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見解・声明

10年5月20日(木)

市民のいのちを脅かし、くらしを破壊する国民健康保険の現状を告発する 医療・福祉

日本共産党京都市会議員団

●はじめに

 「国民健康保険料が払えない」「保険証がもらえない」「窓口負担が払えず病院にいけない」市民の声は年々高まり、深刻度が増しています。直近で議員団に寄せられている実例を通して、京都市国保の現状を告発し、市民の命の最後の砦たる国保を実現するためのたたかいを呼び掛けるものです。

●医療を受ける権利がはく奪されている

 事例に見るようにぎりぎりの生活にありながら、国民健康保険料の支払いをしているものの、必要な治療が受けられない加入者は少なくないと考えられます。

 病気になって、一刻の猶予もない状況なのに保険料を担保に保険証を交付しないなどの事例は、特別の事情を無視するもので、国保法の規定にも反するものです。高すぎる国保料が払えない人は排除する、保険料徴収の手段として短期証や資格書が発行されるなど、本来の市民のいのちの砦としての国保の役割、地方自治体の役割に逆行するものだと断ぜざるを得ません。

●差し押さえの乱用は重大な権利侵害

 事例に見るように、生活維持費まで根こそぎ差し押さえるなど、徴収率向上を目的に、差し押さえが乱用されていることは重大です。根拠としている国税徴収法でも給与、年金については最低生活の維持に充てられる一定の金額については差し押さえを禁止しています。

 対策本部会議の議事録でも「財産調査をしても差し押さえに結び付いていない」「そもそも財産がないという滞納者も多くいる」との記録にある通り、実態を無視した乱用に現場からも疑問の声が上がっています。背景には、厚生労働省が滞納処分を推進、奨励していることにあり、給与も年金も銀行に振り込まれた時点で、差し押さえ可能な一般債権扱いにしてよい、という京都市の言い分を合理化する根拠を与えています。

●"保険料取り立て屋"と化した京都市

 京都市国民健康保険加入者の平均所得は62万3012円(行政区・支所別では38万8441円~79万8123円資料①)、年収でも130万円前後で、平均保険料は10万円を超え、支払いそのものが困難な世帯が多数を占めています。そもそも払えない国保料を課しながら、「徴収率向上を至上命題」とする京都市は昨年度の「京都市国民健康保険料徴収率向上対策本部」で、短期証の発行、資格証明書の発行、差し押さえ処分を「効果的」に活用して徴収率の向上を具体的に指示していることが判明しました。

 07年度から「資格証明書の適正化」を重点的取り組み目標として掲げ、滞納1年以上の世帯には資格証明書を発行することを徹底し、他保険に加入している場合は追跡調査を行って給与の差し押さえ処分も実施することを奨励しています。

 短期証の発行についても一定所得以上の世帯に対する財産調査を必ず行うこと、交付期間をできるだけ短くし、納付相談の機会を増やすことが徴収率向上に効果があると推奨しています。分納世帯の減少が効率的な徴収に結び付くとも分析しており、事例にみられる指導に直結していることは明らかです。06年に定めた「分割納付の指針」の徹底を求め、少額分納を安易に行わず、財産調査を徹底し、滞納処分を行うことを指示している事が事例にも表れています。

 さらに「滞納処分」が徴収率向上対策の普遍的な手法であるとして件数を増加させ、滞納処分を推進していることが、深刻な事態を広げています。09年度の基本方針は①徹底した財産調査と速やかな滞納処分②効率的な滞納整理のための進行管理の徹底③人材育成の強化を掲げ、区役所・支所ごとの目標徴収率も提示されています。財産調査は10年には77835件と「飛躍的に増加」させ、滞納処分は徴収率向上に「絶大な効果を有する」として、差し押さえを中心とした「更なる滞納整理の推進」を図る必要性を強調し、09年12月からは、現年分の滞納者リストを作成し、全市一斉に催告書を作成し滞納処分に当たっています。10年3月には出納閉鎖までの取り組みとして「取れる保険料は確実に確保し」「短期間で確実に効果が期待できることを担保」するとして、差し押さえを推進してきました。その結果07年度392件の差し押さえが09年度812件に急増しています。

 6月中旬には全世帯が値上げとなる国保料の通知が届きます。「払えない」市民が一層増加することは火を見るより明らかです。国と京都市の責任で市民が安心して医療を受けられる国保へと転換させるために、日本共産党市会議員団は市民のみなさんと力を合わせて全力を尽くす決意です。

深刻な事態の解決は待ったなし

○事例1(生活維持費の差し押さえ)

タクシー運転手、2人の娘(無職)と3人暮らし。不況によりタクシー収入が月3万円程度に落ち込み、年金26000円/月と合わせても生活に四苦八苦する状況となり、国民健康保険料を滞納しがちとなる。分割納付で支払いをしてきたものの、3年前から支払い不能となり区役所に相談。滞納分の保険料を支払うよう指導されるばかり。督促状が届いた後、年金支給日当日に、年金と残金200円あまりをそっくり差し押さえされた。

○事例2(短期証を担保に保険料の取立て)

 派遣社員で仕事が無く、保険料が払えず56000円を滞納し資格証明書となる。心筋梗塞で緊急入院となったため、母親が区役所に相談したところ滞納分の半額を条件として提示。父親は入院治療中で重篤な状況にあり、4月の年金支給日に滞納分の半額を持参したところ、残りを4、5月中に支払う誓約書を書くことを条件に。次の年金支給日の6月まで待ってくれとの願いは聞き入れられず。

○事例3(資格証明書による受診抑制がまねく重症化)

 年金は月額55000円、パートの娘と2人暮らし。09年2月までは払えていた保険料が払えず滞納し資格証明書となる。風邪をひいたが受診できず肺炎となり緊急入院した時は意識不明。

○事例4(徹底した資産調査)

 滞納で1カ月の短期証。月2000円の分納に応じていたものの、分納額の増額を求められ10年3月に差し押さえの調査を受ける。祖父から孫にと「大学の費用」として贈与された預金156000円あまりを差し押さえされる。

○事例5(滞納分の取立て強化)

 生活苦から保険料の分割納付の相談をして支払いに応じてきたが、10年4月、2~3年前の滞納分を延滞料込で全額払うよう通知が送られてきた。

○事例6

 失業後国保に加入したが滞納。分割納付してきたが、当初の未納分があることが知らされず延滞利息の請求があって驚く。

○事例7(一部負担金が払えず治療中断)

 一人暮らしでパート勤務。時給800円でようやく月14万円、家賃、国保、年金、税金の支払いは何とかしているが、借金の返済もあり。高血圧の持病があるが一部負担金の支払いが困難で治療中断している。