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見解・声明

08年11月14日(金)

[申し入れ]2009年度京都市予算編成に対する重点要求書 予算案について

京都市長 門川大作様

 

2008年11月  日本共産党京都市会議員団 

 

2009年度京都市予算編成に対する重点要求書の提出にあたって

 原油高・原材料高による生活と営業の悪化に加えて、アメリカ発の金融危機が国際的に影響を拡大する中、京都の地域経済と中小企業は深刻な危機に直面しています。

 また、大企業による非正規雇用の大規模なリストラが始まっており、非正規雇用率が全国トップレベルの京都市での影響の拡大が懸念されます。国は社会保障予算の自然増を毎年、毎年2,200億円も削減し続ける方針を取り続け、すでに1兆6,200億円を削減しました。国民のくらしをささえ、命と健康を守るべき社会保障が、生活苦や将来不安を増大させる大きな要因にまでなっています。国の「三位一体改革」は、地方自治体の財政危機を大きく進行させました。昨年度策定された財政健全化法は、より本格的に地方自治体に対する国の関与を大幅に強めようとするものです。

 こうした時こそ、市長には「住民の福祉の増進を図る」原点に立った市政運営とその役割発揮が求められると同時に、国に対して他の自治体とも協力して、声をあげるべきです。市長が、七月に発表した「京都未来まちづくりプラン(骨子)」では、「従来の延長線上の改革にとどまらない改革を断行しなければ、3年後には財政再生団体となり、第二の夕張市になりかねない」と、国に先行して、痛みと負担を市民に押し付ける内容となっています。「受益者負担の適正化」として、国民健康保険料や保育料、公の施設の使用料の値上げ、「自主財源の拡充強化」として市税軽減措置の見直し、さらに補助金の削減や京都市が単独で実施している事業についても見直す内容となっています。市民に新たな負担増の「プラン」を押し付けることは、市民生活をいっそう深刻な事態に追いやるだけです。

 この四年間、政府と一体となって京都市が推進してきた市政改革実行プランの「事務事業の見直し」で総額278億8千万円が削減され、敬老乗車証や家庭ごみの有料化、国民健康保険料、介護保険料、保育料、学童保育利用料、施設利用料の値上げ、各種補助金の削減など市民の負担は大きく増大しました。

 市民の暮らしを守るなら、これ以上の市民負担増を中止し、市民負担軽減の財政運営へと転換すべきです。また、国・府と一体で進めてきた京都高速道路計画を見直し、未着工の三路線の中止など、大型公共事業優先の市政運営を改めるべきです。

 日本共産党市会議員団は、来年度の予算編成に当たっては、次の方針で臨むよう重点に絞った要求書を提出します。

 第一に、金融危機による市民、中小企業の犠牲者を生まないよう、中小企業支援と地域経済再生の市政運営を行うこと。

 第二に、「京都未来まちづくりプラン」は撤回し、市民の負担増を中止し、負担軽減へ転換すること。

 第三に、地方自治体に新たなリストラを迫る財政健全化法の撤回を求め、自主財源拡充と地方自治の拡大を求めること。

 第四に、京都高速道路の未着工三路線計画を直ちに中止する等、ムダな大型開発を凍結・撤回すること。

 第五に、職員不祥事を根絶し、同和特別扱いを一掃すること。

重点要求

Ⅰ 金融危機・景気悪化から市民、中小企業の営業を守れ

☆1 中小企業に対する貸し渋り・貸しはがしが生じないよう、金融機関に強力に働きかけること。

・本市制度融資の保証料をいっそう軽減すること。返済猶予や利子補給を実施すること。

・部分保証制度を撤回し、全額保証に戻すよう国に求めること。

・日本政策金融公庫への統合によって中小企業の融資に支障が生じないよう国に万全の対策を求めること。

2 中小企業支援センターの機能を強化すること。

・融資あっせん業務を中小企業支援センターに復活させること。

・中小企業診断士を増員して、制度融資の円滑な実行に責任を持ってあたること。

・ものづくり産業調査に基づき、事業の共同化、新規商品の開発企画、技術革新と異業種交流、販路の拡大など、いっそう支援すること。

3 中小零細企業の再生アドバイスや技術・経営支援など、再生支援のための協力を地域金融機関に求めること。

4 企業立地補助金については、雇用の確保や市内中小企業支援に役立つよう、抜本的に見直すこと。

☆5 京都市の公共事業及び公共サービスの質の確保を図るため、公契約条例を制定し、下請けまで含め、労働者の公正な賃金、適正な労働条件を定めること。元請けに対し、適正な下請け条件確保となるよう指導すること。

6 公共事業の発注については分割発注を積極的に行い、下請けも含め市内中小業者への契約額での発注比率を高めて、育成に努めること。現行の小規模修繕の実績を把握し、参加資格や手続きを改善し、受注機会の拡大に努めること。

7 地域経済立て直しに向け「京都市地域経済振興条例(仮称)」を制定するとともに、中小企業振興計画を策定すること。

8 仕事おこしと地域経済活性化につながる住宅改修助成制度を創設すること。

9 事実上の大型店誘致策である「商業集積ガイドプラン」は撤回し、「京都市まちづくり条例」は大型店出店を規制するものに見直すとともに、需給調整が可能となるよう国に求めること。

10 大型店の出店・増床・営業時間延長などで影響を受ける商店街にたいし、小売商業調整特別措置法に基づく調整を活用し、具体的な支援を行うこと。

11 商店街振興・支援にむけて、専門家の派遣指導を充実させること。また、区役所に商工業振興対策の窓口を設置すること。

12 繊維技術センター移転にあたっては、現在の機能を西陣地域に残すこと。

13 伝統産業活性化推進計画の実施にあたっては、伝統産業予算を大幅に増額し、以下の取り組みを強化すること。

・技術の継承や後継者育成を進めるため、工程別技術者の調査など、市職員による系統的な実態調査を進めること。

・伝統産業に従事し、伝統技術の継承をめざす後継者育成資金の増額と対象の拡大、後継者育成機関を充実すること。また、青年技術者の育成計画をたてること。

・適正な工賃など経営や労働環境を整えるための施策を講じること。

・原材料、道具の調査の対象範囲を広げ、入手や開発など支援策を拡充すること。

・伝統・地場産業製品の海外生産・逆輸入の実態把握を行い、国に規制・原産国表示義務づけを求め、本市独自の行政指導を強めること。

・和装品とともに洋装の新商品への支援策を講じること。

☆・西陣織のジャガード機の耐用状況や旧システムの更新状況等を調査し、補助金等の支援策を講じること。

・西陣地域を対象として、伝統産業資源を活用した総合的な支援策を講じること。

14 食糧自給率の向上に努めるとともに、WTO農業協定の改正、ミニマムアクセス米の輸入中止を国に求めること。また米取扱業者については、届け出制を改め米の流通に国が責任を持つよう求めること。農産物輸入の完全自由化をめざす経済連繋協定は、食糧自給率向上に逆行するものとして反対すること。

☆15 農産物の地産地消を促進し、学校や保育所等での給食に活用すること。

16 国に対し、次の通り人間らしく働くルールを確立するよう求めること。

・労働者派遣法は派遣労働者を保護する法律に抜本的に改正すること。少なくとも派遣労働の原則自由化を決めた一九九九年以前に戻すこと。

・金融危機を口実に労働者の首切りをしないよう大企業に指導すること。中小企業には正規雇用確保のための補助を行うこと。

・時給千円以上をめざして、最低賃金を抜本的に引き上げること。

・有期雇用を厳しく規制すること。

・異常な長時間・過密労働を正すこと。

・京都市が実施する雇用創出事業に対する補助制度を創設すること。

☆・雇用保険の6兆円の積立金を活用して、失業した労働者の生活と再就職への支援を行うこと。

17 新たに設置された雇用に関する庁内横断組織を機能させ、雇用を拡大するための庁内体制を充実し、本市独自の支援をすすめること。

☆18 生活物資及び原油・原材料の価格高騰に対し、以下の緊急対策を講じること。

・原油価格高騰対策等特別支援制度については、来年度も継続すること。  ・省エネ総合支援制度とA重油から天然ガスへのエネルギー転換支援制度などの併用を利用しやすくすること。

Ⅱ 市民負担増を中止し、負担軽減へ転換を

19 「京都未来まちづくりプラン」は「地方財政健全化法」を口実にして、地方自治体の本来の公的責務を後退させ、市民に新たな負担をもたらすものであり、中止・撤回すること。

20 消費税増税をしないこと、食料品を非課税にするよう国に求めること。

21 年金の国庫負担を直ちに二分の一に戻し、新たな増税や負担増を中止するよう国に求めること。

☆22 後期高齢者医療制度は廃止するよう国に求めること。

☆23 消えた年金・消された年金問題は、一日も早く政府の責任で解決するとともに、最低保障年金制度を確立するよう国に求めること。

24 国民健康保険料を値下げすること。資格証明書の発行をやめ、全ての被保険者に直ちに保険証を交付すること。

25 「適正化」の名による生活保護締め付け強化の方針を改めるよう国に求めること。

・生活保護基準を、健康で文化的な生活が確保できる水準に引き上げ、老齢加算、母子加算を復活すること。病院への通院移送費廃止通知は撤回すること。

26 独自に負担軽減のための緊急措置をとること。

・市民税の減免措置を拡充すること。

・各種控除の廃止・縮小や定率減税の廃止による市民税、国民健康保険料、介護保険料、保育料などへの急激な負担増に対し、軽減措置を実施すること。

☆27 国に対し、社会保障費の年間2200億円削減方針をやめること、及び以下の項目を求めること。

・医師・看護師不足を解消するため養成数を抜本的に増やすこと。

・療養型病床の削減計画は中止すること。

・一部負担金の引き下げを行うこと。

・リハビリ医療の診療報酬の日数上限は、ただちに撤廃すること。後期高齢者の入院日数の制限を行わないこと。

・混合診療を拡大しないこと。

・必要で十分な介護を保障するため、介護報酬を大幅に引き上げ、保険料・利用料の値上げはしないこと。

・障害者自立支援法の応益負担、日払い方式を撤回するよう国に求めること。

28 国に対し、公営住宅法の収入基準の見直しをせず、市営住宅の家賃は応能制を原則とするよう求めること。市営住宅の家賃減免制度の改悪はしないこと。

Ⅲ 憲法と地方自治法を基本とする市政運営の推進、地球環境温暖化対策、子育て・教育 支援の充実を

29 憲法の改悪に反対すること。憲法九条、二十五条など、憲法を全面的に生かした京都市政をすすめること。

30 「新テロ特措法」の延長に反対し、インド洋からの自衛隊の即時完全撤退を国に求めること。

31 地方交付税の削減を許さず、所要額を確保し、税財源移譲を行うよう国に求めること。

32 改定教育基本法、教育三法の具体化を行わないよう国に求めること。「教育再生」と称して義務教育現場に格差を持ち込まないこと。

☆33 国に対して「教育振興計画」の撤回、愛国心押し付けの教育に反対するとともに、少人数学級実現のために教職員定数改善を行うよう求めること。また、義務教育費国庫負担割合を元に戻し、地方の教育水準が低下しないよう必要な財源措置を行うよう求めること。

☆34 教育条件の格差を是正し、学校運営費を大幅に増額すること。

35子どもの医療費支給制度は国の制度とするよう求めるとともに、京都市の制度をさらに拡充すること。

36 放課後児童対策の実施にあたっては、学童保育を後退させないこと。学童保育所を必要とする児童の全員入所をはかるため、130館目標を早期に達成し、実態に応じてすべての小学校区に学童保育所を設置すること。

☆37 保育水準を低下させる最低基準の廃止・見直しや直接契約化に反対し、公的保育の拡充を国に求めること。京都市のプール制を堅持し所要額を確保、充実すること。

☆38 地球温暖化対策の遅れを克服するため、国に対し以下の対策を求めること。

・2012年までに1990年比6%削減するとした京都議定書での約束の達成に実効ある対策を行うこと。

・2020年までに30%削減することを明確にした中期目標を確立すること。

・最大の排出源である産業界の実質的な削減を実現するため、具体的な削減目標を掲げた公的協定を経済界に義務付ける排出枠を定めた国内排出量取引の実施、環境税の導入など具体的な取り組みを行うこと。

・一次エネルギーに占める自然エネルギーの割合を2020年までに15%から20%に引き上げる目標を掲げ、その推進のために自然エネルギーの固定価格買取制度を早急に導入すること。

39 地球温暖化対策条例の推進にあたって、以下の取り組みを強化すること。

・市の削減目標達成に向けて、全庁的な取り組みをいっそうすすめること。

・温室効果ガス排出削減計画書・報告書提出の対象事業所を拡大し、実効性を確保するため、指導を強化するとともに、対象事業所との間で温室効果ガス排出削減協定を結ぶこと。

・大規模事業所である本市の「京都市役所CO2削減アクションプラン」の目標達成へ具体的取り組みを強化すること。

・自動車総量規制をすすめ、運輸部門での温室効果ガス削減対策を強化すること。

☆40 脱焼却、脱埋め立てを基本にした政策に転換し、「ゴミ戦略21」の改定に反映させること。

41 京都市の公共事業における談合の発生防止のため、入札の透明性、公平性を高めること。

 公的責任の放棄につながり、かくれ借金を増やし、地元中小企業の仕事の機会をうばうPFI手法を導入しないこと。市場化テスト法の具体化を行わないこと。

☆42 市立病院・京北病院の独立行政法人化は行わないこと。

43 公営交通事業、上下水道事業に押しつけられている「独立採算制」をやめさせるために、国に対して地方公営企業法の改正を働きかけること。高利率の企業債の借り換えについては、更なる要件の緩和、枠拡大を求めること。交通・上下水道事業の消費税は非課税にするよう国に求めること。一般会計からの繰入を確保すること。

Ⅳ ムダな大型開発の凍結・撤回

44 市内高速道路計画の残る三路線は中止すること。安全性・財政上からも問題点がある焼却灰溶融炉建設は凍結・中止すること。

45高度集積地区など無秩序な「呼び込み型開発」につながる都市再生緊急整備地域については指定解除を国に求め、住民合意のまちづくりを行うこと。既存商店街の存続を脅かすキリンビール工場跡地などの大型商業施設の開発については、いったん白紙撤回を求めること。周辺住民の住環境・交通環境の悪化を生じないように規制・指導すること。京都駅南口の立体横断施設計画は撤回すること。

Ⅴ 職員不祥事の根絶と同和特別扱いをやめること

☆46 いまだに服務規律を逸脱した事件、事例が後を絶たない。「職員の意識改革」や「公務員倫理の高揚」等に矮小化することなく、不祥事の大本にある同和をはじめとした特定の団体や個人への特別扱いをいっさいやめること。

☆47 自立促進援助金制度廃止にあたっては、以下の項目を実施すること。

・返還を求める対象は返還期間が完了していない全ての奨学金受給者とすること。

・返還困難者に対して返還を免除する所得基準は、国奨学金制度における返還免除基準(生活保護基準の1.5倍)に準じるものとし、厳密に運用すること。

☆48 コミュニティセンターのあり方を市民の共感と理解を得るよう抜本的に見直すこと。

・コミュニティセンター条例を改正し、施設利用に係る条件や前提をいっさい削除し、「特別な施設」から文字通りの一般施設とすること。

・相談事業を廃止し、区役所等で対応すること。

・貸館事業や交流事業に関しては、従来の各種講座や教室をいったん廃止して、必要なものは一般施策として行うこと。また、一般利用促進のために休日開所を拡大するこ と。

・見直しと新たな活用の検討は、市民参加で行い市民意見を反映すること。

☆49 市立浴場は、あり方を全面的に見直すこと。

・民間浴場との料金格差の是正を直ちに行うこと。市立浴場財団の運営や役員体制、職員配置を見直すこと。

☆50 実態に即した改良住宅の管理と空き家の活用、建て替え事業の見直しをすすめること。

・入居状況の本格的調査を行い、実態のない住戸、目的外使用の住戸を確定し、法的手続きを含めて毅然と対応し、改善を図ること。

・空き室修繕を行い、入居募集対象戸数を増やし、既存入居者と一般公募を対等・平等に扱うこと。

・公営住宅のストック活用計画に準じて、耐震補強やバリアフリーなどを行うこと。

・改良住宅内の駐車場料金はただちに一般公営住宅と同じ基準とし、地域間格差を是正すること。

51 保健所分室を廃止すること。

☆52 行政の主導による市民と市職員への人権啓発や、研修の押し付けと参加の強要や 学校現場での同和教育を止めること。「差別意識の存在と行政の責任」を口実にした 特別対策の延長や新たな対応をいっさい行わないこと。