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市会報告

赤阪 仁 議員

08年12月16日(火)

2007年度国民健康保険・介護保険特別会計決算についての反対討論 08年11月定例市会 閉会本会議討論

 日本共産党の伏見区選出の赤阪仁です。日本共産党市会議員団は、報第16号国民健康保険特別会計と、報第17号の介護保険特別会計は認定せずと態度表明していますので、その理由を述べ討論します。
 そもそも、07年度は、「福祉の後退はさせない」と公約した桝本前市長の任期最後の総まとめ決算の年であり、また、定率減税完全廃止の翌年度、新たに、住民税の大幅負担増の押しつけによる、医療費等市民負担が増えた年でありました。
 最初に、報第16号国民健康保険特別会計の赤字決算の解決法についてです。京都市国保の構成員の特徴は、「無職および年金収入者など」が6割以上をしめ、自営業者は13%に減り、労働者が23%以上を占めるなど、低所得者が大半を占めています。収入が少ないので一人ひとりの保険料の負担割合が大きくなり、国民健康保険料の激変緩和措置である非課税世帯の所得割3割減が完全廃止になり、生活困窮世帯が増えたのも特徴です。
 質疑でわが党議員が指摘したように、10年間で、保険給付費は1.5倍に増えているのに、財源となる保険料、国庫支出金、国・府の調整交付金、一般会計繰入金は横ばい状況ですから、国保特別会計決算が赤字になるのは当たり前です。赤字の根本原因は当局も質疑で回答したように「国庫支出金が40%から34%へ」減額されているからです。与党議員からも「国が国負担金を削っているのが問題」との指摘もあったように問題解決の方向は明白です。京都市は国への重点要望で国庫負担率の引き上げや、財政措置などを求めておられますが、同時に、京都市独自に国保会計への純粋な繰入金を増やし、高い国民健康保険料を引きさげるべきです。
   第二に国保証の取り上げ問題です。不景気で収入が減り、京都市国保加入約28万世帯のうち、保険料が高くて払えない滞納世帯が52416世帯、その内、国保証取り上げによる資格証発行世帯は9月15日現在3300世帯、資格証で病院の窓口で10割負担した市民は313人にものぼっています。
 この間、子どもがいる生活保護対象世帯からも、機械的な対応で保険証を取り上げていました。若いお父さんはお金がないので、子どもの虫歯治療を途中でやめて困っていました。これは冷たい市政の典型とわが党が指摘すると、副市長は「窓口に来ていただいたら相談には乗る」と言いつつ「保険料の公平な負担が前提」と事実上機械的な資格証明書の発行を継続しています。国言いなりの保険証取り上げの義務づけをやめ、訪問や弁解聴取を義務づけるなど、市民のいのちと健康を最大限保障する親身な対応こそ義務づけるべきです。保険証がなくて、病気になっても病院に行けない、病院に行くのが手遅れで命を失う事態を繰り返してはなりません。国民皆保険制度の趣旨からも、命と財産を守る自治体本来の目的からも、保険証取り上げは許されるものではありません。
 この間、わが党は資格証明書の発行世帯の中でも、子どものおられる家庭への保険証交付を求めてきました。
 07年度、当局は、無保険の子どもの実態も把握せず、居直りに終始し、京都市長選挙での大争点にもなりました。厳しい市民の批判と運動が、今年度、保険料の値下げ改善を生み出し、無保険の子どもへの特別な保険証発行を実施させることができました。ひきつづき全世帯での保険証の取り上げを止めることを求めるものです。
 京都市は「一般会計から繰入努力、国へも要望している」とは言いながら、健診費用など「来年度は保険料のあり方を検討」と値上げを示唆しているのは重大です。国の責任を市民に転嫁するものであり断じて認めるわけにはいきません。
 次に、報第17号 介護保険特別会計についてです。
 07年度決算の特徴は実質収支285,315千円の黒字、不用額は、保険給付費では667,160千円という結果でした。06年から08年までの、第3期決算全体で、保険料の剰余分が積立金32億円となる見込みです。
 問題点の第一は、介護予防の名の下に、特に軽度の老人への給付を大幅に制限した事実であります。特に、要支援対象者から「生活の自立支援」を口実に、電動ベッドの取り上げ、家事サービスの内容、時間を切り下げるなど、利用者が介護サービスを使いたくても使えないという状態に抑制し高齢者を泣かせた結果の32億円であり、本来の制度目的に反する結果であることを厳しく指摘するものです。国に対し、介護保険財政にたいする国庫負担割合を当面5%引き上げ、介護保険料の値上げこそ抑えることを強く要望するとともに、市独自でも保険料、利用料の減免制度の拡充をすすめるべきです。またホームヘルプサービスなど給付制限をやめ、改善をすることを求めます。
 第二は、地域支援事業も、鳴り物入りで導入されましたが、実績を見ると計画・予算割れが目立ちます。
 介護予防や介護利用の相談窓口である地域包括支援センターは、京都市が民間事業者に委託していますが、現場は職員の自己犠牲と法人からの持ち出し等でようやく維持されています。「黒字運営だから問題なし」との当局答弁・認識は論外です。膨大な業務量の中で事業者が独自に46箇所72人の人的配置を行い、やりくりしているのです。事実、伏見区深草の医師会が受けている包括支援センターは運営が困難となり来年3月には京都市に返上するとしています。京都市は委託料を増額するとともに、地域包括支援センターの閉鎖を繰り返さないよう、現場の困難な実態をつかみ、事業主体としての公的責任を果たすことを強く求めるものです。
  第三に、介護職員の人手不足問題です。 本年夏に、「21世紀老人福祉の向上をめざす施設連絡会」が実施された全国の老人ホーム施設長を対象としたアンケートでも、職員確保が困難から、一部閉鎖を余儀なくされていることや、2,3年後にはその危険性があることが報告されています。今後京都市でも職員不足による一部閉鎖等、施設の廃止による介護難民を生み出すことは絶対避けなければなりません。現在、国で検討されている介護報酬の3%引き上げでは、「焼け石に水どころか、熱湯だ、一瞬のうちに消える」と施設運営も福祉労働者の生活も非常事態にあると、関係者は語ります。京都市は国に対して、介護の人材不足を打開するために、国の責任で事業所にたいする介護報酬を大幅に引き上げ、職員賃金をひきあげる緊急措置を求めるべきです。
  第四に、全国平均より高い介護保険料問題です。京都市は、先日、来期の介護保険料値下げを表明されました。今期保険料が4,760円から約280円の減額で4,500円程度になるみ込みとの答弁がありましたが、当然であり、前進です。が単純に喜べません。そもそも、この減額は実施されても、まだ京都市は全国平均を上回る高い保険料負担を市民に押しつけている事実は否めません。今の介護保険制度の根本的矛盾である、利用者が増えれば、保険料が上がる仕組みのままでは、今後赤字になり、さらに介護サービス利用を抑制する危険性があることを指摘しておきます。
 「老老介護」に疲れ果てた、高齢者夫婦の痛ましい無理心中事件が跡を絶ちません。著しく不足している介護施設・在宅サービス、高い保険料・利用料負担など、「保険あって介護なし」の深刻な事態を改善することが急務であることを指摘し私の討論といたします。