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見解・声明

02年11月15日(金)

[提言]介護保険事業計画見直しにあたっての緊急提言 医療・福祉

はじめに

 介護保険制度がスタートして3年目を迎えました。京都市では、この間特別養護老人ホームなどの施設整備や在宅介護サービスの充実など、介護保険事業計画に基づいて進められてきました。しかし明らかになっているだけでも、2033人の特別養護老人ホームの入所申し込み者があり、1000人もの申し込みが寄せられている施設もあるなど、入所施設の不足は明らかです。在宅サービスの利用は大きく増加していますが、利用料負担の重さから、限度額の4割程度のサービス利用に留まっています。サービスが自由に選択できるといわれた介護保険とは大きな隔たりがあるのが現状です。

 同時に保険料・利用料の負担は高齢者に重くのしかかっています。保険料は事実上毎年の値上げがされ、利用料は国が実施していた軽減措置も廃止の方向で来年からの負担増が予定されています。さらにこの間、老人医療の改悪による負担増、年金の引き下げが高齢者の生活を直撃しています。市が10月に発表した介護保険運営協議会の「中間報告」では、来年度以降の1号被保険者(65才以上)の保険料を3割増の1ヶ月1000円を超える大幅な値上げが提案され、市民に大きな不安を与えています。今回示された保険料は高齢者の生活実態からも到底容認できるものではありません。

 日本共産党市会議員団は、介護保険の制度の改善・充実を求めて、提言や議会での論戦を繰り返し行ってきました。とりわけ、保険料・利用料の抜本的な減免制度の実現がどうしても必要です。昨年ようやく保険料第2段階の減額措置が実現することとなり、来年度以降の実施と条件緩和の方向も示されました。日本共産党市会議員団は、保険料の値上げ中止、減免制度の拡充、利用しやすい介護保険とするための提案を示し、市民のみなさんとご一緒に安心できる介護保険めざして奮闘する決意です。

1、介護保険料大幅引き上げは許されない

1)根本的欠陥の改善を求める

 京都市発表の「中間報告」によると、次期計画(3年間)の介護サービスの量が推計され、それにもとづく一号被保険者(65才以上)の保険料は基準額で2958円から3984円となり、月1000円以上(34. 7%)の大幅引き上げと算出されています。

 その理由の一つにこの3年間の実績による19億円の赤字の返済が一号被保険者の負担とされ、さらに次期計画の介護保険会計全体の膨張の中で、一号被保険者の保険料負担分(介護保険全体の18%)も大幅に膨張することがあげられています。

 しかし全国の政令市の保険料引き上げの計画をみても、京都市の引き上げはあまりにも異常です。

 介護保険の根本的欠陥は、給付サービス量が増えていくことと、保険料や利用料の負担増が連動する仕組みとなっていることです。保険料引き上げをしないで介護サービスの充実をするためには、給付に要する費用や介護報酬と保険料利用料が直接に連動するしくみを根本から見直し、国や自治体が責任をはたす方向以外にはありません。

2)国と京都市の責任で保険料引きあげ回避を

 この問題については「社会的入院といわれる長期入院の高齢者を医療の所管から介護保険を創設して在宅や施設に移し、老人医療の国庫負担を軽減する」といった国の責任放棄路線が土台となっていたことが指摘されていました。

 同時に介護保険発足によって、国民健康保険、老人医療を所管する京都市としての負担も一部軽減されています。

 本格的長寿社会をむかえるにあたって高齢者にたいする冷たい仕打ちが今回の保険料大幅引き上げという形であらためて明らかになっているのです。

 したがって、今回の保険料大幅引き上げを避けるためには、第一に、国が必要とされる介護費用に責任をもつことです。

 さらに保険料の減免制度の一層の充実や使いやすい介護保険にするために利用料の減免制度も創設しなければなりませんが、国の責任であるとともに京都市の独自努力も必要となります。

 介護保険と同様、特別会計で運営されている国民健康保険には減免制度があり、その財源は国の財源負担(保険基盤安定繰り入れ分)と京都市の一般会計からの繰入れがあります。日本共産党市会議員団は国にたいして費用負担の責任をはたすことを求めるとともに、京都市としての一般会計からの繰入れなど独自努力を求めるものです。

2、介護保険の問題と改善・充実のために

1)保険料減免の拡充を

 これから年金が下がると言われている中で、収入が減るのに保険料が増えていくのはどう考えても矛盾です。そもそも非課税の高齢者から保険料をとること自体が大問題です。

 高齢者世帯の多くが国民基礎年金であり、その額は平均で5万円以下という実態を見るならば、現在の第二段階の人たちへの軽減の適用は856人余にとどまっており不十分です。軽減制度の拡充は緊急の課題の一つとなっています。また第一段階の老齢福祉年金受給者の保険料を免除するとしても1300万円あれば可能ですから、本格的に減免を実施すべきです。

 市長は9月市会で現行の第二段階保険料の軽減について来年度以降拡充の方向を明らかにしていますが、具体化を急がなければなりません。

 さらに「中間報告」では、第4・第5段階の境を現行の前年合計所得金額250万円から200万円に変更することが示されています。これによると1万人以上の高齢者が4段階から5段階に移行して、所得が増えないにもかかわらず保険料が現在の3698円から5976円へと月額2278円も高くなり、変更はすべきではありません。

2)利用料減免制度の実現を

 市のおこなった「高齢者調査」でも「利用したいが利用料が高い」との回答数がかなりの比率にのぼっており、このことが要介護認定を受けながら利用されていない理由となっています。高齢者にとって必要なサービスは利用料負担に制約されることなく、使いやすい介護保険にするためには所得の低い世帯への利用料減免制度はどうしても必要です。

3)特別養護老人ホームの増設や人員の充実を急ぐこと

 市は特別養護老人ホームの入所申し込み者が2033人と発表しましたが、施設の増設をいそぐとともに、痴呆対応型グループホームやケアハウス、ショートステイ、デイサービスセンターの増設も必要です。

 介護保険を現場でささえるホームヘルパーやケアマネージャーについても、介護報酬は国の権限で決められていますが、改善を求めるものです。

 その他、滞納・未納を理由とする制裁措置の回避、介護保険実施以前からのホームヘルプサービス利用者への利用料3%適用の継続なども重要な課題です。

 以上、当面緊急の課題にかぎり提案いたしますが、市民的な論議とともに、介護保険等運営協議会においても真剣な検討を求めるものです。

 日本共産党市会議員団は国にたいして介護保険をはじめ社会保障充実の政治への転換をもとめるとともに、市民本位の京都市政への転換のため奮闘する決意です。