日本共産党市会議員団は、京都市いじめ防止等に関する条例案に対して、一部修正案を提案していますので、代表して提案説明をいたします。
まず、いじめ防止条例を制定するにあたって、条例がいかにいじめ防止に役立つのかということが重要です。大事なことは、子どもの権利としていじめを受けないことがあり、それを保障するために、行政や公教育、社会がどういう条件整備などの責務を果たすかを明確にすることです。
前文では、いじめを「子どもの教育を受ける権利を著しく侵害」、「成長及び人格の形成に重大な影響」「生命または身体に重大な危険」の三つで捉えていますが、子どもの権利についての理解が弱いと考えます。いじめは教育を受ける権利の侵害だけではなく、こどもの安全に生きる権利及び学び成長する権利を脅かすものとして加え、子どもの権利の侵害を深くとらえ、その侵害から子どもの権利を守る義務が行政、学校、大人の側にあるという立場をはっきりさせることが、条例のあり方と考えます。
さらに、いじめの問題を解決するためには、まずは一人一人の子どもたちが、学校や学級、さらに家庭や社会において自分が尊重されているという自己肯定感を持つことが重要であり、そのことによって子どもたちは他者の人権を尊重することの必要性を自覚することになると考えます。日本の子ども・若者は自己肯定感が低いことについて、2010年に日本は、国連子どもの権利委員会から、「子どもの情緒的幸福度の低さ」を勧告されています。この問題に向き合う必要性があることは明らかです。
以下、主な修正の趣旨に沿って、説明します。
まず、第1に、条例の重要な柱として、命が最優先として組み立てたということです。
いじめの問題で最も重要なことは、「子どもの命を最優先で、教員集団の創意ある取り組みでいじめの問題に解決に当たること」だと考えます。基本理念の原案にある「こどもの規範意識が養われるとともに、いじめ防止の当事者としての自覚を持ち、主体的、積極的に行動すること」については削除し、第2項のいじめの問題の解決にあたっては、「いじめを受けた子どもの身の安全を保障すること」を付け加えました。
2つ目は、いじめを解決するには、子どもや保護者に「いじめをしてはいけない」「相談をしなければならない」及び、「いじめをしないように育てなさい」というような義務を課してはならないということです。児童憲章にあるように、子どもは「守られ」「あたえられ」「導かれる」存在です。子どもを「当事者」として義務を課すのは、子どもたちにいじめを防止できないのは、自己責任とするようなものであり問題です。また、いじめられている子どもは恥ずかしい、親に心配かけたくない、自分をみじめな存在だと認めたくない、あるいは知られたら、いじめがより酷くなる、さらに深刻な場合では主体性を奪われて、自分がいじめられることを言いません。子どもにいじめについて相談することを努めなければならないという義務を課すことは、「いじめを受けて相談しなければ、条例に反した子ども」ということになり、いじめだけではなく条例にも追い詰められることになります。
保護者においても、努めなければならないと責務を課すことは、悩みながらも子育てをする親を追い詰めることになり、結局、子どものためにもなりません。以上の点から、第4条のいじめの禁止、第6条の保護者の責務、第8条の子どもの役割の条項は削除を提案しています。
そして、親や子どもに義務を課すのではなく、京都市、教育行政、学校あげての責務をはっきりと明記し、いじめをなくす条件を整えることが重要です。
条例素案に対するパブリックコメントでは、「教師がいじめに気付いてほしい」という要望が子ども達から寄せられました。子どもと向き合う時間を取れるように、教職員数を増やす等の取り組みが必要と考えます。そこで、教育委員会の責務として、人的体制の整備を含めた措置を教育委員会が講じなければならないと明記しました。学校の責務としては条例素案の段階にあった通り、「市立学校は、いじめを把握した場合は、教育委員会に報告するとともに、教職員が一体となって、いじめの問題の解決に取り組まなければならない。また、必要に応じ、児童相談所その他の関係機関との連携を図るよう努めるものとする」と明記しました。
3つ目は「規範意識を育むこと」は法や条例等で上から押し付けるものではないということです。
「規範意識や道徳心」は大切なものでありますが、それは、教員や子ども、保護者などが自主的自発的にすすめてこそ、実を結ぶものであり、法令や条例で上から押し付けるやり方はかえって逆効果になるということです。大津市の第三者委員会は「道徳教育の限界」を指摘し、「むしろ学校現場で教員が一丸となった様々な創造的な実践こそが必要」と報告しています。京都市もこれまでから、規範意識を京都の子ども達に育むというプロジェクトチームを設置し取り組まれてきましたが、いじめが減ったということになっていません。子どもの権利の保障・周知徹底に、子どもの自主的活動の促進こそ、中心に据える課題と考えます。
したがって、基本理念や第3章の子どもの豊かな心と規範意識を育む関係者会議などにある規範意識という文言を削除しています。
4つ目に財政上の措置の明記も必要です。法として位置づけられているということで、素案の時に一旦明記していたものを削除されていますが、大津市の条例においては盛り込まれています。例えば、いじめの対策、子どもの貧困対策として、国がスクールソーシャルワーカーやカウンセラーなどの配置を交付税措置として付けたとしても、京都市自身が積極的にその予算を活用し、市の予算に具体的に組み込むかという姿勢が問われると考えます。
最後に被害者・遺族への知る権利を保障することの重要性についてです。被害者・遺族は、「事実確認ができていない」だとか、「プライバシーに関わるから」等と情報を操作したものではなく、ありのまますべてを知りたいと望まれます。子ども達が書いたアンケートの結果もその筆圧さえ知りたいと望まれるのです。原案では、第15条において、いじめを受けた子どもやその保護者に対して、必要な情報を適切に提供するものとなっていますが、それはすべてありのままではないということです。したがって、修正案では市長は知る権利の実現に力を尽くすべきという点を強調しました。
以上、日本共産党市会議員団として、教育関係者や子どもの発達保障に携わる専門家の方々にもご意見をいただき検討を重ね、修正案を策定しました。同僚議員の皆様のご賛同をお願いし、提案説明といたします。