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市会報告

さとう和夫 議員

08年5月22日(木)

さとう和夫議員の代表質問と答弁の大要 08年5月定例市会 本会議代表質問

 日本共産党市会議員団を代表して、市長ならびに関係理事者に質問します。

生活保護の基準引き下げを許さず、見舞金復活を

 第1に、生活保護と国民健康保険に係わる医療不安などについて質問します。
 この間、伏見区の生活保護を受給している方から、生活相談を受けました。息子さんが昼間の公立高校に合格したけれど、学校の研修旅行の積立金が月額8000円にもなり、生活保護制度の生業扶助の対象にならないため、困っているというものでした。食べ盛りのお子さんをかかえ、食費を削って月々8000円をひねり出すのは大変です。自分は病気療養のため働けていないのに、子どもには研修旅行に行きたければ、クラブ活動をやめアルバイトしなさいとはいえない。これほど切ない思いをしたことはないといわれました。これも生活保護受給世帯の現実のひとつです。
 ところが、国は生活保護の70歳以上の老人世帯から老齢加算を取り上げたのにつづき、母子加算も今年度で全部廃止しようとしています。さらに、来年4月からは生活保護基準の本体部分にあたる生活扶助の切り下げを打ち出しました。
 今でも、生活保護世帯の方は隣近所や身内の葬式などさまざまな近所づきあいで、不時の出費があれば生活を圧迫するため、つき合いを避けるか、食費を削るかしているのが生活の実態です。
 そこでおたずねしますが、国は生保基準以下で生活している世帯が増えていることを理由に、生活扶助を引き下げるとしていますが、本市は生活保護世帯の実態をどう認識していますか。お答えください。

(保健福祉局長)物価の値上がりが生保受給者や低所得世帯の生活に影響を及ぼしていると認識している。

 そもそも、生保基準以下で生活している低所得者のうち、公的扶助で援助している割合を社会福祉の分野では「生活保護制度の捕捉率」といいますが、駒村康平慶応大学教授の推計によると、だいたい20%程度としています。つまり全貧困世帯のうち、5分の1程度しか生活保護で救えていないということを意味します。
 ナショナルミニマムとしての生活保護基準の見直しとは、国による最低生活水準の引き下げであり、そのメダルの裏側は所得の非課税ラインの引き下げに連動し、所得課税ベースの拡大、すなわち庶民増税そのものとなります。そして、生活保護基準の1.2倍を目安に就学援助が適用され、1.3倍を基に国保の一部負担金の減額が適用され、1.8倍を基準に生活福祉資金の貸し付けが適用されていますから、生活保護基準を引き下げれば、様々な福祉制度の適用はいっそうの「狭き門」となります。
 「貧困として国が認定するライン」を行政の裁量で引き下げ、あたかも貧困層が減少したかのように見せ掛けるとは、あまりにも姑息な手段といわなければなりません。
 そこで、質問しますが、原材料高で生活必需品の物価が値上がりする中での、生活扶助の引き下げを行わないよう国に求めるべきです。また、住民裁判が提訴されるほど深刻な生活実態をふまえ母子加算や老齢加算を元に戻すよう求めるとともに、本市としても季節的出費や地域の社会参加を支援してきた夏冬の見舞金制度を復活させるべきですが、いかがですか。

(保健福祉局長)母子・老齢加算も含めた生活保護基準は、消費支出の伸びや社会経済情勢を勘案した上で健康で文化的な最低限度の生活が保障されるよう定められるものであり、妥当な水準。見舞金は不十分であった生保基準を補う趣旨であり役割を終えた。市の財政状況も厳しく、復活する考えはない。 

 また、生活保護制度の通院移送費すなわち病院にかかるための通院交通費を本年7月から「原則廃止及び福祉事務所管内の指定医療機関に受診制限」すると、厚労省が通達を出し直しました。先日、わたくしのところに一人暮らしの生活保護を受けている70歳の老婦人から電話がありました。椎間板ヘルニアや心臓疾患などで医療機関に月3回かかっているとのことでした。体調によってはタクシー利用もあり、通院のための交通費は月に約5000円程度になるそうです。伏見区の三つある福祉事務所のうち、本所管内に1ヵ所、同じ行政区内にもう1ヵ所、さらに他の行政区に1ヵ所の合計3ヵ所、伏見区に転居してくる前のかかりつけのお医者さんと転居後の近くのお医者さんとそれぞれ別の病気でかかっているのに、ケースワーカーから原則として福祉事務所の管内の診療所に制限されると云われ、病気と闘う気力がくじけるとのことでした。本来、国民皆保険制度による「国民健康保険」では、患者は医師を選べるはずなのに、その国保が適用される生保の医療扶助では医師を選べないということがあってはなりません。
 そこで質問します。他の政令市の横浜市や川崎市や千葉市なども通院移送費廃止に対し慎重な取り扱いと相当な経過期間をとるよう国に配慮を求めていますが、医療扶助をうけている要保護者の必要な医療を制限することがないように国に求めるべきと思いますが、いかがですか。お答えください。また、本市としても医療扶助を受けている要保護者の必要な医療を制限することがないようすべきですが、いかがですか。

(保健福祉局長)要保護者が必要な医療を受けられないという事態になってはならないと考えており、国の通知の趣旨をふまえ、他の指定都市とも意見交換を行いながら慎重に検討している。必要に応じ国に意見を申し入れる。

国民健康保険・資格証明書発行の中止を

 次に、国民健康保険制度について質問します。
 開業医の先生方の「全国保険医団体連合会」の調査によると、国民健康保険の資格証明書を交付された人が、06年度にどの程度医療機関にかかったかという「受診率調査」では、一般被保険者の51分の1以下でした。「滞納対策としての効果が薄く、著しい受診抑制をもたらしている」とし、資格証明書の交付はやめるべきと指摘しています。国保加入世帯の5世帯に1世帯が滞納という状況は異常といわなければなりません。税方式の生活保護制度で救済するのか、社会保険方式の国保の保険料や一部負担金の減免制度の拡充で救済するのか、いずれにせよ制度の谷間に突き落とすことは許されません。国民皆保険制度のもとで必要な医療が受けられないという「医療難民」をつくってはなりません。
 平成18年11月の全国市長会の「生活保護制度改革に関する意見」では、生活保護への移行を防止するために、ボーダーライン層への国の就労支援制度の創設を求めていましたが、ボーダーライン層にはいわゆるワーキングプア層も含まれますから、国民健康保険料や一部負担金などの減免措置の拡充と組み合わせなければ、そもそも所期の効果は期待できません。
 そこで、おたずねしますが、先の生活保護制度の捕捉率の低さを考えると、生活保護制度で捕捉できていない貧困ボーダーライン層の増大に対して、払える国保料への引き下げや国保の減免制度の拡充が必要です。また、政令市のさいたま市では資格証明書の発行をゼロにしましたし、千葉市では障害者・母子・父子・乳幼児など福祉医療の対象者には資格証明書を発行しないよう改善しました。本市としても4000件をこえる資格証明書の発行を行わないようすべきですが、いかがですか。

(保健福祉局長)保険料の公平な負担が制度存立の前提。支払い能力を勘案して決定している。納付に困っておられる方の相談に応じ、滞納のある方には来所のうえ減免活用などきめ細かに相談を行っている。納付意思を全く示さず特別な理由もなく長期にわたって滞納している方への資格証明書の交付はやむを得ない。

「UR賃貸住宅の削減・縮小計画」に反対すべき

 第2に、公共住宅政策の後退で広がる住宅不安について質問します。
 昨年末、都市再生機構はこれからの10年間でUR賃貸住宅の管理戸数約77万戸のうち10万戸について、おおよそ4類型に分けて削減・縮小する「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を明らかにしました。すなわち、「ストック活用」、「団地再生」、「土地所有者等への譲渡又は返還等」、「用途転換」などの類型です。
 本市には、都市再生機構のUR賃貸住宅は40団地・約15000戸あります。「土地所有者等への譲渡、又は返還等」に分類されているところは、底地などが本市の所有になりますが、壬生坊城団地など13団地約1300戸あります。その内、本市の身体障害者福祉会館・保育所・区役所や保健所などと合築となっているところが、6ヵ所もあります。建築基準法の旧耐震基準のところもあり耐震改修はどこが責任をとるのか、引き続き住み続けられるのか、住み続けられたとしても市営住宅扱いとなり市営住宅の新しい入居収入基準の適用により収入超過者となる場合の扱いはどうなるのかなどなど、住宅不安が広がっています。
 また、「団地再生」類型のひとつとして、たとえば伏見区の観月橋団地は「集約化」に小分けされました。540戸の団地ですが、管理継続ブロックと事業用ブロックに分けるといいます。事業用ブロックについては既存入居者を立ち退かせ、跡地を民間などに切り売りします。どこが事業用ブロックとなるか明らかにされない中で、住み替えをしいられるのか住み続けられるのかという住宅不安が広がっています。
 先日、私は伏見区の観月橋団地に住んでいる方々のご意見を聞く機会がありました。「年金生活者なのでいまさら引っ越しなどできない」とか、「80歳になるが、5階までの階段の上り下りがしんどいのでほとんど外出しない。今のところは改修などでエレベータをつけて欲しいほどだ」などのお話を伺いました。
 なぜ、大家さんの都合でこんな無慈悲なことが行われようとしているのでしょうか。
 昨年12月末、国は「独立行政法人整理合理化計画」を閣議決定しましたが、その主な目玉は、3年間の期間のうちに都市再生機構の民営化に向けた「地ならし」をしようというものです。さしあたって、民営化に向けての二つの障害を取り除く整理プロセスを入ろうというわけです。
 一つ目は、都市再生機構を民営化するには、既存入居者の4割が公営住宅入居階層であり、、立ち退きまたは地方自治体への押しつけが必要となることです。
 もう一つは、バブル崩壊後、都市再生などを名目に土地取得したツケが、繰越欠損金として約5000億円にものぼり、この累積赤字の穴埋めに土地を売却しようという狙いです。
 まがりなりにも「住宅セーフティネット法」で、公的賃貸住宅を住宅困難者のセーフティネットとなるよう位置づけておきながら、逆に「住宅難民」をうみだそうというのですから、許せません。
 そこで、おたずねします。都市再生機構が賃貸住宅を4類型に分類し削減する計画を発表しましたが、本市の住宅マスタープランの新規策定に当たり、この公共住宅政策の転換に関する認識をお示しください。また、「土地所有者等への譲渡及び返還等」の類型では、UR側と本市のもともとの契約にしたがえば、本市にはどのような負担が発生するのですか。さらに自治体への財政的なシワ寄せを前提とする「UR賃貸住宅の削減・縮小計画」には、断固反対を表明すべきですが、いかがですか。

(山崎副市長)今日の住宅政策は、量から質へ、ストック重視、高齢者の居住の安定等、大きな転換期を迎えている。UR賃貸住宅の再編方針は、社会構造や事業環境の変化に対応し機構運営の安定化のためとのことだが、個々の団地整備方針は案の段階。方針を定めるに当たっては居住者に分かりやすく説明し居住の安定に配慮されるよう機構に求めている。本市の財政負担について現在想定しているものはないが、将来にわたっても負担が生じることがないよう強く求める。

市営住宅の家賃値上げを許さず、市独自の家賃減免制度の堅持を

 次に、市営住宅についても、今後の入居収入基準の引き下げ及び家賃制度の見直しによる家賃値上げで住み続けられるのかどうかという住宅不安が広がっています。
 平成19年12月末、国は公営住宅法施行令の改定を閣議決定し、来年4月1日には入居収入基準などを引き下げるとしています。すなわち、標準3人世帯で各種の控除をひいた政令月収を現行20万円から15万8000円に引き下げ、この新基準をオーバーする既存入居者は割り増し家賃が課せられことになります。この入居収入基準の見直しだけで国の推計でも全国平均で既存入居者約14%の方々が平均月2900円の値上げになるといわれています。
 しかも家賃制度の見直しとして規模係数を70㎡から65㎡に基準を引き下げることで、生保世帯並みの所得水準である収入分位第1階層をのぞくほとんどの入居者が家賃値上げになります。さらに、高額所得者の収入基準も39万7000円から31万3000円に引き下げるとしています。5年間の猶予期間をおくものの、ペナルテー家賃を課し、明け渡し請求につなげようとしています。いまでも、約500世帯が明け渡し対象であり、毎年明け渡し勧告は約40件にもなっていますから、いっそうところてん式に追い出しがすすみます。
 伏見区向島ニュータウンにおすまいの70歳台の老夫婦世帯のKさんは、現在政令月収20万円以下の月額約16万円の年金暮らしをしています。家賃は本来の26000円ですが、新規の政令月収15万8000円を超えるため家賃値上げが押しつけられることになります。
 この間、年金が増えない中で、各種の控除を廃止して年金課税が強化されました。「戦時中は文字通りの『滅私奉公』を押しつけ、今度はもろに市営住宅の家賃値上げで、年寄りは早く死ねといわんばかりじゃないか。まるで『悪代官』みたいだ」とKさんは嘆いていました。 しかも、家賃制度の見直しと併せて、市独自の家賃減免制度の廃止まで検討対象にしているというのでは、家賃の一部減額を受けている約2500世帯にも全面的な家賃値上げを押しつけることになりかねません。
 そもそも、06年6月施行の「住生活基本法」とそれに基づく「住生活基本計画」を策定する際、国は公的な支援により居住の安定の確保を図るべき世帯は121万世帯としてきました。
 この間、住生活基本法にもとづく都道府県の基本計画による「公営住宅供給」の全国集計では、今後10ヵ年で112万戸を供給するという目標です。公的な支援により居住の安定の確保を図るべき世帯121万世帯にほぼ対応する112万戸の公営住宅供給計画のように見えます。
 しかし、新規建設による供給はわずか1%、建て替えが約20万戸で全体の17%、このうちのかなりの部分で戻り入居が見込まれますから新規供給分は限定されます。結局ほとんどは空き家の募集分で90万戸80%をまかなおうというものです。つまり、入居収入基準を引き下げ、今住んでいる人を追い出してつじつまを合わせようというものです。
 新しい政令月収15万8000円以上の人々が新たに収入超過者とレッテルを貼られ、政令月収31万3000円以上の人々が高額所得者と規定され、明け渡し請求の対象にされていくのです。全国の公営住宅約220万戸のうち、90万戸、すなわち40%の空き家を絞り出す、まさに「空き家転がし」をやろうというものです。国策で「住宅難民」をつくることなど断じて許されません。
 そこで、おたずねします。このような大変な家賃値上げや住民追い出しを引き起こす公営住宅法施行令改定について、本市の認識はいかがですか。また、住宅マスタープランの策定にも大きな影響があり、かつ市民生活に重大な影響を生じるのですから住宅審議会に諮問すべきです。したがって、また議会にも諮るべきですが、いかがですか。お答え下さい。さらに、市独自の家賃減免制度は絶対に堅持すべきですが、いかがですか。

(市長)現在の入居基準が定められて10年以上が経過。所得の変化や高齢者世帯の増加に伴い、住宅に困窮する多数の希望者が入居できず低所得世帯の中で入居者と非入居者の不公平が生じている。より困窮度の高い世帯に公営住宅を供給するため入居基準の見直し、高額所得者の収入基準の改正がされた。本市市営住宅も制度改正に基づき来年4月から改定する。家賃改定で現入居者の7~8割は値上げとならない。値上げとなる世帯も緩やかな上昇となるよう調整期間を設け影響を軽減する。独自の減免は引き続き適正なものとなるよう検討する。

コミュニティバスの運行、向島地域の敬老乗車証改善を

 第3に、地域での交通不安について質問します。
 京都市基本計画の行政区版では住民要望として、11行政区中8行政区でコミニティバスの運行を要望しています。たとえば、伏見区の宇治川の左岸の向島地域では、民間バスの路線縮小もあり総合病院や区役所等へ行くのが大変不便であり、高齢者に優しい交通手段としてコミバスの運行の要望が高まっています。しかも、向島地域は敬老乗車証も近鉄向島駅から竹田駅までの片道200円出さなければ、市バス・地下鉄に乗り継げないという矛盾を抱えています。
 この間、敬老乗車証が有料になり、利用できる区間までも有料では、二重の使い勝手の悪さが行政サービスの格差の実感となっています。敬老乗車証の有料化により乗車証を辞退したお年寄りは、往復400円出して、年間何回市バス・地下鉄に乗るのかを考えると外出を控えると言います。このままでは、家に引きこもる「交通難民」となって、立ち枯れをまねくとの声も上がっています。
 そこでおたずねします。他都市の交通過疎地などでは「福祉バス」などを自治体主導で運行していますが、コミバスの運行は今や避けて通れない課題となっています、いかがですか。また、伏見区向島地域については、近鉄向島駅から竹田駅の区間についても、敬老乗車証で乗れるよう改善すべきですがいかがですか、お答え下さい。
 ご静聴ありがとうございました。

(都市計画局長) 向島地域は近鉄や近鉄バスが運行され、利便性は一定確保されている。地域主導型の自主的な取り組みが促進されるよう検討の場を設ける。
(保健福祉局長)民間の鉄道は敬老乗車証の対象としておらず、近鉄のみを対象とするにも経費がかかり困難。