06年10月 8日(日)
京都市職員に相つぐ逮捕者-犯罪・不祥事の土壌になった同和行政のゆがみ 不祥事・同和
(「前衛」2006年11月号より転載)
「いったい京都市はどうなっているんや」「京都市はいつから暴力団の養成所になったのか」-京都市では市職員による犯罪行為と不祥事が相次ぎ、今年4月からでもすでに10人(8月末日現在)もの逮捕者が出ています。覚せい剤の使用容疑、生活保護費の詐取容疑など、異常な事態となっています。
市民には住民税増税、国保料・介護保険料・敬老乗車証利用料の大幅値上げ、家庭ゴミの有料化など市民負担増を押しつけ、約4万人の市民が区役所に苦情に訪れるという事態をひきおこす一方で、職員の犯罪や不祥事が後を絶たず、市民の怒りの声はおさまりません。
このなかで、京都市は「服務規律等強化月間」(6月26日~7月31日)と銘打った不祥事根絶月間を取り組みました。しかし、「強化月間」の最中にも4人が逮捕されるなど、まったく抑制効果にもなりませんでした。
議会招集権を活用し、臨時議会の開催を実現
“税金を何だと思っているのか”
7月末に生活保護費の詐取と覚せい剤の使用容疑で職員3人が逮捕される事態を重視した党議員団は、臨時厚生委員会を開催するよう求め、当局から説明と報告を聴取しました(7月31日)。他党が過去の職員採用のあり方や不十分な職員研修・教育など問題の核心に迫れないなかで、党議員は生活保護費の不適切な事務処理をしていたケースワーカーに異動先でも同じ仕事をさせ、二度にわたる横領事件を見逃し、退職金まで与えた市の異常な対応をきびしくただしました。
8月9日には、「なぜ犯罪・不祥事が起きたのか」と緊急市政報告集会を開催し、会場があふれるほどの180人の市民が参加し、怒りと関心の高さが示されました。参加した主婦(62歳)は「市職員の犯罪はあまりにも多い。私らの税金を何だと思っているのか。不公平なことをやっておいて市民に値上げばかりで許せない」と憤慨していました。
こうした事態をうけて党市議団は、議会招集権を活用し、「全面解明のための臨時市会を要求する」との見解を発表しました。各会派によびかけ粘り強く折衝するなか、京都市議会史上初めての不祥事問題に集中した各常任委員会と、全議員参加による市長の出席を求めておこなう常任委員会連合審査(8月21日~28日)を開催すること、8月31日には臨時本会議を開催し、調査特別委員会を設置することになりました。京都市議会における臨時議会は、地下鉄東西線建設費膨張事件以来、12年ぶりの開催になります。
集中審議で明らかになった桝本市政の間題点
桝本市政10年間で、市職員の犯罪・不祥事が増大しただけでなく助長され、根絶へのまともなとりくみが行われてこなかったことが浮き彫りになりました。
桝本市政10年ー分限免職処分者を再雇用、乱れた勤務を放置
清掃局(現環境局)に勤務していた男性職員は、83年に覚せい剤取締法違反と銃刀法違反で逮捕され、分限処分となりました。ところが、桝本市長就任後の2000年4月に再度清掃局に採用されていたことが判明しました。指摘され、市長は当初、「地方公務員法では2年間経過すれば採用できる」と開き直っていましたが、党議員の追及に「常識ではあってはならないこと。今後はおこなわない」と答弁せざるをえませんでした。
また、覚せい剤使用容疑で逮捕・懲戒免職された環境局女性職員は、同じ環境局に妹(逮捕、懲戒免職)とともに採用され、同僚の職員(逮捕・懲戒免職)に頼んで元暴力団組員の覚せい剤密売人から購入して姉妹で使用していたものです。まさに暴力団の“闇の世界”が市役所に入り込んでいることを示すものです。さらにこの女性職員は、今年4月以降、覚せい剤使用が疑われるような勤務実態であったにもかかわらず見逃されていたことが判明しました。党議員団が資料要求し、提出された本人の出勤簿によって明らかになったものです。4月以降13日連続で休みをとるなど、7月末までの4カ月間で土日を除いて43回休みを取っていました。まともに出勤したのは1カ月平均11日という異常な事態でした。にもかかわらず、市当局は「事前の兆候はなかった」と事実上放置していたことが明らかになりました。
部落解放同盟幹部を特別扱い
桝本市政のもとで部落解放同盟と癒着、特別扱いにし、犯罪・不祥事を温存する体質が拡大されました。
一つは、同和補助金不正支出事件をめぐり、公金を騙し取った部落解放同盟幹部が行政処分の決まる前に退職し、退職金を全額受け取り、処分を逃れました。さらに、2年後に市の嘱託職員として再雇用していたという異常な事態が判明しました。ところが党議員の指摘を受けても、「(公金不正支出事件では)犯罪と確定されたものではない」「住宅に居住している OBとしてのノウハウを生かしてもらう」などと特別扱いを合理化しています。
二つは、生活保護費の横領事件を引き起こした人物を異動先でも同じケースワーカーとして継続させるという異例の対応をおこない、異動先でも生活保護者の預金通帳から無断流用する新たな事件を起こしました。これには市当局も「職をはずしていれば不祥事の一部は避けられた」と認めざるをえませんでした。この職員も退職金を受け取って退職していますが、やはり部落解放同盟の幹部でした。
根づよい隠蔽体質
今年6月に中学生への暴力事件で逮捕された区役所職員(同和運動団体の推薦により採用された)が、過去に託児先の市職員に対して暴力行為を繰り返していたにもかかわらず、その事実が隠蔽されていたことが明らかになりました。事件が起きても現場から報告が上がらず、まともな事実確認もされていなかったのです。党議員の独自調査で、暴力をうけた市職員が休職においこまれ、公務災害申請すらされていなかったという異常な事態が継続していたことが判明しました。関係者は、「相手を考えたらできなかった」と話しています。
さきほどの生活保護費横領事件の職員も、区役所の来客用駐車場に自家用車を不法占有していました。多くの職員が目撃していたにもかかわらず、市当局は「そういう報告は受けていない」と開き直っています。隠蔽体質が根強いことを示しています。
「市の逮捕者数は大きな数値ではない」という市長の認識
連合審査会で、党議員が桝本市政10年間で逮捕者数90人、うち覚せい剤関係22人を出している事実を示し、市長の認識をただしました。それに対して、市長は、「他都市との比較や国民全体の犯罪発生率からすると大きな数値ではない」と発言し、傍聴席や議場から「認識が甘すぎる」「無責任だ」という声が上がり、議場は騒然となりました。
事実からみても、重大なまちがった認識です。発言の撤回を求められても当初は撤回を拒み、その後タ刊報道やテレビ放映され、「誤解を招く発言で、この場でいうのは適切でなかった」と仕方なく撤回しました。撤回したものの、本音と本心は変わっておらず、市長の資質と責任が大きく問われています。
集中審査の各常任委員会や、連合審査会は、開会時からマスコミ各社がつめかけ、テレビカメラが回るなか、審査が行われました。地元マスコミにとどまらず、大阪の民放テレビ各社も連日特集番組を編成、党議員が「不祥事の背景にある同和行政のゆがみをぜひ告発してほしい」との依頼をうけ、テレビ出演もしました。「はじめてそんな話を聞いた」「いままで鬱積していたが胸がすっとした」「共産党ががんばっているのがよくわかった」などの感想が多く寄せられました。
同和タブーを許さず不正を追及してきた党市議団
1983年1月、3億円公金不正支出事件が発覚。党議員団は独自の調査活動で徹底究明の先頭に立つとともに、議会に百条委員会の設置を提案し実現させました。他党が口をふさぐなか、夕ブーを打ち破る党の追及は、「警察よりも早く、新聞よりも詳しく、週刊誌よりもドラマチック」と注目されました。
ひきつづき86年に発覚した2億円公金不正事件では、部落解放同盟幹部や暴力団組長に公金が支出されていることを暴露しました。また当時横行していた同和事業を舞合にした数々のカラ接待や架空領収書を書面調査で摘発し、不正を追及しました。その結果、「同和行政の見直し決議」を全会派一致で採択し、京都市議会史は「共産党議員団の追及、批判により決議が全会一致でなされ、以後の同和行政にインパクトを与えるものとなった」と記述しました。
その後、党議員団は92年、93年、97年、01年と「同和行政の終結にむけた提言」を発表し、具体的提案を行いつつ、議会論戦をリードしてきました。市民的討論をよびかけ、当時の京都市長選で一大争点として浮ぎ彫りにしました。残念ながら96年選挙は僅差で敗北しましたが、直後の市議会では与党議員からも桝本新市長に「多くの市民が現在の同和行政に不信感を持つことを肌で感じたことだろう」と声が出され、党議員団の提案により市長に「不退転の決意で終結を求める決議」を採択しました。
特別対策を継続する市長を追及
98年に国の同和特別法が期限切れしたにもかかわらず、京都市は01年に策定した基本計画のなかで、「まだ差別は残っている」との立場で「同和問題の早期解決をはかる」と記述しました。これに対して党議員団は、他会派に呼びかけ、「基本計画を根拠に同和事業を02年度以降に継続しないよう求める」決議をおこない、市長にきびしく迫りました。
その結果、今回不祥事の背景として指摘されている、同和選考採用に関しても一貫して制度の廃止と完全一般公募による透明性の確保を強く求め、01年度で廃止させました。また、さまざまな不正支出が指摘された同和運動団体への補助金を01年度で廃止させ、部落解放同盟員のみが参加する事業への助成も廃止させました。
一方、桝本市長は今年3月市議会で、同和奨学金の返済を実質免除する「自立促進援助金」制度の継続を宣言しています。同和を特別扱いする市長の姿勢と不公正な行政が、“同和”と名がつけば、まともに物がいえない体質をつくり、犯罪と不祥事の土壌となってきました。
全容解明と情報公開を求め、不祥事根絶と市長退陣へ
幕引きはかる桝本市長
8月31日に開かれた臨時市議会の席上で、桝本市長は「改革大綱」と市長をふくむ幹部職員77人の処分を発表。市長の処分は給与半額力ットを6カ月というものです。しかしその後の9月議会本会議で、市長は「過去最高の処分でけじめをつけた」と答弁し、終わったと言わんばかりの、 “幕引き”宣言をおこないました。しかし、一連の犯罪・不祥事の内容と規模、市長の甘い認識は、行政の最高責任者の辞任に値するものです。
「改革大綱」の内容も、これで不祥事や犯罪がなくなるのか実効性はまったくありません。とくに不祥事の多い環境局のゴミ収集業務を7年間で50%民間委託することが、なぜ不祥事根絶につながるのか。説明を求められても市長は「改革には痛みが伴うもの」というだけで、なんら根拠を示すことができません。
また、「改革大綱」は、部落解放同盟との特別の関係、甘い対応、事実を覆い隠す隠蔽体質に関してまったく言及していません。同和団体との関係では、03年補助金不正支出事件の最終報告書において京都市の組織的責任に言及し、個々の職員の責任だけではなく、組織的責任をはじめて認める総括をしました。ところが、今日的に部落解放同盟の特定の幹部に対する対応はなんら変わっておらず、まったく反省と教訓が生かされていないことが明らかになったのです。
これではいくら市長が「解体的出直し」と叫んでも、全容の解明と不祥事の根絶は期待できません。
市長をかばう自・公・民
市長の責任と同時に、議会の役割、議員の責任がいまほど問われているときはありません。桝本市長を支えるオール与党は、市長責任に触れることができず、市長を擁護する発言まで出ています。集中審議では、自民党市議は「市長は辞める必要はない」と市長をかばい、公明党市議は個人のモラルを取り上げた質疑に終始し、民主・都みらい(民主党)市議は「プラス思考でがんばってほしい」と激励する始末です。とりわけ、公明党・民主党の議員は前回の市議選で部落解放同盟から推薦を受けた議員がいること、とくに民主党は来年の市議選に部落解放同盟幹部を公認候補とするなど癒着を強めており、これではまともに同和行政のゆがみにメスを入れる追及ができないのは当然です。
いま、市民団体や労働組合、市民から次々と「市長はやめろ」の声と決議があがっています。民主市政の会は、9月に開いた全体会議で、「市長辞任を求めるアピール」を採択しました。党市議団はその声を正面からうけて、市職員が不正や圧力に対して毅然と対応し、市民のための仕事ができる職場につくりかえ、いまこそ清潔で市民の暮らしを応援する京都市政への転換を求めて全力をあげます。