05年8月 5日(金)
[見解]あらためて高速道路計画の凍結・撤回を求める 高速道路・まちづくり
阪神公団の民営化を前に、あらためて京都高速道路計画の凍結・撤回を求める
── 際限なく広がる市の財政負担と談合疑惑 ──
はじめに
昨年六月に、道路公団民営化法が自民党、公明党の賛成で成立しました。京都高速道路(新十条通、油小路線)を建設中の阪神高速道路公団も今年十月から民営会社化され「阪神高速道路株式会社」として運営されることになります。
現在、京都市、国、阪神公団との間で民営会社化にむけての手続きと協議がすすめられています。阪神公団は民営化にあたって関係地方公共団体に出資率のかさ上げと工事区分の見直しを求めており、このままでは京都市など地方自治体に巨額の負担が発生することになります。十月の阪神公団の民営会社化を前に、地方自治体の負担増の構造がいっそう浮き彫りになろうとしています。
また、この間、日本道路公団の工事発注をめぐる談合事件が発覚。談合組織「K会」「A会」の存在が明るみにでました。この事件は、先に逮捕された同公団の元理事に続いて現職の公団副総裁と理事が相次いで逮捕され、大がかりな官製談合事件に広がろうとしています。
京都市においても、日本共産党京都市会議員団の調査と追及で、京都高速道路橋梁建設工事のすべてを、談合組織「K会」「A会」企業が落札、請け負っていたことが明らかになりました。阪神公団の発注をめぐっても官製談合の疑いはきわめて濃く、徹底解明が必要となっています。
日本共産党は国会で道路公団民営化法について「むだな高速道路をつくり続ける仕組みを温存し、歯止めなき建設に道を開くもの」と反対しました。また、日本共産党京都市会議員団は、京都市のすすめる京都高速道路計画について「京都の景観と環境を破壊し、市の財政負担を際限なく膨れ上がらせる」「言い訳とごまかしはもう通用しない。膨大な京都府、市の財政負担」と批判し、同計画の凍結・撤回を求めてきました。
秘密裏にすすむ負担協議
現在、阪神公団は民営会社化にあたって出資している地方公共団体に出資率のかさ上げと建設工事の事業区分の見直しを求めています。京都市には、出資率を二十五%から三十五%へかさ上げすること。さらに、建設中の新十条通、油小路線の二路線のうち、二百八十億円分を京都市の事業として建設するよう求めています。昨年八月から協議が続けられていますが、京都市は「公団にコスト縮減を求めている。公的支援が必要な場合でも、本市の財政負担が軽減される方向で国等と協議をすすめている(〇五年五月定例会本会議答弁)」とするだけで、その詳細を一切明らかにしていません。
際限なく広がる京都市負担の構図
1.建設中の二路線だけで五百億円を超える負担阪神公団は、京都高速道路計画の総事業費を四千六百億円(概算)としています。建設中の二路線(新十条通、油小路線)で千七百億円、残る三路線(久世橋線、西大路線、堀川線)で二千九百億円がその内訳です。
現在、阪神公団は、民営会社の採算性を確保し、債務返済の負担を減らす目的で、事業の一部を地方公共団体に押しつけるのに躍起になっています。京都高速道路計画二路線の工事の一部を京都市が肩代わりすれば、一般の道路事業として工事をすることになり、請け負った事業費の半額は自治体負担となります。
すでに京都高速道路二路線建設にともなう阪神公団への出資金や関連する街路事業の京都市の負担総額は四百億円を超えています。阪神公団が求めるとおりに出資率をかさ上げし、二百八十億円分の工事を京都市がすすめるなら「そのとおりになると本市の負担は百数十億円増加すると考えられる。(〇五年二月予算特別委員会 桝本市長答弁)」としたように一挙に百億円を超える負担が増えます。建設中の二路線だけで京都市の負担総額は五百数十億円にも膨れ上がります。
2.阪神公団の借入総額は四兆七千億円阪神公団の借入金総額は二〇〇三年度末現在で総額四兆七千億円余となっています。これまで借入金は道路の「使用開始から五十年」で償還することになっていましたが、民営化法では「民営化から四十五年」の償還となりました。
一九六四年に阪神公団が設立されて以降四十一年間に準備された償還金はわずか四千九百億円にすぎません。償還を完了するには、今後四十五年間で四兆円規模の償還金が必要です。期間内に償還できるめどはまったくないのが実態です。阪神公団の財政は莫大な借入金をかかえたまま、公団財政は今でも償還不能の状態と言えます。
3.自治体負担増なしに高速新十条通、油小路線の償還のメドなしまた、阪神公団は京都高速道路が京阪神におけるネットワーク効果のない道路となっていることから、同計画の建設費の償還については大阪、神戸とは切り離し、単独の償還計画を立てています。単独の償還について同公団は今年十月以降四十五年間で完了することは「非常に厳しい」としています。現在、二路線の工事は遅れ続けており、民営会社に移行する今年十月に工事が完成する見通しは、まったくありません。完成時期が遅れた分だけ償還期間はさらに短くなり、償還計画はますます成り立たなくなります。結局、自治体等の負担増がなければ償還のめどは立たたないことになります。
4.残る三路線、本体だけで京都市負担は千四百億円以上。前提となる久世橋通拡幅は見通しなし将来の京都市の負担はこれだけにとどまりません。まだ、事業決定のされていない久世橋線、西大路線、堀川線の三路線について日本共産党市会議員団の問い合わせに、阪神公団は、「残る3路線の建設については、阪神公団が事業主体になるのは採算上難しい」と答えています。阪神公団を引き継ぐ新会社が事業を引き受けないとすれば、京都市と公団による合併施工方式で事業をすすめるのか、京都市が事業主体になってすすめるしかありません。ところが阪神公団は、合併施工方式については「検討していない」としており、残されているのは京都市が事業主体になる道だけです。
阪神公団は三路線の総事業費を二千九百億円と試算していますが、このまま三路線についても建設をすすめるなら、京都市は事業費の半額を負担(〇四年十二月決算特別委員会資料)することになり、その負担額は実に千四百億円を超えることになります。
さらに大きな問題があります。三路線の一つである久世橋線を建設するには、今の久世橋通を三・一kmにわたって両側を拡幅し、幅五十メートルの道路にする必要があるとしています。これらにかかる事業費は三百七十三億円(一九九八年京都市建設局)と見込まれておりその二分の一は京都市の負担となります。また、久世橋通拡幅事業は数百件規模の住居、事業所の立ち退きを前提にしており、事業そのものに無理のある計画です。実現の見通しのたたない事業と言えます。
5.完成後も莫大な維持管理費が京都高速道路完成後の京都市の負担も大変です。京都市が請け負った道路部分の保守管理は、本市の責任で行うことになります。高規格道路として整備された分、一般道路と比べても保守管理費は割高です。阪神公団は京都高速道路の維持管理費は1km当たり年間千五百八十万円程度必要。また、道路改修費は1km当たり百七十万円と試算しています。維持管理・改修費で1km当たり年間千七百万円を超える費用が発生することになります。
6.名神高速との接続をいうが、そこでも巨額の負担が京都市は京都高速道路と名神高速道路を接続する方針をもっています。まだ都市計画決定はされていませんが、問題は、こうした方針を実行に移せば、ここでもまた巨額の負担が京都市に発生することです。日本共産党市会議員団の問い合わせに、国土交通省は「国として整備計画は決めている。事業費や事業主体は未定。収入が増えると判断すれば日本道路公団、阪神公団と京都市が負担割合を協議する」と答えています。接続するには新しくジャンクションを建設する必要がありますが、負担について「一般論であるが、後から設置する事業者が負担するのがとりきめ(国土交通省)」としているように、巨額の事業費が京都市など自治体負担となることは確実です。
京都高速道路建設(橋梁工事)のすべてを「K会」「A会」企業が受注
日本道路公団の発注をめぐる談合が発覚。受注した企業だけでなく発注者が談合に加わっていたこと。官製談合が半世紀近くにわたって繰り返し行われていたことなど大がかりな官製談合事件に広がろうとしています。
明るみにでた談合組織「K会」「A会」は、京都高速道路の建設工事に大きく関わっていました。阪神公団が今年六月に示した資料では、二〇〇〇年から二〇〇五年にかけておこなわれた新十条通、油小路線の橋梁建設の入札で、すべての工事を「K会」「A会」のJVが落札・受注。この期間に二十五件の入札がおこなわれていましたが、落札率九十五%以上のものが十七件。最高落札率は九十九・七九%と異常な実態が明らかになりました。京都高速道路建設をめぐる落札実態は日本道路公団事件と同様、官製談合を疑わせるのに充分な内容です。
阪神公団は建設費の徹底したコストダウンをおこなうとしていますが、談合構造が横たわるようであれば、その行為事態も市民を欺くことになりかねません。大がかりな談合の疑いは濃厚であり、徹底した解明が必要です。
今こそ京都市高速道路計画を凍結・撤回させましょう
現在、国と阪神公団は十月の民営会社移行にむけ設立委員会を設置し、阪神高速株式会社の定款、使用約款等を定める作業をおこなっています。また、阪神公団も新会社への業務引継ぎや権利引継ぎ等の実施計画策定作業をすすめています。
阪神公団を引き継ぐ新会社は、今年十月以降事業路線等について国土交通大臣の許可が必要です。また、国の許可にあたって、京都市への意見聴取や議会の議決をともなう同意が必要とされています。「ムダな高速道路計画を止めよ」の声が広がり、京都市や議会が変われば京都高速道路計画を凍結・撤回させることができます。日本共産党京都市会議員団はそのために引き続き力を尽くします。
資料:京都高速道路建設における落札状況について(市建設局資料)(PDF)
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