二つの請願が出されていますが、紹介議員として、私井上けんじから、その趣旨を一括して紹介させて頂きます。
請願第2号は「保険料減免等の充実を求める」もので、その項目①は減免の要件としての減収の比較基準を、前年ではなく、コロナ禍の以前にされたいというものであります。本制度は、収入減少額が前年収入の3/10以上、等の要件が設定されています。三つの論点があります。
まず請願項目の表現の通り前年との比較の問題です。既に新型コロナウイルスの影響は2年半以上に及んでいますから、影響が広がった翌年、今から言えば一昨年の時点では、確かに前年より落ち込んだ訳ですが、その後は、昨年・今年とずっと低止まり状態が続いています。今の時点で前年と比較しても低いままですから、前年より3/10落ち込んだ訳ではありません。いち早く影響が広がった翌年に制度化したものの、当初はこんなに長引くとは思われなかったからでしょうか、前年との規定で有効だった訳ですが、1年以上経てば、最早、時代遅れになってしまうことは明らかではないでしょうか。時代の進展に追いつかない不作為と言うべきであります。
二つ目は、今の話の前年比較だとしても、仮に前年のコロナ関連の給付金や補助金等を収入と見做せば、それらをもらわない今年と比較して、落ち込む可能性が広がります。実際、これは国保の例ですが、群馬県渋川市では、前年の収入に給付金を含む措置を採って、減免対象者を増やしています。ところが、今年の3月14日付、厚労省の事務連絡との文書では、わざわざ、前年収入とは、各種給付金を控除した額だと、つまり収入とは見做さないと断っています。この問題はまたあとで出てきます。
三つ目は、自治体の役割発揮です。本制度は、元々、国がその財源も手当するからという通知により始まったものです。そこで制度改善は国に求めるとだけ考えがちですが、同時に、自治体独自で実施する可能性も探るべきだと思います。これは他の請願項目も同様ですが、この項目は、その可能性がより高いと思います。保険者は各自治体であり、本府広域連合ですし、独自の条例や規則に基づく制度でありますから、国への改善を求めるとともに、国待ちにならず、本広域連合の判断で実施の是非を検討し、且つ実施すべきだと考えます。特別地方公共団体といえども地方自治の本旨に基づいて自治権があるのは当然であり、従って、この場合、正副連合長・執行部でご判断頂くか、若しくは議会が、団体意思の決定として議決すれば可能です。その場合、国が手当てしないことは当然考えられますが、私は、国の不作為であるから直ちに改善すべきだと、国に強く言うべきだと考えます。また、我が広域連合独自の予算化は如何でしょうか。この場合はやはり予算の提案権は連合長の決断ということになるでしょう。決算年度で言えば4600万円ほどですから、金額的には十分可能だと思われます。
項目②は、保険料の算定に際し、事業者の皆さんが受け取られた国や自治体の各種協力金、補助金等を除外されたいというものです。特別定額給付金等は非課税とされ収入認定しないとされてきました。一方、事業に係わる給付金や補助金等は収入とされ課税対象とされ、社会保険関連の各種保険料や一部負担金の額や負担割合の算定根拠とされています。請願者の方は、年間保険料が53,420円から何と322,765円へと6倍以上にもなっています。前述の通り、保険料減免要件の前年の収入からは控除するとしておきながら、一方で、保険料計算上は収入と見なすとしています。この理屈が成り立つなら、前年の収入には加え、保険料の算定からは除くとの逆の解釈も可能です。給付金等は、生活を守るための見舞金との位置付けが可能であり、また家賃補助等固定費であったり事業継続資金であったり等々、真水の収入が増えたとは言えないものだからです。米や仏などでは非課税だと言われています。地方税法でも、「地方団体は、公益上その他、課税を不適当とする場合、課税しないことができる」と規定しており、保険料への援用は、本府広域連合の独自措置としても可能だと考えます。
項目③は、協力金や補助金の為に所得が増えたとされ、その為に3割となった一部負担金割合を元の1割に戻して下さい、というものであります。単純に言って3倍もの値上げであり、また請願書にも書いてある通り、高額療養費の限度額も8,000円から24,400円へと、これも3倍以上です。国や府の言う通り、真面目に時間短縮に協力してきたのに、これでは病気になれない、なっても、特に一部負担金は、一般の商品購入時と異なり、後からでしか支払い額が分からないから怖くて病院へはもう行けない、患者になれないと、本当に深刻です。
請願第3号は、①保険料を引き下げることと、②この秋に国が予定している一部負担金2割化の中止を求める意見書の提出を求めること、③コロナ感染症の影響による保険料減免、傷病手当金制度の改善を求めるとの、三つの項目が掲げられています。
保険料は、今春も上がりました。2年後にはまた上がるでしょう。かかった医療費の一定割合を保険料で賄うというリンク制は、負担能力を全く無視した考え方です。支払い能力は低いまま、しかも年金値下げ、物価高ときて、一方で給付費が増えるばかりという本質的制度的な矛盾は、公費負担割合を増やすことによってしか解決しないことは明らかです。「若年層からの支援金」とよく言われますが、この言い方も問題です。国保等他の医療保険からの収入、拠出、交付と言えばいいものを、なぜ支援と言うのか。本来、社保であれ国保であれ後期高齢であれ、国がその負担割合をずっと減らしてきていることが問題の本質なのに、そのことが隠蔽され、被保険者同士だけの関係だけに置き換えられています。本来、同じ保険であれば、その中で給付を多く受ける人、少なく受ける人がおられるのは当たり前のことであって、このリスク分散が保険のそもそもの原理ですから、その多寡の違いは何の不思議もありませんし、そのことが、同一保険内の被保険者同士なら問題になることもありません。そこを避け、また隠蔽し、しかも年齢階層間での分断に繋がります。そもそも75歳で線引きすれば、公費負担を増やさない限り他の医療保険からの拠出は避けられません。75歳未満を若年というならば、その若年層の保険料に頼ることになるのは、正に、国が75歳で線を引いたことと、各医療保険への国負担を減らしてきていることがその原因です。社会保障としての保険ですから、どの保険であれ公費負担割合増加を目指すことこそが問題の本質だと考えます。
10月予定の一部負担金の引き上げについては、これまでにもずっと中止を求めてきました。新しい情勢はと言えば、年金が引き下げられ、一方、物価高が生活必需品に及んでいます。商店、事業者の皆さんも、仕入れは上がったが価格に転嫁していない分、利益が小さくなっている。そろそろ上げないともう持たないと、今はまだ据置の店でもそう仰っています。受診抑制が広がれば、却って重症化することは必然です。負担の問題から命と健康に係わる問題へと問題の性質が変わり、より深刻になってきます。
最後は保険料減免、傷病手当金制度の改善を求める項目です。既に均等割減免対象者は、66%、2/3にも及び、それだけ基本的保険料水準が、被保険者の平均的所得に対して高い或いは被保険者が全体として低所得、ギリギリの生活だということを示しています。京都市でも後期高齢予備軍である国保の被保険者の所得割基礎額は、100万円以下が76%を占めています。引下げや減免制度拡充が必要です。また社会保険等の被扶養者については、減額とか2年限度とか、所得割賦課をいつからとか等々ではなく、元々免除ですからそこへ戻すのが当然です。傷病手当金については、コロナ以外の一般傷病にも、また自営業者へも、それぞれ適用対象を拡大すべきだと考えます。特に、前者については、75歳を挟んで現役の職域保険から後期高齢に移られた場合、後期高齢への加入を強制されながら、一般疾病の傷病手当制度が職場からなくなるというのは、制度の新設改変移行にあたり整合性の検討が不十分または不行き届きの故であって、今からでも、即刻、適用拡大すべきものであると考えます。
以上、2つの請願です。採択を呼びかけますが、それぞれ3項目づつありますから、2号または3号で一括でなくても、項目によって採択不採択の別があっても、それは議員の発意によって議会が決めればいいことだと思います。以上、ご紹介とさせて頂きます。ご静聴、有り難うございました。