公営企業特別会計決算について 山本陽子議員 - 市会報告|日本共産党 京都市会議員団

公営企業特別会計決算について 山本陽子議員

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山本 陽子
山本陽子議員
 日本共産党京都市会議員団は、報第15号水道事業特別会計決算、報第16号下水道事業特別会計決算、報第17号自動車運送事業特別会計決算、報第18号高速鉄道事業特別会計決算について認定しないとの態度を明らかにしていますので理由を述べ、討論します。
 第一に、各公営企業について認定できない一番の理由は、決算年度が運賃や、水道料金、下水道使用料などへ消費税増税を転嫁し、交通事業で4億円、上下水道事業で3億円のさらなる市民の負担増となった年度であり、市民の暮らしも厳しいなかで「本来の目的である公共の福祉の増進」に反するものと考えるからであります。
 昨年も指摘しましたが、京都市が利用者・市民に消費税を転嫁上乗せする法的根拠はありません。確定した判決でも「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しない」としています。「預かり金」ではないということです。消費税は、所得が低いほど負担が重い逆進性のある税制で、低所得者に対して厳しい負担となるのですから、地下鉄の日本一高い初乗り運賃の値上げや、命の水の値上げで、公営企業の税負担を市民負担増で賄うべきではありません。
 そもそも国は、「公共の福祉の増進」として必要不可欠な上下水道事業や、交通事業に対して、消費税を課税すべきではありません。京都市には国に対して公営企業に消費税を課すべきでないと求めていただきたい。「国税のことは国がお決めになる」と物言わぬ態度を示されたことは、市民の暮らしを守る自治体の責任放棄と言わなければなりません。
 
 第二の理由は、上下水道事業、交通事業ともに「経済性の発揮」に資すると民間委託化を進めることは、行政の公的責任を後退させ、官製ワーキングプアを増大させる結果を招いているからであります。
 上下水道事業については、決算年度にお客様窓口サービスの民間委託化、水環境保全センター水処理施設運転管理業務の委託拡大が行われ、職員定数27人の削減が行われました。どこまで、民間委託を拡大させるのか。「根幹業務は守る」とされる「根幹」とは、事業の「計画や管理」であると言われましたが、それでは、現場を知らない職員が増えて、技術の継承が困難になり、コロナ禍のように想定しない災害が起こったときに、市民への対応が困難になるのではないでしょうか。民間委託による「経済性の発揮」の追求は、脆弱な行政と裏腹であるということを肝に銘じていただきたい。交通局でも、「管理の受委託」が継続されていますが、市民の足を守る公的責任を、さらに経営の厳しい民間会社に押し付けており、だからこそ「管理の受委託」からの撤退となっているのではありませんか。
 一方、委託化されている事業の雇用条件をみると、水道料金の検針業務の委託は時給909円、市バス清掃業務の委託は時給910円で最低賃金に張り付いた条件になっています。経費削減のための民間委託は官製ワーキングプアを増大させます。市民の暮らしを守る責任を負う京都市の立場と相反すると言わなければなりません。

 第三には、特に市民の足を守る交通事業について、今回も交通不便地域への路線拡充やジャンボタクシー等による路線の運行、地下鉄通学定期券割引率の引き上げ、利用者すべての乗り継ぎの無料化など、市民の利便性向上に向けて議論をしましたが、減収による経営状況の厳しさを理由に困難であるという態度に終始していることは、市民にとって希望のない未来を示すことになり認められないからです。
 確かに、決算については黒字を維持しつつも、今年度に市バス事業では最大85億円、地下鉄事業では89億円の減収が生じる見込みであることは、厳しい局面であると考えます。
 しかし、コロナ禍の現時点で振り返って言えることは、まずは、インバウンドの動向に一喜一憂してきたことの反省が必要だということです。そして、最大の教訓は、本来市民の移動の権利を保障すべき公営交通が独立採算制でいいのか、考え直す必要があるということであります。
 この点、近畿運輸局が発行しているリーフレットには、「地域公共交通は料金収入が運行費用を下回ることが多くありますが「赤字」とよぶことは適切ではありません」とあります。つまり、デパートのエレベーターの例を挙げて、「デパートはエレベーターの収入はゼロだけれど、エレベーターは赤字とは言わない」「エレベーターが無料だからデパートに来てくれる」と言います。これは翻って、地域公共交通への補助は「地域に住み続けられるための支出、地域を支えるための支出」として必要だということです。諸外国では、公共交通は地域を支えるインフラとして位置づけられ、運賃回収率は「パリでは65%、ローマは23%、ニューヨークで48%」です。近畿運輸局は『「赤字」と呼ぶと、廃止が最適という錯誤を生む。「赤字」と呼ぶとサービスが改善されない』と警鐘を鳴らしています。このことは、公営交通事業にあてはめてみれば、当然に国や一般会計からの補助により経営を維持すべきということになります。私たちが求める利便性向上や、利用者の安全、市民負担の軽減は、無理なことではなく、むしろ一層市民の足を守る役割を発揮することを通じて、攻めの立場から、国へのアクションが必要であるとの思いであります。
 そして、これは各自治体が同様に直面する課題ですから、他の公営企業や団体と共同して、国に対し、独立採算制の廃止や、減収補てんとなる補助をもとめるべきです。
 市民は、コロナ禍にあって、社会の発展を止め、後退させる道を歩むことは決して望みません。市長も、そのように思われるなら、市民に負担や困難を強いる選択ではなく、国に責任を果たせる共同へ、京都市も力を合わせることにもっと尽力していただきたい。その選択こそ、市民が未来への希望を託せるものであると思います。以上、申し述べて、反対討論といたします。

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