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市会報告

加藤あい 議員

08年11月21日(金)

加藤あい議員の代表質問と答弁の大要 08年11月定例市会 本会議代表質問

  左京区選出の加藤あいです。日本共産党市会議員団を代表して市長・関係理事者に質問します。

保育制度 本市プール制と保育料、政府の制度改悪について

 まず、保育制度についてです。

 今年7月に発表された「京都未来まちづくりプラン」の骨子に「市独自に実施している事業」について「適正な事業水準を精査」するとして「歳出構造の見直し」がかかげられました。それを受け、京都の民間保育園の関係者からは、「プール制財源が大幅に削減されるのではないか」との心配の声が上がっています。言うまでもなく本市の保育は圧倒的に民間保育園によって担われてきました。「プール制」とは、低すぎる国の補助に市が独自補助金を加えプールし、職員体制の整備と職員の身分保障を行なうものです。職員体制においては、例えば、今1才児は国の基準では保育士1人に対して6人の子どもですが、本市では5対1に児童数が軽減されています。3才児なら20対1が15対1にされる等、他の年齢の児童においても同様の措置がとられています。

 しかし、財源が削減されたら、その措置は後退を余儀なくされ、3才児20人を2人の担任で何とかみているところを1人でみてください等ということにもなりかねません。そうなれば、一人ひとりの子どもたちの発達を保障する保育など不可能となり、号令によるいっせい保育に変えるしかありません。また、更なる職員のアルバイト化という問題も出てくるでしょう。つまり、保育の質が後退し、子どもたちの発達や子育て支援機能に悪影響を及ぼすことは明らかです。だからこそ、関係者から「制度を守って」「財源を削減しないで」という切実な声があがっているのです。

 市長、全国に誇る京都の保育を守る上でプール制の堅持は欠かすことができません。「プール制」の果たしてきた役割と意義について、まず認識をお示しください。そして、財源を確保し、京都の子どもたちのために本制度を守る決意を求めます。

 更に、政府が直接契約制の導入と最低基準の見直し・廃止を行なう「公的保育制度」の改悪をすすめています。改悪の口実は、待機児解消や「認可保育所に入れた人と、入れない人との不公平の是正」でないといいますが、政府が保育予算を減らしてきたことが問題であり、貧困な予算を増やすことこそ求められています。

 これまでから、日本経団連など財界は、保育への市場参入をすすめるため、繰り返し規制緩和を政府に要望してきました。しかし、それをすすめれば、保育所整備は企業のもうけ次第、保育の質も金次第となります。先日、株式会社エムケイグループが東京などで経営している29ヵ所の保育所や学童クラブが突然閉鎖され、子どもや親は放り出され、保育士は解雇されました。結局、保育を営利企業にゆだねれば大きなリスクを伴うことをいみじくも示しました。先んじて、介護保険においても直接契約化が行なわれましたが、今や特別養護老人ホームの待機者は38万人にも上り、職員の非正規化・人材不足が広がるなど問題が噴出しています。公的責任において受け皿・予算が用意されなければ結局、入所できないのは自己責任となることも実証済みです。子どもの分野に規制緩和・市場原理は持ち込むべきではありません。ましてや、「保育に欠ける子ども」への保育を行う公的責任そのものを投げ捨てようとしているのですから、重大です。京都の保育を守るためには政府の保育の市場化・規制緩和を絶対に食い止めなくてはなりません。市長、国の動向を注視するだけでなく、政府の保育制度改悪はやめるよう求めるのは当然ではありませんか。お答えください。

 また、「京都未来まちづくりプラン」の骨子では、保育料が例としてあげられ値上げの検討対象とされています。以前、特例保育料が値上げされたとき、母子家庭のお母さんが「どれだけ母子家庭を苦しめたら気が済むのか」と言われたのを聞きました。「アルバイトで保育料ぎりぎり。これ以上あがったら保育料を払うために働く状況になってしまう」と言う声もあります。現行でも親の保育料負担は限界です。子育て世帯への経済的負担の重さに鑑み、保育料値上げは行わないことを求めます。

(子育て支援政策監)プール制は職員処遇と児童処遇の向上を図り、本市の保育の質の向上に寄与してきた。保育料は、政令市の中でも手厚い国基準の7割程度に設定し、保護者負担を大幅に軽減してきた。民営保育園への財政支援と合わせ、約80億円もの単費助成を行っている。

 本市財政は危機的状況に直面しており、プール制や保護者負担のあり方について、果たしてきた役割や意義、現在の厳しい経済状況などをふまえ、慎重に検討する必要がある。

 保育所は十分な保育の質の確保が重要。国の保育制度見直しの動向を注視し、必要な要望を行っていく。

発達の心配な子どもたちへの支援について

 次に、発達の心配な子どもたちへの支援についてうかがいます。

 本市1歳6ヵ月健診において「発達の心配な子」は、07年度で1103人となっています。保健所の親子教室など様々なフォローでクリアーしていく場合もありますが、子どもが「軽度発達障害」と呼ばれる高機能自閉症・広汎性発達障害・LD・ADHDである場合もあります。そういった障害を持つ子どもさんの親御さんから話を聞くと「ずっとおかしい。何かが違うと思っていたけれども、療育を受けるというところに行き着くまでに大変な時間がかかった」と話されます。

 実際に、児童福祉センターでの「診断数」は07年度で658件、5年前と比べて2.6倍。障害を特定する「鑑別診断待機」も715件と同じく5年前と比べて2.8倍で、最大1年2ヵ月待ちとなっています。発達検査も1ヵ月から3ヵ月まちで「保健所からつなごうと思っても発達相談所がいっぱいでケースがおくれない」という声もあります。保健所で指摘された後、児童福祉センターのずっと先の検診日や診察日を不安な思いのまま待たなければならない親の心労は多大なものがあります。何より、成長過程の子どもがそれだけ待たされるのは早期発見・早期療育とならず、問題です。

 診断をする医師数の増員や児童福祉センターのワーカーの増員など必要な体制や予算をとって、発達検査や診断の待機を解消することを求めます。

 更に、療育待機数も07年317件となっており、特に年度の後半などは「空き待ち」の状況となっています。療育を受けることが適当であっても受け皿の不足でそうできないのです。療育になかなか行き着けないのは情報提供の問題もあります。発達が心配な状況からスタートして、療育を受けるところまでの支援についてパンフレットなどを発行しトータルな情報提供を行なうことが必要です。そして、根本的には不足している療育施設を増設し、支援の体制を強化することを求めます。

(子育て支援政策監)早期発見・早期療育の観点から、児童心療科医師による診断を緊急性が高い場合には概ね1ヵ月以内に実施するとともに、診断期間の短縮をはかるため、年々体制を整備し、研究会を開催し発達障害の診断等の普及に努めている。 

 発達障害児への直接指導について、発達障害者支援センターにおける待機状況をふまえ、「トレーニングセミナー」を実施するなど、引き続き、支援の担い手育成に努める。

 早期療育の場として新たに発達障害児等療育教室を設置したが、療育待機の発生状況を見極めながら、療育教室の拡充を検討していく。

青年の雇用問題について

 次に青年の雇用問題についてうかがいます。

 「会社に派遣され働き出して2ヵ月後、体調不良で下血。病院への診察で2日間の休みを取ったら、直後にやめるように言われた」「日雇い派遣をやめ正規雇用を探している。毎月3~4件の就職試験をこなすが定職につけていない。秋葉原の事件を起こした人物と自分が重なる」-これは、京都の青年たちが街頭などで集めたアンケート1000通の一部です。

 年9月に発表された07年就業構造基本調査では、京都市は5年前と比べて正規雇用が7800人減り、非正規雇用者が2万8800人増加、派遣労働者は2倍になっています。京都府の非正規比率は全国で2番、本市も政令市で最悪で、全国のなかでも本市の雇用状況は深刻です。

 更に、9月以降、大企業を中心に金融危機を口実にした派遣や請負・期間労働者を解雇する動きが広がっています。トヨタのグループ企業も7800人も削減する大リストラ計画をたてていますし、本市でもすでにいくつかの企業がリストラ計画を明らかにしており、来年3月末までに200人を削減するとしているところもあります。安い賃金で派遣労働者を使って空前の利益を上げながら、減益になると真っ先に切り捨てるとは、余りにひどい話ではありませんか。利益が減ったといっても、なお多くの利益をあげ、巨額の内部留保を持っています。雇用に対する社会的責任を放棄することは許されません。

 市長は今年5月の本会議で「労働者派遣法改正以後、非正規雇用者が増加し、格差が拡大しており、将来に希望を持ちにくい状況が生じている。格差拡大が続くと、健康で文化的な生活、労働力確保、経済成長にも大きな影響を及ぼす」との認識を示されました。ならば、市長は、本市において、大手企業の金融危機を口実にした大リストラで労働者にどういう影響が出ているのか、つかんでおられますか。即、調査を行い、企業に対してリストラをやめるよう強く要望すべきです。

 また、首切り対象になっている労働者の多くは若者であり、職を失えば多くの労働者が雇用だけでなく住まいを失い、路頭に迷います。そして、これまでから、労働災害でも即首にされるなど無法な状態に置かれ、しかも無法状況を認識できずにいる青年がいます。市独自に緊急の生活資金や住宅資金の貸し付け、住居喪失状態や派遣からの脱却支援を行うことを求めます。お答えください。

(市長)雇用情勢は、事業主による雇用調整が行われつつあり、離職者が増加傾向にあるなど、下降局面にあり、厳しい状況と認識している。

 本年4月、雇用担当部長を配置したが、国や府との緊密な連携や雇用動向についての情報収集を行うとともに、雇用創出・就業支援につながる施策に取り組んでいく。臨時措置として「原油等価格高騰対策緊急貸付事業」を実施した。離職者に対する支援として、関係機関とともに「生活資金の貸付」に取り組んでいく。

大学における高学費問題について

 次に、大学における高学費問題についてうかがいます。

 今、親の経済力の差が子の進路を左右する「教育の機会均等」に反する事態が広がっています。

学生支援機構の調査では、世帯の収入別進学者数は、500万円以下の世帯では04年は23.8%であったのが、07年には16.6%と大幅に減少しています。そもそも、年収200万円足らずの母子家庭に百数十万円にものぼる大学の初年度納付金を払えるはずがなく、大学の異常な高学費が低所得世帯の子どもたちの進学の選択肢を奪っています。また、何とか進学できたとしても、その後の学生生活は大変困難です。ある京都の大学では、学費滞納が学生数の5%に達していることがわかりました。この比率をそのまま京都の学生13万9000人に当てはめれば、7000人近くもの学生が学費を滞納していることになります。「学費を払うために消費者金融からお金を借りている」「交通費、食費はバイトでまかなっても肝心の教科書代が出せない」などの声は決して一部ではありません。市長、市長は、京都の学生たちの教育の機会が、お金のあるなしで奪われていることについてどのようにお考えでしょうか。学生の声を代弁し、国に対して、学費の無償化と当面、経済的困窮世帯の学費免除や軽減、給付制奨学金制度を創出することを求めるべきです。いかがですか。

 また、政府は今ある奨学金制度すら「有利子上限3%の撤廃や回収強化を図る」として改悪しようとしています。延滞率の高い大学名の公表や回収業者への成功報酬付与も検討しているといいますから、これでは、まるで金貸し業ではありませんか。返済する条件がある人にだけ受けさせるということになれば、経済的な理由で進学を断念する若者を生まないためにある奨学金制度の目的そのものが根底からくずれることになります。

 そもそも、返済滞納額が増えたのは、貸与人数が拡大していることと卒業後の雇用環境の悪化から来ています。回収率は7年前とほぼ変わらないのです。昨年9月にも、成績や所得などの基準を満たしているにも関わらず、無利子の奨学金からあふれた高校生が約10万人にものぼりました。本来なら、あふれて受けられない現行制度を充実させることこそ必要です。市長、このとんでもない制度改悪を中止するよう政府に求めるべきではありませんか。お答えください。

 今、17の政令市のなかで9自治体が独自の奨学金制度をもっています。どうして「大学のまち京都」で学生たちの教育機会を保障するための努力がなされていないのでしょうか。せめて、京都市独自の奨学金制度を創設すべきです。あわせてお答えください。

(総合企画局長)教育の機会均等は憲法・教育基本法が保障する当然の権利。市立芸大・看護短期大学で授業料減免または奨学金の貸与を行うとともに、国に対し、指定都市共同で奨学金の拡充を要望している。本市独自の奨学金制度創設は、財政上も課題が多く、実施は困難。引き続き、国に対し、奨学金制度の拡充を要望していく。

 国が予定している返還金の回収強化については、約2割が未回収の状況で、返済された奨学金が次の貸与の原資となることから、制度を維持していく上で重要と認識している。

障害を持つ方への支援策について

 次に、障害を持つ方への支援策についてうかがいます。

 障害者自立支援法が施行されて2年がたちました。一部見直しはありましたが、「応益負担」「施設への日払い方式」という根本的な欠陥は放置されたままです。

 施設は「日払い方式」で大変な状況になっています。特に精神障害者や児童は毎日通ってくることが困難で、減収は職員処遇にしわ寄せされます。福祉保育労働組合京都地方本部の調査でも13の障害者関係施設の非正規労働者比率は去年の1月に41.4%だったものが、今年の7月には51.4%と10%も増加しています。職員の処遇の後退は支援の質の後退へとつながりますし、今ある受け皿を失うことも起こりえる自体です。

 先日、30人の方が全国各地で生きていくうえで必要な支援を「益」とみなし本人負担を求めるのは、法の下の平等を定めた憲法に違反するといっせい提訴しました。政府は来年度以降も経過措置を継続するとの意向を示していますが、それ自体、本法律が破綻していることを証明しているのではないでしょうか。来年度抜本改正に向けて、京都市として障害者自立支援法の「応益負担」、「日払い方式」を撤回するよう国に求めるべきです。

 自立支援法では、2011年までにすべての施設が法内施設へ移行することを定めています。しかし、地域活動支援センターへの国の事業費補助は半分もなく、きわめて不十分です。障害課長会議でも「地域活動支援センターが小規模作業所の補助よりも実質的増額となるような事業費設定を」行うよう要望が上がっています。市長、国に対して定員要件を引き下げ、報酬単価を大幅に引き上げることで、すべての小規模作業所が個別給付事業に移行する道を確立することを求めるべきです。

 また、あわせて本市には障害保健福祉行政の最前線の機関として最大限の努力を図ることが求められています。すべての共同作業所が地域活動支援センターに移行していますが、利用者負担や日払い方式、定員10名以上というのがなじまないことから訓練等給付に移行できない施設も生まれると予想されます。市として、移行できずとも従来どおりの補助を継続し、行き場のない障害者を生まない努力を最大限行なうことを求めます。いかがですか。

(山崎副市長)障害者自立支援法は、国において本年中に抜本的見直しの方向性をまとめるために検討中。「京都方式」による利用者負担軽減策を創設した都市として、国に対して必要な要望を積極的に行っている。

 共同作業所等について、新たに制度化された「就労継続支援」施設等の法定施設へ円滑に移行できるよう、国に対し適切な報酬体系の確立を強く要望するとともに、移行に必要な経費を本市独自に補助するなど積極的に支援している。

左京区役所の総合庁舎化について

 最後に、左京区役所の総合庁舎化について質問します。

 左京区松ヶ崎に保健所と区役所を一体的に整備する左京区総合庁舎整備事業が進められています。先頃、落札業者の決定も行われ、あくまでも、当初計画どおりに進めるというのが京都市の立場ですが、計画が明らかになるなかで、住民の間では不安が広がり、要望が強くなっています。

 現在の区役所の所在地吉田学区には当初から移転反対の強い声があり、住民のみなさんは、計画の凍結と支所機能を残すことを強く求めておられます。そもそも、区役所が吉田から松ヶ崎に移転すれば、左京区中南部の住民の交通アクセスにおける利便性は大きく後退します。加えて、最寄のバス停からの距離も現区役所と比較すると770mと2倍になり、10分以上歩かなければなりません。ワークショップの意見のまとめでも「交通アクセスの改善が課題」とされ、住民からは、再三にわたり「どう利便性を確保するのか」という声があるにもかかわらず、京都市は「関係局と協議している」とするだけで、いまだに何ら具体策を示していません。

 保健所利用者や高齢者・障害者への配慮についても方針がなく、交通アクセスの変化、まちづくりへの影響など必要な調査と住民への情報提供がなされていない元で、納得できないと区民から声が上がるのは当然ではありませんか。

 移転予定となっている松ヶ崎でも住環境を守るために当初計画の再検討と全体のボリュームを小さくすることを求める意見が出されています。岩倉出張所についても住民からまちづくりに支障をきたすと出張所存続を求める声が上がっています。こうした声があるにもかかわらず、当初計画に固執しつづけることは、市長が言われる市民との「きょうかん」にも反するのではないですか。

 必要な調査や情報提供を行い、住民の意見を聞くまで、いったん、当初計画を凍結することを求めます。以上で、私の質問を終わります。

(文化市民局長)区民の要望を踏まえて検討した結果、松ヶ崎に新庁舎を整備する事とし、基本計画段階から区民への周知と意見の反映に努めてきた。今後、交通アクセスの整備等について引き続き検討し、周知に努め区民の理解をえて進めていく。