに移れるハズがない」等々。更に新聞の投書欄にも「先生たちの温かい励ましと教室の仲間に支えられ」「色々なことを教えてもらいそれは日々の生活でとても役立っている」「利用料は夫の通う別のジムの半分以下」との声が寄せられています。市民の皆さんの声こそが、反対の最大の理由であります。

 その上で、更に以下何点か、市長の廃止の提案理由に反論し、私の反対の理由とします。

 第一に、10年間16億円の改修費用がかかるとの廃止理由は、既にその根拠が崩れています。この費用には、建物一階の福祉事務所のフロア等、ヘルスピアとは別の施設部分も含まれていることが、先日の教育福祉委員会で明らかになりました。ヘルスピアだけで言えば過大見積もりと言うことになります。仮にこの話を横に置いたとしても1年で1.6億円、これは施設の役割から言えば必要経費とも言える許容範囲です。隣の東寺の弘法さんの五重塔は1644年の再建と言われていますから370~80年も健在です。僅か30年で老朽化などと言うのは、今迄の維持管理への市の努力が問われるだけの話であって、プールは劣化が早いとも言われますが、学校をはじめプールがあるのはここに限ったことでもありません。そもそも改修費がかかるから廃止というなら、美術館や市役所はどうなりますか。改修費用を超える存在意義があるからこそ改修するのであって、結局、ヘルスピアもその改修費用自体が廃止の理由なのではなくて、費用と存在意義とを天秤にかけて存在意義の方が軽い、施設の市民的な意義や役割についての位置付けが弱い、公的施設としての市の認識が浅いということが、廃止の理由の本質だということに他なりません。費用は、市民の健康増進のための必要経費と言うべきであります。市自身が言うところの「市民の健康の保持増進に寄与してきた」という正当な評価から出発して議論をやり直すべきであります。診療所の役割や職員・スタッフの皆さんのご努力、利用者同士の励まし合い、利用者本位の運営等々、先程紹介した市民の皆さんの声を聞けば、その意義と役割は自ずから明らかであります。

 第二に、近隣に同種の施設が増えているという廃止理由について言えば、これこそ語るに落ちると言うべきであります。地方自治法では、公の施設という項目を立て、「地方公共団体は住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設を設ける」と謳っています。制度上必ずしも住民福祉向上を直接的な目的とするわけではない民間の施設があるからといって公の施設を廃止しても構わないなどという考え方は、住民福祉増進を目的とする公の施設の設置とその運営という自治体の役割を自ら放棄する宣言に他なりません。自治体の役割はもう果たしませんよと言っているに等しいと思います。まして、売却・貸与等、民間移管が見込みにくいからという廃止理由に至っては、最早何をかいわんやとも言うべきであります。移管できれば施設としては残す予定だったのでしょうか。いや売ったお金さえ入れば残すも残さないも関係ない、市にとっては、民間事業者が市民の健康増進に頑張って頂こうが廃止してなくしてしまおうが、要は自分たちの手から放れさえすれば後のことはどうでもいい、そんなことは預かり知らないと言っていることに他なりません。こんな無責任な廃止理由がどうして認められるでありましょうか。

 そこで第三に、この、施設の意義と位置付けについて、一つには公の施設一般の角度から、二つには健康増進という具体的な目的と役割との角度から、更に反対の理由を述べたいと思います。

 施設一般から言えば、今回の廃止方針は、市全体の施設保有総量を減らす方針の一環であり具体化です。まず施設総量を減らすありきで、各施設の夫々固有の文化的福祉的市民的意義・役割についての個別の検討から出発しているわけではありません。そもそもこの削減方針自体が「国の要請に」相呼応するもので、地方交付税で誘導する、人参をぶら下げるという国のやり方への追随便乗から出発しているだけの代物です。3月の市会教育福祉委員会では、行財政局の事務事業評価委員会からの意見として、施設全体の運営費と利用料との差額について「他の市民の税金で負担しているだけである」と紹介されています。しかしこの紹介は、結局は、評価委員会に名を借りた、市長ご自身の考え方に他なりません。肯定的な引用とはそういうものであります。「だけである」等と悪意に満ちた発言をそのまま引用される感覚が私には全く理解できません。どの施設でも公の費用で運営され、その上でその一部の負担を市民に求めているだけであって、芸術大学でも動物園でもそんなことは当たり前のことではありませんか。こんなことが廃止の理由になるのなら、100%利用料使用料で賄う施設しか残らないことになってしまい、公の施設の意義は全く消え失せてしまうしかありませんか。

 一方、健康増進という目的と役割から言えば、そもそも憲法25条で言うところの福祉や公衆衛生の向上・増進に努めなければならないという国とは、自治体をも含む解釈だと私は思いますが、それはともかく、特に高齢者への訪問活動や実態把握、保健や予防等の活動は、介護保険発足後、仕組上、行政の仕事から離れてしまいました。以前には作成され活用されていた衛生統計書も冊子としては作られなくなり、保健所が各行政区から奪われたことによって、保健所毎の保健統計年報も、当然なくなってしまいました。これらの統計では、各地域毎の健康や保健活動上の特徴や活動が分析されておりました。今回の廃止提案は、こういう保健予防活動・公衆衛生活動、市民の健康を守り増進させる諸活動からの、市の公的な役割と責任をますます後退させる一連の流れの一環であって、今日の情勢の元でこそ、この流れを断ち切り、転換を図り、健康増進センターの存続充実、保健所の各区への復活等も含め、地域から公衆衛生・保健予防・健康増進活動の復活向上増進を目指すべき時だと考えます。意義と位置付けと目的がそもそも違いますから、類似の施設が増えているからというのは、全く廃止の理由にはなり得ないものであります。

 第四に、指定管理者の労働者の雇用について、市長にも広い意味での使用者責任があると考えます。今の仕事に誇りと生きがいをもっておられます。少なくとも2026年迄の5年間の指定期間との約束を前提に、議会としても健康づくり協会の指定に同意したのに、途中で打ち切るのは、議会に対してとともに、誰よりも指定管理者とそこの労働者への背信です。今の健康増進センターでの雇用継続を保障すべきです。今の段階で、何の裏付けも保障もありません。この点も賛成できない理由であります。

 最後に、3/18の教育福祉委員会での廃止方針発表後2カ月にも満たない短期間の提案は、あまりにも拙速過ぎます。つい最近もプールの一部を修理されたばかりですが、その直後の廃止提案は、いかにも慌ただしく、方針が首尾一貫しないのではないか、或いは指定管理者任せで、市の施設設置者としての本来の責任と役割の発揮が疎かになっているのではないかとの危惧を感じさせるものです。公正公平な判断の為の市民的な議論の時間の確保が必要です。提案後僅か2週間での採決では、議会的にも市民的にも、議論・検討の期間があまりにも短すぎます。廃止などとうていできるわけがありません。本条例案に反対し、否決すべきことを呼びかけて、討論とさせて頂きます。有難うございました。

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