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市会報告

井上けんじ 議員

10年3月19日(金)

2010年度病院事業特別会計予算案等に対する反対討論 10年2月定例市会 閉会本会議討論

 日本共産党市会議員団は、議第19号2010年度病院事業特別会計予算案、議第38号地方独立行政法人「病院機構」評価委員会条例の制定案、議第48号病院事業条例を廃止する条例案、及び議第55号地方独立行政法人「病院機構」の定款制定案、以上四議案について、いずれも反対との立場を明らかにしておりますので、私は、以下、その理由について申し述べ、討論を行います。

 法人化に反対する理由の第一は、財政的制約から市民や患者へのしわ寄せが避けられないからであります。市立二病院の独立行政法人化を打ち出した本市の病院事業改革プランで、市長は「医師不足など医療を取り巻く環境が深刻であり公立病院の経営が厳しくなっている、そこで法人化だ」との趣旨のことを言われておりますが、なぜ医師不足が法人化に繋がるのか、その脈絡も根拠もさっぱり不明です。逆に根拠が明確なのは「厳しいから法人化だ」即ち採算上の問題が、法人化への最大の動機となっているということであります。このプラン本文やこの間の議会答弁でも「政策医療は確保する」との一方で、「厳しい本市の財政状況を踏まえ基準外の繰り出しは廃止、自律的な経営、一般医療は当事者意識自律意識をもって診療報酬でやっていただく、義務的部分以外は病院の努力でやる、補助はなくしたい」等々と述べられています。差額ベッド・部屋代、特定療養費等、患者負担についても市長は「将来値上げしないとは約束できない」と答弁されておられます。

 昨年夏の東洋経済という週刊誌では、すでに四年前に法人化された大阪府立病院の例として、近所の開業医や最近退職した医師の話が紹介されています。「最近紹介したがん患者が息も絶え絶えにもかかわらず退院させられそうになった。在院日数の短縮で退院日が決まっているのだろうが、以前はこんな無茶はなかった」「次第に儲けてなんぼというプレッシャーが強まり、病床利用率や在院日数に目標値を設け会議のたびに一喜一憂する風潮は医療にはなじまない」。またこの大阪では紹介状のない患者の初診料やセカンドオピニオン料、分娩料・自動車駐車料などが軒並み値上げされています。総務省研究会報告書でも、「法人化は垂直的減量」が目的とあけすけに述べられています。東京で法人化された首都大学東京では毎年2.5%の効率化係数で交付金が削減されることになっており、教員の大量退職なども大きな問題になっています。日経新聞では、岐阜大学学長が付属病院について「経営改善係数により交付金が減らされ、人件費削減目標も大変、臨床研究論文は減少、高度医療も機器の更新も困難に。白い巨塔ならぬ白い廃墟とならないよう政府の理解をお願いしたい」と書かれています。

 評価委員会を設ける議案も提案されていますが、この委員会は業務の実績を評価するとされており、では業務の実績とは何かというと、これは中期目標や中期計画で言う「効率化に関する事項」ということになるでしょう。即ち効率化の進捗を評価するのが、本委員会の役割であり、これでは、ますます財政効率ばかりが強調されることになっていくのは明らかではありませんか。

 第二の理由は職員へのしわ寄せで、これは、ひいては医療の質や内容、つまり患者にも影響が及んでいくものであります。まず公務員たる身分が一遍の法律で奪い去られること自体が大きな問題です。市長総括質疑では私の質問、『地方独立法人法では「業務の停滞が住民生活に著しい支障を及ぼす場合は公務員型」とされているが、非公務員型を選んだのは支障を及ぼさないとの判断ですか」に対し市長らがまともに答えられなかったことは、職員の身分にかかわる重大問題について真剣な検討がされてこなかったことを物語っています。更に改革プランや議会答弁などでは「法人独自の柔軟な人事給与制度、人事評価制度」と言われ、また「職員給与は勤務成績を考慮」という法律の条文についての私の質問に市長は「能力を給料に反映させるのはあるべき姿」と答弁されました。しかしそもそも医療の現場では治療の効果や成果は数値では計れない面も多く、またチームとして医療にあたることから、個人の勤務評定はなじまないものです。大阪では一部の医師にボーナスが支給されましたが、これは収益があがった診療科のDr.を対象としたもので、正に、患者の健康回復ではなく採算上財政上の指標が人事標評価の判断基準になっっていることを示しています。残業も常態化し、08年度、看護師の離職率は何と14.5%にものぼっているとのことであります。

 第三の理由は議会の関与、即ち市民の民主的なコントロールを後退させてしまうことであります。中期目標・中期計画は議会の議決が必要とされていますが、これらは3年以上5年以下の期間で定められるものであり、毎年の年度計画は法人が定め市長に届けて公表すればいいだけで、議会の議決は必要ありません。現行形態なら毎年度、予算決算が審議・議決・認定され、特に予算が議決されるからこそ新年度からの運営が可能になりますから、質的に異なるしくみになってしまうのはあまりにも明らかではありませんか。総務省の研究会報告書でも「議会の関与があるとこの制度を導入する意義がない」とまで言っており、法人化の目的のひとつがストレートに表現されています。

 議第55号の定款制定案の議案説明書には「現行経営形態では組織や職員定数、予算等に関する制度上の様々な制約があり限界がある」と書かれていますが、まことに独断的、為にする議論で、何が制約であり限界なのか全く不明です。しかしこれを裏返して言えば、議会の関与と住民のコントロールが制約になっていると書いておられるとも読みとれます。語るに落ちるとはこのことではありませんか。

 第四に、今回の計画がPFI事業とのセットで進められていることにより、法人化の問題点が一層増幅されるのではないかと懸念されることであります。

  元々、PFI導入について本市がアドバイスを求めた三菱総研は「官公庁のお客様へ。独法化、PFI、民営化、アウトソーシング推進等のコンサルティング」と売り込んでいる会社で、しかも今回、この会社の株主でもある三菱商事がSPCの構成企業になっています。この会社はこういう分野で全国展開しており、地元企業の排除も心配ですが、病棟の現場以外の病院業務の多くの部門がSPC及びその下請け企業または病院から直接民間企業に委託され、しかもその病棟現場の医師や看護師も、今回の提案では来春から法人の職員になるとされています。憲法擁護義務もなくなり多くの企業・団体に分散する職員が本当に集団的組織的にチームワークを固め市民と患者のために力を合わせるしくみが出来るのか、現行形態の方が優れていることは明らかではありませんか。

 最大の懸念は、SPCとの契約による長期固定費用の支払いと、一方で18年もの間の収入支出の変動が避けられないことからくる矛盾です。特に収入減の場合でも、SPCへの支払いは変わりませんから、結局そのしわ寄せはSPCへの契約業務以外の病院本体部分がかぶることになるでしょう。ところがその病院が、市ではなく法人になり、しかもその法人は独立採算での運営を迫られているわけですから、一層のしわ寄せが危惧されるではありませんか。市とSPCとの契約は、来春以降、そのまま法人とSPCとの契約に移行するとのことですが、契約上の疑義解釈や不測の事態が起こった場合など、法人がそのツケを払わなければならないことも出てくるかも知れません。局別質疑では、こういう場合、市は最早関知しないであろうとの答弁でした。契約書でも、こういう場合、「合理的な範囲での対応」とされていますが、何が合理的なのかは明らかでありません。高知や近江八幡でのPFIの失敗例については、調査して教訓化したとの答弁でしたが、本当に教訓とするのならPFIも法人化も一旦撤回してもう一度考え直すべきでしょう。

 なお、院内保育所についてはSPCではなく法人が委託先を探すとされていますが、言うまでもなく医師看護師をはじめ、病院スタッフの皆さんが安心して仕事に打ち込んで頂く上で欠くことのできない施設であります。その働く権利を支える保育所の職員にとっても同様に働く権利があることは自明のことではありませんか。市長、あなたは何とかしたいけれども残念ながら権限がないとおっしゃるのですか、それとも最初から何とかしたいとは思っておられないのですか。実質的な雇用責任が市長・院長にあることは明白ではありませんか。運営センターの解散云々というのは単なる口実であり逃げ口上でしかありません。働く人たちを路頭に迷わせることは絶対に認められません。現職員の雇用確保については、市長、あなたの決断ひとつであると申し上げておきたい。

 また京北病院では、療養病床は単純には廃止しないとの方針には賛成ですし、来年度予算案や改革プランにおいて、患者数を増やすなどの目標と方針も掲げられています。しかしその為には、その前提であり裏付けともなる、肝心の医師の確保が不可欠なのに、ずっと不十分な状態が続いています。このため、本来なら京北で受診すべき地域住民が、わざわざ旧市内の医療機関へ通っておられる事例もあると聞いています。看護師も嘱託職員に負っている現状で、正規職員の増員など充実が引き続き課題となっています。ナースコール整備と空調以外、施設設備等の老朽化にも改善のための展望は明らかでなく、医療スタッフもハード面も、現在でも課題が山積しています。この上、法人になって、更に効率化とか健全な財政などが強調されれば、ますます医療機能充実への道が遠のいてしまうのではないでしょうか。地域性から言えば、岩手県沢内村での保健・医療・福祉一体の行政展開や、長野県佐久地方での、病院を拠点にしたまちづくりなどの実践が参考になるのではないでしょうか。こういう方向をめざすためにも、市直営で市の公務員のままで、スタッフの皆さんに頑張って頂きたいと私は思います。

 最後に議第19号来年度予算案についてですが、本予算案は、以上申し上げましたPFI契約による債務負担872億円のうち初年度分の支払い予算が含まれていますし、また来春からの独法化を準備する一年として位置付けられています。

 一方では、在院日数の短縮やDPC=診断群分類包括評価等、功罪多面的な検討を要する動向についても積極的に導入を急いでおられますが、これらは悉く診療報酬上できるだけ手厚い加算を得ようとする採算上の動機から出発しているのではないかと思えます。他方、特に市立病院では来年度の事業計画のほとんどの項目が今年度と全く同じ数字となっており、真剣な検討の跡がほとんど感じられません。一般に、市民の健康をどう守りどう高めていくのか、どういう病院をめざしていくかという問題を検討するにあたっては、市民の健康状態の分析や市内医療供給体制の中で市立二病院の果たす役割、更に政府の医療政策への批判的分析等々の前提が欠かせません。予算編成上の前提となるこういう分析を欠落させたまま、一路、独法化に向かう予算となっており、従って本予算案についても、とうてい賛成することはできません。

 以上、四議案に反対し、特に独立行政法人関連の三議案については撤回されるよう求めまして、討論とします。