日本共産党京都市会議員団は、「生活保護基準の引下げを中止し、2013年以前の基準に戻すことを求める意見書案」を提案していますので、私は議員団を代表して、討論をいたします。
厚生労働省は、2018年10月に更なる生活保護基準額の引下げを実施しようとしています。既に、2013年度からの平均6.5%の生活保護の基準の引下げにより、生活保護受給者世帯において、「健康で文化的な生活」を維持し得ていない状況になっています。
まず、今回の引下げの考え方として示された算定方式に問題があります。全国消費実態調査に基づいた所得階層を10に分けた、下位10%の階層の消費水準に合わせるというものですが、厚生労働省の生活保護基準部会においても、複数の委員から消費水準が低すぎると指摘がされています。そもそも、生活保護基準未満の世帯のうち、実際に生活保護を利用している世帯が占める割合を生活保護の捕捉率と言いますが、厚生労働省が公表した資料によっても、2割ないし3割と推測されています。つまり、所得下位10%の層の中には、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている人たちが多数存在していますから、その層を比較対象とすれば、生存権保障の水準を引き下げ続けることにならざるを得ず、合理性はまったくありません。
さらに注目すべきことに、今回の引き下げについて、日本ソーシャルワーカー協会や日本社会福祉士会、日本医療社会福祉協会、日本精神保健福祉士協会、日本ソーシャルワーク教育学校連盟、そして日本弁護士会の会長名などで、「生活保護基準の引下げに反対する」声明が出されていることです。京都においても、京都の社会福祉士会や精神福祉協会、医療ソーシャルワーカー協会、介護福祉士会の皆さんより、「生活保護基準額の引下げに係る影響緩和への取り組み関する陳情書」が、京都市会に出され教育福祉委員会で審議をしたところです。社会福祉分野において、子ども、障害者、患者、高齢者などが抱える多岐にわたる生活課題の解決に向けた支援を行う専門職の皆さんや、国民の権利を守る立場で奮闘される弁護士会からの声を重く受け止めるべきです。
私たち議員も市民からの生活相談の中で、生活保護受給世帯の皆さんが、度重なる生活保護基準の引き下げにより、食費さえ切り詰めていることや、冷暖房をなるべく付けず我慢されていること、冠婚葬祭や地域の行事への参加も手控える等、「健康で文化的な生活」が阻害されていることを目の当たりにしている方も多いと思います。したがって、これ以上の基準の引下げは容認できないことはもとより、少なくとも2013年度前の基準に戻すことは、緊急に求められる問題です。
加えて、生活保護基準は最低賃金、就学援助の給付対象基準、介護保険の保険料・利用料、障害者総合支援法による利用料の減額基準、地方税の非課税基準等の労働・教育・税制などの多様な施策の適用基準と連動していることからも、その引下げは市民生活全般に多大な影響を与えることになります。現在、全国で「生活保護基準引き下げは生存権を保障した憲法25条に違反している」として、生存権裁判が取り組まれています。京都の原告は50人、全国では1000人を超えていますが、自らの生存権を守るためだけでなく、「生活保護のあり方はすべての国民の権利に関わる問題」として、文字通り病気を抱えながらも命がけで闘っておられるのです。その決意と願いに答えなければならないと思うのです。
以上、市民の生活と命を守るために、生活保護基準の引下げの中止を強く求めるものです。同僚議員の皆さまの賛同をお願いし討論とします。