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市会報告

ひぐち英明 議員

08年12月16日(火)

2008年度病院事業特別会計補正予算に対する反対討論 08年11月定例市会 閉会本会議討論

  日本共産党市会議員団は議第103号、平成20年度京都市病院事業特別会計補正予算について反対の態度を表明していますので、その理由について、議員団を代表して、討論を行います。

 本議案は、市立病院の建て替え・改修工事、およびその後15年間の運営・維持管理をPFI手法で行うために、906億円の債務負担行為を設定するというものであります。

 この議案に反対する第1の理由は、京都市がPFI手法を選択する上での根拠としている、経費削減効果額の算出の根拠が極めてあいまいだからです。

 新築部分の直接工事費で10%、本館改修費で15%削減が見込まれる、としていますが、根拠は結局示されませんでした。また、医療機器等購入費に関しても、10%程度の削減を見込む、とされていますが、その根拠が示されていません。

 さらに15年間の運営・維持管理費に関しても、薬品と診療材料費でそれぞれ3%と4%の経費削減効果を見込む、としていますが、これも、アドバイザーなどの意見を参考にした、との説明だけで、根拠は示されていません。同じPFI手法の病院である高知医療センターでは、薬品費・材料費での見込み違いが年間8億円にも及び、経営に大きな打撃を与えています。

 委託料では、16人分の人件費、22億円の削減を見込んでいます。しかし、PFI手法の病院の近江八幡市立総合医療センターでは、各医療現場に責任ある人員が配置されなかった為に、非効率的な運営になったことが報告されています。結局、運営がうまくいかずに、近江八幡市は、現在、PFIの契約解除の手続きに入っています。

 こうした失敗事例が相次いでいるにもかかわらず、見込みでしかない削減効果の数字だけを示し、その根拠すら示されないままで、906億円にも及ぶ債務負担行為を設定することに、どうして、市民が納得できるでしょうか。

 しかも、これらの削減効果を算定したコンサルタント会社は、この間、京都市のPFI事業に次々と参入している企業のグループ企業であります。そうした企業グループが、従来手法とPFI手法を比べて、PFIのほうが有利である、と結論を出すのは当然ですから、重要なのは、その結論を検証できるだけの客観的根拠が示されているかどうかという点です。ところが、紹介してきたとおり、結論の数字だけが示されているのでありますから、これで納得を得られるはずがありません。

 本議案に反対する第2の理由は、公共事業であり、しかも、政策医療を行う公的病院でありながら、その公的な責任が後退させられ、市民の命と経済効率とが天秤に掛けられてしまうからであります。

 仙台市では、市がPFI手法で作ったプールの天井が落下し、市民が大ケガをするという事故が起こりました。この工事では、公共事業でありながら、設計も施工も不良という重大なミスを自治体が把握できませんでした。また、事後の対応も民間にお任せということになり、こうした事態を受けて、地元新聞が「民間頼みに落とし穴」「安全も丸投げ」と報道しました。

 運営・維持管理に関してはどうでしょうか。PFI事業の契約業者であるSPCに任せるのは周辺業務、と言っていますが、検体検査にしても、食事の提供にしても、薬品の調達にしても、医療の一環であることには間違いがありません。こうした周辺業務も含めて、公的病院としての役割を果たすべきことを委員会質疑で指摘したところ、理事者から、本市の財政状況を考えたら、効率的な運営としてPFIを選択したい旨の答弁がありました。さらに、契約するSPCが信頼できるかどうかは、その後のモニタリングをしながら様子を見ないとわからない、との答弁もありました。

 これでは、経済効率優先であり、市民の命と健康を守る本来業務の後退が懸念されます。高知医療センターでは、病院と医療現場の中間に入ったSPCに、政策医療を担う力量がそもそもなかったことも指摘されています。

 このほかにも、PFI手法では事業規模が大きくなるため、契約企業は大企業が中心となり、地元中小企業が直接請け負う機会が減ってしまうというデメリットが指摘されています。さらに、この間、診療報酬が次々と切り下げられるなど、国の医療制度改悪によって、病院経営は困難さを増しており、先が読めない状況であることは、理事者答弁でも言われました。わずか3年前に本市が作った病院整備基本計画の削減効果額と今回のものを比べても、状況が変わったとして、内容が大きく変更されています。こうした状況の下、18年も先の見通しを立てることは困難を極めます。

 以上のような問題点を含むPFI手法を採用するのではなく、市民の命を守ることを最優先させ、公的病院としての役割を、さらに充実させるよう求めて、討論といたします。