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市会報告

ひぐち英明 議員

10年12月10日(金)

日ロ領土問題に関する意見書についての討論 10年11月定例市会 閉会本会議討論

 

 私は日本共産党議員団を代表して、日ロ領土問題に関して本格的な交渉に踏み出すことを求める意見書に賛成、北方領土問題に対しき然とした外交姿勢を求める意見書に反対の立場で、討論を行います。

 ロシア連邦のメドベージェフ大統領は11月1日、ソ連時代を含め同国最高指導者としては初めて、日本の歴史的領土である千島列島の国後島を訪問しました。この訪問は、同国に不当に併合された日本の領土である千島をこれからも占領しつづけ、領有を固定化しようとする新たな意思表示です。領土問題の公正な解決と相反するものであり、厳しく抗議するものであります。

 ロシアとの領土問題は、第2次世界大戦の終結時に、ソ連が、「領土不拡大」という戦後処理の大原則を踏みにじったことに端を発しています。

 もともと、1855年の日ロ通好条約と、1875年の樺太・千島交換条約という2回の条約締結を経て、平和的に国境が確定され、樺太はロシアに、国後・択捉からシュムシュまでの千島全島が日本の領土になりました。その後、第二次世界大戦の時期まで、全千島が日本の領土であることは、国際的に問題になったことはありません。

 ところが、ソ連のスターリンは、アメリカ、イギリス首脳と1945年2月にヤルタ会談を行い、そこで、領土不拡大の原則を踏みにじり、対日参戦の条件としてソ連への千島列島の引渡しを要求し、アメリカとイギリスがこれを認めるという密約を結びました。この密約が1951年のサンフランシスコ講和条約第2条C項に引き継がれ、千島放棄条項となっています。しかも、この講和条約が締結される前に、千島列島をソ連の領土に一方的に編入し、さらに、北海道の一部である歯舞群島と色丹島までも編入してしました。この、不公正な戦後処理を正すところに、ロシアとの領土問題解決の根本があり、したがって、ロシアに対しては、全千島列島と、歯舞群島、色丹島の返還を求めることが必要です。

 日本政府がロシアに対して領土交渉を続けてきていますが、1956年の日ソ共同宣言以来、半世紀を越える努力にもかかわらず、なんら進展をしていません。これは、根本問題に踏み込まず、サンフランシスコ講和条約の枠内で解決しようとし、歯舞・色丹に加えて国後・択捉の四島は千島に属さないから返せ、との主張に頼っているからです。しかし、講和会議において、吉田茂日本代表が、日本が放棄する千島列島には、択捉、国後が含まれるという演説をしています。また、講和条約の批准国会でも、外務省の西村条約局長の答弁では、択捉、国後が、千島列島を構成するとしています。日本政府自身がこのように言っていたのに、今になって、択捉、国後が千島に属さない、と言っても国際的に何ら認められないのは明らかです。

 ロシアが現状の固定化をめざして、新たな強硬措置に出ようとしてきているのですから、日本政府は、講和条約の千島放棄条項を不動の前提とせず、半世紀の領土交渉の総括を踏まえ、歴史的事実と国際的道理にたった本格的な交渉に踏み出すよう強く求めて、討論とします。