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見解・声明

08年9月24日(水)

[見解]市民生活の未来を破壊する「京都未来まちづくりプラン」 市政評価

 

日本共産党京都市会議員団

 

 京都市が、門川市長の選挙公約の具体化と推進のための「政策推進プラン」と、新たな市民リストラとしての「行財政改革プラン」の二つで構成する「京都未来まちづくりプラン」の骨子を発表しました。

 プラン制定の背景には「自治体財政の悪化」を理由にした国の地方自治体政策があります。地方交付税の大幅削減など自治体に多大な負担を強いる三位一体改革や社会保障関係費抑制に続き、「財政の健全化」を口実にし、画一的な自治体財政規律のルールと国による統制の強化を狙った財政健全化法が制定されました。財政健全化法の行き着く先は道州制の導入であり、自治体そのもののリストラ、地方自治の破壊です。

 プランの中心は、市長の冒頭あいさつにある「従来の延長線上の改革にとどまらない改革を断行しなければ、3年後には財政再生団体となり、第二の夕張市になりかねない」と、財政健全化法を先取りし、従来を超える「改革」の名による痛みと負担を市民に押しつけることにあります。まさに未来をつくるどころか、市民生活の未来を破壊するプランです。

 さらに行政と市民との関係を、「『市民の声を反映する市政』から『市民と共に汗する市政』へ。『足りない所を批判し・批判される関係』から『足しあう関係・高めあう関係』に。」と、市民の声や批判的意見を聞く姿勢を否定する一方で、「共に汗する」として本来の行政の役割や公的責任を低める立場を明らかにしています。

京都市長選挙での争点を反映せず、市民の声に応えない政策推進プラン

 政策推進プランは、進行中の市基本計画の総仕上げとして位置づけつつ、門川マニフェストの項目を展開するものです。その中には「3人目以降の保育料無料化」など市民の要望に一定応えたものも含まれています。今後、施策や事業ごとに年次計画や試算経費を明示するとしていますが、項目の中には「乳幼児のいる家庭訪問率を100%に」など、現場からも数値目標に疑問の声が出されたり、後年度負担の多いものもあり、具体性や財政的裏づけを明確にしなければ絵に描いた餅になりかねません。

 さらに、市長選挙で大きな争点になった学校間格差の是正や高速道路3路線の計画見直しなどはまったく触れず、不祥事の根絶は新たな政策展開もなく、同和行政の終結や同和特別扱いの一掃は総点検委員会の設置運営を掲げるだけです。結局、市長選挙の争点を反映しておらず、切実な市民の声や願いに応えるものにもなっていません。

市財政危機の責任に触れず、総括のないままの新しい行財政改革プラン

 行財政改革プランは、2004年に策定された市政改革実行プランと財政健全化プラン(後に集中改革プラン)を発展させ、民間経営感覚とコスト論を徹底した市政改革と財政締め付けの財政健全化計画を一本化しています。さらに政策推進プランとともに関係する3局の専門家を配置した「プロジェクトチーム」をたちあげ、強力に進行監理する体制をとっています。

 2004年のプランの際も「市の財政危機」が論じられました。しかし、地方財政の困難を招いた国や京都市の責任にはまったく触れず、市民には4年間で400億円の負担増を含む市民リストラを押しつけつつ、無駄遣いの典型である京都高速道路計画を推進しました。さらにキリンビール跡地に民間プロジェクト誘致、京都駅南口には大型商業施設誘致と大型開発を推進してきました。いずれの計画も現在、見直しを余儀なくされる事態に直面しています。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

 これらの開発計画によって市財政負担が年々増加し、財源不足解消のための特別対策にあてる基金も底をつくなど、本市の財政危機をいっそう進行させました。

 大型開発事業という聖域にメスを入れず、国の地方切り捨て政策に追随し、市財政危機をつくりだした失政への真剣な総括や真摯な反省もないまま「第二の夕張になる」と市民を脅かすことは行政の責任放棄です。さらに、現在の原油高騰などによる生活危機が深刻になるなかで、公共料金値上げなど市民負担増を盛り込むという今回の行財政改革プランは、市民生活の未来を破壊し、貧困と格差の拡大を引き起こすことは明らかです。

京都市財政は本当に財政再生団体への道にすすむのか

 行財政改革プランでは「今後の3年間で財源不足見込み額の総額は964億円」「2011年度には財政再生団体に陥りかねない」とことさら強調しています。

 本当にそうなるのでしょうか?プランの試算では、多額の財源不足額を描き出し、財政再生団体になるのは必至といいます。そして「財政再生団体になれば、市政運営が国の管理と指導の下に置かれ、国保料は34%の値上げ、保育料は48%の値上げになる」と脅し、「それを避けるための行財政改革であり、痛みは我慢を」と負担増をおしつけています。 

 その上でプランは、財政再生団体の内容を先取りして「市単独事業の見直し」「受益者負担の適正化」の名で、国保料や保育料などの大幅値上げや市民サービスの切捨てをもくろんでいます。そこには、住民の幸せのために財政の健全化をおこなうという視点が欠落しており、住民の暮らしを守る地方自治体の本来の役割を放棄するものです。

 また、財源不足を示す財政収支見通しの試算そのものにも問題があります。市税収入見込みは国の名目経済成長率の低い数値を使用し、地方交付税収入見込みは国の削減をそのまま3年間継続することを前提にしています。そこには、市民や中小企業の担税力を高めるための市独自の景気経済対策もないし、国の三位一体改革による地方切り捨てとたたかう姿勢もありません。財政再生団体転落という結論先にありきの試算は問題です。

市民リストラを実行させない大運動の展開を

 8月には「サマーレビュー」と称して担当局や団体と事業見直しや予算削減の計画を協議し、9月下旬にプラン案を公表するとしています。

 その段階で、政策推進プランの財政規模が出され、行財政改革プランの具体的計画も出る予定です。すでに財政健全化法に基づく全自治体の健全化判断比率(速報値)がいっせいに公開され、市民的な関心も高まり、9月市会でも議論になっています。

 日本共産党市会議員団は、市民との共同をさらに強めて市民リストラを実行させない大運動に全力をあげるものです。