04年8月20日(金)
[団長見解]京都市「3計画」の問題点 山中団長に聞く 市政評価
京都民報 2004年8月22日号より転載
京都市は7月16日、今後5年間の市政運営の基本方針となる「市基本計画第2次推進プラン」「市政改革実行プラン」「財政健全化プラン」の3つのプランを策定しました。日本共産党京都市議団の山中渡団長に3プランの内容と狙いについて聞きました。
3プランの位置づけと特徴は
京都市は01年に「京都市基本計画」とともに「京都新世紀市政改革大綱」、「市基本計画第1次推進プラン」を策定し、その際に「補完性の原理」「NPM理論」「行政評価システム」など行政の役割を縮小し、民間企業の経営理念を導入する「行革」手法を採用しました。04年度の予算編成では、この方針もとで「戦略的予算編成システム」と称して100億円もの市民サービス予算を削減するなど市民負担の「行革」を強行しました。「市政改革実行プラン」は、引き続き「補完性の原理」と「NPM理論」を中心理念として、行政の役割縮小と自治体の市場化を加速するものです。
今後、「行革」のスピードアップをかかげた「新京都市都市経営戦略」(04年4月策定)を基本に、庁内の最高意思決定機関としている「都市経営戦略会議」(議長・桝本市長)を軸に3つのプランを具体化し、05年度から08年度の4年間で市民サービス予算の400億円削減、市職員の1000人削減などを行うとしています。京都市は、こうした自治体「構造改革」といえるやり方を「京都モデル」として打ち出し、全国の先頭を行くとしています。
市民サービスへの影響はどうなりますか
今年度強行した市民サービス予算の100億円削減によって、ちびっこプールや保育バスの廃止、保育園・市立学校の運営を支援する予算、各種団体補助金などが軒並み削減されました。「財政健全化プラン」は「身を切るような痛みを伴うことがあるかもしれない」と市民の「痛み」を当然とし、さらに「市民サービスの急激な低下を回避するよう努めます」とサービス低下を前提に財政計画が組み立てられていることは重大です。
具体的には来年度から市民サービス予算だけでも40億円、80億円(06年度)、120億円(07年度)、160億円(08年度)と4年間で400億円削減し、市民サービスの大きな後退は必至です。また、市役所の特定職場では深夜におよぶ長時間労働が常態化する異常事態がおきていますが、さらに市職員1000人を削減するとしています。財源確保についても新税の検討、税の軽減制度の廃止や国の標準に課税を実施する超過課税の拡大など市民増税の方向が強く打ち出されています。
財政危機を招いた大型開発は見直されていますか
京都市は「財政健全化プラン」の冒頭で財政の現状を放置すれば「財政再建団体」に転落すると危機をあおり、国の帰趨(きすう)によっては市財政の想定以上の悪化などが懸念されるとしています。しかし、そこには地方財政を危機に導いた国や京都市の責任についての記述はありません。「本来の歳入の範囲を超えて施策・事業を続けてきたことが、国、地方を通じた多額の長期債務残高の大きな要因」(財政健全化プラン)と述べているだけで、無駄遣いの典型と批判され、右肩上がりの社会と経済を前提にした京都高速道路計画など不要不急の公共工事の見直しもありません。逆に「市基本計画第2次推進プラン」ではキリンビール跡地に民間プロジェクトの誘致の推進をうちだすなど大型開発だのみの姿勢は変わっていません。
「三位一体改革」にはどう対応していますか
国は、(1)国庫補助負担金削減(2)地方交付税見直し(3)税源移譲の3つを一体ですすめる地方財政の「三位一体の改革」をすすめています。3つのプランは、税源移譲が実現しても、地方の収入が減ることを承知の上で「三位一体改革」の促進を求めるなど問題です。
国は04年度予算に国庫補助負担金削減に加えて地方交付税についても大幅な削減を行いました。京都市だけで125億円もの地方交付税が削減され、予算編成のやり直しや、基金の取り崩しなどを余儀なくされるなど市財政の危機が加速しました。このように国のめざす「三位一体改革」は「地方の自立」ではなく地方自治体財政への支出を大幅に減らすことを目的としたもので行政の役割を後退させ、市民サービスの放棄につながるものです。
日本共産党の地方財源拡充案を教えてください
日本共産党は、地方自治体財政の削減をはかる「三位一体改革」については厳しく批判し反対しています。国は税源移譲を上回る国庫補助負担金の廃止、縮小とともに地方交付税の大幅削減をすすめています。税源移譲は、所得や資産にかかる税など自治体の税財源を拡充する方向で行うべきです。地方交付税についても削減をやめ、暮らしの向上をはかるための財源の保障をはかる立場から制度を充実させることが必要です。
国庫補助負担金制度については無駄な公共事業の温床になってきた個別的な補助金制度をやめ、そのうえで自治体の裁量のもとで事業ができるように総合負担金制度にあらためることが必要です。また、国の補助事業に対し実際に地方自治体が支出した額より、国の交付額が少ないという地方への不当な負担が押しつけられています。京都市では保育所や学校関係だけで超過負担は48億円(03年度)にも達するなど財政危機に追い打ちをかけています。これらの解決をはかることが必要です。