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市会報告

とがし豊 議員

09年10月28日(水)

2008年度公営企業等決算についての討論 09年9月定例市会 閉会本会議討論

 日本共産党市会議員団は、報第26号平成20年度京都市自動車運送事業特別会計決算については認定せず、病院事業、上下水道、高速鉄道事業など、残余の議案7件には「認定する」との態度をあきらかにしておりますので、その理由について申し述べます。

 まず、報第26号、自動車運送事業について「認定しない」とした理由を述べます。

 第一の理由は、「健全化の取り組みを進める」と称して、2割もの運転手を「若年嘱託職員」という不安定な状況においている点です。若年嘱託の運転手さんたちは、5年間にわたり厳しい要件が課され、1年ごとの契約更新を経なければ正職員になれません。JR西日本福知山線の列車脱線事故においては、日勤教育を背景にした過剰なストレスが乗員に加えられたことが大事故の原因の一つとなりましたが、職を奪うという危機感を5年間も与え続けるという行為は、安心・安全な運行の妨げになります。率先して、安定した雇用の確保に努めるべき京都市が不安定雇用を広げるのは問題であり、若年嘱託制度は廃止し、ただちに正規雇用に改めるべきです。

 第二の理由は、市バスの民営化に道を開く「管理の受委託」が市バス車両の半数に広げられてきた点です。委託先の民間バス会社における乗務員の賃金格差や処遇の改善は、乗客の安全を守る上でも重要な課題ですが、長時間労働と低賃金が問題となっている委託先の労働者の労働条件・健康管理についても、交通局として責任を果たすべきです。

 労働条件の切り下げや不安定化で経営をなんとかするという方法ではなく、交通局において現在取り組まれている「乗っておくれやす」増客計画の策定に見られるような増収増客の取り組みこそ、経営努力として求められています。「環境モデル都市」として2030年までに40%の温暖化ガス削減を掲げる本市は、自家用車から公共交通への大幅な移行をかかげており、市バスにおいても、循環バスの導入やバス待ち環境の改善など「まちづくり」と一体とした積極的な計画をかかげることを求めるものです。

 次に、病院事業についてです。

 市立病院はインフルエンザ対策でも市民の命を最優先にして、率先して発熱外来を設けて対処するなど、市民の命と健康を守る役割を果たしています。自治体病院として「政策医療」の分野で積極的な役割を果たしている点から、この決算を認定するものですが、問題点について以下指摘をします。

 第一に、市立病院が独立行政法人化をめざす改革プランを打ち出し、限りなく民営化の方向を目指している点です。総選挙で厳しい審判が下されたにもかかわらず、前政権の社会保障費削減政策のもとでつくられた「公立病院改革ガイドライン」に事実上縛られた「市立病院事業改革プラン」を見直すことなく推し進めようとしています。副市長は「公立病院は、感染症、災害拠点、救急、僻地医療など政策医療を担保することが第一義」と答弁していますが、先行して独立行政法人化している国立病院などでは、3年間で3%もの運営交付金が減額されており、政策医療の後退になる危険性は否定できません。今、運営交付金を削減しないといわれても何の担保にもなりません。

 第二は、他の自治体でも失敗事例が相次いでいるPFI方式を取り入れている点です。決算年度には、病院の建て替えと、20年近くにわたる運営を一体的に民間委託するPFI事業として、906億円もの債務負担行為が設定されています。この民間への一体的な委託によって期待できるとされている節約効果にしても、結局、今なお根拠も資料も示されていません。

 第三は、医師や看護師など病院職員の子どもの保育を担ってきた市立病院の院内保育所について、2010度末をもって、病院長が責任をもつ運営委員会を通じての事実上の直営方式をやめて、民間委託へ切りかえようとしている点です。人件費が割高というのがその理由とされていますが、実際には、これまで民間保育園と同じ基準で給与支給してきたにすぎず、とんでもないこじつけです。しかも、事実上の直営の保育所だったからこそ、市立病院の医師・看護師などの要望にこたえた質の高い保育を提供してきた事実に照らしても、保育水準の後退をまねき、医師確保・看護師確保の努力にマイナスに働くものであって撤回すべきです。名古屋東病院の病院内保育所では、民営化によって正職員が4人から1人に減らされ、非正規に置き換えるなど、実際に保育水準の後退が起こっています。

 最後に、報第27号、高速鉄道事業についてであります。

 未処理欠損金が3042億円に増加し、資金不足比率は133.5%に達し、経営健全化計画の策定が国から強制される水準となりました。147万人都市である京都市においては、地下鉄は市民の足を守る必要不可欠な交通機関であり、だからこそ国の認可でつくられたのであります。しかし、建設費に対する国の補助制度はきわめて劣悪であり、運営費補助については起債を認めるだけで独自の補助制度はなく、安全対策における補助制度も確立されていません。まさに、国の補助制度の不備により赤字が大きく膨らんでいるのです。 

 ところが、政府はこの不備をそのままに、地方財政健全化法を強行しました。2008年度決算から一般会計と公営企業などの会計を連結決算にして、実質赤字比率が20%を超えると、再生団体にして国の統制のもとにおくとしています。市バスおよび地下鉄事業がその事業に該当するとしているわけですが、国が勝手に20%という線引きをして、無理やり市民に負担を押し付けようというやり方は許せません。

 市長は「国の支援がなければ、運賃値上げが必要」とし、現行の地下鉄財政健全化計画には「5年ごとの5%の料金値上げ」が織り込まれていますが、有識者会議でも乗客離れの恐れが指摘されています。地下鉄の経営健全化にあたっては、国の支援を最大限に求めるとともに、運賃値上げではなく乗客増による経営改善こそ必要であることを指摘しておきます。烏丸線への転落防止柵の設置など、大量輸送機関としての安全性や利便性の向上にむけ、引き続きの取り組みをもとめて、この決算を認定するものであります。

 先ほども申し上げましたとおり、地方財政健全化法は、国の責任を棚上げにして、市民に負担をおしつけるものです。政権交代を機に、このような財政健全化法は廃止し、真に地方の公共交通を守り充実させ、交通弱者にも環境にも思いやる国への変革が求められていることを指摘し、討論とします。