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見解・声明

05年8月19日(金)

[見解]赤字を口実にした地下鉄運賃の値上げは許されない 交通問題

日本共産党京都市会議員団

一、八月一日付けの「市民しんぶん」に京都市交通局作成の「京都市民の足として地下鉄が走り続けるために!」とのチラシが折り込まれました。

 そこには「地下鉄の経営状況が毎日五、五〇〇万円の赤字、年間では二〇〇億円の赤字」であることが強調され、「このままでは地下鉄経営は維持できない」とし、その上で「現在の運賃収入ではこの赤字は解消できない」と結論づけています。これは、運賃値上げの提案を誘導するものであり看過できません。

一、赤字の経営状況に関して「社会経済情勢の変化」とか「東西線は他都市と比較して建設費高騰の時期に建設したために建設費が巨額になった」と他人事のように説明しており、そこには東西線建設費が大手ゼネコン言いなりに二倍に膨張した経過はまったく触れておらず、責任転嫁もはなはだしいと言わざるをえません。

 同様に、乗客を増やすという自らの努力を棚に上げて「交通手段の多様化によってお客様の数が伸び悩んでいる」と市民に責任があるかのような記述も明確な責任転嫁です。

 一九九六年以降九年間運賃を据え置いているとしていますが、地下鉄を運営する大半の政令市(名古屋、横浜、大阪、札幌、仙台、福岡)が同時期から据え置いており、本市だけが自慢できるものではなく、当然のことです。

 しかも、東京都を除く政令市の初乗り運賃は京都市をふくめて二〇〇円となっており、本市が値上げをすればまさに「日本一高い地下鉄運賃」となり、他都市の値上げの引き金になりかねません。

一、そもそも、今回の運賃値上げ示唆の背景には経営改善に対する国の補助制度の問題があります。昨年三月に国の指定を受けて交通局が策定した「地下鉄事業経営健全化計画」は、「運賃収入で運営費と建設費返済金のうち利子分をまかなえる状況にする」ことを目標にし、十年間で1. 一般会計から六四〇億円の出資(新たな市債発行)2. 人件費と経費の削減(リストラ)3. 計画的な運賃改定(値上げ)の方針を決めました。

 問題は、この計画と方針をすすめなければ、市債発行の許可をふくむ指定を解除するというペナルティーを課すということです。まさに国が、地方自治体にリストラや運賃値上げを指導するものであり、国の責任は重大です。

 同時に、地下鉄の運営を運賃収入ですべてまかなうという独立採算制を押しつけられていることも、地下鉄経営を圧迫している大きな要因となっています。

一、もとより地下鉄は、住民の足として安全・便利・環境にやさしい交通機関です。そして地方公営企業法は「経済性の発揮とともに、本来の目的である公共の福祉を増進するように」(第三条)求めています。

 いま市民は、今年度からの国民健康保険料大幅値上げに続いて、今秋には敬老乗車証の有料化、さらには介護保険制度の改悪による介護サービス切り捨て、と相次ぐ負担増が押しつけられています。その上に、地下鉄運賃が値上げされるならば、市民負担は限界を越えるばかりか、さらなる乗客の減少になりかねません。

 日本共産党市会議員団は、市長が乗客増や乗客サービスのいっそうの向上に努めるとともに、運賃値上げを回避するよう強く求めます。